中心地点からの距離と方角を正確に反映できる地図投影法を正距方位図法といい、中心からの最短距離が直線で表されるため航空路線を描く目的で使われます。
このページでは、正距方位図法について解説し、使用例も取り上げます。
正距方位図法とは
正距方位図法は、地図上のどの地点においても中心点からの距離と方角が正確である地図投影法です。
地図上のどの地点においても中心点からの距離が正確であるため、正距図法に分類されます。
距離と方角が正確なのはあくまで中心点だけであり、中心点以外の地点間の距離や方位は不正確である点に注意して下さい。
正距方位図法では、特定の地点を地図の中心に置き、その地点からの距離と方角が正確になるように描きます。
そのため、正距方位図法では距離や方角を正確に知りたい地点ごとに別々に地図を作成する必要があります。
正距方位図法では、3次元の球体である地球を平面上に投影し、さらに方角が正確になるように引き伸ばすため、中心点から遠方になるほど大きく引き伸ばされて歪みが大きくなります。
そのため、正距方位図法で世界全体を描くと、中心点から見て地球の裏側に位置する場所が極端に引き伸ばされます。
たとえば、北極点を中心とした正距方位図法の世界地図(下の世界地図を参照)では、地球の裏側にあたる南極大陸は引き伸ばされて地球を囲うような形状になってしまっています。
このような特性があるため、通常は地球の半分(半球、中心点からの距離20,000km以内)以内の範囲を描きます。
正距方位図法の使用例
正距方位図法は主に正確な距離や方位が必要な場合に使われます。
たとえば、航空機の飛行経路を決めるためには、出発地から見て目的地がどちらの方角にあたるかを正確に知る必要があります。
航空機は地球上の二地点間を最短距離で飛行するため、正距方位図法地図上に航路を描くと二地点間を結ぶ直線になります(大圏航路)。
このため、特定の都市からの航空路線を描く際に正距方位図法が使われることがあります。
他には、遠距離で二点間通信を行う際にアンテナを向ける方向を知るにも役立ちます。
正確な距離が必要な例としては、軍事用ミサイルの射程範囲を知るために正距方位図法の地図が使われます。
次の地図は、北朝鮮のミサイルの射程範囲を示しています。
ミサイルは最短距離(大圏航路)で飛行するため、北朝鮮を中心とした正距方位図法の地図を使っています。
参考
国際連合の紋章(エンブレム)
国際連合(国連)の紋章(エンブレム)には、北極を中心とした正距方位図法の世界地図が描かれています。
世界地図では、経線は45°ごとに直線が引かれ、中央の経線は日付変更線(北極点の上側)と本初子午線(北極点の下側)を表しています。
一方、緯線は北極点を中心に同心円状に30°ごとに線が描かれ、南緯60°が一番外側になっています(南緯60°以下に位置する南極大陸は除外)。
国連は国際的な組織であるため、特定の国を中心に置くなどの特別扱いをしないように北極点を中心として、人が居住していない南極を除く世界全体が描かれています。
国連の紋章に色の指定はありませんが、この紋章が描かれる国際連合の旗(国連旗)では水色を背景に白色で描かれています。
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参考文献
正距方位図法(セイキョホウイズホウ)とは? コトバンク デジタル大辞泉、日本大百科全書(ニッポニカ)、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2024/7/10閲覧
どこでも方位図法 2024/7/10閲覧
Azimuthal equidistant projection, Wikipedia 2024/7/10閲覧
地理用語研究会編「地理用語集」山川出版社(2024)
Flag of the United Nations, Wikipedia 2024/7/15閲覧
国際連合の旗 ウィキペディア 2024/7/15閲覧