ここでは、木材の生産量と輸出入量が多い国について解説します。
木材の生産量が多い国でも国内需要が多い国は輸出量が少なく、逆に輸入している国もあります。
一方、人口が少なく広大な面積をもつ国では、生産した木材の多くが輸出に回されます。
日本や欧米の先進国は、全体的に輸入量が多いです。
木材の生産量

木材の生産量は面積が大きい国で多い傾向になります。
米国やインド、中国は人口(木材需要)も森林面積(供給)も大きい国であり、広大な国土に広がる温帯林(主に人工林)で林業が営まれています。
また、ロシアやカナダは人口(需要)は少ないが森林面積(供給)は大きい国であり、開発されていない広大な亜寒帯林(主に天然林)を伐採して輸出しています。
また、ブラジルやインドネシアのような熱帯の国では、国土に広がる熱帯林(主に熱帯雨林)の開発が近年になって進んでおり、熱帯雨林をもつ面積が広い国で生産量が上位に来ています。
原木の生産量(百万m3)
※ 1990年のロシアは旧ソ連、1990年のエチオピアは現エリトリアを含む
出典:帝国書院編集部「新詳地理資料 COMPLETE 2023」帝国書院(2023)(大元の出典:FAOSTAT)
生産国 | 1990年 | 2020年 | 割合(2020年) |
世界 | 3,543 | 3,912 | 100% |
アメリカ合衆国 | 509 | 430 | 11.0% |
インド | 311 | 351 | 9.0% |
中国 | 377 | 337 | 8.6% |
ブラジル | 195 | 266 | 6.8% |
ロシア | 386 | 217 | 5.5% |
カナダ | 162 | 132 | 3.4% |
インドネシア | 164 | 122 | 3.1% |
エチオピア | 73 | 117 | 3.0% |
コンゴ民主共和国 | 47 | 92 | 2.4% |
ドイツ | 85 | 84 | 2.1% |

木材の貿易(輸出入量)

木材(原木・製材)の国別輸出量(万m3)
※ 1990年のロシアは旧ソ連、1990年のチェコは旧チェコスロバキア、1990年のベルギーはルクセンブルクを含む、ラトビアは1990年時点ではソ連領
出典:帝国書院編集部「新詳地理資料 COMPLETE 2023」帝国書院(2023)(大元の出典:FAOSTAT)
輸出国 | 1990年 | 2020年 | 割合(2020年) |
世界 | 16,203 | 29,315 | 100% |
ロシア | 1,694 | 4,783 | 16.3% |
カナダ | 2,839 | 3,282 | 11.2% |
ニュージーランド | 230 | 2,358 | 8.0% |
ドイツ | 578 | 2,297 | 7.8% |
チェコ | 165 | 2,189 | 7.5% |
スウェーデン | 706 | 1,515 | 5.2% |
アメリカ合衆国 | 3,012 | 1,286 | 4.4% |
フィンランド | 447 | 948 | 3.2% |
ラトビア | --- | 695 | 2.4% |
オーストリア | 537 | 672 | 2.3% |
木材は非常に重いため、伐採された木材のうち外国に輸出される割合は、世界全体で見るとわずか4%です(2010年、林業(リンギョウ)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2025/5/9閲覧)。
このため、木材の輸出量上位は、生産量上位とは顔ぶれが変わります。
生産量上位の米国やインド、中国では、森林面積(供給)も大きいですが人口(木材需要)も大きいため、輸出に回す木材の量が少なくなります。
一方、ロシアやカナダのように人口(需要)が少ないが森林面積(供給)が大きい国では、国内需要が少ないため輸出に回す量が多くなります。
スウェーデンやフィンランド、チェコ、ラトビアのような亜寒帯林が広がる北欧・東欧諸国も同様です。
スウェーデン発祥の家具量販店であるイケア(IKEA)でも、スウェーデンをはじめとする北欧や東ヨーロッパの亜寒帯林のマツ材を使って家具を製造しています。
また、温帯の中でも人口が少なく人工林の林業が盛んなニュージーランドでは、ラジアータパインとよばれる外来種の人工林を育てて木材を輸出しています。
木材(原木・製材)の国別輸入量(万m3)
※ 1990年のベルギーはルクセンブルクを含む
出典:帝国書院編集部「新詳地理資料 COMPLETE 2023」帝国書院(2023)(大元の出典:FAOSTAT)
輸入国 | 1990年 | 2020年 | 割合(2020年) |
世界 | 16,790 | 28,505 | 100% |
中国 | 412 | 9,340 | 32.18% |
アメリカ合衆国 | 2,274 | 2,741 | 9.6% |
オーストリア | 527 | 1,442 | 5.1% |
ドイツ | 807 | 1,149 | 4.0% |
ベルギー | 386 | 874 | 3.1% |
イギリス | 1,091 | 837 | 2.9% |
スウェーデン | 222 | 799 | 2.8% |
イタリア | 1,233 | 737 | 2.6% |
日本 | 3,667 | 723 | 2.5% |
フィンランド | 530 | 706 | 2.5% |
一方、輸入国は人口が多い国や先進国が中心です。
これらの国では、国内では必要な木材を賄えなかったり、人件費の高さから安価な外国材を使用しているため、輸入量が多いです。
人口が多い米国は1990年でも輸入量が多いですが、中国は1990年から2020年にかけて輸入量が増大しています。
逆に、日本は1990年では米国以上の輸入量でしたが、2020年には米国の1/3程度まで減少しています。
他にも、ヨーロッパの先進国で木材の輸入量が多くなっています。
スウェーデンやフィンランドのような輸出量と輸入量の両方が多い国も見られます。
これは、統計データが原木と製材(木材製品)の輸出入を合算したものだからです。
スウェーデンやフィンランドは亜寒帯林を伐採して原木や製材として輸出していますが、製材(例:IKEAの家具)については輸入量も多いです。
例:2013-2017年のスウェーデンの木材輸入量の約6割が製材、約3割がパルプ・チップ(出典:7 スウェーデン王国 林野庁 2025/5/5閲覧)。
参考文献
帝国書院編集部「新詳地理資料 COMPLETE 2023」帝国書院(2023)
林業(リンギョウ)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2025/5/9閲覧
The wood we use IKEA 2025/5/5閲覧
7 スウェーデン王国 林野庁 2025/5/5閲覧
6.フィンランド共和国 林野庁 2025/5/5閲覧