気候 系統地理

局地風とフェーン現象(颪・からっ風・清川だし・やませ)

ある地域で一定期間に同じ方向に吹く頻度が最も多い風を卓越風といいます。
卓越風には、恒常風、季節風(モンスーン)、熱帯低気圧、局地風(地方風)などがあります。

ここでは、局所的な卓越風である局地風(地方風)について紹介します。
これ以外の卓越風については、以下の記事で解説しています。

参考季節風(モンスーン)と熱帯低気圧(台風・ハリケーン・サイクロンと災害)

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参考恒常風のしくみ(貿易風・偏西風・極偏東風)

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局地風(地方風)

地形などの影響をうけて、特定の狭い地域で吹く風を局地風(地方風、局所風)といいます。

局地風はその地域の気候の特徴づける風で、地域ごとに固有の名前がつけられています。

颪・からっ風

(おろし)は、日本で冬季に山から(主に太平洋側の平地に)吹き下ろす冷たく乾いた風です。
各地の颪に固有の名前がつけられています。

六甲颪:神戸市街の北にある六甲山系から神戸市街に吹き下ろす風
伊吹颪:冬の濃尾平野(愛知・岐阜)で北西の伊吹山方面から吹く颪
赤城颪:赤城山(群馬)から群馬県南東部に向けて吹く風
からっ風:冬に日本海側から関東平野に向けて吹き下ろす冷たく乾燥した風(赤城颪もからっ風の一種)

清川だし

清川だしの強風を利用した風力発電(山形県庄内町) 出典:Wikimedia Commons, ©At by At, CC BY-SA 3.0, 2021/1/24閲覧

庄内平野を流れる最上川の谷口にあたる庄内町清川(山形)に吹く局所風を清川だしといいます。

「だし」は谷間から吹き出す風のことです。

最上川の峡谷をぬけて庄内平野に吹く強風である清川だしを利用して、風力発電が行われています。

やませ

鵜ノ巣断崖でやませによって発生した海霧(岩手) 出典:Wikimedia Commons, ©Junpei Satoh, CC BY-SA 3.0, 2021/1/24閲覧

東北地方を中心とする北日本の太平洋側で、春から夏(6-8月)にかけて吹く北東風のことをやませ(山背)といいます。

寒流親潮(千島海流)の上を吹き渡ってくる風なので、低温多湿なのが特徴です。
やませは気温を低下させ、小雨や霧を伴うことが多い風です。

やませがつづくと冷夏になり、低温と日照不足により水稲の生育が悪くなり(冷害)、米の凶作により飢饉(ききん)が発生します。
このため、やませは冷害風や飢餓風(きがふう)として恐れられてきました。
やませの被害を防ぐために東北の太平洋側北部(岩手の三陸海岸や青森東部)では冷害に強い牧畜や畑作がおこなわれ、近年では品種改良により冷害に強い稲の品種が開発されてきました。

やませの被害が東北地方中心になるのは、南に位置する関東では冷夏になっても極端に低温にならず、北海道では通常の夏でも比較的涼しいためです。
東北の太平洋側では冷夏の年以外は関東同様に高温になります。
そのため、稲作主体の農業になり、数年に一度の冷夏で冷害が発生する可能性が高くなります。

岩手の三陸海岸や青森東部では冷害に強い牧畜や畑作が中心になるため、やませの被害を最もうけるのは、稲作地帯である北上盆地(岩手)、仙台平野(宮城)、浜通り北部(福島)などになります。

冷たい空気は低いところに滞留するため、奥羽山脈にはばまれて太平洋側にとどまります。
一方、暖かい空気は上空にあがって奥羽山脈をこえて日本海側に吹き下ろすフェーン現象がおきます。
このため、東北の日本海側では暖かく乾燥した空気により気温の上昇や日照時間の増加がおきます。

やませの被害をうけるのは東北地方の中でも太平洋側のみです。
東北地方の太平洋側では凶作、日本海側では豊作という場合もあります。
秋田の生保内節(おぼないぶし)で唄われるように東風を「宝風」とよぶ地域もあります。

