地形 系統地理

プレートテクトニクス(3種類のプレート境界のしくみ)

地球表面は十数枚の「プレート」に分かれており、各プレートが互いにぶつかり合ったり離れることで、長い時間をかけて少しずつ動きながら様々な地形を形成しています。
たとえば、インド亜大陸ユーラシア大陸に衝突して境界が隆起し、ヒマラヤ山脈という大山脈が形成されました(ヒマラヤ山脈の形成)。
このページでは、以上のような大規模な地形をつくりだす力を説明する理論であるプレートテクトニクスについて見ていきます。

プレートテクトニクスの前提となるウェゲナーの大陸移動説については、次のページで解説しています。

参考ウェゲナーの大陸移動説(超大陸・パンゲア)

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プレートテクトニクス広がる境界海洋大陸)・狭まる境界沈み込み帯衝突帯)・ずれる境界

プレートテクトニクス

プレートテクトニクスは、大陸の移動や大地形(例:巨大山脈の形成)を形づくる要因を説明する理論です。
地球表面を十数枚のプレートに分割して考え、この厚さ100 km程度のプレートが互いに動くことで大陸が移動したり、地震が発生すると考えられています。

地球の内部構造

地球内部の構造の模式図。地球内部は表層から順に地殻、マントル、核(外核+内核)という化学組成(物質の種類)が異なる4つの層が並んでいる。このうち、地殻とマントル最上部は固体で硬く変形しづらい特性をもつため、リソスフェアとよばれる。リソスフェアの下には流動性が高い場所が存在し、アセノスフェアとよばれる。流動性が高いアセノスフェアの上に硬いリソスフェアが乗っかる構造になっているため、アセノスフェア内でマグマの対流がおこると、リソスフェア(プレート)が地球表面を移動する。出典を加工して作成。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2024/9/26閲覧

地球表面のプレートの話をする前に、まずは地球の内部構造についてみていきます。
上図は地球の内部構造の模式図です。

地球表面は数十km程度の薄い地殻で覆われ、その下にマントルがあります。
深さ100 kmくらいまではかたい岩盤になっていて、リソスフェア(岩石圏)といいます。
リソスフェアは地殻とマントル最上部を合わせたものです。

一方、100 kmから数百km程度のマントルの層はリソスフェアよりも高温でやわらかい領域になっており、アセノスフェア(岩流圏)といいます。
やわらかく流動性が高いアセノスフェアの上にかたいリソスフェアがのっているため、アセノスフェアが動くことによってリソスフェアが地表を移動します。

地球の内部構造の詳細については、次のページで解説しています。

参考地球内部の構造(地殻・マントル・リソスフェア・アセノスフェア)

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プレート

プレートテクトニクスでは、地球表面のリソスフェアを十数枚のプレートに分割して考え、プレート間の相互作用によって大陸の移動地震などの現象を説明します。
次の図は、地球表面のプレートの分布を示したものです。

世界の主要なプレートの分布。赤矢印はプレートの移動方向を示す。インドプレートとオーストラリアプレートは1つにまとめてインド=オーストラリアプレートとされることもある。出典:Wikimedia Commons, Washiucho, Public domain, 2021/1/8閲覧

世界の地表はこのように十数枚のプレートに分けて考えられます。
プレートの枚数が確定しないのは、研究者によって1つのプレートを2つに分割して考えたり、逆にあるプレートが別のプレートの一部であると考えられる場合もあるからです。
この図のプレートもあくまで一つの考え方に過ぎず、たとえばインドプレートとオーストラリアプレートを1つにまとめてインド=オーストラリアプレートとみなす考え方も存在します。

上の図の赤矢印は、それぞれのプレートが動く方向です。
プレートの中央部分は他のプレートの影響を受けず安定しているのに対し、プレートの境界部分では2つのプレートが別方向に動こうとするため摩擦が生じて不安定です。
このようなプレートの境界部分は地殻変動などの地形をつくる動きが活発に行われるので変動帯といい、逆に変動帯以外のプレートの内側の安定した領域を安定地域といいます。

プレートの境界は、プレートが動く方向の組み合わせによって次の3つに分けられます。
広がる境界(発散境界)
狭まる境界(収束境界)
ずれる境界(すれ違う境界、トランスフォーム断層)

広がる境界(発散境界)

