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ずれる境界(トランスフォーム断層)

ずれる境界(トランスフォーム断層)は、2つのプレートが互いにすれ違うように動く境界です。
ずれる境界は主に広がる境界の中に点在しますが、アメリカ合衆国カリフォルニア州のサンアンドレアス断層のように大規模なトランスフォーム断層が独立して存在している場所もあります。
このページでは、ずれる境界(トランスフォーム断層)の概要と代表的なトランスフォーム断層であるサンアンドレアス断層について解説します。

プレートテクトニクス広がる境界海洋大陸)・狭まる境界沈み込み帯地形)・衝突帯)・ずれる境界】

ずれる境界(すれ違う境界)とは

ずれる境界(すれ違う境界、横ずれ境界、トランスフォーム断層)の模式図。トランスフォーム断層は、断層の境界面(断層面)が互いに逆方向(横方向)に動く断層であり、プレート境界で見られる。出典:Wikimedia Commons, ©domdomegg, CC BY 4.0, 2024/9/23閲覧

ずれる境界(すれ違う境界)とは、2つのプレートが互いに逆方向に動くプレート境界です。
横ずれ境界やトランスフォーム断層ともよばれます。

ずれる境界は広がる境界(発散境界)海嶺に点在しています。
広がる境界では2つのプレートが互いに離れるように動きますが、プレート境界が途中で横にずれている(平行移動している)箇所が点在します。
このような場所では、広がる境界の中でありながら局所的にプレートが互いに逆方向にすれ違うように動きます。
海嶺上のトランスフォーム断層は小規模なものが多数点在しています。
一方、アメリカ合衆国西海岸のサンアンドレアス断層のように、海嶺が無い場所に1,000kmを以上の長さをもつ巨大なずれる境界が存在する場合もあります。

ずれる境界の分布

ここからはずれる境界がどのような場所に分布しているかについてまとめます。
以下では、広がる境界の海嶺上に点在するずれる境界とそれ以外の場所に点在する大規模なずれる境界について解説します。

海嶺の断裂帯

海嶺広がる境界(発散境界)上の地形ですが、境界がまっすぐ伸びているわけではなく、途中でプレートが横にずれている箇所(トランスフォーム断層)が点在します。
このような場所を断裂帯とよび、トランスフォーム断層(ずれる境界)が見られます。

海洋上の広がる境界(海嶺)上に見られる断裂帯(トランスフォーム断層)の模式図。上側の図は広がる境界を上から見た模式図であり、広がる境界(黒)、狭まる境界(トランスフォーム断層、赤)、断裂帯(茶)を色分けで示している。下側の図は拡大図であり、広がる境界の断裂帯周辺におけるプレートの移動方向を詳細に示している。広がる境界は2つのプレートが互いに離れるように動く境界であるが、途中で横ずれしている箇所(断裂帯)が点在し、そのような場所ではずれる境界(トランスフォーム断層)となっている。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2024/9/25閲覧

上図は海嶺上の断裂帯周辺の模式図であり、プレートが動く方向を青矢印で示しています。
広がる境界自体は2つのプレートが互いに逆方向に動いています(上図黒色)が、途中で横ずれ(平行移動)している箇所(上図赤色)では2つのプレートがすれ違うように動いています。
広がる境界の中でも、横ずれしている箇所だけはトランスフォーム断層(ずれる境界)となっています。

このようなずれる境界は海嶺の分布と同じ場所に存在し、大西洋中央部を南北に走る大西洋中央海嶺やインド洋のインド洋中央海嶺(中央インド洋海嶺)、南太平洋東部の東太平洋海嶺などがあります。

東太平洋のプレート境界。アメリカ合衆国西海岸(カリフォルニア州)のサンアンドレス断層はずれる境界(すれ違う境界)であるが、メキシコから南側の太平洋上を南北に伸びる部分は広がる境界(発散境界)である。この広がる境界を東太平洋海嶺とよぶ。東太平洋海嶺は、西側の太平洋プレートと東側のココスプレート/ナスカプレートの境界を形成している。出典:Wikimedia Commons, ©Siyajkak, CC BY-SA 3.0, 2024/8/10閲覧

大規模なトランスフォーム断層(ずれる境界)

サンアンドレアス断層の航空写真(米国西部・カリフォルニア州南部・カリゾ平原)。サンアンドレアス断層は、東側の北アメリカプレートと西側の太平洋プレートの境界に位置するトランスフォーム断層(ずれる境界)である。トランスフォーム断層としては大規模であり、カリフォルニア州南部から西部にかけて1,200kmにもわたる断層である。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2024/9/25閲覧

トランスフォーム断層(ずれる境界)は主に広がる境界海嶺)上に点在していますが、広がる境界(海嶺)ではない場所にも大規模なトランスフォーム断層が分布しています。

代表的なトランスフォーム断層としては、サンアンドレアス断層(米国西部・カリフォルニア州)、北アナトリア断層(トルコ)があります。

サンアンドレアス断層

米国西部・カリフォルニア州付近のサンアンドレアス断層の位置(赤線)とプレートの移動方向(赤矢印)。カリフォルニア州は東側の北アメリカプレートと西側の太平洋プレートの境界に位置する。サンアンドレアス断層は、2つのプレートが互いにすれ違うように動くトランスフォーム断層(ずれる境界)であり、カリフォルニア州西部~南部を1,200kmにわたって伸びている。サンアンドレアス断層周辺は断層活動の影響で地震多発地帯であり、1906年のサンフランシスコ地震をはじめ、多くの地震災害に見舞われている。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2024/9/25閲覧

