令和6年能登半島地震によって被災された方に心よりお見舞い申し上げます。
地震発生翌日には航空測量各社が上空から被災地の撮影を行い、撮影した航空写真を位置情報とともにネット上で公開しています(無償版 Bois/防災情報提供サービス)。
今回は航空写真から見た被害状況とハザードマップを見比べながら被災リスク低減のためにどうすればよいかを考えていきます。
令和6年能登半島地震
去る2024年1月1日16時10分ごろ、能登半島先端部に位置する石川県珠洲市付近を震源とするマグニチュード7.6(気象庁マグニチュードによる暫定値)、震源の深さ16 km(暫定値)の地震が発生しました。
この地震に伴って観測された最大震度は7(能登南部の石川県志賀町)、津波は1.2m以上(石川県輪島市)となり、北海道日本海側から長崎県対馬にかけての広範な地域で津波が観測されました。
能登半島を中心とした北陸地方では、停電や断水などによるライフライン寸断、家屋倒壊、土砂崩れ、津波浸水、火災といった被害が多数確認されています。
道路交通網も各地で寸断され、能登空港や能登島のように一時的に孤立化してしまった場所も出ています。
翌2日には、被災地支援物資輸送のために羽田空港を出発しようとした海上保安庁の航空機が民間旅客機と衝突して乗員が死傷するいたましい二次災害も発生しています。
このような震災がおきてしまった以上は救助・支援・復旧に全力をあげるしかありませんが、被害を少しでも抑えるために事前に個々人ができることをやっておくことも大切です。
そこで、次の項目からは航空写真被害状況とハザードマップを確認しながら、被災リスク低減のためにできることを考えていきます。
航空写真で見る被害状況
ここからは、地震の被害状況について航空写真とハザードマップを対照しながら見ていきます。
航空測量大手の国際航業やパスコが上空から撮影した航空写真を無料で公開しており、地図上で撮影地点を選んで閲覧できます。
参考:無償版 Bois/防災情報提供サービス 国際航業株式会社 2024/1/3閲覧
津波
沿岸部では地震に伴う津波の被害が発生しました。
次のリンク(航空写真1)では、珠洲市南部の旧宝立町(ほうりゅうまち)の沿岸部の津波浸水被害状況がわかります。
航空写真1(石川県珠洲市宝立町鵜飼付近)©国際航業株式会社・株式会社パスコ
出典:無償版 Bois/防災情報提供サービス 国際航業株式会社 2024/1/3閲覧
航空写真1では、海岸線に近い集落の家屋が軒並み津波の被害で土砂にまみれていることがわかります。
一方、画像手前側の畑や学校(下図のハザードマップの宝立小中学校)のあたりは津波による土砂がギリギリ到達していないようにも見えます。
このような被害状況をハザードマップと見比べてみます。
同じ場所について、珠洲市が公開している同じ場所の津波浸水ハザードマップ(抜粋)はこちらになります。
津波浸水想定地域は青系の色で表されており、水色に塗られた部分(H29・石川県)と青線(H24・石川県)の2パターンが記載されています。
ハザードマップを見ると、宝立小中学校よりもさらに内陸側までの津波浸水が想定されています。
宝立小中学校は浸水想定地域内ですが、津波の際には建物の4階へ避難するように案内されています。
今回の被災直後の航空写真と合わせて見ると、津波浸水のエリアは想定範囲内であり、ハザードマップに記載の避難場所まで到達できていれば津波から命を守ることができたと考えられます。
しかし、今回は震源が近いので津波到達までの時間が短く、避難に必要な時間を確保できなかった可能性があります。
新規に家屋を建てたり借りる場合には、災害リスク低減の観点から浸水想定区域よりも内陸側に住むことが望ましいです。
以上より、津波浸水想定区域の範囲や避難経路をハザードマップで事前に確認しておくことの重要性がわかります。
土砂災害
次に土砂災害による家屋倒壊が発生した場所について見ていきます。
航空写真2(石川県金沢市田上新町付近)©国際航業株式会社・株式会社パスコ
出典:無償版 Bois/防災情報提供サービス 国際航業株式会社 2024/1/3閲覧
こちらの航空写真では、金沢市内の高台の住宅地の斜面が崩壊して家屋が倒壊している場所を撮影しています。
金沢市が公開している同じ場所の土砂災害ハザードマップを確認します。
黄色が土砂災害警戒区域、赤色が土砂災害特別警戒区域です。
今回崩落した箇所は、地図(抜粋)の左下の「急Ⅰ-45170田上団地3」の南端付近です。
ハザードマップの土砂災害警戒区域から南東側にギリギリ外れた家屋も2軒ほど崩落しています。
土砂災害警戒区域のラインは人為的に引いた線であり、区域を外れた途端に突然安全になるわけではありません。
土砂災害警戒区域からギリギリ外れた場所であっても、同様に崩落の危険性があることを今回のケースは如実に表しています。
その土地が土砂災害警戒区域に該当しなければ大丈夫ではなく、ハザードマップの地図を実際に閲覧し、周辺も含めた指定状況を確認するのが大切です。
台風であれば事前に避難することもできますが、地震は突然発生します。
新規に家屋を建てたり借りる場合には、災害リスク低減の観点から土砂災害警戒区域から離れた場所に住むことが望ましいです。
参考文献
令和6年能登半島地震 ウィキペディア 2024/1/3閲覧
2024年1月 令和6年能登半島地震 株式会社パスコ 災害緊急撮影 2024/1/3閲覧
無償版 Bois/防災情報提供サービス 国際航業株式会社 2024/1/3閲覧