地球表面は長い時間をかけて少しずつ動きながら地形を形成しています。
たとえば、インド亜大陸がユーラシア大陸に衝突して境界が隆起し、ヒマラヤ山脈という標高の高い山脈が形成されました。
このような大規模な地形をつくりだす力を理解するために大陸移動説とプレートテクトニクスについて見ていきます。
目次
ウェゲナーの大陸移動説
世界地図を見ると、南アメリカ大陸の東側とアフリカ大陸の西側の海岸線は、まるでパズルのようにきれいに形を合わせることができます。
これは決して偶然ではなく、かつて南アメリカ大陸東岸とアフリカ大陸西岸はつながっていて一つの大陸でした。
それどころか、3~2億年前の世界の大陸は全て陸続きでした。この現在の大陸が一つになっている超大陸をパンゲア(大陸)といいます。
パンゲア大陸はおよそ2億年前に北のローラシア大陸(北アメリカ+ユーラシア)と南のゴンドワナ大陸(南アメリカ+アフリカ+インド+南極+オーストラリア)に分裂しました。
その後長い時間をかけて少しずつ分裂しながら移動して今日の世界の形が作られました。
このように、大陸が地球表面を移動して位置や形状を変化させるという考えを大陸移動説といいます。
大陸移動説は1912年にドイツのウェゲナー(Alfred Lothar Wegener)が提唱しました。
ウェゲナーは、大陸同士の海岸線の形や氷河・動植物の化石の分布の類似性から大陸移動説を主張しました。
しかし、当時は「大陸を移動させる物理的な力が何か」という疑問に答えることができませんでした。
当時の常識では大陸を越えた化石の類似性は巨大な陸橋がつながっていたと考える説が主流であり、ウェゲナーが気象学者で地質学は専門外ということもあって、大陸移動説は受け入れられませんでした。
しかし、その後の科学技術の発展で、岩石を調べて昔の地球の磁場について研究する古地磁気学の観点から大陸移動説が証明されました。
大陸移動説は発展し、今日ではプレートテクトニクスという理論に発展しています。
プレートテクトニクス
プレートテクトニクスは、大陸の移動や山脈の形成などの大きな地形を形づくる要因を説明する理論です。
地球表面を十数枚のプレートに分割して考え、この厚さ100 km程度のプレートが互いに動くことで大陸が移動したり、地震が発生すると考えられています。
地球の内部構造
地球表面のプレートの話をする前に、まずは地球の内部構造についてみていきます。
次の図は地球の内部構造の模式図です。
地球表面は薄い地殻で覆われ、その下にマントルがあります。
深さ100 kmまではかたい岩盤になっていて、リソスフェア(岩石圏)といいます。
リソスフェアは地殻と上部マントル最上部を合わせたものです。
一方、100 kmよりも深い上部マントルの層はリソスフェアよりも高温でやわらかく、アセノスフェア(岩流圏)といいます。
やわらかく流動性が高いアセノスフェアの上にかたいリソスフェアがのっているため、アセノスフェアが動くことによってリソスフェアが地表を移動します。
これが大陸が移動する原動力です。
プレート
プレートテクトニクスでは、地球表面のリソスフェアを十数枚のプレートに分割して考え、プレート間の相互作用によって大陸の移動や地震などの現象を説明します。
次の図は、地球表面のプレートの分布を示したものです。
世界の地表はこのように14-15枚のプレートに分けて考えられます。
枚数が確定しないのは、インドプレートとオーストラリアプレートが1つのプレート(インド=オーストラリアプレート)とみなす場合もあるからです。
上の図の赤矢印は、それぞれのプレートが動く方向です。
プレートの中央部分は他のプレートの影響を受けず安定しているのに対し、プレートの境界部分では2つのプレートが別方向に動こうとするため摩擦が生じて不安定です。
このようなプレートの境界部分は地殻変動などの地形をつくる動きが活発に行われるので変動帯(造山帯)といいます。
プレートの境界は、プレートが動く方向の組み合わせによって次の3つに分けられます。
広がる境界(発散境界)
狭まる境界(収束境界)
ずれる境界(横ずれ境界、すれちがう境界)
広がる境界(発散境界)
広がる境界(発散境界)は、2つのプレートが互いに離れるように動く境界です。
広がる境界ではマントルの上昇流により地球内部からプレートが表面に出てきます。
海洋上によくみられる境界です。
次の図は、広がる境界の地形の模式図です。
一番上の図はアフリカ大地溝帯(Great Rift Valley, グレートリフトバレー)です。
今まさに新しいプレートができようとしている場所で、地球内部からのマントルの上昇に押されてプレートが割れて広がろうとしています。
プレートが割れて広がろうとしている場所は溝になるので、雨水などがたまって細長い湖(地溝湖)ができます。
下の図の黄色線の部分にはマラウイ湖、青線の部分にあるタンガニーカ湖があります。
プレートはどんどん広がっているので、数十から数百万年後にはアフリカ大陸は分裂するといわれています。
模式図の2番目は紅海です。
