地形 系統地理

地震の分布(プレート境界・ホットスポット)

日本では各地でたびたび発生する地震ですが、世界的には地震の発生場所は限られています。
このページでは地震の発生場所の分布について解説します。

地震の震源の分布

世界の地震分布(1963-1998年)。地震が発生する場所はプレート境界付近に限られ、境界から離れた場所で地震が発生することは少ない。特に狭まる境界(収束境界)周辺では地震の発生回数が多く、多数の点が重なって非常に太い帯状に震源が分布している。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2025/1/11閲覧

上の世界地図は、世界で発生した地震の震源を黒点でプロットしたものです。
地震が発生する場所には偏りがあり、上図でも黒点が線状に分布しています。
これはプレート境界であり、地震はプレート境界付近に集中して発生します。
さらに、同じプレート境界であっても地震の発生頻度や分布にも違いがあります。
特に環太平洋造山帯に位置する太平洋沿岸部(南米大陸西岸アラスカ(米国)~日本~インドネシア~ニュージーランド)では地震の発生回数が非常に多い上にプレート境界からやや離れた場所でも発生するため、黒点が非常に太い線になっています。
これらの地域はプレート境界の中でも沈み込み帯(海洋上の狭まる境界)であり、海溝型地震をはじめ巨大地震がたびたび発生してきました。

下の地図は、マグニチュード5以上に限定した地震の分布(緑点)とプレート境界を示した世界地図です。
先ほどの地図とは異なり大きな地震に限定しているため、広がる境界(大西洋上など)やアルプス=ヒマラヤ造山帯上(ユーラシアプレートの南側境界)の点の数が少なくなっています。
一方、環太平洋造山帯に位置する太平洋沿岸部(太平洋プレートの境界)では、変わらず地震の発生回数が非常に多いです。
これは、沈み込み帯(海洋上の狭まる境界)である環太平洋造山帯では、他のプレート境界(衝突帯や広がる境界)よりも巨大地震が頻繁に発生することを意味しています。

世界の地震分布とプレート境界(1998-2007年、マグニチュード5以上、震源の深さ100km未満)。赤線は広がる境界、青線が狭まる境界、黄色線がずれる境界、緑色が地震の震源を示す。プレート境界で地震が多発しており、特に狭まる境界(環太平洋造山帯など)に集中している。プレート境界から離れた場所では地震はあまり発生しない。出典:地震がわかる! 防災担当者参考資料(解説編p26)  地震調査研究推進本部, 2024/12/20閲覧

プレート境界と地震の分布

2022年の研究に基づく世界のプレートの分布と境界。プレート境界は種類別に色分けしている。広がる境界(発散境界)は赤系、狭まる境界(収束境界)は青系、ずれる境界(すれ違う境界)はオレンジと緑色である。ソマリアプレートはアフリカプレートの一部であり、アフリカ大地溝帯を境界としてアフリカ大陸から分裂しようとしている部分である。出典を加工して作成。出典:Wikimedia Commons, ©M.Bitton, CC BY-SA 3.0, 2024/8/1閲覧

ここからは、プレート境界の種類ごとに地震の分布についてまとめます。
狭まる境界(収束境界)、ずれる境界(すれ違う境界)、広がる境界(発散境界)、ホットスポットの順に解説します。

狭まる境界と地震の分布

狭まる境界は、プレート境界の中でも特に頻繁に巨大地震が発生する場所です。
狭まる境界には、海洋プレートが大陸プレートの下にもぐりこむ沈み込み帯と大陸プレート同士がぶつかり合う衝突帯がありますが、どちらも地震の発生回数が多いです。

環太平洋造山帯の範囲。うす赤色に塗られた地域が造山帯で、赤三角は火山、青線は海溝を表す。環太平洋造山帯は太平洋プレート外縁部のプレート境界に沿って分布しており、一部を除いて沈み込み帯(海洋上の狭まる境界)が分布している。例外的にアメリカ合衆国西海岸はずれる境界(すれ違う境界)となっている。出典を加工して作成。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2024/10/19閲覧

沈み込み帯では、特に環太平洋造山帯に位置する南米大陸西岸アラスカ(米国)~日本~インドネシア~ニュージーランドで地震が頻繁に発生します。
これらの地域では、震央が太平洋沿岸部になるため津波が発生することも多く、沿岸部に大きな被害をもたらしてきました。

