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【共通テスト解説】2023年 地理B 本試験 第4問

大学入試共通テスト(2023年 地理B 本試験 第4問)の解説ページです。

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問題と解答

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リンク切れ対策のため複数サイトへリンクを貼っていますが、いずれも同一です。

入試速報トップ:東進朝日新聞
問題:東進朝日新聞
解答:東進朝日新聞

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過去問サイト:日本の学校中日進学ナビ

解説

第4問はインドと中国に関する設問です。

問1 土地利用

インドと中国の4箇所の土地利用形態が表で示され、C(中国南部内陸部)の土地利用比率を選ぶ問題です。
4地点は、A(中国北東部内陸部)、B(中国西部・ヒマラヤ山脈北側)、C(中国南部内陸部)、D(インド南部内陸部)です。

土地利用の形態は、耕地、草地・裸地、森林、その他の4種類です。
草地は要するに牧草地や草原であり、樹木が生育できない場所のことです。
裸地は地表に草木が生えていない場所で、要するに砂漠のような場所です。

選択肢の特徴は以下の通りです。
①:耕地の割合が96%
②:耕地50%、草地・裸地45%
③:森林72%
④:草地・裸地88%

わかりやすいものから考えると、草地・裸地の割合が高い場所(②④)と低い場所(①③)に分けられます。
これは、「乾燥しているため草原が広がる地域」と「湿潤で森林や耕地に利用される地域」の違いと考えられます。

A-Dの各地点の地理的な特徴を確認します。
地点Aは中国北部・内陸部に位置し、中国北部は南部より乾燥している傾向にあります。
地点Bは中国西部・ヒマラヤ山脈の北側に位置し、海から遠いため乾燥しています。
地点Cは中国南部・内陸部に位置し、中国南部は北部より雨が多い傾向にあります。
地点Dはインド南部・内陸部に位置し、インド南部ではモンスーン(季節風)の影響により雨季と乾季があり、一定量の雨が降る気候です。
また、

以上よりA-Dの地点のうち、草地・裸地の割合が高い②④がAとB、低い①③がCとDに対応します。

次に①③のうちどちらがCかを判断します。
①は大部分が耕地であるのに対し、③は森林が大半を占めます。
地点CとDの立地を改めて比較すると、Dはデカン高原に位置しているため、農業に適した土壌であるレグールが広がります。
このため、Dは耕地として利用されている割合が高いと考えられます。
よって、Dが①です。

残った③がCです。
Cは中国南部に位置するため雨が多く、森林が発達していると考えられます。

正解:3

必要知識:
・中国北部は乾燥、中国南部は湿潤
・中国西部(チベット高原)はヒマラヤ山脈の雨陰となり乾燥
・乾燥した地域では草地(牧草地・草原など)や裸地(砂漠など)の割合が高い
・インド南部内陸部のデカン高原で農業(綿花栽培)が盛んであること

問2 小麦と米の作付面積割合

インドと中国の行政区別の小麦と米の作付面積割合を示した統計地図を読み、階級別の凡例と作付面積割合の組み合わせを選ぶ問題です。
注釈より、インドは州別、中国は省別になっています。

はじめに、凡例を確認します。
ア:米の割合が高く、小麦の割合が低い
イ:米、小麦ともに割合が高い
ウ:小麦の割合が高く、米の割合が低い
d:米、小麦ともに割合が低い

次に統計地図中のa-dの分布を確認します。
a:中国東部沿岸付近(華中)とインド北部(ヒンドスタン平原)
b:中国南部一帯(華南)とインド東海岸
c:中国北部(華北)・内陸部とインド北部の内陸部(ヒンドスタン平原以外)
d:中国では内モンゴルやチベット、インドでは西海岸~パキスタン国境

わかりやすいのは、米の割合が高い「ア」と小麦の割合が高い「ウ」です。
米は水稲栽培のために雨が多い気候である必要がありますが、小麦は畑で栽培するため米よりも乾燥に強いです。
中国では南部が雨が多く、北部は雨が少ないです。
インドではモンスーン(季節風)の影響で東海岸で雨が多く、内陸部のヒンドスタン平原では相対的に雨が少ないです。
以上より、米の割合が高い「ア」が b:中国南部一帯とインド東海岸であり、小麦の割合が高い「ウ」が c:中国北部・内陸部とインド北部の内陸部です。
残った「イ」がaに対応します。

中国とインドのどちらかで米と小麦の栽培地域の分布を知っていれば正答できます。

正解:3

必要知識:
・中国やインドの米と小麦栽培地域(気候との関係)

問3 経済と出生率

1人あたりの総生産と出生率の関係を示したグラフを元にした文章のうち、適当でないものを選ぶ問題です。

①「1人当たり総生産が高い地域では、出生率が低いという傾向が見られる」
2001, 2018年ともに右肩下がりのグラフになっています。
→正しい

②「インドよりも中国の方が大きくなった」
中国/インドそれぞれについて、1人あたりの総生産の行政区ごとのばらつきを確認します。
2001年にはインドも中国も行政区による差はあまりありませんでしたが、2018年には行政区ごとのばらつきが拡大し、特に中国は最低が5千ドル、最高が20千ドル超であり、インドよりも行政区間の差が大きくなっています。
→正しい

