過去問解説

【共通テスト解説】2023年 地理B 本試験 第1問

大学入試共通テスト(2023年 地理B 本試験 第1問)の解説ページです。

地理B 2023年 本試験 |第1問|第2問第3問第4問第5問

問題と解答

共通テスト(2023年 地理B 本試験)の問題と解答のリンクです。
問題文のPDFは下記リンク先から入手し、図表や問題文を手元に置きながら解説(次項)を見て下さい。
リンク切れ対策のため複数サイトへリンクを貼っていますが、いずれも同一です。

入試速報トップ:東進朝日新聞
問題:東進朝日新聞
解答:東進朝日新聞

試験日(2023年)から年数が経過している場合はリンク切れの可能性が高いため、下記サイトを利用して下さい。

過去問サイト:日本の学校中日進学ナビ

解説

第1問は自然環境と災害に関する設問です。

問1 気象現象の空間・時間スケール

気象に関わる4つの現象について、時間スケールと空間スケールの2次元グラフ上のどこに当てはまるかを答える問題です。
選択肢は、「エルニーニョ・ラニーニャ現象」「地球温暖化」「低気圧・台風」「モンスーン」です。
このうちモンスーンが①-④のどれに当てはまるかを回答します。

グラフは両軸ともに対数グラフになっています。
縦軸は空間スケールであり、たとえば 102 = 100km, 103 = 1,000km なので、この範囲に分布する①は100km-1,000kmの範囲で発生する気象現象であるという意味になります。
なお、縦軸は 105 = 100,000km までありますが、地球一周は約40,000kmなので、105 は地球を飛び越えてしまいます。
実際、最も空間スケールが大きい④の分布でも、最大で104 を少し超える程度(=地球全域規模)になっています。

横軸の時間スケールも対数グラフですが、少し変則的になっています。
1分、1時間、1日、1週間、1年とつづき、そこからは101 = 10年、 102 = 100年と続きます。
こちらの解釈も縦軸同様であり、たとえば①は1日と1週間の間に分布しているため、だいたい1日~1週間程度継続する気象現象であることがわかります。

ここからは、解答について考えていきます。
回答にあたって各用語の意味や規模感はある程度理解している必要があります。
エルニーニョ・ラニーニャ現象:ペルー沖の海水温変化に起因する太平洋全域での異常気象。数ヶ月から1年以上続く。日本でも影響を受けて異常気象が発生する。
地球温暖化:近代以降の人類の活動に起因する地球規模での気温上昇。数年にとどまらず数百年規模の話である。
低気圧・台風:上昇気流が発生して雨雲が発達し、大雨が降りやすい領域。1日から数週間程度状態が継続する。
モンスーン:アジア地域で季節ごとに特定方向へ恒常的に吹く風(=季節風)。数ヶ月程度継続して一定方向に風が吹く。

上記すべてを理解している必要はありませんが、概要をざっくり理解していないと答えをしぼりこめません。

モンスーンがどれかを求められていますが順番に見ていきます。
はじめに、1つだけ時間・空間スケールともに小さい①を考えます。
①は1日から1週間程度継続し、規模は数百kmから数千km程度の範囲で発生します。
該当するのは選択肢は「低気圧・台風」です。
普段天気予報を見ていれば、台風が沖縄から北海道くらいの距離を移動し、数日から1週間程度継続して消えることはわかると思います。

次に規模が小さい②について考えます。
②は数ヶ月程度継続し、数千km程度の空間スケールの気象現象です。
該当する選択肢は「モンスーン」です。

まぎらわしいの③です。
③は数ヶ月から数年程度継続し、規模は②同様に数百kmから数千km程度の範囲で発生します。
モンスーンは季節ごとに一定方向に風が吹く現象であり、1年以上同じ方向に風が吹き続けることはありません。
そのため、③ではなく②がモンスーンになります。

