大学入試共通テスト(2023年 地理B 本試験 第5問)の解説ページです。
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目次
問題と解答
共通テスト(2023年 地理B 本試験)の問題と解答のリンクです。
問題文のPDFは下記リンク先から入手し、図表や問題文を手元に置きながら解説(次項)を見て下さい。
リンク切れ対策のため複数サイトへリンクを貼っていますが、いずれも同一です。
入試速報トップ:東進|朝日新聞|
問題:東進|朝日新聞|
解答:東進|朝日新聞|
試験日(2023年)から年数が経過している場合はリンク切れの可能性が高いため、下記サイトを利用して下さい。
解説
第5問は地域調査(利根川流域)に関する設問です。
問1 河川流域と標高差の判定
利根川の流域にあたる場所をあてる問題と標高差を計算する問題です。
まず流域判定ですが、A, B, Cの3地点ともに川が流れているので、その川筋をたどって利根川に合流するかを確認すればよいです。
B, Cは途中で利根川に合流するのに対し、Aはそのまま東京湾に流れます。
よってB, Cが利根川流域です。
次に取手と佐原の標高差です。
文章中に取手ー佐原間の河川勾配が1万分の1(1万m進むと1m標高が下がる)とあるので、両地点間の距離がわかれば計算できます。
地図の右下に距離の縮尺があるため、それを目分量で取手ー佐原間にあてはめると、だいたい40km程度です。
河川勾配が1万分の1なので、40km=4万m進むと4mほど標高が下がることがわかります。
以上より、取手と佐原の標高差は4mです。
正解:5
必要知識:
・河川勾配の意味
問2 陰影図と土地利用
陰影図を元に土地利用の割合を選ぶ問題です。
陰影図で選択肢の4か所を確認すると、EとFは河や湖に近い平地であるのに対し、GとHは川から離れた起伏のある地形のようです。
また、Fは鉄道が通り市役所もあるため市街地を含んでいるようです。
以上をふまえて土地利用の割合を見ます。
②を見ると、他の選択肢と比較して建物用地の割合が非常に高いです。
この時点でE-Hの中で唯一市街地を含むFが②であることがわかります。
また、田んぼの割合が比較的高く、畑の割合が比較的低いことも河川が近い平地であることに合致しています。
ちなみに、田んぼの割合は①(E)より低いですが、これは市街地を含むため田んぼの割合が減っていると考えられます。
正解:2
必要知識:なし
問3 地形図と主題図の読み解き
地形図や主題図を読図し、文章中の空欄にあてはまるものを答える問題です。
まずJですが、1931年の地図を見てa, b両地点のどちらが古くから中心地として発展していたのかを選びます。
1931年の地図上で色が濃いエリアが市街地であり、bは市街地の中心に位置するのに対し、aは市街地の外れに位置します。
よって、古くから中心地として発展していたのはbです。
次にKは、1932年と1981年の利根川にかかる橋と渡船の分布図から、1981年の利根川にかかる橋の分布を選ぶ問題です。
会話文中で「1932年に橋が架かっていた地点は、川幅が比較的狭い場所に限られていた」とあります。
これを手がかかりに1932年の橋の分布を考えます。
川幅が広い河口付近に分布がある「サ」「シ」は不適切であり、上流にしか分布していない「ス」が1932年の橋の分布であると考えられます。
次に想定するのは、1932年の地点ですでに橋が架かっていた場所は、1981年でも橋が存在すると考えられることです。
利根川のような大河川に橋を架けるのは大事業であり、橋を簡単に壊すことなどできませんし、綿密に事前準備した上で最適な場所に設置するため、架けかえをするにしても同じ場所にかけるはずです。
このようなことを意識して「サ」~「ス」を眺めると、「ス」の2箇所のと全く同じ位置に「シ」でも位置しています。
このため、「シ」が1981年の橋であると考えられます。
よってKは「シ」です。
正解:5
必要知識:なし
