寒冷な亜寒帯に広がる亜寒帯林(冷帯林)では、タイガとよばれる広大な針葉樹の原生林(天然林)が現存し、林業の中心となっています。
このページでは、亜寒帯林の種類(落葉広葉樹と針葉樹の混交林、タイガ)、分布、木材についてまとめます。
亜寒帯林(冷帯林)とは

亜寒帯(冷帯)に広がる森林を総称して亜寒帯林(冷帯林)とよびます。
温帯林よりも寒冷な場所に位置する亜寒帯林は人間に開発された歴史が浅く、今でも原生林が残る場所が多いです。
亜寒帯の森林は「落葉広葉樹と針葉樹の混交林」と「タイガ」の大きく2つに分けられます。
温帯との境界付近では大陸性混合林気候となり、落葉広葉樹と針葉樹が入り交じる混交林(混合林)が広がります。
落葉広葉樹と針葉樹の混交林は冷温帯(温帯のうち寒冷な地域)でも見られますが、寒冷な地域ほど針葉樹の割合が増えていきます。
亜寒帯の中でも高緯度側の寒冷な針葉樹林気候の地域では、針葉樹のみが生育するタイガとよばれる広大な森林が広がります。
タイガは1種類の針葉樹で構成される純林とよばれる単純な構造の森林です(数種類の樹木が生育する場合でも針葉樹のみから構成される場合はタイガとよびます)。
落葉広葉樹と針葉樹の混交林

亜寒帯(冷帯)のうち、温暖な低緯度側の地域(大陸性混合林気候)では、落葉広葉樹と常緑針葉樹の混交林(混合林)が広がります。
冷温帯(温帯のうち寒冷な地域)から亜寒帯にかけての地域では、温暖な低緯度側では広葉樹林の割合が高く、寒冷な高緯度側ほど針葉樹林の割合が高いです。
さらに高緯度側の寒冷な地域(針葉樹林気候)では、針葉樹のみの森林(タイガ)が広がります。
落葉広葉樹と針葉樹が生育する点は冷温帯と同じですが、より寒冷であるため生育する樹木の種類が異なります。
たとえば、本州の冷温帯に分布するブナ(橅)やスギ(スギ)は、北海道の亜寒帯林には分布しません(温暖な道南地方を除く)。
逆に北海道の亜寒帯林でよく見られるエゾマツやトドマツなども、本州以南の温帯林には分布しません。
天然林は混交林ですが、実際に林業の対象となるのは針葉樹が中心です。
このため、北海道では林業用に植林されたエゾマツやトドマツ、カラマツなどの人工林が見られます。
タイガ

タイガは、亜寒帯の寒冷な高緯度地域(針葉樹林気候)に見られる針葉樹林です。
タイガでは、寒冷で広葉樹が生育できないため、1種類の針葉樹からなる単純な構造の森林(純林)が広がっています(複数種類の樹木が混じる場合でも、針葉樹のみからなる場合はタイガと呼びます)。
タイガがある地域は非常に寒冷な気候であるため、人間の開発を受けた歴史が浅く、現在でも広大な天然林が残っています。
タイガは、北半球の高緯度地域に広く見られ、面積的にはロシアとカナダが大半を占めます。
ほかには、アラスカ(米国)やスカンディナビア半島(スカンジナビア半島)などでも見られます。
タイガに生える樹木の種類は地域ごとに異なりますが、トウヒ(唐檜)やモミ(樅)、カラマツ(唐松)などが見られます。
ちなみに、タイガを亜寒帯林という意味で解釈して、落葉広葉樹と針葉樹の混交林(混合林)を白タイガと呼ぶことがあります。
白タイガでは、針葉樹に混じってシラカバ(白樺)などの寒さに強い落葉広葉樹が生育します。
白タイガに対して、針葉樹のみからなる本来のタイガは黒タイガと呼ばれます。
亜寒帯林の分布

亜寒帯林のは、針葉樹林のタイガと落葉広葉樹と針葉樹の混交林に分けられます。
このうち、タイガは亜寒帯(冷帯)の中でも特に寒冷な針葉樹林気候の地域で見られます。
上図はタイガの分布を示しており、ロシアやカナダ、アラスカの高緯度地域に広く分布しています。
一方、タイガの南側に隣接する亜寒帯の中でも比較的温暖な地域(大陸性混合林気候)では、落葉広葉樹と常緑針葉樹の混交林(混合林)が広がります。
寒冷な高緯度側ほど針葉樹の割合が高くなり、反対に温暖な低緯度側ほど落葉広葉樹の割合が高くなります。
混交林は冷温帯の地域と連続的に分布し、どちらでも混交林が見られますが、亜寒帯の方がより針葉樹の割合が高くなります。
亜寒帯林の林業

亜寒帯林(冷帯林)の林業の中心はタイガであり、広大なタイガの原生林(天然林)を伐採しています。
歴史的に開発が進んでいる温帯林では人工林が中心ですが、人間の開発の歴史が浅い亜寒帯林では、人の手がほとんど加わっていない広大な原生林が存在します。
さらに、タイガでは同じ種類の針葉樹が広がるため、端から順番に伐採するだけで木材(丸太)を得られます。
このため、人工林が主体の温帯林や複数の樹種が入り交じる熱帯林と比較して林業の効率が良いです。
北欧のスウェーデンやフィンランドでは林業が盛んであり、タイガで伐採した木材を原料として紙パルプや段ボールなどを製造し、国外へ輸出しています。
スウェーデン発祥の家具量販店であるイケア(IKEA)でも、スウェーデンをはじめとする北欧や東ヨーロッパの亜寒帯林のマツ材を使って家具を製造しています。
また、広大なタイガが広がるシベリア(ロシア東部)やカナダでも林業が盛んであり、日本を含む外国へ木材が輸出されています。
林業は丸太などの重量物を輸出するため、港から比較的近い場所で盛んです。
このため、ロシアではシベリア東部~沿海州、カナダでは西海岸のブリティッシュコロンビア州で林業が盛んであり、太平洋に面した港から日本に輸出されています。

亜寒帯林の木材

亜寒帯の林業の中心はタイガであり、主に針葉樹の天然林を伐採しています。
タイガに生える樹木の種類は地域ごとに異なりますが、トウヒ(唐檜)やモミ(樅)、カラマツ(唐松)などが見られます。
個別の樹木(木材)については、以下のページで解説しています。
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参考針葉樹林と林業(スギ・ヒノキ・エゾマツなど)
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参考文献
地理用語研究会編「地理用語集」山川出版社(2024)
タイガ(たいが)とは? コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典、改訂新版 世界大百科事典、日本大百科全書(ニッポニカ) 2025/2/28閲覧
針葉樹林(シンヨウジュリン)とは? コトバンク デジタル大辞泉、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2025/2/22閲覧
針葉樹(シンヨウジュ)とは? コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典、改訂新版 世界大百科事典、日本大百科全書(ニッポニカ) 2025/2/22閲覧
帝国書院編集部「新詳地理資料 COMPLETE 2023」帝国書院(2023)
Taiga, Wikipedia 2025/3/9閲覧
Forest industry in Finland, Wikipedia 2025/3/12閲覧
合法伐採木材等に関する情報:フィンランド 林野庁 2025/3/12閲覧
合法伐採木材等に関する情報:スウェーデン 林野庁 2025/3/12閲覧
The wood we use IKEA 2025/3/12閲覧
ロシアの森林 フェアウッド・パートナーズ 2025/3/11閲覧
2カナダ BC 州の⽊材⽣産・流通の特徴 林野庁 2025/2/26閲覧
貯木場(ちょぼくじょう)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2025/3/11閲覧