以上より、解答は②になります。

ちなみに③は「エルニーニョ・ラニーニャ現象」です。
ペルー沖の海水温変化が原因なのに日本でも異常気象の原因になることから、数千kmのスケールでおきることがわかります。
継続時間で見ても、エルニーニョやラニーニャは数ヶ月から数年程度継続する気象現象です。

エルニーニョやラニーニャの継続時間を覚えている人は少ないかもしれませんが、モンスーンの時間スケールが1年を超える(=同じ方向に1年以上季節風が吹き続ける)ことは原理的にありえないので、そこから②がモンスーンであるとしぼりこめます。

残った④は「地球温暖化」です。
数万km(=地球全域)の規模で発生し、継続時間も数十年から数百年のスケールであり、明らかに他の選択肢は該当しません。

正解:2

必要知識:
・モンスーンの意味(一定方向に風が吹く気象現象が数ヶ月程度続くこと)
・エルニーニョ/ラニーニャ現象、低気圧・台風、地球温暖化の意味と規模感(時間・空間スケール)のざっくりとした理解

問2 サンゴ礁とマングローブの分布

ラテンアメリカの地図を見ながら、海流の向きとサンゴ礁/マングローブの分布を答える問題です。

海流については知識の問題であり、大洋では北半球は時計回り、南半球は反時計回りで海流が流れていることを知っていれば正答できます。
細かい海流の知識は必要ありませんが、特定の海流の向きを知っていればそれを手がかりに答えることもできます。
カリフォルニア海流(左上・北太平洋):北(A)→南(B)
ペルー海流(左下・南太平洋):南(A)→北(B)
南赤道海流(右上・北大西洋):南(A)→北(B)
ブラジル海流(右下・南大西洋):北(A)→南(B)

よって、海流の向きはA→Bです。

次にサンゴ礁とマングローブの分布の地図を選ぶ問題です。
選択肢の2つの地図を見ると、どちらも赤道周辺の温暖な地域の沿岸部に分布しています。

細かい違いは複数ありますが、大きな違いの一つとして、ブラジル北東岸の分布の有無があります。
「ア」はブラジル北東岸にも分布しているのに対し、「イ」は北東岸のみ分布していません。

この違いから解答を決めるために、問題文を見直します。
問題文には、「サンゴ礁やマングローブの分布は、海水温、海水の塩分濃度、海水の濁度などの影響を受ける」とあります。
これがヒントになっています。

注目するのは、海水の濁度と塩分濃度です。
サンゴ礁は「暖かく浅くきれいな海」に生息します。
海水の濁度が高い(=にごってしまう)と共生する褐虫藻が光合成ができずにサンゴが死滅してしまいます。
一方、マングローブは河口や沿岸などで淡水(真水)と海水が混ざり合う汽水域に生息します。
河口付近では上流から多くの有機物が流れてくるため、沖合と比べて海水が濁ってしまい、淡水(真水)と混ざり合うため塩分濃度も低下します。
「ア」と「イ」の分布の違いとなるブラジル北東部は世界最大の流域面積のアマゾン川の河口が位置するため、有機物を大量に含んだ淡水が流れ込んで巨大な汽水域を形成し、海水が濁ってしまう領域も広大であると考えられます。

以上より、ブラジル北東部にも分布が広がる「ア」がマングローブであり、ブラジル北東部に分布しない「イ」がサンゴ礁であると判断できます。

<別解>
寒流の影響の受けやすさに着目した別解です。
もう一つの分布の大きな違いとしては、「ア」は西海岸にも広く分布しているのに対し、「イ」はメキシコや南米の西海岸には分布していません。
先程の海流の流れをふまえると、「イ」は寒流が流れて海水温が下がる場所では生育できないことがわかります。
ここでマングローブとサンゴ礁のどちらが、低温に強いかという話になります。
サンゴ礁とマングローブはどちらも熱帯・亜熱帯地域の暖かい場所で生育しますが、具体的に生育する場所が異なるため海流の影響の受けやすさが違います。
サンゴ礁の方が塩分濃度や透明度が高い必要があるため外海に面した場所に分布するのに対し、汽水域に生育するマングローブは入り江や河口に分布します。
そのため、外海に分布するサンゴ礁の方が寒流の影響を強く受けて冷えてしまうのに対し、マングローブが分布する入り江の汽水域では河川からの暖かい水が混ざり合うため寒流の影響を受けづらいという違いがあります。
この結果、マングローブの方がより寒い地域まで分布できます。
以上より、寒流が流れる地域にも分布している「ア」がマングローブであり、分布しない「イ」がサンゴ礁であると判断できます。