大洋の海底に位置する広がる境界(発散境界)の模式図(大西洋中央海嶺)。地表は固体のリソスフェア(地殻+リソスフェア・マントル)の上にあるが、広がる境界では地球内部(上部マントルのうち流動性が高いアセノスフェア部分)から噴出したマグマが海水にふれて冷やされて固まることで新しい地殻が生み出されている。出典を加工して作成。出典:Wikimedia Commons, ©37ophiuchi BrucePL, CC BY-SA 4.0, 2024/7/31閲覧

広がる境界(発散境界)は、2つのプレートが互いに離れるように動く境界です。
広がる境界ではマントルの上昇流により地球内部からプレートが表面に出てきます。
大西洋中央海嶺などの大洋上によく見られる境界ですが、アフリカ東部のアフリカ大地溝帯(Great Rift Valley, グレートリフトバレー)など大陸上で見られる場所もあります。

海洋上の広がる境界

大西洋などの海洋上の広がる境界では、海に沈んだ山脈状の地形である海嶺が見られます。
海嶺の大部分は海の下に沈んでいますが、一部は海の上に顔を出し、火山島になっています。
広がる境界上に位置する火山島の例としてアイスランド島があります。
アイスランド島の広がる境界では、両側を崖に挟まれた細長い谷状の地形が見られ、ギャオとよばれています。

一方、アフリカ東部のアフリカ大地溝帯では、大陸上に広がる境界が見られます。
アフリカ大地溝帯は、1つのプレート(アフリカプレート)が2つに分裂しようとしているプレートの裂け目にあたる場所です。
プレートが割れて広がろうとした結果、アフリカ大地溝帯では地溝(ちこう)とよばれる細長い溝状の地形が多数存在します。
これらの地溝に雨水などがたまると細長い湖(地溝湖、断層湖)が形成されます。
アフリカ大地溝帯ではプレートの裂け目が年々広がっているので、数十から数百万年後にはアフリカ大陸は完全に分裂して2つのプレートになると言われています。

広がる境界の詳細については、次のページで解説しています。

参考広がる境界(発散境界)とその地形

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狭まる境界(収束境界)

狭まる境界(収束境界)は、2つのプレートが互いに近づくように動く境界です。
狭まる境界は大陸と海洋の境界付近にできることが多く、地震火山活動の原因となる境界です。

狭まる境界はぶつかり合う2つのプレートの種類(正確には密度差)から、沈み込み型衝突型に分類できます。
狭まる境界とその分類については、次のページで解説しています。

参考狭まる境界(収束境界)とその分類(沈み込み型・衝突型)

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沈み込み型

広がる境界(収束境界)の模式図(沈み込み型、海洋-海洋型)。海洋-海洋型では、低密度で軽い大陸側のプレートの下に高密度で重い海洋プレートが潜り込む(沈み込み帯)。沈み込んだ地殻は高温高圧環境下で溶けてマグマとなり、一部は絞り出されるように大陸プレートを貫通して地表へ噴出する(活火山)。海洋-海洋型では沈み込み帯の位置が大陸から遠いため、大陸の沖合に火山が円弧状に分布し、その噴火の影響で火山島が円弧状に並ぶ弧状列島(島弧)ができあがる。出典を加工して作成。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2024/8/18閲覧

沈み込み型の狭まる境界では、高密度で重い海洋プレートと低密度で軽い大陸プレートが衝突します。
狭まる境界の2つのプレートのうち、海側にあるものを海洋プレート、大陸側にあるものを大陸プレートといいます。
大陸プレートより海洋プレートの方が高密度で重いため、海洋プレートと大陸プレートが衝突すると海洋プレートは大陸プレートの下に沈み込みます
このような狭まる境界を沈み込み帯といいます。

沈み込み帯では海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込むため、プレート境界には水深が深い溝状の地形である海溝が形成されます(水深浅い場合はトラフ)。

また、大陸プレートの下に沈みこんだ海洋プレートでは高温高圧環境下で岩石が融解してマグマとなります。
境界の大陸側にはマグマが地表まで上昇して噴出する火山ができます。
火山はプレートの境界に沿って弧を描くように点在します。

プレート境界が大陸から十分に近いと火山は大陸上に出現します。
一方、プレート境界が大陸から十分に離れていると、火山は海洋上に出現します。
この場合、大陸沿岸に島々がカーブを描くように並ぶ弧状列島(島弧)が形成されます。
弧状列島は火山島を含む多数の島々からなり、環太平洋造山帯の西側半分(アラスカ~日本~フィリピン~インドネシア~トンガ~ニュージーランド)に多数存在します。

