地形 系統地理

断層と活断層(断層の分類:正断層・逆断層・横ずれ断層)

断層は過去に地震が発生した痕跡であり、繰り返し地震を引き起こす断層を活断層とよびます。
このページでは、断層と活断層について解説します。

断層とは(断層面・断層運動)

タクラマカン砂漠の横ずれ断層の衛星画像(中国西部・新疆ウイグル自治区)。横ずれ断層は地面に水平方向にずれ動いた断層である。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2025/1/2閲覧

断層とは、地中の岩盤や地層がある境界面を境に不連続になっている場所です。
地層の食い違いがおきている境界面(破断面)を断層面とよびます。
通常、地層は長い年月をかけて岩石や砂など下から上にが順番に積もっていくため、同じ深さの場所であれば同じ地層が堆積しています。
しかし、大きな力が働いて岩盤・地層が割れて割れ目に沿ってずれ動くと、その境界面では地層が不連続になります(断層面)。
このような断層を作り出す働きを断層運動とよびます。
断層運動に伴い地面が激しくゆれる現象が地震(活断層型地震です。

断層の多くは地下で形成されますが、断層面が地表まで到達すると、地表では断層面が線状に見えるため、断層線とよびます。

活断層とは

活断層とは、断層の中でも過去数十万年間に断層運動(=活断層型地震をくりかえし、今後も断層運動を引き起こす可能性が高い断層のことです。
断層は過去に地層が破壊された場所であるため、周囲の岩盤・地層よりも強度が弱くなっています。
このため、大きな力が働くたびに一度できた断層部分が繰り返しずれ動き、断層面のずれが蓄積していきます。

活断層はプレート境界周辺でよく見られるため、複数の活断層が近くに集まって帯状に分布していることがよくあります。
このように帯状に分布している複数の活断層を合わせて断層帯とよびます。

日本はプレート境界に位置しているため、活断層や断層帯が多数存在しています。
日本の主要な活断層は、おおむね千年から数万年間隔で断層運動がおきることが知られています。
活断層型地震は周辺地域に大きな被害をもたらすため、活断層のリスク評価が行われています。

日本の主要な活断層の地震リスクの長期評価。活断層のリスク評価結果を「今後30年以内に活断層型地震が発生する確率」として色分けしてまとめられている。赤色が最も地震発生確率が高い断層帯であり、吹き出しで名称や想定マグニチュードを記載している。色が薄いほど発生確率が低く、灰色は不明である。出典:地震調査研究推進本部, 2025/1/2閲覧

断層の分類

縦ずれ断層と横ずれ断層の模式図。地面に対して垂直(縦)方向にずれ動く断層を縦ずれ断層といい、地面に対して水平(横)方向にずれ動く断層を横ずれ断層という。縦ずれ断層は断層面で両側のブロックが動く方向により分類できる。斜めに走る断層面において、上側のブロックがずり下がる場合を正断層といい、のし上がる場合を逆断層という。横ずれ断層も力が働く方向により分類できる。断層線に向かったときに相手側ブロックが左方向に動くものを左横ずれ断層、右方向に動くものを右横ずれ断層という。出典:地震調査研究推進本部, 2025/1/2閲覧

断層は元は1つだった岩盤・地層が断層面を境にずれ動いたものです。
このずれ動く方向の違いによって、断層は縦ずれ断層と横ずれ断層に分類できます。
縦ずれ断層は地面に対して垂直(縦)方向にずれ動くのに対し、横ずれ断層は地面に対して水平(横)方向に動くという違いがあります。
実際には断層面は地面に対して斜めに走っていることが多く、縦ずれと横ずれが混じったような断層も多いです。

以下では、縦ずれ断層と横ずれ断層について、さらに詳細に見ていきます。

縦ずれ断層

縦ずれ断層は、地面に対して垂直(縦)方向にずれ動いて形成された断層です。
縦ずれ断層は断層面を境界とした両側のブロックが動く方向によって正断層と逆断層に分類できます。

正断層

地層が露出した正断層(ジョージア南東部・トビリシ近郊)。正断層は断層面を境界として上側(画像右側)の地層が下方向に動いて形成された断層である。正断層は断層面を境界として2つのブロックが互いに離れ合うような力が働いて形成されたものである。出典:Wikimedia Commons, ©Luka Adikashvili, CC BY 3.0, 2025/1/2閲覧