正解:1

必要知識:
・大洋における海洋の循環方向(北半球は時計回り、南半球は反時計回り)
・サンゴ礁とマングローブの生育環境の特徴と両者の違い
・大河川であるアマゾン川の河口の位置
・河口付近や入り江では沖合と比べて海水が濁っていること

問3 都市別の気温分布

4都市の月別・時間別の気温分布を見て、都市の組み合わせを答える問題です。
横軸に12か月、縦軸に24時間の平均気温の分布と取り、同じ気温の場所を等高線で結んでいます。
「+」が最大、「ー」が最低を表します。
左上が東京であり、残り3地点はオーストラリアのパース、ロシアのヤクーツク、ボリビアのラパスのうちのどれかです。

ここで、オーストラリアとロシアについては解答にあたって細かい都市名は不要なので、以後オーストラリア、ロシアとします。
もっと言えば、オーストラリアは南半球、ロシアは北半球に位置していることさえわかればよいです。

ボリビアのラパスはアンデス山脈に位置する高山気候の代表的な都市です。
一応南半球に位置していますが、低緯度であるため高山気候の気候の特徴により年間通して温暖で季節による気温変動が小さいです。

以上をふまえてグラフを見ると、「ク」は7月の14時頃に気温が最大となり、逆に1月に最小となるので、明らかに北半球です。
よって「ク」はロシアです。
次に、「カ」は2月の14時頃に気温が最大となり、8月の深夜~朝にかけて最小となるので、明らかに南半球です。
よって「カ」はオーストラリアです。

ここまでで正答が②であるとがわかります。

一応、「キ」についても見ると、等高線が横に伸びており、6-10時頃、18-22時頃の気温が年間通してほとんど変わりません。
年間通した気温の最大が7月の14時頃である一方、最小も同じ7月の深夜~朝となり、季節性が見られません。
これは年間通して気温差が小さい低緯度地域(主に熱帯)の特徴です。
そのため、低緯度地域に位置するラパスにもあてはまります。
ラパスは高山気候で気温自体は熱帯よりも低いですが、年間の気温差が小さいという特徴は共通しています。
よって「キ」はラパスです。

正解:2

必要知識:
・オーストラリアが南半球、ロシアが北半球に位置すること
・ボリビアが南半球の低緯度に位置する都市であること

問4 火山と熱帯低気圧の分布

火山と熱帯低気圧による災害が発生する地域を地図から選ぶ問題です。
説明文より、Jは火山、Kは熱帯低気圧です。

まず火山の分布ですが、主に環太平洋造山帯、アフリカ大地溝帯、イタリア半島などに分布します。
その他は、アイスランド島やハワイ諸島、西インド諸島などの「島」に分布する場合が多いです。
逆に大陸部は安定陸塊であることが多いので、上記例外を除いて火山は少ないです。

選択肢の中では、①西インド諸島と⑤イタリア半島が該当します。
特に西インド諸島は日本列島と同じ弧状列島であり、島が円を描くように並んでいる形から弧状列島=火山が多いということがわかります。

次に熱帯低気圧の分布ですが、海水温が高い低緯度地域の海上で発生します。
熱帯低気圧は海水が温められて上昇気流が発生して雲を作ることで発生するため、低緯度地域であっても寒流が流れる場所では発生しません。
そのため、寒流が流れる④西アフリカ沿岸部(サハラ砂漠)や⑤アフリカ大陸南西岸(ナミブ砂漠)では発生しません。
④や⑤は沿岸部まで砂漠が広がっているのですが、仮に④や⑤で熱帯低気圧が発生するならまとまった雨があるので砂漠にはなりません。