生保内(おぼない)は田沢湖がある田沢湖町(秋田)の市街地の地名です。
田沢湖町から秋田新幹線で30分ほどの盛岡周辺(岩手)はやませの被害を大きくうける北上盆地です。
奥羽山脈の東にあるか西にあるかが飢饉と豊作の命運を分ける境界になっています。

フェーン

山脈を越えて反対側に吹き下ろす高温で乾燥した風をフェーンといいます。
もともとはアルプス山脈の北麓で吹く高温で乾燥した局所風を指す言葉でしたが、山脈の風下側の温暖で乾燥した風一般を指す言葉になりました。

湿った風が山地を越えようとすると、気温が低下して途中で雲ができます(地形性降雨)が、水蒸気の凝縮熱(水蒸気が凝縮して水になると熱を放出)によりそこまで温度が下がりません。
山を越える際に水蒸気を放出して乾燥した風は、反対側の低地へ下りていく際には気温が上昇します。
乾燥した風が山を下るときの気温上昇は、山を越えるときの気温低下よりも大きいため、山の風下側は高温になります。

山を越えるときの気温上昇は水蒸気の凝縮熱が気温低下を緩和するのに対し、山を下るときは水の状態変化の影響をうけないため気温が大きく上昇し、山を越える前以上に高い温度になります。

このように山を越える風により山地の風下側で気温が上昇する現象をフェーン現象といいます。

その他の局地風

上記以外の世界各地でみられる局地風についてかんたんに紹介します。

ボラ(ボーラ):アドリア海やギリシャ、トルコなどで北または北東の山から吹き下ろす冷たい風

ミストラル:冬から春にかけて、フランス南東部で地中海に向けて吹き下ろす北向きの冷たく乾燥した強風

シロッコ:冬から初夏にかけて、イタリア南部など地中海北岸で地中海を越えて南から吹く暖かい風(リビアではサハラ砂漠から吹く高温で乾燥した風になりギブリという(スタジオ・ジブリの由来))

ハムシン:春に北アフリカやアラビア半島で吹く砂塵嵐を伴う乾燥した高温の風

ハルマッタン:11月から4月の乾季に、アフリカ西部のギニア湾北岸からセネガルにかけての沿岸部に吹く砂塵嵐を伴う乾燥した北東貿易風

ブリザード:冬季に北米でみられる吹雪を伴った冷たい強風(現在では同様の暴風雪一般を指す)

参考文献

局地風とは コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説、知恵蔵の解説、日本大百科全書(ニッポニカ)の解説 2021/1/23閲覧
地方風 ウィキペディア 2021/1/23閲覧
颪とは コトバンク デジタル大辞泉の解説、とっさの日本語便利帳の解説 2021/1/23閲覧
 ウィキペディア 2021/1/23閲覧
からっ風 コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説 2021/1/24閲覧
力石國男、蓬田安弘、石田祐宣「山形県庄内平野の強風「清川だし」の発生機構について第19回 風工学シンポジウム論文集 19-24 (2006)
清川だし ウィキペディア 2021/1/24閲覧
やませ ウィキペディア 2021/1/24閲覧
やませとは コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説、朝日新聞掲載「キーワード」の解説、日本大百科全書(ニッポニカ)の解説 2021/1/24閲覧
山背(やませ)って何? 気象庁 はれるんランド 2022/7/15閲覧
菅野洋光「気候学からみたやませ」帝国書院 2021/1/24閲覧
フェーンとは コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説、日本大百科全書(ニッポニカ)の解説 2021/1/24閲覧
フェーン現象 ウィキペディア 2021/1/24閲覧
ボラ(風)とは コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)の解説 2021/1/24閲覧
ボーラ ウィキペディア 2021/1/24閲覧
ミストラル(風) コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)の解説 2021/1/24閲覧
ミストラル ウィキペディア 2021/1/24閲覧
シロッコ コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)の解説 2021/1/24閲覧
Sirocco Wikipedia 2021/1/24閲覧
ハムシン ウィキペディア 2021/1/24閲覧
ハルマッタンとは コトバンク 百科事典マイペディアの解説、日本大百科全書(ニッポニカ)の解説 2021/1/24閲覧
ブリザードとは コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説 2021/1/24閲覧

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