気候 系統地理

海洋と気候(地中海と縁海・表層流と深層流・エルニーニョとラニーニャ)

地表の7割を占める海洋は、一定方向に流れる海流をつくりながら循環しています。

海流は低緯度地域の暖かい海水を高緯度地域にもたらしたり、高緯度地域の冷たい海水を低緯度地域にもたらします。
このため、大きな海洋の沿岸では海流の影響をうけた気候になります。

ここでは、はじめに海洋の分類についてまとめ、次に海流と気候について解説します。

海洋の分類

大洋の分類。大洋は、太平洋、大西洋、インド洋の三大洋に分ける場合と、北極海と南極海(おおむね南緯60°以南の海域)を含めて五大洋とする場合がある。 出典:Wikimedia Commons, ©Pinpin, CC BY-SA 3.0, 2021/2/3閲覧

海洋には大きく分けて大洋付属海があります。

大洋は、大陸と大陸の間の広大で深さのある海で、海流の循環がみられます。
大洋は大きく分けて、太平洋、大西洋、インド洋の3つがあり、これらを三大洋といいます。
三大洋に北極海南極海(おおむね南緯60°以南の海域)を加えたものを五大洋といいます。

付属海は、大洋より浅くて面積が狭い、独自の海流が存在せず大洋の海流の影響をうける海です。

付属海は大洋に接する陸に囲まれた狭い海域です。
付属海には、地中海縁海(沿海)があります。

地中海

地中海(ヨーロッパ地中海)と黒海の衛星画像。 出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2021/2/3閲覧

付属海の一種である地中海は、周囲を大陸に囲まれた大規模な内海を指します。
地中海は狭い海峡を通して外洋とつながっています。

地中海は世界各地に存在しますが、一般的に地中海と言った場合はヨーロッパ地中海を指します。
ヨーロッパ地中海は北をヨーロッパ、東をアジア、南をアフリカ大陸に囲まれた海域です。
ヨーロッパ地中海からボスボラス海峡(トルコ)を挟んだ北東側の黒海も地中海です。

他の地中海の例として、アメリカ地中海(メキシコ湾+カリブ海)やバルト海、紅海、ペルシャ湾などがあります。
北極海を大洋としない場合には、北極海も地中海とみなします。

縁海(沿海)

日本海は日本列島によって太平洋から切り離された縁海(沿海)である。 出典:Wikimedia Commons, ©DEMIS World Map Server, Artanisen, CC0, 2021/2/3閲覧

縁海(沿海)とは、半島弧状列島(島弧)、島によって大洋から切り離され、狭い海峡を通して外洋とつながっている海域のことです。

縁海には、日本海、東シナ海、南シナ海、ベーリング海、北海などがあります。

海洋の大循環(世界の海流)

世界の海流。赤色は暖流、青色は寒流を示す。出典を加工して作成。 出典:Wikimedia Commons, by ColoredBlankMap-World-10E.svg: *BlankMap-World6.svg: Canuckguy (talk) and many others, Public domain, 2021/2/1閲覧

上の図は、世界の海流表層流)を矢印で示したものです。
海水は一箇所にとどまるのではなく、地球上の広い範囲を移動し、低緯度地域と高緯度地域を移動しながら循環しています。

たとえば、北大西洋では、メキシコ湾流→北大西洋海流→カナリア海流→北赤道海流が時計回りで循環しています。
南大西洋でも同様に、ブラジル海流→南大西洋海流→ベンゲラ海流→南赤道海流が反時計回りで循環しています。

海流には、赤道に近く暖かい低緯度地域から高緯度地域に向けて流れる暖流(上図赤色)と、極に近い高緯度地域から低緯度地域に流れる寒流(上図青色)があります。

暖流は、暖かい低緯度地域で温められた海水なので、周囲の空気を暖めながら自身は冷めていく海流です。
暖流は周囲よりも温かいため上昇気流が発生し、暖流の沿岸では暖かく雨の多い温暖湿潤な気候になります。

反対に寒流は、寒い高緯度地域で冷やされた海水なので、周囲の空気を冷やしながら自身は暖められる海流です。
寒流は海水面の空気を冷ますため雲ができづらくなり、沿岸は寒くて雨が少ない冷涼で乾燥した気候になります。

熱塩循環と深層流・表層流

熱塩循環と表層流(赤)と深層流(青)。deep water formationは表層の海水が深層へ沈降する場所である。出典を加工して作成。 出典:Wikimedia Commons, by Robert Simmon, NASA. Minor modifications by Robert A. Rohde, Public domain, 2021/2/3閲覧

海流が発生する原因は、海水の密度変化によって説明できます。

高緯度地域では低温や海氷ができるために海水の密度が高くなり、濃度が高く重い海水が表層から深層に向かって沈んでいきます。
このとき大洋の海水全体が押されます。
押された海水は圧力を逃がすために、水温が高く海水の密度が低い低緯度地域で深層から表層に向かって上昇流が発生します。

このため、深層では高緯度地域から低緯度地域に向けて海水が流れ(深層流)、表層では低緯度地域から高緯度地域に向けて流れます(表層流)。
このような、海水の密度に起因する海洋の循環を熱塩循環といいます。

熱塩循環で海水の沈降や上昇がおきる場所は、緯度だけではなく、海水の流入などによる塩分濃度変化なども影響します。

表層流の循環

表層流は真南から真北(あるいはその逆)に向かって流れるのではなく、地球の自転の影響をうけて曲がりながら流れます。

低緯度地域から高緯度地域北に向けての海流は、地表の回転速度がより遅い高緯度地域に向けて流れるため、見かけ上地球より速い速度で西から東に移動(=回転)しているようにみえます。
このため、海流は東寄りに流れているようにみえます。

