地形 系統地理

断層地形(断層崖・地塁・傾動地塊・断層山地)

同じ活断層がずれ動く断層運動(活断層型地震)が繰り返し発生すると、断層を境に高さが変わる断層崖がどんどん高くなっていきます。
この結果、断層山地のように山地・山脈を形成することもあります。
このページでは、断層が形作る断層地形について紹介します。

断層地形とは

断層地形とは、断層によって形作られる地形の総称です。
断層運動がおきると断層面を境に高さが変わります。
長い年月をかけて断層運動が繰り返されることで山や谷のような地形が作られていきます。
このように断層運動によって形成された地形としては、断層崖や地塁、傾動地塊などがあります。

以下では、それぞれの地形について解説していきます。

断層崖

1891年の濃尾地震(Mw 7.5)でずれ動いた根尾谷断層(岐阜県南西部・本巣市)。上が地表の断層崖、下が断層の断面である。地層が6mほどずれ動いた結果、地表には断層崖が形成された。出典:地震調査研究推進本部, 2025/1/2閲覧

断層崖(だんそうがい)とは、断層運動(地震)により断層の境界(断層面)が上下方向にずれ動いたことでできた崖(がけ)のことです。
断層線(断層の地表部分を結んだ線)上に数kmから数百kmにわたって直線上に伸びています。

1891年の濃尾地震(Mw 7.5)では、高さ6mもの断層崖が形成されました。
1回の断層運動(地震)で形成される断層崖の高さはせいぜい数m程度ですが、同じ場所で繰り返し断層運動がおきることで高さが積み上げられ、やがては片側が断層崖(または急斜面)となった断層山地を形成します。

地塁・地溝

地溝の模式図。並行する2つの断層に挟まれた細長い谷状の地形を地溝といい、逆に断層によって高くなっている側を地塁という。正断層は、断層の両側の地面が反対方向に引っ張られることに起因して生じた断層である。出典を加工して作成。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2024/8/4閲覧

大陸上の広がる境界(発散境界)など、岩盤・地層が引き伸ばされる方向に力が働く場所では、上図のように隆起した丘状の地形と沈降した谷状の地形が見られます。
丘状の部分を地塁(ちるい)、谷状の部分を地溝(ちこう)とよびます。
地塁と地溝の境界は正断層となっています。

このように正断層が地溝や地塁を作る場所は、大陸上の広がる境界であるアフリカ大地溝帯などで見られます。
アフリカ大地溝帯では、その名の通り多数の地溝が列状に並ぶ地溝帯を形成しています。

参考大陸上の広がる境界と地形(アフリカ大地溝帯・断層湖)

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傾動地塊

南側の神戸市街から望む六甲山地(兵庫県南東部・神戸市)。六甲山地は断層運動(地震)によって形成された傾動地塊(傾動山地)であり、南側の神戸市街側が急崖となっている。六甲山地が海に平行して東西に走っているため、神戸市街は瀬戸内海と六甲山地に挟まれた細長い土地に建物が密集している。このような特徴的な地形のため、北側から神戸市街に吹き下ろす局所風(地方風)を六甲颪(ろっこうおろし)とよぶ。冬の六甲颪は冷たく乾いた北風である。出典:Wikimedia Commons, ©Bakkai at Japanese Wikipedia, CC BY 3.0, 2025/1/3閲覧

傾動地塊(けいどうちかい)とは、片側に急な断層崖があり、反対側がゆるやかな斜面となっている山地です。

傾動地塊が見られる場所としては、米国カリフォルニア州東部を南北に走るシエラネバダ山脈(米国西部)が代表的です。
日本では、六甲山地(兵庫県南東部、南の神戸市街側が急崖)や養老山地(岐阜・三重、東の濃尾平野(岐阜)側が急崖)、鈴鹿山脈(滋賀・三重、南東の伊勢平野(三重)側が急崖)などで傾動地塊が見られます。

三角末端面

北側から見た石鎚断層の断層崖(愛媛県東部・新居浜市)。奥(南側)から続く尾根が同じ場所で途切れ、山と平野の境界が直線上になっている。この位置に中央構造線が走っており、断層運動により断層崖が形成された。断層崖によって山の尾根が三角形の形で切り取られているためこの地形を三角末端面とよぶ。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2025/1/3閲覧

