気候 系統地理

大気大循環(ハドレー循環・極循環・フェレル循環)

地球を取り巻く大気は、地球の自転や太陽光のエネルギーによって循環しています。

ここでは、地球の大規模な大気の循環について解説します。

大気大循環

地球の大気の循環と恒常風の模式図。円の外側の矢印は地表と上空の大気の循環を示している。出典を加工して作成。 出典:Wikimedia Commons, ©Kaidor, CC BY-SA 3.0, 2021/1/23閲覧

地球の自転や気温差の影響で、大気は地球規模で一定方向に移動しながら循環します。
このような大規模な大気の循環を大気大循環といいます。

大気が一定方向に動いて循環することで、恒常風(こうじょうふう)とよばれる年間通して同じ方向に吹く風が生まれます。
このような大気の循環は、低緯度地域と高緯度地域の熱交換の役割を果たすため、低緯度地域が暑くなりすぎたり、高緯度地域が寒くなりすぎるのを防いでいます。

次の図は、地球上の大気の循環を表した模式図です。
模式図で示した大気の循環を、ハドレー循環、極循環、フェレル循環の3つに分けて説明します。

ハドレー循環

ハドレー循環の模式図。(1)赤道付近の熱帯収束帯で空気が温められて上昇し、(2)上昇した空気が上空で南北へ移動し、(3)しだいに冷却された空気は緯度30°付近で下降気流により地表に降りる。(4)地表では、緯度30°から赤道方向へ風が吹く。 出典:Wikimedia Commons, ©Dwindrim, CC BY-SA 1.0, 2021/1/23閲覧

太陽光のエネルギーを最もたくさんうけるのは太陽が真上にある赤道です。

そのため赤道付近の地表の空気は周囲よりも温かくなり、上昇気流が発生します。
赤道付近で上昇した大気は上空を南北に移動しながら冷却され、緯度30°付近で下降気流が発生して地表に降ります。
緯度30℃付近で地表に降りた空気は、赤道に向かって地表を動いていきます。

このような低緯度帯での大気の循環をハドレー循環といいます。
ハドレー循環では、上空の大気は赤道から緯度30°付近に流れ、地表では緯度30°から赤道へ向かって風が吹きます。

赤道付近は上昇気流が発生するため、海の水蒸気を上空に運んで雲が発生します。
このため、赤道付近には低気圧が発達し、赤道付近では降水量が多くなります。
この赤道付近の低気圧地帯を熱帯収束帯赤道低圧帯)といいます。

季節によって太陽が真上に来る位置が異なる(北回帰線南回帰線の間を往復する)ので、熱帯収束帯の位置は季節によって変わります。
日本の夏至(6月)には太陽は北回帰線上にくるため、熱帯収束帯は赤道付近から北半球側に広がります。
一方、日本の冬至(12月)には太陽は南回帰線上にくるため、熱帯収束帯は赤道付近から南半球側に広がります。

緯度30°付近では下降気流が発生するため、上空の水蒸気が地表に降りて雲がなくなります。
そのため、緯度30°付近では高気圧が発達し、降水量が少なくなります。
この緯度30°付近の高気圧地帯を亜熱帯高圧帯中緯度高圧帯)といいます。

亜熱帯高圧帯も、熱帯収束帯の季節変動に合わせて6月には北側に移動し、12月には南側に移動します。
赤道から少し離れた低緯度地域では、亜熱帯高圧帯の影響下に入り雨が少ない乾季と赤道低圧帯の影響下に入り雨が多い雨季という2つの季節がつくられます。

極循環

地球の断面図と大気大循環の模式図。円の内側の矢印は地表の風の向きであり、円の外側の矢印は地表と上空の大気の循環を示している。 出典:Wikimedia Commons, CC BY-SA 1.0, 2021/1/22閲覧

北極や南極周辺は地球上で最も太陽からうけるエネルギーが小さいため、気温が低いため下降気流が発生します。
北極・南極などの極地で地表に降りた空気は、地表を低緯度側へ動いていきます。

緯度60°付近の地表では、極地や亜熱帯高圧帯(緯度30°付近)から地表を動いてきた空気が集まり、上昇気流が発生します。
緯度60°付近で上空に上がってきた大気は、極地へ向かって上空を移動していきます。

このような高緯度帯での大気の循環を極循環といいます。
極循環では、上空の大気は緯度60°付近から極地へ向かって流れ、地表では極地から緯度60°付近へ向かって風が吹きます。

極地では下降気流が発生するのに加え、低温で飽和水蒸気量が少ないため、北極や南極周辺は乾燥地帯となっています。
この極地の高気圧地帯を極高圧帯といいます。

一方、緯度60°付近では上昇気流が発生するため低気圧が発達し、雲や降水が増えます。
この緯度60°付近の低気圧地帯を亜寒帯低圧帯高緯度低圧帯)といいます。

フェレル循環

北半球の上空と地表の大気の循環の模式図。赤道から北極に向かって順に、ハドレー循環、フェレル循環、極循環が生じている。出典を加工して作成。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2022/10/30閲覧

ハドレー循環と極循環による大気の流れによって、緯度30°付近から60°付近にかけて発生する大気の流れをフェレル循環といいます。

ハドレー循環によって緯度30°付近に発生した下降気流によって、地表では緯度30°から高緯度側に空気の流れができます。
この空気が緯度60°付近で極循環によって極地から流れてきた空気とぶつかり、緯度60°付近で上昇気流によって上空へ上がっていきます。
緯度60°付近の上空の大気は、上昇気流に押されて低緯度側へ流れていき、ハドレー循環によって赤道から流れてきた大気と緯度30°付近でぶつかり、地表へ降りていきます。

このようにフェレル循環はハドレー循環と極循環によってつくられた見かけ上の循環です。

参考文献

大気大循環とは コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説、百科事典マイペディアの解説、世界大百科事典 第2版の解説 2021/1/22閲覧
大気還流とは コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)の解説 2021/1/22閲覧
恒常風 Weblio辞書 実用日本語表現辞典 2021/1/22閲覧
大気大循環 ウィキペディア 2021/1/22閲覧
ハドレー循環とは コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説、デジタル大辞泉の解説、法則の辞典の解説 2021/1/22閲覧
熱帯収束帯とは コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説、百科事典マイペディアの解説、世界大百科事典 第2版の解説 2021/1/22閲覧
亜熱帯高圧帯とは コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説 2021/1/22閲覧
中緯度高圧帯とは コトバンク 百科事典マイペディアの解説、日本大百科全書(ニッポニカ)の解説 2021/1/22閲覧
極循環とは コトバンク デジタル大辞泉の解説 2021/1/23閲覧
極高圧帯とは コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説 2021/1/23閲覧
極高圧帯 ウィキペディア 2021/1/23閲覧
亜寒帯低圧帯とは コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説、デジタル大辞泉の解説 2021/1/23閲覧
フェレル循環とは コトバンク デジタル大辞泉の解説 2021/1/23閲覧

-気候, 系統地理
-,