沈み込み帯とその地形の詳細については、次のページで解説しています。

参考沈み込み帯:海洋上の狭まる境界(収束境界)

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衝突型

広がる境界(収束境界)の模式図(衝突型、大陸-大陸型)。大陸-大陸型では、低密度で軽い大陸プレート同士がぶつかり合い、片方のプレートがもう片方のプレートの上に乗り上げる(衝突帯)。乗り上げたプレートは横から強い力を受けて波を打つように変形(褶曲)し、褶曲山脈とばれる山脈が形成される。この図では左側のプレートの上に右側のプレートの上に乗り上げて褶曲山脈が形成されている。さらに右側のプレートの山脈側には標高が高い高原が形成されている。出典を加工して作成。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2024/8/28閲覧

狭まる境界のうち、低密度で軽い大陸プレート同士が衝突するタイプのものを衝突型といいます。
狭まる境界の多くは沈み込み型ですが、一部では衝突型の狭まる境界が見られます。
衝突型では、大陸プレート同士が衝突して片方のプレートがもう片方のプレートに乗り上げて、横から強いを受けて折れ曲がったり(褶曲)、断層(逆断層)が発生します。
この結果、上向きへ隆起する力が働き、プレート境界では地面が隆起します。
このような狭まる境界を衝突帯とよびます。

衝突帯とその地形の詳細については、次のページで解説しています。

参考衝突帯:大陸上の狭まる境界(褶曲山脈・背斜と向斜・逆断層)

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ずれる境界

ずれる境界(すれ違う境界、横ずれ境界、トランスフォーム断層)の模式図。トランスフォーム断層は、断層の境界面(断層面)が互いに逆方向(横方向)に動く断層であり、プレート境界で見られる。出典:Wikimedia Commons, ©domdomegg, CC BY 4.0, 2024/9/23閲覧

ずれる境界(すれ違う境界)は、2つのプレートが互いにすれ違うように動くプレート境界です。
横ずれ境界やトランスフォーム断層ともよばれます。

トランスフォーム断層は主に海洋に存在します。
海洋上の広がる境界では、プレート境界に沿って海嶺(海底の山脈)が形成されますが、所々で横にずれている(平行移動している)箇所が点在します。
このような場所では、広がる境界の中で例外的に2つのプレートが互いにすれ違うように動きます(下図の赤色の部分)。

海洋上の広がる境界(海嶺)上に見られる断裂帯(トランスフォーム断層)の模式図。上側の図は広がる境界を上から見た模式図であり、広がる境界(黒)、狭まる境界(トランスフォーム断層、赤)、断裂帯(茶)を色分けで示している。下側の図は拡大図であり、広がる境界の断裂帯周辺におけるプレートの移動方向を詳細に示している。広がる境界は2つのプレートが互いに離れるように動く境界であるが、途中で横ずれしている箇所(断裂帯)が点在し、そのような場所ではずれる境界(トランスフォーム断層)となっている。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2024/9/25閲覧

一方、米国西海岸のサンアンドレアス断層のように、海嶺が無い場所に1,000kmを以上の長さをもつ巨大なずれる境界が存在する場合もあります。
サンアンドレアス断層は、北アメリカプレート太平洋プレートの境界に位置し、震源が浅い地震が頻繁に発生します。

ずれる境界については、次のページで詳しく解説しています。

参考ずれる境界(トランスフォーム断層)

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参考文献

プレートテクトニクス コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典、日本大百科全書(ニッポニカ) 2021/1/8閲覧
リソスフェアとは コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典、日本大百科全書(ニッポニカ) 2021/1/8閲覧
アセノスフェアとは コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典、日本大百科全書(ニッポニカ) 2021/1/8閲覧
Lithosphere, Wikipedia 2024/7/29閲覧
Asthenosphere, Wikipedia 2024/7/29閲覧
リソスフェア 地震本部 用語集 2021/1/8閲覧
アセノスフェア 地震本部 用語集 2021/1/8閲覧
造山運動とは コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2021/1/9閲覧
変動帯とは デジタル大辞泉の解説、岩石学辞典 2021/1/9閲覧
造山帯とは 百科事典マイペディア、世界大百科事典 第2版、日本大百科全書(ニッポニカ) 2021/1/9閲覧
矢ケ﨑 典隆 他「新詳地理探究」帝国書院(2023)
Divergent boundary Wikipedia 2021/1/8閲覧
トランスフォーム断層とは コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2021/1/9閲覧
トランスフォーム断層 地震本部 用語集 2021/1/9閲覧

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