三角末端面とは、山の尾根の末端分にできる三角形をした断層崖です。
山の尾根の端の部分を横切るように断層が走ると、断層崖により山が切り取られ、その断面は三角形になります。
ふつう、山と平野の境界は入り組んでおり、一直線に線を引いて断面を切り取ると、尾根と谷が繰り返しています。
しかし、三角末端面が見られる場所では不自然に一直線に山が途切れ、山と平野の境界は直線状になります。

三角末端面が見られる場所としては、石鎚山脈(いしづち-)の北側山麓(愛媛県東部)や比良山地(ひら-)の東側山麓(滋賀県西部)などがあります。

断層山地

3D地図で南側から見た鈴鹿山脈(三重県北西部・滋賀県南東部)。東側手前の海は伊勢湾であり、西側奥の湖は琵琶湖である。鈴鹿山脈は断層山地であり、東側(三重側)が急崖であるのに対し、西側(滋賀側)は比較的ゆるやかな傾動地塊であるため、傾動山地に分類される。出典:3D地図 ©国土地理院 2025/1/3閲覧

断層山地とは、山地・山脈の片側または周囲が断層崖になっている山地・山脈です。
断層山地は断層運動により隆起して標高が高くなりました。

断層山地には、傾動山地と地塁山地(地塁)があります。
傾動山地は、山地の片側のみが断層崖となった(=傾動地塊が山地となった)断層山地です。
一方、地塁山地は、山地の両側・周囲が断層崖で囲まれた(=地塁が山地となった)断層山地です。

断層山地が広範囲にわたって見られる場所としては、ベイスン・アンド・レンジ(米国カリフォルニア州東部のシエラネバダ山脈からコロラド高原までの地域)があります。
他にも、中央メキシコ高原、アルティプラーノ(アンデス山脈山中の高原地帯、ペルー南東部・ボリビア西部)、チベット高原(中国西南部)、アナトリア半島(トルコ)などで断層山地が見られます。

日本の断層山地の例としては、木曽山脈(中央アルプス、長野南部)鈴鹿山脈(滋賀・三重)などがあります。
木曽山脈は、両側が断層崖となり中央が地塁となる地塁山脈(地塁山地)です。
一方で鈴鹿山脈は、東側(三重側)が逆断層断層崖となっており、西側(滋賀側)はゆるやかに傾斜した傾動地塊であり、傾動山地に分類されます。

参考文献

断層地形(だんそうちけい)とは? コトバンク 改訂新版 世界大百科事典、日本大百科全書(ニッポニカ) 2025/1/2閲覧
地震と断層 濃尾地震と根尾谷断層 岐阜聖徳学園大学 2025/1/2閲覧
断層崖(ダンソウガイ)とは? コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2025/1/3閲覧
地溝(チコウ)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)、改訂新版 世界大百科事典、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2025/1/2閲覧
地溝帯(チコウタイ)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2025/1/2閲覧
傾動地塊(ケイドウチカイ)とは? コトバンク 改訂新版 世界大百科事典、日本大百科全書(ニッポニカ)、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2025/1/3閲覧
帝国書院編集部「新詳地理資料 COMPLETE 2023」帝国書院(2023)
六甲山地(ロッコウサンチ)とは? コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2025/1/3閲覧
地形[14] 養老山地 ~断層でできた山 岐阜大学 2025/1/3閲覧
三角末端面 ウィキペディア 2025/1/3閲覧
日本の地形千景 愛媛県:中央構造線断層帯(池田断層,石鎚断層,岡村断層,小松断層) 地質情報ポータルサイト 2025/1/3閲覧
断層山地(ダンソウサンチ)とは? コトバンク デジタル大辞泉、日本大百科全書(ニッポニカ) 2025/1/2閲覧
ベイスン・アンド・レンジ ウィキペディア 2025/1/2閲覧
大地形(何県にもまたがるような広域の地形) 国土地理院 2025/1/3閲覧
木曽山脈(キソサンミャク)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2025/1/3閲覧
鈴鹿山脈(スズカサンミャク)とは? コトバンク 改訂新版 世界大百科事典 2025/1/3閲覧

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