紅海はアフリカ大陸(エジプトなど)とアラビア半島(サウジアラビア)の間に広がる細長い湾であり、アフリカプレートとアラビアプレートの間の広がる境界の溝に海水がたまって形成されました。
2つのプレートの間にできた隙間には、地球内部からマントル(アセノスフェア)が上昇して隙間をうめます。
模式図の3番目(一番下)は大西洋です。
紅海の状態から2つのプレートがさらに離れて隙間が大きくなり、大西洋の中央部に海嶺(大西洋中央海嶺)という上昇したマントルが固まってできた山脈状の地形が形成されます。
大西洋中央海嶺は大部分が海面下にありますが、例外的にアイスランド島では海嶺が地上に出ています(ギャオ)。
狭まる境界(収束境界)
狭まる境界(収束境界)は、2つのプレートが互いに近づくように動く境界です。
狭まる境界は大陸と海洋の境界付近にできることが多く、地震や火山活動の原因となる境界です。
大陸-海洋型(沈み込み型)
狭まる境界の2つのプレートのうち、海側にあるものを海洋プレート、大陸側にあるものを大陸プレートといいます。
大陸プレートより海洋プレートの方が冷たく重いため、海洋プレートと大陸プレートが衝突すると海洋プレートは大陸プレートの下に沈み込みます。
沈み込んだ海洋プレートは地球内部でマントルに吸収されます。
このような狭まる境界を沈み込み帯といいます。
2つのプレートがぶつかる場所には水深が深い海溝ができます。
海溝周辺では海洋プレートの沈み込みに大陸プレートがねじ曲げられてひずみが生じます。
ひずみが限界に達するとひずみを解消する力が一気に働き、地震が発生します。
これを海溝型地震といい、ひずみがおきている場所が海溝なので震源が深いことが特徴です。
また、大陸プレートの下に沈みこんだ海洋プレートでは高温高圧な環境で岩石が融解してマグマとなります。
境界の大陸側にはマグマが地表まで上昇して噴出する火山ができます。
火山はプレートの境界にそってできるので、大陸沿岸に火山からできた島々がカーブを描くように並ぶ弧状列島(島弧)ができます。
日本列島やアリューシャン列島(アラスカ)が弧状列島です。
大陸-大陸型(衝突型)
狭まる境界の中には大陸プレート同士がぶつかる場所もあります。
インドプレートとユーラシアプレートがぶつかる例では、どちらのプレートもアセノスフェアより軽すぎて地球内部に沈み込むことができず、横方向からの衝突と圧縮により表面の地層がねじ曲がって標高が高くなりヒマラヤ山脈ができました。
このようにできた山脈を褶曲(しゅうきょく)山脈といいます。
チベット高原(中国)もこのプレートの衝突による隆起が原因で標高が高くなっています。
ずれる境界
ずれる境界(横ずれ境界、すれちがう境界)は、2つのプレートが横方向の逆向きに動くトランスフォーム断層がおきる境界です。
トランスフォーム断層の多くは海底にあります。
陸上にトランスフォーム断層がある例として、北アメリカプレートと太平洋プレートの境界にあるサンアンドレアス断層があります。
サンアンドレアス断層はカリフォルニア州で海岸線に並行する長さ1,000 km以上の断層で、震源が浅い地震が頻発します。
参考文献
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松倉公憲「地形学」 朝倉書店(2021)
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リソスフェアとは コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典、日本大百科全書(ニッポニカ)の解説 2021/1/8閲覧
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変動帯とは デジタル大辞泉の解説、岩石学辞典の解説 2021/1/9閲覧
造山帯とは 百科事典マイペディアの解説、世界大百科事典 第2版の解説、日本大百科全書(ニッポニカ)の解説 2021/1/9閲覧
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地溝湖とは コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)の解説 2021/1/9閲覧
沈み込み帯とは コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2021/1/8閲覧
弧状列島とは コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)の解説 2021/1/8閲覧
褶曲山脈 コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)の解説 2021/1/9閲覧
トランスフォーム断層とは コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)の解説 2021/1/9閲覧
トランスフォーム断層 地震調査研究推進本部事務局 用語集 2021/1/9閲覧