気候 系統地理

海洋と気候(海洋性気候と大陸性気候・西岸気候と東岸気候)

地表の7割を占める海洋では、一定方向に流れる海流が流れて循環しています。
海流は低緯度地域の暖かい海水を高緯度地域にもたらしたり、高緯度地域の冷たい海水を低緯度地域にもたらします。
このため、大洋の沿岸では海流の影響を受けた気候になります。
ここでは、海流と気候について解説します。

海洋と気候

地球(左)と火星(右)の比較。サイズ比は実際の比率に合わせている。火星は地球と比べて大気の層が薄く、さらに海洋が存在しないため、昼夜で約100℃以上もの温度差(昼:30℃〜夜:-140°C)が存在する(赤道付近)。一方、地球は大気の層が厚く熱容量が大きい海洋が表面の7割を占めるため、昼夜の温度差ははるかに小さい。赤道直下に位置するガラパゴス諸島(エクアドル)では。昼夜の温度差はわずか5℃程度である(昼:30℃〜夜:25°C)。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2026/7/9閲覧

海洋を構成する水は、空気や岩石と比較して比熱(物質の温度を1℃変化させるのに必要なエネルギー)が大きいため、温度が変化しづらいという性質があります。
海洋が存在しない火星の赤道付近では、昼と夜で約100℃以上もの温度差(昼:30℃〜夜:-140°C)があるのに対し、太平洋の赤道直下に位置するガラパゴス諸島(エクアドル)の昼夜の温度差はわずか5℃程度です(昼:30℃〜夜:25°C)。
地球の表面積に占める海洋の割合は7割にもおよび、海洋の存在が地球の気候の安定に大きな影響を与えています。
海洋の影響は一律ではなく、海洋に接している場所(沿岸部、離島)では特に気温変化が穏やかになり、海洋から遠ざかると気温変動が激しくなります(大陸内陸部)。

以下では、海洋と気候の関係として、1.海洋の影響を受けた気候か否か(海洋性気候と大陸性気候)2.大陸東岸と西岸の違い(西岸気候と東岸気候)について解説します。

海洋性気候と大陸性気候

海洋性気候(左)と大陸性気候(右)の風景の違い。左は海岸近くまで森林が見られる年中温暖なタモン湾のリゾートビーチ(米領グアム島)の写真であり、右は大陸内陸部に位置して非常に乾燥したSaigachiy保護区(ウズベキスタン北西部)の写真である。沿岸部や離島など海洋に接している地域では、水蒸気の供給源であり熱容量も大きい海洋の影響で、安定した降水に恵まれ、昼夜や季節による気温差(日較差や年較差)が小さく安定した気候となる。一方、海洋から離れた大陸内陸部では、降水が限られて乾燥し、昼夜や季節による気温差(日較差や年較差)が大きくなりやすい。出典:(左)Wikimedia Commons, ©Luke Ma from Taipei, Taiwan ROC, CC BY 2.0, 2026/7/9閲覧 (右)Wikimedia Commons, ©Xurmet Jalimbetov, CC BY-SA 4.0, 2026/7/9閲覧

地球上の気候のうち、海洋の影響を強く受けた湿潤で安定した気候を海洋性気候と呼び、海洋から遠く離れた大陸内部で見られる乾燥した大陸性気候と対比されます。

海洋性気候

海岸近くまで森林が見られる年中温暖なタモン湾のリゾートビーチ(米領グアム島)。グアム島は周囲を太平洋に囲まれたマリアナ諸島南部の離島である。沿岸部や離島など海洋に接している地域では、水蒸気の供給源であり熱容量も大きい海洋の影響で、安定した降水に恵まれ、昼夜や季節による気温差(日較差や年較差)が小さく安定した気候となる。このような気候は海洋(マリン)リゾートに最適であり、グアムも東アジア各国からの観光客を受け入れるリゾート(保養地)となっている。出典:Wikimedia Commons, ©Luke Ma from Taipei, Taiwan ROC, CC BY 2.0, 2026/7/9閲覧

海洋性気候は、海洋に囲まれた離島や大洋の沿岸部で典型的に見られる海洋の影響を強く受けた気候です。
蒸発が盛んな海洋は水蒸気の供給源であり、上空で雨雲が形成されるため、海洋に接している陸地でも降水量が多くなります。
加えて、熱容量が大きい(温度を変化させるのに多大なエネルギーが必要な)海洋の影響で、暖まりにくく冷めにくいという特徴があります。
このため、気温の年較差(年間の気温差)や日較差(一日の中の気温差)が小さくなります。

