気候 系統地理

低気圧・高気圧に起因する局地風(やませ・シロッコなど)

一部の局地風(地方風)は、低気圧や高気圧の存在が原動力となって風が吹きます。
このページでは、低気圧・高気圧に起因する局地風として、やませやシロッコなどについて解説します。

気圧と局地風

特定の地域に限って吹く風である局地風(地方風)の中には、低気圧や高気圧の影響を受けて一定方向に吹く風が存在します。

低気圧や高気圧が存在すると、気圧差が発生して高気圧から低気圧に向かって風が吹きます。
亜熱帯高圧帯(中緯度高圧帯)高緯度低圧帯のように同じような気圧配置が継続する環境にある場合、高気圧から低気圧に向かって同じような方向に風が吹きます。
このように低気圧や高気圧の気圧配置に起因する局地風としては、シロッコやませ、ブリザードなどがあります。

表 低気圧や高気圧の影響を受けて発生する局地風

局地風地域・季節特徴
やませ東北地方(太平洋側)
6-8月頃
オホーツク海高気圧から吹き込む寒冷湿潤な北東風
シロッコヨーロッパの地中海沿岸
3-5月
低気圧の影響を受けてサハラ砂漠から地中海を越えて吹き込む高温湿潤な南風降砂を伴う
ハムシン
(カムシン)
エジプト
3-5月
低気圧の影響を受けてサハラ砂漠から吹き込む高温乾燥した南風
ブリザード北米の高緯度地域
積雪期
低気圧接近時に積雪を舞い上げてる暴風雪
やまじ
(やまじ風)
愛媛県東端部(四国中央市・新居浜市)
3-5月
低気圧の影響を受けて吹く南風が、四国山地のうち標高が低い中央部を越えて北側に吹き下ろす・フェーン現象を伴う

以下では、やませ、シロッコ、北米のブリザードについて順に解説していきます。

やませ

やませ(山背)が吹く時の典型的な天気図(2019年7月6日)。オホーツク海付近に寒気を伴ったオホーツク海高気圧が停滞している。この高気圧から東日本の太平洋側に吹き込む冷たい北東風がやませである。この天気図では、南側には太平洋高気圧が張り出しているため、オホーツク海高気圧からの風は南西側に向かって進み、東日本の太平洋沿岸に北東風として吹き込む。出典:東北地方の夏の天候の特徴 気象庁 2026/2/11閲覧

やませ(山背)は、北海道・東北・関東の太平洋側で6-8月に吹く冷たい北東風です。
冷たく湿った空気を運ぶため、やませが吹くと気温が低下して曇りや雨が多くなります。
長期間にわたってやませが吹くと、特に東北地方の太平洋岸ではが枯れる冷害をもたらすため、餓死風や凶作風として歴史的に恐れられてきました。

やませは、寒冷湿潤なオホーツク海高気圧の影響によるものです。
オホーツク海~千島列島付近にオホーツク海高気圧が現れると、オホーツク海周辺にはオホーツク海気団という冷たい空気のかたまりが形成されます。
このオホーツク海気団から南方向に冷たい空気が噴き出しますが、日本の東の太平洋には太平洋高気圧が居座っているため、冷たい空気は西に曲がり、北海道~東北~関東の太平洋岸に北東風として到達します。

東北地方の太平洋岸に到達したやませは、そのまま奥羽山脈を越えて、日本海側にも吹き抜けます。
太平洋側で低温・降水をもたらしたやませは、奥羽山脈を越えて日本海側に下る際にフェーン現象により高温・乾燥した風に変わります。
このため、やませが吹くと日本海側では気温・日照時間が増加しての生育が良くなるため、やませは「宝風」と呼ばれています。
このように、やませは奥羽山脈の東側では低温・曇天(降水)を引き起こす一方で、西側にはフェーン現象による高温・晴天をもたらすという対照的な現象を同時に引き起こす局地風です。

標高1,585mの八甲田山から北側を望む(青森県中央部・青森市、2019年8月14日)。東側の太平洋側には雲が広がるのに対し、西側の日本海側には雲が無い。これは東北地方に吹く局地風(地方風)であるやませ(山背)の影響である。太平洋側から吹く寒冷湿潤な北東風であるやませは、太平洋側では低温・曇天(降雨)をもたらすのに対し、奥羽山脈を越えて日本海側に下る際にフェーン現象が発生し、日本海側では高温・晴天をもたらす。出典:Wikimedia Commons, ©Minori_Suzuki, CC BY 4.0, 2026/2/14閲覧

シロッコ(ハムジン)

