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コンジョイント分析とは(属性と水準の決定)

コンジョイント分析は、「価格」と「機能」のようにトレードオフ関係にある要素の最適な組み合わせを決めるための分析手法です。
このページでは、コンジョイント分析について、どのような対象に適用すべきかや水準の決め方について解説します。

コンジョイント分析とは

コンジョイント分析とは、商品の機能や価格等の組み合わせの一覧から購入するものを選ぶ実験を繰り返し行うことで、どのような組み合わせの商品が求められているかを調べる調査手法です。
実験計画法の一種であり、企業がマーケティングのためにアンケート調査(市場調査)を行う際によく使われていています。
商品の「価格」と「機能」のようにトレードオフの関係になる属性についてコンジョイント分析を行い、商品設計に活用するといった使われ方がなされます。

コンジョイントカード

コンジョイント分析の例:アイスクリームの特徴に関する市場調査。コンジョイント分析では価格や機能などの複数の属性について、数パターンの水準を組み合わせたコンジョイントカードを提示する。被験者(アンケート回答者)は購買したいものを選んだり、購買したい順に順位づけを行うことを繰り返す。このような調査の結果を利用して、商品価格と機能のようなトレードオフの関係にある要素の組み合わせやバランスを検討し、商品設計に活用する。出典:Wikimedia Commons, ©ハッピーバニー95, CC BY-SA 4.0, 2024/4/3閲覧

上の画像は、コンジョイント分析で使用するコンジョイントカードの一例です。
アイスクリームについて、容量と味(フレーバー)、価格について4種類の組み合わせのカード(コンジョイントカード)を提示し、被験者(アンケート回答者)に1つを選択させています。
コンジョイント分析では、このような選択を複数の組み合わせで繰り返すことで、回答者集団(消費者)がどのような商品であれば購入してもらえるのかを探ります。

上の画像では4種類から最も購入したい1つを選択する選択型コンジョイント分析(CBC, Choice-Based Conjoint)を採用しています。
他にも全てのカードに購入したい順に順位をつける Ranking-based conjoint や全てのカードに10点満点で点数をつける評定型コンジョイント分析(Rating-based conjoint)などの方式もあります。
CBCは1つを選択するだけなので他の方法よりも回答者への負荷が少ない点が優れており、よく使われてい手法です。

コンジョイント分析の向き・不向き

コンジョイント分析を行う対象は、複数の属性からなり、各属性は複数の客観的な水準に分解できる必要があります。

コンジョイント分析の対象として適切な商品の例としてパソコンがあります。
たとえば、ノートパソコンを購入する際には、CPUやメモリ、ストレージといった複数の属性に分解できます。
各属性は複数の水準からなり、メモリであれば8GB, 16GB, 32GBといった客観的な水準があります。
消費者はこれらの属性のスペックを確認し、価格との兼ね合いを見ながら購入する商品を選択します。

一方、食品の味の評価(甘い、すごく甘い)は主観的にしか評価できないため、コンジョイント分析には向きません。

また、コンジョイント分析はトレードオフの関係にある機能等について意思決定を行う実験です。
つまり、高機能で高価格な商品Aと低機能で低価格な商品Bのどちらを選ぶかという補償的な意思決定を積み上げて分析することになります。
そのため、コンジョイント分析を行う商品の属性間は、トレードオフの関係(補償的な関係)にある必要があります。
たとえば、ノートパソコンに搭載するメモリの性能が高くなる(機能としての評価がプラスになる)ほど価格も高くなります(価格の評価がマイナスになる)。

以上のように、コンジョイント分析を行う対象商品は、消費者がスペックと価格の兼ね合いを見ながら商品選択を行うような商品に向いています。

属性と水準の決定

コンジョイント分析において属性と水準を決める際に意識すべき点についてまとめます。
具体例として、東京から大阪へ高速バスで移動する際に利用するバスを価格と機能(快適性・所要時間等)から選ぶコンジョイント分析を考えます。

参考文献:属性・水準の決め方 マーケティングテクノロジー株式会社 2024/4/3閲覧

①消費者が理解できる(知っている・意味がわかる)属性・水準であること
適正な属性の例としては、運賃、所要時間、車内設備(コンセント、トイレ等)などが考えられます。
例えば、以下のようなものがあります。

所要時間:7時間半、8時間、8時間半、9時間
コンセント:全席あり、一部車両のみあり、全席なし

一方で、

属性:運行会社
水準:JRバス関東、西日本JRバス、WILLER EXPRESS、さくら観光

といった選択肢を出しても、旅慣れた人以外の多くの回答者は会社によって何が違うのかが想像がつかないため、意味のない要素になってしまいます。
実際に上記4社のバスを選択した消費者の意思決定のプロセスを考えても、「運営会社」よりも「運賃」や「車内設備」の方が意思決定に及ぼす影響が重大かつ明確であると考えられます。
そのため、「運賃」や「車内設備」を属性とした方が良いと考えられます。

②属性間がトレードオフの関係にあるもの
「価格」に対する「機能」のようにトレードオフの関係になるものが属性として適切です。
たとえば、「価格は安いが座席が狭いバス」と「価格は高いが座席が広いバス」といった組み合わせです。
「価格が高く座席も狭いバス」と「価格が安く座席も広いバス」といった組み合わせでは、コンジョイント分析を行う意味がありません。

また、属性として向かない例として、変更困難な属性(地元企業か否かなど)や否定的な水準(交通事故が多いなど)などがあります。

③各属性が独立していること
各属性は独立していることが望ましいです。
相関が高く独立していない例としては、所要時間と休憩回数、途中停留所数などがあります。
所要時間が長いほど休憩回数が増え、途中停留所数も増えると考えられるため、一番消費者の意思決定に影響を及ぼすと考えられる「所要時間」だけを属性として採用するのが望ましいです。

④水準間の落差が極端にならないこと
価格を考えた際に、500円と10,000円といった極端な水準の落差を設定してしまうと、他の属性が無視されてその属性(価格)だけで意思決定がされてしまいます。
高速バスで東京ー大阪間を移動する選択肢として、500円と10,000円の2つだけを提示した場合、消費者は他の選択肢(所要時間や車内設備)が頭に入らず、価格しか見ずに意思決定をしていまいます。

⑤水準が客観的な基準に基づいていること
水準の例として「良い」「速い」「すぐに」といった主観的な水準は避け、誰でも同じように解釈できる水準にするのが望ましいです。
たとえば、所要時間で考えると、「速い」「遅い」ではなく、「7時間」「8時間」「9時間」といった具体的な数値を水準として設定することで、誰でも同じように解釈できるように努めます。

⑥商品選択と直接的に関わりのない属性を入れない
たとえば、運転手や係員の態度や当日の天候などは商品の機能と本質的に無関係であり、次回利用する際に同じことが発生するとは限りません。
このような属性は意思決定のノイズになり、場合によっては悪いイメージを植え付けて間違った選択を誘導してしまう可能性もあります。

参考文献

渋谷 智之「Webアンケート調査 設計・分析の教科書 第一線のコンサルタントがマクロミルで培った実践方法」翔泳社(2023)
Conjoint analysis, Wikipedia 2024/4/3閲覧
簡単解説!「コンジョイント分析」の手順、直交表例 Freeasy アイブリッジ株式会社 2024/4/3閲覧
属性・水準の決め方 マーケティングテクノロジー株式会社 2024/4/3閲覧

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