海風(主に日中に海から陸に吹く風)や陸風(主に夜間に陸から海に吹く風)といった海陸風は、海洋性気候で見られる典型的な気象です。

このような海洋性気候は主に大洋上の離島や大陸沿岸でみられますが、海からの卓越風(ある期間に一定方向に吹きやすい風)が強い地域では比較的内陸まで海洋性気候の特徴が現れます。

大陸性気候

ユーラシア大陸内陸部に位置して非常に乾燥したSaigachiy保護区(ウズベキスタン北西部)。海洋から離れた(=隔海度が高い)大陸内陸部では、降水が限られて乾燥し、昼夜や季節による気温差(日較差や年較差)が大きくなりやすい。出典:Wikimedia Commons, ©Xurmet Jalimbetov, CC BY-SA 4.0, 2026/7/9閲覧

大陸性気候は、海洋から遠く離れた(=隔海度が高い)場所で典型的に見られる気候です。
海洋から遠く離れた場所では、水蒸気の供給源である海洋から離れているため、降水量が少ない傾向にあります。
特に、海洋との間に山脈が横たわっていると、海風が山脈を越える際に地形性降雨により水分を失い、乾燥した風(フェーン)が吹きつけます。
このため、大陸内陸部では降水量が少なく晴天が続き、日中は太陽光が差し込み気温が上昇し、夜間は放射冷却により気温が低下します。
さらに、大陸内陸部では、比熱(物質の温度を1℃上げるのに必要なエネルギー量)が大きい水分が少なく、比熱が小さい岩石に囲まれているため、気温の変動が大きくなります。
この結果、大陸内陸部では降水量が少なく、気温の年較差(年間の気温差)や日較差(一日の中の気温差)が大きい大陸性気候を呈します。

ちなみに、日本でも内陸部の盆地では類似した気候が見られ、沿岸部と比較して気温の年較差や日較差が大きくなり、内陸性気候と呼ばれます。

西岸気候と東岸気候

北緯43°付近のユーラシア大陸西岸(左)と東岸(右)の1月の風景の対比。(左)スペイン北西部・ガリシア州のサンティアゴ・デ・コンポステーラ大学。(右)北海道札幌市の北海道大学。ガリシア州はスペイン北西部の大西洋沿岸に位置し、南側の地中海性気候(Cs)と北側の西岸海洋性気候(Cfb)の境界域にあたる。沖合を流れる暖流の影響で年間通して温暖湿潤である。植生も常緑樹が多い。一方、大陸東岸(の沖合)に位置する北海道札幌市は亜寒帯(冷帯)に位置し、落葉広葉樹が分布し、積雪も見られる。季節風(モンスーン)の影響で冬季は大陸からの冷たい風が吹きつけて気温が低く、冬季の積雪は春まで融けない根雪となる。出典:(左)Wikimedia Commons, CC0, 2026/7/16閲覧 (右)Wikimedia Commons, ©ノボホショコロトソ, CC BY 4.0, 2026/7/16閲覧

特に大陸西岸と東岸の気候の差が大きい高緯度地域において、大陸西岸に典型的な気候を西岸気候といい、大陸東岸に典型的な気候を東岸気候といいます。

同じ沿岸部であっても、大陸の西岸か東岸かによって気候の特徴は変わります。
これは、地球の自転の方向(西→東)が同じであるのに対し、西岸と東岸では陸と海の位置関係が逆になるため、海流卓越風(一定方向に吹きやすい風)の影響が変わってくることが原因です。

大陸西岸と東岸の気候の違いは、低~中緯度地域と中~高緯度地域で違った形で現れます。
赤道直下の低緯度地域では、大陸西岸と東岸いずれも熱帯収束帯(赤道低圧帯)の影響下にあるため高温多湿であり、気候帯としては熱帯(A)が広がります。

緯度30°付近では、亜熱帯高圧帯(中緯度高圧帯)の影響で降水量が少なくなります。
大陸西岸では年間通して亜熱帯高圧帯の影響を受けるため、乾燥帯(B)となります(例:サハラ砂漠)。
一方で、大陸東岸では季節風(モンスーン)の影響を受けて雨季が発生するため、サバナ気候(Aw)や温暖冬季少雨気候(Cw)を呈します(例:東南アジア北部~中国南部)。

緯度40°以上の中~高緯度地域では温帯(C)となり、大陸西岸と東岸の気候の差が顕著になります。
中~高緯度地域の大陸西岸(例:西ヨーロッパ)では、西側から向かってくる暖流が水蒸気の供給源となり、偏西風によって内陸部まで雨雲が流れ込むため海洋性気候の特徴が強く表れます(西岸海洋性気候(Cfb))。
このため、暖流の影響で年間通して温暖であり、降水量は多くなります。

