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意外と便利な地理院地図の機能

2024年8月4日

今回は地形図をWeb上で閲覧できる地理院地図という国土地理院のサービスを紹介します。
地理院地図は単に地形図を閲覧するだけではなく、WebGISとして意外と豊富な機能を有します。

地理院地図

地理院地図は、国土地理院がWeb上で公開しているGISサービスです。
単に地形図を閲覧するだけではなく、地図へのルートの書き込みや、様々な地図の重ね合わせ、年代別の航空写真との比較など多種多様な機能があります。
以下では、地理院地図の機能について、いくつかピックアップして紹介します。

印刷・保存・共有

暗峠付近の地形図(大阪府東大阪市~奈良県生駒市)。地理院地図では右上の「共有」ボタンを選択すると、FacebookやXでの共有のほか、現在位置の地図を画像として保存したり、QRコードやHTML、iframタグの形式で共有できる。出典:地理院地図 ©国土地理院 2024/7/28閲覧

地理院地図にはブラウザの機能とは別に印刷や保存、共有用のボタンが用意されています。
上の画面は、地理院地図の閲覧画面で右上の「共有」ボタンを押したときの画面です。
FacebookやX(旧Twitter)で共有できるほか、現在の画面の地図を画像として保存したり、QRコードやHTML等の形式で地図を共有できます。

また、ブラウザの機能とは別に印刷用の画面もあります。
上の画面で共有ボタンの左隣にある「印刷」ボタンを押すと画面が切り替わります。

地理院地図の印刷画面。地図は高尾山付近のものである(東京都八王子市)。地理院地図では右上の「印刷」ボタンを選択すると、画面が切り替わって表示位置を中心とした領域を印刷できる。サイズや縦横を選択したり、地図にタイトルをつけることもできる。出典:地理院地図 ©国土地理院 2024/7/28閲覧

この画面は、地理院地図で「印刷」ボタンを押した後に切り替わる画面です。
画面の中心付近が印刷領域に切り取られていますが、この画面でもスクロールして位置を動かしたり、縮尺を変更することもできます。
印刷する用紙サイズや縦横、画質を選択したり(表示範囲が変わる)、印刷する地図にタイトルを入力することもできます。

地図の重ね合わせ

地理院地図にて、地形図の上に地形分類(自然地形)を重ね合わせた画面。表示されている領域は大阪市付近である。地図上をクリックするとその場所の凡例(地形情報)が表示される。大阪市周辺は大部分が低地であるのに対し、市東部では南北に伸びる台地上のエリア(上町台地)が広がっていることがわかる。出典:地理院地図 ©国土地理院 2024/7/28閲覧

地理院地図では、地形図や航空写真を単体で見るだけではなく、複数の地図を重ね合わせてみることもできます。
上の地図では、大阪市周辺について、地理院地図の上に「地形分類(自然地形)」というレイヤーを重ね合わせて表示しています。
大阪市周辺の大部分は低地(水色)ですが、東部に南北に台地状の地形(オレンジ色)が伸びており、この部分のみ例外的に高台になっており、低地との境界付近には急な坂や崖があることが想定されます。
左側の「地図の種類」から様々な地図を選択して重ね合わせることができます。
現在表示している地図や透明度は左下の「選択中の地図」から調整できます。

地図への書き込み

皇居ランニングコース(東京都千代田区)を地理院地図上に書き込み。地理院地図では、右上の「ツール」ボタンを押すと右端に様々なボタンが表示され、「作図・ファイル」ボタンから地図上にルートを描いたり、地点にピンを表示することができる。出典:地理院地図 ©国土地理院 2024/7/28閲覧

地理院地図には書き込みもできます。
右上の「ツール」ボタンを押すと右端に様々なボタンが表示され、その中から「作図・ファイル」ボタンを押すと、上の図のような「作図・ファイル」ウィンドウが出現します。
このウィンドウで点や線、面(領域)、テキストなどのボタンを選択し、地図上でクリックすることで、点(地図上の赤色のピン)、線(地図上の青色の線)などを表示できます。
点(ピン)はテキスト(上の図の「スタート/ゴール」)を追加することができ、線は色や透過度を指定できるといった機能もあります。
上の地図上の「皇居ランコース」の文字も、地図上にテキストをつかして文字色、背景色を指定したものです(透明背景+黒字だと見づらいので)。
作成した地図は、「作図・ファイル」ウィンドウのボタンからKMLまたはGeoJSON形式で保存したり(再加工可)、共有ボタンから画像として保存したりできます。