正断層は、地面に対して斜めに走る断層面を境界として、上側の岩盤・地層が下方向にずり下がって形成された断層です。
正断層では、断層面を境とした2つのブロックに対して互いに離れ合うように引っ張られる力が働いています。

正断層は2つのプレートが互いに離れ合うため伸長の力が働く広がる境界(発散境界)周辺でよく見られます。
アフリカ大地溝帯では地溝の両側に正断層が発達しており、アイスランドでも海嶺が地表に現れた部分であるギャオで正断層が見られます。

逆断層

1995年の兵庫県南部地震(Mj 7.3)で断層運動がおきた野島断層(兵庫県淡路島北部・淡路市・北淡震災記念公園 野島断層保存館)。野島断層は1995年の兵庫県南部地震(Mj 7.3)の震源に最も近い断層であり、地震の際には画像奥側の岩盤が上方向に20-50cm、右横方向に70-150cmずれ動いた(逆断層・右横ずれ断層)。この地震は神戸市などの都市部でも甚大な被害を及ぼした(阪神淡路大震災)。出典:Wikimedia Commons, ©Sakurai Midori, CC BY-SA 3.0, 2025/1/2閲覧

逆断層は、地面に対して斜めに走る断層面を境界として、上側の岩盤・地層が上方向にのし上がって形成された断層です。
逆断層では、断層面を境とした2つのブロックに対して互いに押し合う力が働いています。

逆断層は2つのプレートが押し合うため圧縮する力が働く狭まる境界(収束境界)周辺でよく見られます。
衝突帯にあたるアルプス山脈やヒマラヤ山脈古期造山帯であるアパラチア山脈(アメリカ合衆国東部)などで逆断層がよく見られます。
周辺に沈み込み帯が多数存在する日本でも逆断層が各地に点在しています。

横ずれ断層

2016年の熊本地震(Mj 7.3)により発生した右横ずれ断層(熊本県中部・益城町)。断層運動(地震)により田畑の位置が断層に向かって2mほど右側にずれている。この断層は布田川断層帯として、現在では国の天然記念物に指定されている。出典:平成28年(2016年)熊本地震への対応 産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門 2025/1/3閲覧

横ずれ断層は、地面に対して水平方向に走る断層面に沿ってずれ動いた断層です。
上の画像は2016年の熊本地震(Mj 7.3)に位置する横ずれ断層の衛星画像です。
かつては線状につながっていた地層が水平(横)方向にずれ動いた結果、列状に並んで植えられていた作物が200cmほど右側にずれています。

縦ずれ断層が正断層と逆断層に分類できるのと同様に、横ずれ断層も力が働く方向により分類できます。
断層線(断層面が地表に到達した部分)に向かったときに相手側ブロックが左方向に動くものを左横ずれ断層、右方向に動くものを右横ずれ断層といいます。

参考文献

地理用語研究会編「地理用語集」山川出版社(2024)
活断層と地震 中津川市鉱物博物館WEBミュージアム 中津川市 2025/1/2閲覧
元はつながっていた地層がある面を境に食い違っていることが 地震調査研究推進本部 2025/1/2閲覧
地震と断層 濃尾地震と根尾谷断層 岐阜聖徳学園大学 2025/1/2閲覧
活断層 地震調査研究推進本部 2025/1/2閲覧
断層帯 地震調査研究推進本部 2025/1/2閲覧
正断層・逆断層・横ずれ断層 地震調査研究推進本部 2025/1/2閲覧
正断層(セイダンソウ)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2025/1/2閲覧
石川 輝海「アイスランドの地質学的自然環境学的特質について」名古屋学院大学論集 人文・自然科学篇 44(2) (2008)
逆断層(ギャクダンソウ)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2025/1/2閲覧
野島断層 文化遺産オンライン 2025/1/2閲覧
衝上断層 ウィキペディア 2025/1/2閲覧
Thrust fault, Wikipedia 2025/1/2閲覧
平成28年(2016年)熊本地震への対応 産業技術総合研究所 活断層・火山研究部門 2025/1/3閲覧
布田川断層帯(堂園) 益城町 2025/1/3閲覧
横ずれ断層(ヨコズレダンソウ)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2025/1/2閲覧
Fault (geology), Wikipedia 2025/1/2閲覧

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