一方で中~高緯度地域の大陸東岸(例:日本)では、季節風(モンスーン)の影響を受けて卓越風(一定方向に吹きやすい風)の風向きが季節により変化し、その影響で夏季と冬季の気温が大きくなります。
夏季は、比熱が小さく暖まりやすい大陸側で上昇気流が発生し、相対的に温まりづらい海洋側で下降気流が発生するため、地表では海洋から大陸に向かって風が吹きます
反対に冬季は、比熱が小さく冷めやすい大陸側で下降気流が発生し、相対的に冷めづらい海洋側で上昇気流が発生するため、地表では大陸から海洋に向かって風が吹きます
このため、夏季は海洋上の高気圧から高温高湿な空気が流れ込むため蒸し暑く、冬は大陸から冷たく乾燥した風が吹き込むため、寒い上に空気が乾燥します。

北緯30°付近のアフリカ大陸西岸(左)とユーラシア大陸東岸(右)の風景の対比。(左)モロッコ南東部に広がるサハラ砂漠。(右)沿岸から望む屋久島の照葉樹林(鹿児島県屋久島町)。モロッコはアフリカ大陸北西岸に位置し、年間通して亜熱帯高圧帯(中緯度高圧帯)の影響下にあり乾燥しているため、北緯30°付近では広大なサハラ砂漠が広がる。一方、大陸東岸では、季節風(モンスーン)の影響で雨季が存在し、沖合を流れる暖流が水蒸気を供給するため、亜熱帯高圧帯の影響下にあるにもかかわらず砂漠は存在しない。屋久島は標高が高い独立峰であるため、地形性降雨も発生し、日本の中でも特に降水量が多い。出典:(左)Wikimedia Commons, ©Thomas Woodtli from Zürich, Switzerland, CC BY-SA 2.0, 2026/7/16閲覧 (右)Wikimedia Commons, ©Raita Futo from Tokyo, Japan, CC BY 2.0, 2026/7/16閲覧

西岸気候

大陸西岸の1月の風景(北緯43°付近、スペイン北西部・ガリシア州)。ガリシア州は大西洋に面し、地中海性気候(Cs)と西岸海洋性気候(Cfb)の境界域にあたる。大陸西岸は沖合を流れる暖流の影響で年間通して温暖湿潤であり、冬季でも沿岸部では降雪や氷点下の気温はまれである。出典:Wikimedia Commons, CC0, 2026/7/16閲覧

西岸気候は、大陸東岸と比較して大陸西岸で典型的に見られる気候のことです。
特に中~高緯度地域は大陸東岸との気候の違いが顕著であり、西ヨーロッパで見られる西岸海洋性気候(Cfb)は、典型的な西岸気候です。
大陸西岸の高緯度地域(例:北西ヨーロッパ)では、偏西風海風として吹き込み、暖かく湿った空気が一年を通して供給されるため、年間の気温差(年較差)が小さく、年間通して降水量が安定します。
中緯度地域(例:地中海沿岸)では、夏季のみ亜熱帯高圧帯(中緯度高圧帯)の影響を受けて乾燥するため、夏に乾燥して冬に雨が降る地中海性気候(Cs)を呈します。
さらに低緯度(例:北アフリカのサハラ砂漠)になると、年間通して亜熱帯高圧帯(中緯度高圧帯)の影響下にあるため、乾燥帯(B)となります。

大陸西岸に広がる乾燥した大地(北緯30°、モロッコ南東部)。モロッコはアフリカ大陸北西岸に位置し、亜熱帯高圧帯(中緯度高圧帯)の影響を受けて年間通して乾燥している。北緯30°付近では、沿岸部を除いて広大なサハラ砂漠が広がっている。出典:Wikimedia Commons, ©Thomas Woodtli from Zürich, Switzerland, CC BY-SA 2.0, 2026/7/16閲覧

一方で大陸東岸では、季節風(モンスーン)の影響を受け、夏には南からの海風が吹き、冬には北からの陸風が卓越するため、季節による気温差や降水量の差が大きくなりやすいという特徴があります。
このため、大陸西岸では、同緯度の東岸と比較して気温の年較差(1年間の気温変化)が小さく、降水量は少ない傾向にあります。

加えて、大陸西岸は緯度による気温差も小さくなる傾向にあります。
大陸西岸では、偏西風に押されて大洋を横断してきた海流(例:太平洋の北太平洋海流、大西洋の北大西洋海流)が陸地(大陸)にぶつかり、高緯度側では暖流として高緯度側へ流れ、低緯度側では寒流として低緯度側へ流れます。
高緯度側では暖流により周囲の空気が温められて気温が上がり、低緯度側では寒流が空気を冷やして気温が下がります。
この結果、大陸西岸では大陸東岸と比較して緯度による気温差が縮小します。