サハラ砂漠から地中海沿岸に向かって吹く局地風であるシロッコ発生時の気圧配置と風向き。地中海を低気圧が西から東に進む際に、南側の亜熱帯高圧帯(中緯度高圧帯)から地中海上の低気圧に向かって南風(南~南東風)が吹く。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2026/2/15閲覧

シロッコはサハラ砂漠から地中海を越えてヨーロッパの地中海沿岸地域に吹く高温の南風(南~南東風)です。
サハラ砂漠付近では亜熱帯高圧帯(中緯度高圧帯)の影響を受けて高気圧が優勢ですが、高緯度低圧帯にあたる地中海付近を低気圧が西から東に通る際に吹く南風がシロッコです。
エジプトのハムシン(カムシン)、リビアのギブリも同様に、低気圧の影響でサハラ砂漠内陸部から北アフリカ沿岸に吹く高温の南風です。
これらの風はいずれもサハラ砂漠からヨーロッパの地中海沿岸に向けて吹く風の一部ですが、地域ごとに局地風として固有の名前がつけられています。

これらの風は、いずれもサハラ砂漠の高温乾燥した空気を地中海沿岸に運ぶ風であり、砂を巻き上げていることから砂塵(さじん)を伴います。
北アフリカ沿岸で見られるハムシンやギブリはサハラ砂漠から来る高温で乾燥した風です。
しかし、はじめは乾燥した空気が地中海上空を通る間に水蒸気を含み、ヨーロッパにたどり着くころには高温湿潤な風になります。
このため、ヨーロッパの地中海沿岸ではシロッコは高温で雨を伴うことも多いです。
また、シロッコはサハラ砂漠の砂を運ぶため、北アフリカやヨーロッパの地中海沿岸でシロッコが吹くと、降砂(こうさ)を伴うこともあります。

サハラ砂漠の砂が風に飛ばされて地中海を越えている様子。地中海を低気圧が西から東に進む際に、南側の亜熱帯高圧帯(中緯度高圧帯)から地中海付近の低気圧に向かってシロッコと呼ばれる局地風(地方風)が吹く。この風に乗ってサハラ砂漠の砂が対岸のヨーロッパに到達している。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2026/2/15閲覧

北米のブリザード

強風で積雪が舞い上げられるブリザードの様子(2022年1月30日、米国北東部・マサチューセッツ州南東部)。強風により雪が舞い上げられて暴風雪(吹雪)となり、視界が極端に視界が低下している。さらに悪化して視界が全く聞かない状態をホワイトアウトという。出典:Wikimedia Commons, ©(Undescribed), CC BY-SA 4.0, 2026/2/15閲覧

北アメリカのブリザードは冬に低気圧によって引き起こされる風に積雪が舞い上げられて暴風雪(吹雪)になる局地風です。
風が発生する原因自体は低気圧の接近であり、冬季に積雪がある米国の高緯度地域やカナダで見られます。
ブリザードは元々北米の暴風雪を指す言葉でしたが、現在では一般用語化して、世界各地の暴風雪を指す用語になっています。
ブリザードが発生すると、雪が舞い上げられて見通しが利かなくなり極端に視界が悪くなります。
視界が全く聞かない状態をホワイトアウトとよび、車の運転には非常に危険な状態です。
さらに、舞い上げられた雪で道路が埋まり、道路交通に大きな支障が生じます。

参考文献

局地風(キョクチフウ)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2026/2/11閲覧
風(カゼ)とは? コトバンク 改訂新版 世界大百科事典 2025/2/14閲覧
地理用語研究会編「地理用語集」山川出版社(2024)
力石國男、蓬田安弘、石田祐宣「山形県庄内平野の強風「清川だし」の発生機構について第19回 風工学シンポジウム論文集 19-24 (2006)
ミストラルとは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2026/2/15閲覧
Mistral (wind), Wikipedia 2025/2/15閲覧
やまじ風(ヤマジカゼ)とは? コトバンク デジタル大辞泉 2025/2/15閲覧
2024年5月の気象と気象用語 「愛媛県の局地風」 松山地方気象台 2025/2/15閲覧
やませとは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2026/2/14閲覧
東北地方の夏の天候の特徴 気象庁 2026/2/14閲覧
ブリザードとは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)、改訂新版 世界大百科事典、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2026/2/15閲覧
シロッコ(しろっこ)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2025/2/11閲覧
やませとは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典、百科事典マイペディア 2026/2/11閲覧
第54号・ヤマセと暮らし 公益財団法人 環境科学技術研究所 2025/2/11閲覧
《コラム》オホーツク海高気圧 気象庁 2025/2/11閲覧
 気象庁 2025/2/11閲覧

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