問4 水害とその対策
水門の位置と水害対策の取り組みの組み合わせを選ぶ問題です。
まず水門の位置ですが、会話文中で「利根川の支流への逆流」を防ぐため「水門を設置」したとあります。
このため、利根川の支流が本流に合流する直前の場所である「チ」が適切です。
支流をある程度さかのぼった「タ」の位置に水門を設置しても、その南側は水害にあってしまいます。
次に水害対策の取り組みです。
会話文中の「洪水に備えるための取り組み」として、fの「決壊を防ぐため、堤防を補強する」が適切です。
gの「土砂の流出や流木を防ぐため」というのは洪水に備えるための取り組みになっておらず不適切です。
また、土砂の流出を防ぐためのダム建設は河川の侵食作用が強い上流域の話であり、堆積作用が強い下流域で土砂流出を防ぐのはおかしいです。
正解:3
必要知識:なし
問5 うなぎの養殖
うなぎの養殖に関する資料と写真を読み解き、合致するものを選ぶ問題です。
はじめに、「国内の養殖生産量」と「国外からの輸入量」について、選択肢の「マ」「ミ」の推移を確認します。
「マ」は1973年の15,000トンから1985年の約40,000トンまで増加し、その後減少して20,000トン程度に落ち着いています。
一方、「ミ」は1973年には約7,000トン程度でしたが急増して2000年には130,000トンまで増加し、その後減少して2015年には30,000トンまで落ちています。
「マ」は40年で最大でも2-3倍程度の変動であるのに対し、「ミ」は20倍も変動しています。
「国内の養殖生産量」と「国外からの輸入量」のどちらが柔軟に量を増減できるかを考えると、変動が大きい「ミ」は「国外からの輸入量」であると考えられます。
よって、残った「マ」が「国内の養殖生産量」です。
ちなみに、2000年から2015年にかけて「ミ」の輸入量が急減しているのは、2007年にうなぎの一種であるヨーロッパウナギが絶滅危惧種に指定されて国際的な取引が規制されたためです。
2000年の輸入量の多さは中国で養殖したヨーロッパウナギが主要因なので、規制後の2015年には急激に輸入量が落ち込んでいるわけです。
次に、利根川下流域の水産資源を回復させるための取り組みの写真を選びます。
資料2の文章中で「ニホンウナギや川魚などの水産資源の回復に寄与することが期待」とあるので、川に生息する魚にとってプラスになる設備を選べば良いです。
sは「石材を用いて整備された護岸」であり、地面が人工物に覆われてしまうため魚にとってメリットはありません。
一方、tは「本流の堰のそばに設置された流路」です。
「堰(せき)」というのは聞き慣れない単語ですが、川の水をせき止めて河川水位を調整するために作る人工構造物で、川を横断するように建設します。
堰を設置すると魚の回遊の妨げになりますが、そばに流路を設置することで魚が堰を迂回して移動することができます。
堰の意味がわからなくても、sが明らかに魚にメリットがなく、tの「流路」は魚が使えそうなのでメリットがありそうだと判断できれば正答できます。
正解:2
必要知識:
・国内生産量よりも輸入量の方が短期間で柔軟に調整可能であること
・中国でのヨーロッパウナギの養殖の増加とその後の絶滅危惧種指定による輸入量減少
問6 課題と調査方法
課題に対する調査方法として不適切なものを選ぶ問題です。
① 課題:農地の分布の変化 調査方法:各年代の空中写真から土地利用図を作成
② 課題:橋の開通による住民の行動の変化 調査方法:聞き取り調査により周辺住民に生活行動変化を尋ねる
③ 課題:防災施設整備による住民の防災意識変化 調査方法:防災施設から一定距離内の人口変化を調べる
④ 課題:環境変化による漁獲量変化 調査方法:漁獲量の推移を調べる
③のみ課題と調査方法がかみあっていません。
人口を調べても住民の防災意識の変化はわかりません。
人口の変化には様々な要因がからむため、人口の変化をもって防災意識を論じるのは不適切です。
正解:3
必要知識:なし