分析・考察

「車なし生活圏」と「車社会」の境界はどこだ(千葉県編)

2022年11月15日

このページでは、マイカー不要の「車なし生活圏」とみんながマイカーを持つ「車社会」の境界がどこにあるかの結果をまとめています。
今回は千葉都の市区町村についてみていきます。

【他県の結果を見る:全体埼玉県東京都・千葉県・神奈川県

「車なし生活圏」と「車社会」の境界

マイカーなしで生活できる限界を調べるために、市区町村別に自家用車の世帯平均保有台数を集計しました。
平均して1家に1台以上車を持っている町を「車社会」、1台未満の町を「車なし生活圏」としました。

市区町村別世帯平均保有台数

次の図は、マイカーの市区町村別世帯平均保有台数です。
赤系の色はマイカー保有台数が1台未満の「車なし生活圏」、青系の色は「車社会」です。
赤色が濃いほどみんなが車を持っていない町で、逆に青色が濃いほど車を持っているのが当たり前の町です。

市区町村別世帯平均自家用車保有台数(千葉県、2022年)。赤色が濃いほど保有台数が少なく、青色が濃いほど保有台数が多い。

千葉県では東京に隣接する北西部でマイカー保有台数が少ない「車なし生活圏」で、それ以外の大部分の地域は「車社会」です。

千葉県は面積が大きいこともあり、「車なし生活圏」のエリアが小さく見えます。

鉄道路線追加

次に他県の場合と同様に、鉄道路線を白線で追加しました。

市区町村別世帯平均自家用車保有台数(千葉県、2022年)。白線は鉄道路線である。

北西部のマイカー保有台数が少ない地域は鉄道路線が密に張り巡らされていますが、全域に鉄道路線が広がっています。
大部分の町に鉄道が通っているため、鉄道路線の有無とマイカー保有台数の関係はわかりにくくなっています。
鉄道が通らない町も少数ありますが、周囲の町との違いはあいまいです。

北西部拡大

「車なし生活圏」と「車社会」の境界を細かく見るために、北西部を拡大して市町村名を追加しました。

市区町村別世帯平均自家用車保有台数(千葉県北西部拡大、2022年)。

マイカーの世帯平均保有台数が1を下回る「車なし生活圏」の東限は、北から順に我孫子市、鎌ケ谷市、八千代市、千葉市中央区という結果になりました。

千葉県の特徴としては、「車なし生活圏」と「車社会」の境界がかなり西よりに位置しているように見えることです。
これは、千葉県が大きいためそう見えている部分もあります。
「車なし生活圏」の東限の町はいずれも都心からの距離はおおむね30 km程度で、これは他県と同じです。

特に、千葉市は政令指定都市ですが、千葉市東部の若葉区や緑区はマイカー保有台数が1.0を越える「車社会」です。
「車なし生活圏」と「車社会」の境界が千葉市の中心部に近く、千葉市中心部の中央区が境界の町になっています。

他の政令指定都市と比較すると、横浜・川崎には「車社会」の区は存在せず、さいたま市はあとから合併した郊外の岩槻区のみが車社会です。
千葉市のように中心市街地のある区が「車なし生活圏」の端に位置しているのは異例です。

また、西部の白井や印西は、都心に直結する鉄道路線が通っているにも関わらず、「車社会」です。
白井や印西のマイカー保有台数が多いのは、駅周辺が他の郊外エリアと比べて発展しておらず、生活にマイカーを必要とする人が多いためと考えられます。

白井や印西は元々農村が広がっていましたが、千葉ニュータウンの開発に伴い発展しました。
しかし、バブル崩壊や成田空港闘争に起因する千葉県収容委員会の機能停止のあおりを受けて開発計画は縮小しました。
当初計画で人口34万の予定が実際には10万人にとどまり、開発エリアは点在しているため、公共交通機関が不十分でマイカー保有台数が増えていると考えられます。

車なし生活圏とイトーヨーカドーの店舗分布

「車なし生活圏」の分布は、おおむねイトーヨーカドーの店舗分布に合致します。

次の地図では、Google Mapで南関東のイトーヨーカドー店舗にピンを立てています。
出典:店舗を探す イトーヨーカドー 2022/11/12閲覧
※出典に記載の店舗について作成

千葉県の場合、千葉市周辺の例外を除いて「車なし生活圏」とイトーヨーカドーの店舗分布は一致しています。

例外の千葉市周辺では、ギリギリ車社会の四街道市と市原市に店舗が分布しています。
これらの店舗はいずも駅から500m圏内に立地しているため、駅近辺に限れば「車なし生活圏」であると考えられます。

今回は統計データの関係で市区町村単位の集計なので、駅近辺だけにしぼれば「車なし生活圏」は実際にはもう少し郊外に広がるため、これらの店舗のも「車なし生活圏」のエリアであると推察できます。

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参考文献

千葉ニュータウン ウィキペディア 2022/11/12閲覧
田嶋 玲奈他「千葉ニュータウン開発の変遷と非居住施設の出現プロセスJ. Archit. Plann., AIJ 84(758) 871-881 (2019)

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