大規模なイベント開催時に訪問客がどのような動きをするかというのは、交通や観光などの業界にとっては非常に重要です。
ここでは、乗換案内サービスで有名なNAVITIME(ナビタイム)による訪日外国人万博来訪者の動きに関する分析結果を紹介します。
万博来訪インバウンド客の動向

乗換案内サービスを展開しているNAVITIME(ナビタイム)は、アプリユーザーの利用状況を分析したプレスリリースをしばしば出しています。
今回は、大阪・関西万博の会場を訪問した訪日外国人(インバウンド)観光客の滞在来訪動向について分析した以下のプレスリリースについてみていきます。
訪日外国人旅行者の大阪・関西万博の滞在・来訪動向を分析 株式会社ナビタイムジャパン 2025/7/13閲覧
万博会場の時間帯分析
万博会場の夢洲(ゆめしま)の時間帯(時台)別の滞在状況を見ると、入場が開始する9時台から午前中にかけて急増し、17時台まで高位で推移し、閉場時間の22時にかけて急減していきます。
この結果は当然のものですが、面白いのは14時台から16時台にかけて滞在人数が若干減少していき、17時台に突然盛り返している点です。
これは、万博に17時以降入場できる安価な夜間券が発売されているため、17時台に夜間券利用者がまとまった入場があるためです。
日本人だけではなく、訪日外国人でも安価な夜間券が利用されている点がデータからもわかります。
国別パビリオン来訪状況
訪日外国人を国別に分けて、万博会場でどのパビリオンを多く訪れたかを可視化しています。
プレスリリースには、タイ、米国、フランスの3か国を紹介しています。
各国の来訪が多いパビリオンは以下の通りです。
タイ
・日本館
・タイパビリオン
・よしもと waraii myraii館
・GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION
・リングサイドマーケットプレイス西
米国
・日本館
・コモンズ-A館
・UAEパビリオン
・静けさの森
・よしもと waraii myraii館
・GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION
・リングサイドマーケットプレイス西
フランス
・日本館
・フランスパビリオン
・よしもと waraii myraii館
・GUNDAM NEXT FUTURE PAVILION
・リングサイドマーケットプレイス西
訪問が多い場所は3か国でほぼ共通しています(米国が比較的ばらけている)。
開催国である日本館と日本ならではのパビリオン(よしもと、ガンダム)、自国パビリオン、フードコート(リングサイドマーケットプレイス西)です。
訪日外国人の関心として、わざわざ日本に来たので日本らしいパビリオン、当然自国のパビリオン、そして食事のためのフードコートといったものが浮かび上がります。
これもある意味当然の結果です。
むしろアメリカ人がばらけているのが気になります。
移民主体の多民族国家で、アメリカ人といってもルーツがばらばらなので関心もばらけているのかもしれません(例:中国系アメリカ人は中国のパビリオンに関心があるなど)。
開幕前後の駅の利用増加率ランキング

次の表は、NAVITIMEのプレスリリースに掲載されている万博開幕前後で利用が増えた駅TOP3です。
表 全国駅 利用増加率ランキング TOP3(2025年3月14日~4月12日と2025年4月13日~5月12日を比較)
出典:訪日外国人旅行者の大阪・関西万博の滞在・来訪動向を分析 株式会社ナビタイムジャパン 2025/7/13閲覧
順位 | 駅名称 | 増加率 |
1 | 夢洲 | 42.80倍 |
2 | 弘前 | 9.73 |
3 | 盛岡 | 4.65 |
この表を見ると、万博会場のOsaka Metro中央線の夢洲駅が42.80倍と圧倒的です。
出典では増加率と書きながら単位を「倍」としているので、おそらく開幕前期間を1とした倍率(正確には増加倍率)であると思われます。
弘前や盛岡で増加しているのは、たまたま調査期間(万博開幕後期間)が桜の開花時期に合致したため、訪日外国人が花見に行く途中で通る駅がTOP3に出現したようです。
これは桜の花見が訪日外国人にとっても魅力あるコンテンツであることを示す興味深い数字ではありますが、万博効果を見るという観点では、万博会場から遠い北東北のエリアはそもそも分析対象から除外しておくべきでしょう。
ちなみに、万博へのアクセス経路として非予約制のシャトルバスが発着するJR桜島線(ゆめ咲線)の桜島駅はTOP3から漏れており、訪日外国人の利用はそこまで多くないようです。
万博来訪者の県間流動
万博会場に来た訪日外国人の周遊について、都道府県別でどこへ行ったのかの分析も行われています(アジア、米国、欧州の3地域別)。
どの地域も京都府、奈良県との3県間の相互流動が大きく、訪日外国人が関西で周遊する定番です。
他にも、東京都や厳島神社がある広島県への流動も強く、東京・関西(+広島)のゴールデンルートに乗った流動が多いようです。
地域別の特徴を見ると欧州が特徴的で、石川県金沢市と岐阜県高山市への流動もあります。
こちらもゴールデンルートからは外れますが訪日外国人の定番観光地がある場所です。
このため、万博に来た訪日外国人もやはり定番を巡る旅行の中に万博訪問を組み込んでいることがわかります。
周遊スポット
最後に、万博会場に来た訪日外国人の周遊スポットのランキングTOP10を紹介しています。
表 大阪・関西万博とあわせて滞在したスポットランキング TOP10
出典:訪日外国人旅行者の大阪・関西万博の滞在・来訪動向を分析 株式会社ナビタイムジャパン 2025/7/13閲覧
順位 | スポット名称 | 都道府県 | 市区町村 |
1 | 奈良公園 | 奈良県 | 奈良市 |
2 | ユニバーサル・スタジオ・ジャパン | 大阪府 | 大阪市此花区 |
3 | 大阪城天守閣 | 大阪府 | 大阪市中央区 |
4 | 清水寺 | 京都府 | 京都市東山区 |
5 | 伏見稲荷大社 | 京都府 | 京都市伏見区 |
6 | Nintendo OSAKA(ニンテンドーオーサカ) | 大阪府 | 大阪市北区 |
7 | 大丸心斎橋店 | 大阪府 | 大阪市中央区 |
8 | 鹿苑寺(金閣寺) | 京都府 | 京都市北区 |
9 | ヨドバシカメラマルチメディア梅田 | 大阪府 | 大阪市北区 |
10 | 梅田スカイビル・空中庭園展望台 | 大阪府 | 大阪市北区 |
地理的には、大阪市内、京都市内、奈良市内の3市でTOP10を占めています。
万博開催地の大阪市は当然会場から近いので多くの人が訪れているはずです。
特に京都や奈良は伝統的な観光名所のみであるのに対し、大阪市は百貨店などの商業施設もランクインしています。
大阪市内だと、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)は万博会場からの近さで周遊場所に選ばれている可能性もあります(USJは万博会場へ向かうバスが発着するJRゆめ咲線桜島駅の1駅手前のユニバーサルシティ駅の前に所在)。
大阪と京都・奈良の違いは、万博会場所在地か否かという違いも考えられますが、どちらかというと都市の特色の違い(歴史的名所が主体の京都・奈良に対して商業施設や現代的な観光地が主体の大阪)の影響が大きく表れているように思われます。
参考文献
訪日外国人旅行者の大阪・関西万博の滞在・来訪動向を分析 株式会社ナビタイムジャパン 2025/7/13閲覧
入場チケットの種類・価格 公益社団法人2025年日本国際博覧会協会 2025/7/13閲覧