アルプス=ヒマラヤ造山帯に属する山脈。アルプス=ヒマラヤ造山帯はユーラシア大陸を横断する造山帯であり、西はピレネー山脈やアトラス山脈から東はインドネシアまで伸びる造山帯である。環太平洋造山帯と同様にプレート境界に位置するため周辺は地震災害は多く、イタリアやアナトリア半島(トルコ)はたびたび大地震に見舞われている。環太平洋造山帯と比較して褶曲(褶曲山脈)が多く見られる一方で火山が少なく、活火山はイタリア半島や西アジアに少数点在している。出典を加工して作成。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2024/10/18閲覧

衝突帯では、特にアルプス=ヒマラヤ造山帯に位置するヒマラヤ山脈周辺でたびたび地震が発生します。
衝突帯周辺では、プレート境界から比較的離れた場所でも地震が発生します。
たとえば、プレート境界であるヒマラヤ山脈周辺から北に離れた中国西北部でも地震が発生します。

衝突帯周辺で発生する地震は人間の居住地の近くが震源となるため、震央周辺で大きな被害をおよぼします。
また、ヒマラヤ山脈のような山岳地帯では、地震による土砂崩れによる被害や交通の寸断などの被害が発生します。

ずれる境界と地震の分布

米国西部・カリフォルニア州付近のサンアンドレアス断層の位置(赤線)とプレートの移動方向(赤矢印)。カリフォルニア州は東側の北アメリカプレートと西側の太平洋プレートの境界に位置する。サンアンドレアス断層は、2つのプレートが互いにすれ違うように動くトランスフォーム断層(ずれる境界)であり、カリフォルニア州西部~南部を1,200kmにわたって伸びている。サンアンドレアス断層周辺は断層活動の影響で地震多発地帯であり、1906年のサンフランシスコ地震をはじめ、多くの地震災害に見舞われている。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2024/9/25閲覧

ずれる境界(トランスフォーム断層)も巨大地震が繰り返し発生する場所です。
トランスフォーム断層(ずれる境界)は主に広がる境界海嶺)上に点在していますが、広がる境界周辺では地震は発生するものの、そこまで大きな地震は発生しません。
一方、広がる境界(海嶺)ではない場所に存在する大規模なトランスフォーム断層では、巨大地震が発生します。
代表的なトランスフォーム断層としては、サンアンドレアス断層(米国西部・カリフォルニア州)、北アナトリア断層(トルコ)があります。
これらのトランスフォーム断層周辺では、くりかえし巨大地震が発生しています。

広がる境界と地震の分布

広がる境界でも地震が発生しますが、狭まる境界やずれる境界と比べて小規模な地震が多いです。
特に海洋上の広がる境界海嶺)は、陸地から離れているため地震の被害も少ないです。
一方、大陸上の広がる境界が存在するアフリカ大地溝帯では、一定規模の地震(マグニチュード6程度)が発生して被害が出ることがあります。
ただし、狭まる境界周辺と比べると地震の規模(マグニチュード)は小さく、地震発生頻度も低いです。

ホットスポットと火山性地震

プレート境界とホットスポットの分布。凡例は、1:広がる境界(収束境界)、2:ずれる境界(トランスフォーム断層)、3:狭まる境界、4:プレート境界地帯、5:主要なホットスポットである。ホットスポットはプレート境界とは無関係に火山活動が行われている場所であり、プレート境界から離れた場所に位置するものが多いが、広がる境界上にも見られる。広がる境界では通常は海底火山が見られるが、ホットスポットでは局所的に火山活動が活発であるため、火山噴出物が積み重なって海面から顔を出すほどに高度が高い火山が形成される。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2024/11/21閲覧

プレート内部では地震はあまり発生しませんが、例外的にホットスポットでは地震の発生回数が多くなります。
ホットスポットの例としては、ハワイ諸島(米国)があります。
ハワイ諸島は太平洋プレートの中央部に位置していますが、地球内部から局所的にマグマが噴出するホットスポットであるため、火山性地震が発生します。
このため、ハワイ諸島周辺ではプレート内部で例外的に地震が発生します。

参考文献

地理用語研究会編「地理用語集」山川出版社(2024)
地震(ジシン)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)、改訂新版 世界大百科事典、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2024/12/2閲覧
火山性地震(カザンセイジシン)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2025/1/12閲覧

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