地表に露出した石灰岩が雨水に侵食(溶食)されて形成された地形をカルスト地形といいます。
ここでは、石灰岩による溶食とカルスト地形について解説します。
石灰岩の溶食とカルスト地形
炭酸カルシウムを主成分とする石灰岩は水に溶けやすい岩石です。
石灰岩は加水分解によって雨水に少しずつ溶けるため、石灰岩の地層内部に水が浸透し、部分的に侵食されていきます。
このような化学反応による石灰岩の侵食を溶食といいます。
溶食は土壌の表面だけではなく土壌の内部からも侵食するため、鍾乳洞などの独特の地形をつくりだします。
石灰岩の溶食によってつくりだされた地形をカルスト地形といいます。
カルスト地形のカルストはスロベニア西部の地方の名前に由来しています。
カルスト地形は独特の景観を示すため、秋吉台(山口)や平尾台(福岡)のように観光地化しています。
また、秩父(埼玉)、美祢(山口)のようにセメントの材料として石灰岩採掘を行って発展した街もあります。
カルスト地形には、鍾乳洞、ドリーネ、ウバーレ、ポリエ(溶食台地)、タワーカルストなどがあります。
鍾乳洞
石灰岩の割れ目から入った地下水が溶食してできた洞穴を鍾乳洞といいます。
鍾乳洞の中は天井からにじみでる炭酸カルシウムの溶液が水滴となって落下しています。
これが長い間時間をかけて天井からつらら状に成長した鍾乳石が発達します。
鍾乳洞の内部は迷路状に広がっていて、内部が数段に分かれていたり、洞窟内を川(地下川(ちかせん))が流れていることも多いです。
鍾乳洞の例としては、秋吉台の秋芳洞(あきよしどう、山口)、安家洞(あっかどう、岩手)、龍河洞(高知)などがあります。
ドリーネ
石灰岩地域にあるすり鉢状の凹地をドリーネといいます。
溶食は石灰岩の割れ目に沿って集中的に浸透するため、溶食により地表にすり鉢状の凹地が多数形成されます。
このような直径数十m~数百m,深さ数m~数百mの陥没穴をドリーネといいます。
鍾乳洞の天井部分に穴が開いてドリーネが形成されることもあります。
複数のドリーネがつながって大きな凹地に成長したものをウバーレといいます。
ウバーレ
ドリーネの溶食が進んで複数のドリーネがつながったものをウバーレといいます。
ウバーレは単一の陥没穴からなるドリーネよりも大きく、後述のポリエ(溶食盆地)よりも小さいものを指します。
ポリエ(溶食盆地)
溶食によって形成されたウバーレが発達すると凹地状の盆地になり、底面には沖積平野が発達します。
このような沖積平野が発達したウバーレをポリエ(溶食盆地)といいます。
ポリエの多くは盆地とは異なり、出口のない閉じ込められた凹地です。
ポリエでは、盆地に地下水面が湧水として現れて、ポリエの中を流れたあとに下流側で地下に流れ込んでいきます。
河川は枯れていることもありますが、大雨時には一時的に湖のようになることがあります。
タワーカルスト
スコールのように短期間に集中した降水があると、凹地には水がたまって溶食作用が促進されます。
一方、凸地では速やかに水が排水されて溶食が進みません。
これが繰り返されると、凹地と凸地の比高(高度差)が大きくなり、塔状や円錐状の地形ができます。
このような地形をタワーカルストといいます。
タワーカルストは桂林(コイリン、中国南部・広西チワン族自治区)やハロン湾(ベトナム)など、熱帯や亜熱帯(温帯の熱帯隣接地域)の降水量が多い地域にみられます。
また、塔状のタワーカルスト以外にも、円錐状のカルスト地形が形成されることもあります。
下の写真は、フィリピンのボホール島の円錐状のカルスト地形です。
乾季に草が枯れてチョコレート色になることからチョコレート・ヒルズとよばれます。
参考文献
カルスト地形とは コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説、日本大百科全書(ニッポニカ)の解説 2021/1/21閲覧
カルスト地形 ウィキペディア 2021/1/21閲覧
溶食とは コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)の解説 2021/1/21閲覧
片平博文他 「新詳地理B」帝国書院(2020)
鍾乳洞とは コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)の解説 2021/1/21閲覧
ドリーネとは コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説、日本大百科全書(ニッポニカ)の解説 2021/1/21閲覧
ウバーレとは コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説、日本大百科全書(ニッポニカ)の解説 2021/1/21閲覧
ポリエとは コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説、世界大百科事典 第2版の解説、日本大百科全書(ニッポニカ)の解説 2021/1/21閲覧
地理用語研究会編 「地理用語集第2版A・B共用」山川出版社