サンアンドレアス断層はアメリカ合衆国西海岸のカリフォルニア州を南北に走るトランスフォーム断層(ずれる境界)です。
カリフォルニア州西部~南部を1,200kmにわたって伸びており、海嶺上のトランスフォーム断層と比べると大規模です。
サンアンドレアス断層は東側の北アメリカプレートと西側の太平洋プレートの境界に位置しますが、上図のように2つのプレートが互いにすれ違うように動くため、狭まる境界(収束境界)ではなくずれる境界です。

サンアンドレアス断層は断層活動が活発であり、そのため周辺地域ではたびたび地震が発生します。
断層運動が原因の地震であるため、震源が比較的浅い地震が多発します(震源の深さ数十km以内)。
特に1906年にカリフォルニア州北部で発生したサンフランシスコ地震(マグニチュード7.9)では、サンフランシスコを中心に大きな被害を出しました。
サンフランシスコはサンアンドレアス断層上に位置する港町であり、サンフランシスコ地震ではサンフランシスコ周辺のサンアンドレアス断層上が震源になっています。

1906年のサンフランシスコ地震後の街の様子(米国西部・カリフォルニア州サンフランシスコ中心部)。サンフランシスコはサンアンドレアス断層上に位置し、地震災害が多い場所である。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2024/9/25閲覧

北アナトリア断層

北アナトリア断層(エーゲ海~マルマラ海~トルコ北部)。活断層が移動(=地震が発生)した場所と発生年を色分けした線で表現している。北アナトリア断層は、北側のユーラシアプレートと南側のアナトリアプレート(エーゲ海プレート)の境界に位置し、ずれる境界であることから地震が多く発生する場所である。出典:近藤 久雄「トルコ・北アナトリア断層の地形・地質学的調査ー1944年Bolu-Gerede地震断層の2002・2003年調査ーAFRC News 39 p1-4 (2004)  産業技術総合研究所 活断層研究センター

北アナトリア断層は、トルコのアナトリア半島北部を東西に伸びるトランスフォーム断層(ずれる境界)です。
西端はエーゲ海で、トルコのイスタンブールの南(マルマラ海)を通り、トルコのアナトリア半島北部を東に向かって伸びるトランスフォーム断層です。
北側のユーラシアプレートと南側のアナトリアプレート(エーゲ海プレート)の境界に位置します(エーゲ海プレート(アナトリアプレート)はユーラシアプレートの一部とされることある)。

北アナトリア断層ではたびたび地震が発生しています。
1999年には、イスタンブールの南東に位置するイズミット付近を震源とするイズミット地震トルコ北西部地震、マグニチュード7.6)が発生しました。
この地震では、イズミットやイスタンブールなどトルコ北西部で大きな被害が発生しました。

1999年に発生したイズミット地震(トルコ北西部地震)によって倒壊した建物(トルコ北西部)。トルコのアナトリア半島北部には北アナトリア断層が東西に走っており、たびたび地震が発生する。北アナトリア断層は、トランスフォーム断層(ずれる境界)であり、北側のユーラシアプレートと南側のアナトリアプレート(エーゲ海プレート)の境界となっている(エーゲ海プレート(アナトリアプレート)はユーラシアプレートの一部とされることある)。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2024/9/27閲覧

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参考文献

地理用語研究会編「地理用語集」山川出版社(2024)
Transform fault, Wikipedia 2024/9/8閲覧
トランスフォーム断層(トランスフォームダンソウ)とは? コトバンク 改訂新版 世界大百科事典、百科事典マイペディア 2024/9/8閲覧
トランスフォーム断層 地震調査研究推進本部 2024/9/23閲覧
トランスフォーム断層 ウィキペディア 2024/9/23閲覧
断裂帯(だんれつたい)とは? コトバンク 改訂新版 世界大百科事典、日本大百科全書(ニッポニカ) 2024/9/23閲覧
カリフォルニアを貫く魔の亀裂――サンアンドレアス断層 宇宙航空研究開発機構(JAXA) 2024/9/23閲覧
San Andreas Fault, Wikipedia 2024/9/25閲覧
サンアンドレアス断層 ウィキペディア 2024/9/25閲覧
1906 San Francisco earthquake, Wikipedia 2024/9/25閲覧
第4回 プレート運動学と3種のプレート境界(地球システム科学講義資料) 東北大学理学研究科地学専攻 2024/9/25閲覧
North Anatolian Fault, Wikipedia 2024/9/27閲覧
近藤 久雄「トルコ・北アナトリア断層の地形・地質学的調査ー1942年Niksar-Erbaa地震断層のトレンチ掘削調査速報ーAFRC News 73 p1-3 (2007)  産業技術総合研究所 活断層研究センター
近藤 久雄「トルコ・北アナトリア断層の地形・地質学的調査ー1944年Bolu-Gerede地震断層の2002・2003年調査ーAFRC News 39 p1-4 (2004)  産業技術総合研究所 活断層研究センター
イズミット地震 (1999年) ウィキペディア 2024/9/27閲覧

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