大洋の東側(大陸西岸)の海洋の循環。偏西風に押されて東に進む海流(北太平洋海流と南太平洋海流)は、大陸に阻まれて低緯度側へ流れを変えて寒流となる(カリフォルニア海流とペルー海流)。赤道に近くなると、貿易風の影響により西向きに押されて向きを変え、大洋を横断する西向きの海流となる(北赤道海流と南赤道海流)。出典の一部を抜粋・加工して作成。出典:Wikimedia Commons, ©Chtototakoe, CC BY-SA 3.0, 2026/6/25閲覧

東岸気候

大陸東岸の1月の風景(北緯43°付近、北海道札幌市北区・北海道大学)。札幌は亜寒帯(冷帯)に位置し、気温が低いため、冬季の降雪は春先まで融けない積雪(根雪)となり、植生は落葉広葉樹である。大陸東岸は季節風(モンスーン)の影響を受けて卓越風が季節によって反転する。このため、冬季には大陸からの冷たく乾燥した空気が吹き付ける。北海道(札幌)と大陸との間に日本海が存在するため、日本海を通り抜ける際に湿潤な空気になる。札幌は北海道の日本海側に位置し、日本海からの冷たく湿った風が吹き込むため冬季の降雪量は多い。出典:Wikimedia Commons, ©ノボホショコロトソ, CC BY 4.0, 2026/7/16閲覧

東岸気候は、大陸西岸と比較して大陸東岸で典型的に見られる気候のことです。
中~高緯度地域の大陸東岸では、季節風(モンスーン)の影響を大きく受けて、卓越風(一定方向に吹きやすい風)の風向きが夏季と冬季で逆転します。
夏季は海洋から大陸に向かって海風が吹くので、暖かく湿った空気が流れ込み、高温多雨な気候を呈します。
反対に冬は大陸から海洋に向かって陸風が吹くので、大陸内陸部から冷たく乾燥した空気が流れ込み、低温乾燥した気候となります。
この結果、同緯度の大陸西岸と比較して、大陸東岸では気温の年較差(1年間の気温変化)が大きく、夏季に降水が多い傾向にあります(夏季の降雨の影響が大きく、年間降水量も大陸西岸より多い傾向)。
このような東岸気候モンスーンの影響が大きい東アジアに典型的な気候です。

大陸東岸では、年間を通して亜熱帯高圧帯(中緯度高圧帯)の影響下にある緯度帯(北緯30°付近)でも、モンスーンによる海風が吹く時期が雨季となるため、乾燥帯(B)が存在しません。
最寒月平均気温が18℃未満の場合は温帯温暖冬季少雨気候(Cw)や温暖湿潤気候(Cfa)、18℃以上の場合は熱帯サバナ気候(Aw)になります。

大陸東岸の低緯度地域に広がる照葉樹林(北緯30°、鹿児島県屋久島町)。大陸東岸では、季節風(モンスーン)の影響で雨季が存在し、沖合を流れる暖流が水蒸気を供給するため、亜熱帯高圧帯の影響下にあるにもかかわらず砂漠は存在しない。屋久島は標高が高い独立峰であるため、地形性降雨も発生する。このため、年降水量は8,000mmを超え、日本平均の5倍、世界平均の10倍にもおよぶ。出典:Wikimedia Commons, ©Raita Futo from Tokyo, Japan, CC BY 2.0, 2026/7/16閲覧

参考文献

海洋(カイヨウ)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2026/7/9閲覧
火星の大気と気候 平塚市博物館 2026/7/9閲覧
2-4. 意外と涼しい赤道直下 海流が気候に影響する(松岡數充) 特定非営利活動法人 日本ガラパゴスの会 2026/7/9閲覧
海洋性気候(カイヨウセイキコウ)とは? コトバンク 精選版 日本国語大辞典、日本大百科全書(ニッポニカ)、百科事典マイペディア、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2026/7/14閲覧
大陸性気候(タイリクセイキコウ)とは?  コトバンク 精選版 日本国語大辞典、日本大百科全書(ニッポニカ)、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2026/7/14閲覧
西岸気候(セイガンキコウ)とは? コトバンク デジタル大辞泉、精選版 日本国語大辞典、改訂新版 世界大百科事典、日本大百科全書(ニッポニカ)、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典、百科事典マイペディア 2026/7/14閲覧
Galicia (Spain), Wikipedia 2026/7/16閲覧
東岸気候(トウガンキコウ)とは? コトバンク デジタル大辞泉、精選版 日本国語大辞典、改訂新版 世界大百科事典、日本大百科全書(ニッポニカ)、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典、百科事典マイペディア 2026/7/14閲覧
屋久島の気候 国土交通省 2026/7/17閲覧
屋久島|普遍的価値 環境省 2026/7/17閲覧

-気候, 系統地理
-,