局地風(地方風)の中には、細長い谷状の地形を吹き抜ける風もあります。
このような風をギャップ風(地峡風・海峡風)とよび、風が狭い場所に集中することから強風となり、季節や風向きによっては冷たい空気を運び、農作物の発育に悪影響を与えることもあります。
このページでは、細長い谷状の地形を吹き抜ける局地風について解説します。
ギャップ風(地峡風・海峡風)

ギャップ風(Gap wind)は、地峡や海峡のような周囲を高い場所で囲まれた細長い場所やその出口付近で発生する局地風です。
地峡で発生するギャップ風を地峡風、海峡で発生するギャップ風を海峡風とよびます。
風が一定方向に吹く際に風下に山があると風が進みづらくなりますが、山の間に細長い谷や周囲より標高が低い峠(鞍部)があると、風が進みやすい谷や峠の部分に風が集中し、局所的に風が強くなります。
このため、地峡や海峡のように周囲を高地に囲まれた細長い場所では風が加速されて吹き抜けて、細長い地形を通り抜けた出口で発散していきます。
ギャップ風は局所的に風が通り抜けやすい場所があるという地形的要因により形成される風であり、地峡や海峡に限らず、山脈の中で相対的に高さが低くへこんでいる場所(山頂と山頂の間など)でも同様の原理でギャップ風が吹きます。
ギャップ風が吹く場所としては、アルプス山脈を越えるブレンナー峠(イタリア北東部/オーストリア西部)や、太平洋とシアトルやバンクーバーの間を結ぶファンデフカ海峡(米国北西部・ワシントン州/カナダ南西部・ブリティッシュコロンビア州)などが知られています。
日本では、最上川が庄内平野に出る谷口(山形県北西部・庄内町清川)で見られる清川だしが有名です。


ギャップ風の特徴をもつ局地風
表 ギャップ風(地峡風や海峡風)の特徴をもつ局地風
| 局地風 | 地域・季節 | 特徴 |
| 清川だし | 山形県庄内町 3-5月 | 最上川の峡谷を通り庄内平野に吹き抜ける南東風の地峡風(谷口で強風) |
| ミストラル | フランス南東部・ローヌ河谷 冬~春 | フランス南東部を南北に流れるローヌ川の峡谷を吹き抜ける北風 |
| やまじ (やまじ風) | 愛媛県東端部 3-5月 | 低気圧の影響を受けて吹く南風が、四国山地のうち標高が低い中央部を越えて吹く・フェーン現象を伴う |
ここでは、ギャップ風としての特徴をもつ局地風(地方風)として、清川だしとミストラルについて紹介します。
清川だし

清川だしは、山形県北西部・庄内町清川地区周辺で吹く南東風の強風です。
清川地区は最上川が細長い峡谷から庄内平野に出る谷口にあたる場所であり、最上川の峡谷を抜けた地峡風が強風となって吹き荒れる場所です。
清川だしは庄内平野の稲の発育に悪影響およぼすこともありますが、一方で年間通して吹く風を利用して風力発電も行われています。

ミストラル

ミストラルはフランス南東部を南北に流れるローヌ川の谷沿いで吹く寒冷・乾燥した北風です。
ミストラルは気圧配置に起因して吹く局地風(地方風)であり、西の大西洋上で高気圧、東のヨーロッパ側に低気圧があるときに吹きます。
フランス東部を吹く北風は、アルプス山脈に阻まれて、山脈のすぐ西側にあるローヌ川の細長い谷に風が集まって強風(地峡風)となり、そのまま谷を南下して地中海に吹き抜けます。
ミストラルは特に冬から春にかけて吹く風であり、ローヌ川の河口近くのマルセイユ(フランス南東部・プロバンス地方)では年間100日程度が吹きます。

やまじ(やまじ風)

やまじ(やまじ風)は、愛媛県東端部の新居浜市~四国中央市付近を吹く強い南風です。
やまじ風が発生する要因には3つの要素が関わっており、①低気圧という風の原動力、②四国山地の地形的要因(地峡風)、③山を吹き下ろすという地形的要因(フェーン)の3つの成因が複合して形成された局地風です。
やまじ風(やまじ)が発生するのは、低気圧が四国の西側を北進する時です。
この際、低気圧の影響で四国山地を越える南風が吹きます。
四国山地は東側(徳島県西部・剣山地)と西側(愛媛県中部・石鎚山脈)に標高が高い山(1,900m)が集中し、間の中央部(愛媛県東端部/高知県北部・法皇山脈)では、1,400-1,000m程度まで標高が下がります。
このため、四国山地を越える南風は、中央部の標高が低い場所に集中します。
中央部に集まった強風は山を越え、そのまま瀬戸内海側の低地に吹き下ろします。
山脈を乗り越えて吹き下ろす際にフェーン現象が発生し、低地側では高温の強風となって観測されます。
参考文献
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2024年5月の気象と気象用語 「愛媛県の局地風」 松山地方気象台 2025/2/15閲覧