イベント・学習

じゃらんの観光セミナーに参加してきた

今回は、じゃらんの観光セミナーに参加してデータを見て考察した内容についてまとめます。

観光振興セミナー2025 地域Meeting

じゃらんリサーチセンターでは、毎年全国各地で観光に関するセミナーを行っています。
今回参加したセミナーでは、国内宿泊客やインバウンド客の動向について取り上げていました。

観光振興セミナー2025 地域Meetingを開催いたします じゃらんリサーチセンター 2025/9/2閲覧

セミナーは全国8地区で開催され、以下の3部構成です。

1.じゃらんリサーチセンター長 沢登より
未来のこの街をもっと好きになる、『観光から考える地域戦略』

JRC独自調査データの共有
2.国内編:じゃらん観光国内宿泊旅行調査 2025

3.インバウンド編:地図で読み解くインバウンド地方分散研究 2025

以下では、それぞれの講演内容なデータを見て考察した内容についてまとめます。

1.未来のこの街をもっと好きになる、『観光から考える地域戦略』

このセクションは、有識者へのインタビューや個別事例から今後の観光業界がどのようになっていくかの展望の紹介です。
アンケートなどの定量的な根拠に基づく内容というよりも、センター長のストーリーを楽しむような講演でした。

具体的な講演内容としては、観光に携わる人材の空洞化や気候変動により観光資源が失われる(例:温暖化で雪国で雪が降らなくなる)といった現実的な話からはじまり、観光と暮らしが融合するといったオリジナリティあふれる内容がメインでした。
たとえば、ネットも電話もないため手紙でしか予約できない民宿の例から、不便さに価値を見出している(不便益)という話がありました。
これは単に超ニッチ市場だから成り立っているだけでとても一般化できないものですが、ニッチ市場を取りに行く際は常識の裏をかくような意識も大事だということを示しています。

他には、じゃらんリサーチセンターが提唱する「帰る旅」の話もあります。
帰る旅とは、同じ場所に頻繁に通い、まるでその場所に帰るかのような旅行をするといった概念です。
頻繁に訪れて地域行事に参加したり、ワーキングホリデーのように旅行先で働きながら暮らします。

こういった活動は、単に旅先で人と表面的な交流するという従来的な旅行の範疇を超えて、旅行先の地域での活動を通して自己肯定感を得たい、認められたいという欲求を満たすものです。
旅行先の地域に貢献することで、その地域の人々と交流して「楽しかった。終わり」ではなく、RPGのおつかいのようなロールプレイをリアルを行うことを通して、楽しんだり自己肯定感を得たりすることを提唱しているのでしょう。

2.国内編:じゃらん観光国内宿泊旅行調査 2025

2番目の「じゃらん観光国内宿泊旅行調査 2025」では、アンケート結果を元にに23年→24年の前年比の比較結果を紹介していました。

インフレによる物価高で観光費用も高騰している中で、インバウンド客の増加による宿泊費高等のダブルパンチで影響を受け、国内宿泊者数は減少しているようです。
国内旅行は二極化していると言え、70代などのリタイア世代の高齢者や20-50代男性の個人旅行は増えているのに対し、30-40代の家族旅行は減少しているようです。

日本の個人資産は高齢者(リタイア世代)に集中しているため、高齢者はインフレとインバウンド客増加による宿泊費高騰にも負けない旺盛な需要があるのでしょう(コロナ禍からの回復の影響も)。
また、20-50代男性の個人旅行が増えている点も、独身貴族などお金がある層は旺盛な旅行需要が続いていることの表れでしょう。
一方、30-40代を中心に家族旅行が落ち込んでいるため、お金がかかりがちなファミリー層にとっては、旅行費用高騰の影響が大きく、旅行の回数や日数を減らす方向に働いていると思われます。

3.インバウンド編:地図で読み解くインバウンド地方分散研究 2025

最後の「地図で読み解くインバウンド地方分散研究 2025」は、訪日インバウンド客をターゲットとして日本国内をどのように回遊しているかを紹介していました。
加えて、訪日客を取り込むために各地で行われている取り組み事例についても紹介していました。

訪日客の周遊は東京~名古屋~大阪~広島のゴールデンルートが強力ですが、国ごとの特色もあります。
オーストラリアのスキー客は有名ですが、他にもアメリカ人は知人訪問ついでの観光(VFR, Visiting Friends Relatives)、タイは山岳観光と文化遺産といった例がありました。

取り組み事例としては、生成AIを活用した旅行プラン策定といった汎用的ものもありましたが、クルーズ船寄港客に対する観光ガイド営業(Nagasaki Crew)や鉄道のバックヤードツアー宣伝成功例といった個別事例的なものが中心です。
関門鉄道トンネルツアーの宣伝成功については、韓国語で作成したInstagram広告をたまたま韓国の鉄道ファンクラブのリーダーがブログで拡散してくれて韓国人の申込事例が殺到したという例でした。
とりあえず広告を作ってみるのも大事という風にも考えられますが、結局拡散してもらえるかは運の要素が強いです。
SNSでバズる難しさが立ちはだかります。

今回参加したセミナーはデータを元に考察できる定量的な部分と定性的なトレンドや(ある意味突飛な)個別事例を取り上げたトピックをまとめたものでした。
データ分析の立場からは定量的なトピックは考察のし甲斐があっておもしろいですが、一方で根拠があいまいな「意見」や個別事例の一般化については、本当にそうなのかという視点を持つ(クリティカルシンキング)ことも重要です。

参考文献

観光振興セミナー2025 地域Meetingを開催いたします じゃらんリサーチセンター 2025/9/2閲覧
帰る旅 - おかえり・ただいまから始まる旅へ じゃらんリサーチセンター 2025/9/2閲覧

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