並べて表示・比較

室戸岬周辺の地形図と航空写真(高知県室戸市)。地理院地図の「並べて比較」機能を使用して、現在の地形図と航空写真を左右に並べた画面。中心の十字の位置が地形図では陸地になっているのに対し、航空写真では海上になっている。このように地形図と航空写真を並べて比較することで、地形図と現況の細かな違いを見ることもできる。出典:地理院地図 ©国土地理院 2024/7/28閲覧

地理院地図では、同じ位置・縮尺の地形図や航空写真を並べて閲覧することもできます。
右上の「ツール」ボタンから「並べて比較」ボタンをクリックすると左右にウィンドウが分かれ、それぞれのウィンドウについて表示する地形図・航空写真を選択できます。
地図の位置や縮尺を変更すると、2画面が連動します(連動を解除することも可能)。
上の画面では、室戸岬周辺の地形図と航空写真を並べて表示しています。
地形図と航空写真を並べて比較することで、中心の十字の地点が地形図では陸地になっているのに対し、航空写真では海上になっていることがわかります。
このように、2つの画面を比較・分析することで、地形図と現況の細かな違いを発見できます。

豊洲駅周辺の現在(左)と過去(右、1974-78年頃)の航空写真(東京都江東区)。地図の中心は現在のゆりかもめ豊洲駅の位置である。地理院地図の「並べて比較」機能を使用して、現在と過去の航空写真を左右に並べた画面(画像として保存したもの)。1970年代は鉄道の引込線が多数存在し、港湾施設や工場などの工業系の施設が一帯に広がっているのに対し、現在ではタワーマンションや大規模商業施設が広がっていることがわかる。このように、同じ場所の現在と過去の航空写真を比較することで時代による土地利用の変化を確認できる。出典:地理院地図 ©国土地理院 2024/7/28閲覧

現在と過去の航空写真を比較することもできます。
上の画像は、現在と1974-78年頃の豊洲(東京都江東区)の航空写真を並べたものです。
現在はタワーマンションや大規模商業施設が広がっているエリアが、かつては港湾施設や工業施設などが広がっていたことがわかります。
このように、現在と過去の航空写真を並べることで、時代による土地利用の変遷を追いかけることもできます。
ちなみに、各地点で選択肢にある全ての年代の航空写真が収録されているわけではなく、見ることができる年代は地点ごとに限られます。

現在(左)と過去の航空写真(右、1974-78年頃)を並べて表示(北海道夕張市大夕張地区)。地理院地図の「並べて比較」機能を使用している。大夕張地区は夕張川最上流部の河岸段丘上に広がっていた炭鉱街であり、三菱大夕張炭鉱の開発により建設され、炭鉱閉山とともに衰退した。現在では夕張シューパロダムの建設に伴い水没しているが、現在と過去の航空写真を並べることで、かつでこの場所にも街があったことがわかる。出典:地理院地図 ©国土地理院 2024/7/28閲覧

上の画像は、現在と1974-78年頃の大夕張地区(北海道夕張市)の航空写真を並べたものです。
現在では夕張シューパロダムの建設に伴いダム湖であるシューパロ湖が広がっていますが、かつては集落があったことがわかります。
かつては炭鉱街として栄えた大夕張地区が、炭鉱の閉山とともに無人化し、やがてはダム建設に伴い水没するといった変遷を航空写真から確認できます。

以上のように、地理院地図には様々な機能があるため、単に地形図を見るに留まらない幅広い使い方ができます。

参考文献

地理院地図 国土地理院 2024/7/28閲覧
誰でも役に立つ地理院地図の使い方を紹介します 国土地理院 2024/7/28閲覧

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