一方、①西インド諸島ではハリケーンが発生します。
2005年8月にアメリカ合衆国南東部を襲ったハリケーン「カトリーナ」などが有名です。

⑤イタリア半島は内海である地中海に面しているものの、その周囲を大陸で囲まれているため、熱帯低気圧は発生しづらいです。
②ブラジル南東部は複雑なので無視してよいです。
南大西洋ではアフリカ西岸を北上するベンゲラ海流の影響でブラジル沿岸まで海水温が低下し、熱帯低気圧が発生しづらい例外的な海域となっています。

以上より、火山(J)と熱帯低気圧(K)両方の影響を受けるのは①西インド諸島であり、火山(J)のみの影響を受けるのは⑤イタリア半島です。

正解:
JとK両方:1
Jのみ:5

必要知識:
・火山の分布(イタリア半島、弧状列島)
・カリブ海で熱帯低気圧が発生すること

問5 地震の震源の深さ分布

日本列島周辺の地震の震源の深さの分布を答える問題です。
この問題を解くためには、日本付近のプレートの境界の分布を頭に入れておく必要があります(次の図を参照)。
大陸プレートと海洋プレートの境界には、海溝またはトラフ(浅い海溝)が分布しています。

日本付近の海溝とプレートの分布。出典:Wikimedia Commons, ©気象庁, CC BY 4.0, 2024/7/20閲覧

地震はプレートの境界で発生します。
特に大陸プレートと海洋プレートの境界では、海洋プレートが大陸プレートの下に潜り込むため、海洋→大陸プレート方向に向かって斜め下方向へ震源が分布します。
実際、「タ」「チ」「ツ」いずれも、震源の分布は東から西に向かって深くなるように分布しています。
特に「タ」では、このような境界が2箇所存在していることがわかります。
日本付近の海溝の分布とP, Q, Rの場所を元に考えると「タ」はRであることがわかります。
地図上の位置から、Rは南西諸島海溝と伊豆・小笠原海溝の2つを含んでいます。

次に「チ」と「ツ」の違いを見ると、震源の分布は「チ」では海溝とそこから斜め下方向へ伸びるプレートの境界付近のみであるのに対し、「ツ」は海溝から離れた場所でも震源の浅い地震が多数発生しています。
「ツ」の震源が浅い地震は内陸型地震(直下型地震)の特徴であり、日本では兵庫県南部地震(1995年、阪神・淡路大震災)や熊本地震(2016年)など全国で発生しています。
このため、日本列島の陸地を切り取る形になっているQが「ツ」に対応します。
残りの「チ」がPに対応します。

正解:5

必要知識:
・日本付近のプレートの境界と海溝の分布
・海溝型地震と内陸型地震(直下型地震)の震源域の分布の違い

問6 都市化と河川の水位変化

都市化による地表の変化とそれに伴う河川水位の変化の組み合わせを答える問題です。

グラフでは短期間の豪雨の際に河川水位のパターンとしてXとYがあります。
Xは豪雨の際に急激に水位が上昇し、その後急速に水位が低下します。
一方、YはXよりも水位の上昇がゆるやかであり、その後も長い時間をかけてゆっくりと水位が戻っていきます。

このような水位の変化の違いから次のようなことが想定できます。
・Yでは降った雨を吸収できるを吸収する樹木(地中に広がる根)や(緑に覆われた)地面が広がるため、豪雨直後に河川へ流れ込む水量が少ない
・Xはコンクリートに覆われているため地面や植物に水が吸収されずにすぐに河川に流れ込む

よって「マ」はY→Xであり、「ミ」に当てはまるのはn(森林や田畑が減少し、地表面が舗装された)です。

正解:4

必要知識:
・都市化による土地利用形態の変化(緑地面積の変化)
・地表面の状態の違いによる河川水位の変化

他の設問

地理B 2023年 本試験 |第1問|第2問第3問第4問第5問

-過去問解説