③「政府主導の家族計画が浸透し、農村部を中心に出生率が大きく低下した」
インドでは家族計画運動などの人口抑制政策を実施していますが、出生率は未だに高く人口は増え続けています。
そのため、誤りであると考えられます。

また、経済成長に伴う出生率の低下は、通常はより豊かな都市部から進みます。
特に、農村部では子供は農作業の労働力として重要な存在です。
「農村部を中心に」出生率が低下したというのは、特別な理由がない限り考えづらいです。
→誤り

④「沿岸部と内陸部の経済格差が大きくなっている」
中国では文化大革命終了後の1979年以降、資本主義経済を導入する改革開放政策が行われました。
その際、経済特区などの外国企業が進出した地域は沿岸部に偏り、その後の発展も沿岸部中心でした。
その結果、沿岸部と内陸部の経済格差が大きくなっています。
→正しい

①と②はグラフの読み取りで正しいことがわかるため、③と④どちらかの正誤判定ができれば正答をしぼりこめます。

正解:3

必要知識:
・インドの人口が増え続けていること
・中国における沿岸部と内陸部の経済格差

問4 産業別GDP割合

2000年と2017年の国別(インド/中国)・産業別のGDP割合を見て、「インド」と「運輸・通信業」の組み合わせを選ぶ問題です。

まず産業別GDP割合の2000年から2017年の推移に着目します。
J, Kいずれもサービス業の割合が増加し、「サ」は逆に両方で減少しています。
「シ」はKでは減少していますが、Jではむしろ増加しています。
「サ」「シ」の選択肢は、運輸・通信業と農林水産業であり、通信業に成長産業であるIT産業が含まれることをふまえると、両方で割合が減少しているのは農林水産業であるとわかります。
実際、農林水産業は工業化が進むに従ってGDPに占める割合が下がる産業です。
よって、運輸・通信業は「シ」です。

次にJとKのどちらがインドかを考えます。
J, Kの鉱・工業の割合を見ると、Jは割合が低く、Kは高比率です。

中国は1990年代に外国資本を導入し、国内の安価な労働力を利用して低コストで工業製品を製造して世界へ輸出したことから、世界の工場とよばれていました。
また、中国は国内に数多くの鉱山が存在しています。
以上のことから、中国はインドよりも鉱・工業のGDP比率が高いと考えられます。
よって鉱・工業のGDP比率が高いKが中国、低いJがインドです。

正解:2

必要知識:
・経済発展に伴う産業構造の変化
・1990年代に中国で工業生産・輸出が急増したこと

問5 輸出額と移民の送出数

インド、中国、オーストラリアの3か国間の輸出額と移民の送出数の組み合わせを見て、中国と輸出額の組み合わせを答える問題です。

まず輸出額と移民の送出数の判別です。
インドや中国は10億人を超える膨大な人口を有するのに対し、オーストラリアの人口は2000万人超に過ぎません。
さらにインドや中国が新興国であるのに対し、オーストラリアは経済的に発展した先進国です。
そのため、オーストラリアからの移民数は必然的に少なくなり、逆にオーストラリアへの移民数は多くなるはずです。
そのため、オーストラリアから太い矢印が一切出ていないPが移民の送出数であり、オーストラリアからも太い矢印が出ているQが輸出額であると考えられます。

次にインドと中国の判別です。
「タ」と「チ」を比較すると、「チ」の方がオーストラリアとの貿易額大きく、特にオーストラリアからの輸出額が大きくなっています。
オーストラリアの主要輸出品目は鉄鉱石や石炭であり、中国は国内需要の大きさからオーストラリアの鉄鉱石や石炭を大量に輸入しています。
そのため、「チ」が中国であり、残った「タ」がインドです。

正解:4

必要知識:
・インド、中国、オーストラリアの人口規模感、先進国か否か
・中国はオーストラリアから石炭や鉄鉱石を輸入し、貿易額が大きいこと

問6 気候と環境問題

1月と7月のPM2,5の濃度分布を見て季節を選ぶ問題と、文章中の空欄にあてはまる環境問題を選ぶ問題です。

まずPM2.5の濃度分布ですが、Sは中国内陸部~シベリアで濃度が低いのに対し、Tは内陸部でも見られます。
この違いの原因として、中国では冬は北西からの季節風の影響でPM2.5が風下の海側に流されるのに対し、夏は南東からの季節風の影響で内陸部までPM2.5の濃度が高くなるためと考えられます。
よって、Sが1月です。

次に原因物質が複数国にまたがる環境問題の例を選ぶ問題です。
選択肢は、海洋ごみの漂着と土壌の塩性化です。
土壌は基本的に動かない(風で塩分が周囲に撒き散らされる程度の規模感)ので、海流の流れにのって数百から数千kmの遠方まで流れてしまう海洋ごみの漂着の方が適切です。

正解:1

必要知識:
・中国付近の夏と冬の季節風の方向

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