北大西洋のメキシコ湾流や北太平洋の黒潮(日本海流)、南太平洋の東オーストラリア海流などが該当します。

反対に、高緯度地域から低緯度地域に向けての海流は、地表の回転速度がより速い低緯度地域に向けて流れるため、見かけ上地球より遅い速度で西から東に移動(=回転)しているようにみえます。
そのため、海流は西寄りに流れているように見えます。

北大西洋のカナリア海流や南太平洋のペルー海流(フンボルト海流)、南大西洋のベンゲラ海流などが該当します。

このため、北半球では時計回り、南半球では反時計回りに表層流が循環しています。

地球上の海流は、暖流や寒流として低緯度地域と高緯度地域を回りながら循環し、低緯度地域と高緯度地域の間の熱交換の役割を果たします。
この熱交換のはたらきがないと、太陽に近い低緯度地域は暑くなりすぎ、反対に高緯度地域は寒くなりすぎてしまいます。

表層流の循環には地表を吹く風の影響もあります。

たとえば、北大西洋で生じる卓越風である偏西風メキシコ湾流の流れを強めています。
インド洋の南半球低緯度地域でみられる南東貿易風は、西オーストラリア海流南赤道海流の流れを強める方向に卓越風が吹いています。

海面近くを流れる表層流は卓越風の影響をうけて流れるため、表層流の循環を風成循環といいます。
ただし、表層流の流れの全てを卓越風で説明できるわけではなく、実際には熱塩循環の影響の方が大きいことに注意してください。

海洋と気候

大洋の沿岸地域では、海洋がもたらす水蒸気やその海水温・海流に大きく影響された気候になります。

ここでは、海洋がつくりだす気候についてまとめます。

海洋性気候と大陸性気候

海洋の影響をうけた気候を海洋性気候といい、海から離れた大陸内部の大陸性気候と対比されます。

海洋性気候は、大洋の沿岸や島などでみられる気候です。

大洋の沿岸では、空気よりも比熱が大きい海水の影響で気温の変化(日較差や年較差)が小さい温暖な気候になります。
加えて、海洋では水蒸気の供給源に成るため、沿岸でも雲ができやすく、降水量が多くなります。

このような海洋性気候は主に大陸沿岸でみられますが、海からの卓越風が強い地域では比較的内陸まで海洋性気候の影響をうけます。

一方海から離れた大陸内陸部では、気温の変化(日較差や年較差)が大きくなります。
内陸部では水蒸気の供給源が少ないため降水量が少なく、乾燥した大陸性気候になります。

西岸気候と東岸気候

同じ沿岸部であっても、大陸の西岸か東岸かによって気候の特徴は変わります。
これは、地球の自転の方向(西→東)が同じであるのに対し、西岸と東岸では陸と海の位置関係が逆になるため、海流や卓越風の影響が変わってくることが原因です。

中・高緯度地域において、大陸西岸に典型的な気候を西岸気候といい、大陸東岸に典型的な気候を東岸気候といいます。

西岸気候

西岸気候は主に西岸海洋性気候(Cfb)のことを指します。
大陸西岸の高緯度地域では、偏西風の影響により暖かい海風が一年を通して供給されるため、年間通した温度差(年較差)が小さく一年を通して雨が多い気候です。
西岸の低緯度側では、夏に亜熱帯高圧帯(中緯度高圧帯)の影響をうけて乾燥し、地中海性気候(Cs)になります。

大陸西岸の中・高緯度地域では、偏西風や海流の影響で低緯度地域との大気の混合がおきるため、気温の年較差が小さくなります。
また海からの偏西風の影響を一年中うけるため、年間通して降水量が一定します。

そのため、気温が低く飽和水蒸気量(空気中に含むことができる水蒸気の最大量)が少ない冬でも比較的多く雨がふり、冬に霧が多く発生します。
たとえば、ロンドン(イギリス)は大西洋の影響をうける西岸海洋性気候ですが、冬に霧が多く発生するため「霧の都」とよばれています。

大陸西岸の低緯度地域では、高緯度地域との大気の混合によって逆に低温で水蒸気量が少ない風がもたらされます。
季節風の影響も少ないため、亜熱帯高圧帯の影響下に入る夏は特に乾燥した気候になります。

以上のように、大陸西岸では緯度による気温差が比較的小さいという特徴があります。

東岸気候

一方、中・高緯度地域の大陸東岸では季節風(モンスーン)の影響を大きくうけます。

大陸東岸の高緯度側は年中降水が多い温暖湿潤気候(Cfa)に分類されますが、降水量はモンスーンの影響をうけます。
夏は海洋からの風が吹くので、海洋側の亜熱帯高圧帯の影響をうけて高温で湿度が高くなります。
反対に冬は大陸から風が吹くので、大陸側の高気圧の影響をうけて気温が低下します。

このような東岸気候はモンスーンの影響が大きい東アジアに典型的な気候です。

大陸東岸では、一年を通して亜熱帯高圧帯の影響をうける地域でも、モンスーンにより海風が吹く時期が雨季になるため乾燥帯が存在しません。
最寒月平均気温が18℃未満の場合は温帯の温暖冬季少雨気候(Cw)、18℃以上の場合は熱帯のサバナ気候(Aw)になります。

エルニーニョとラニーニョ

エルニーニョ現象発生時(左)とラニーニャ現象発生時の太平洋の海水温。海水温の平年と比較し、平年より水温が高い場合は赤色、低い場合は青色で色分けを行っている。左はエルニーニョ現象が発生した1997年11月、右はラニーニャ現象が発生した1988年12月のものである。 出典:エルニーニョ/ラニーニャ現象とは「図1 1997年11月の月平均海面水温平年偏差(左)及び、1988年12月の月平均海面水温平年偏差(右)」©気象庁、2021/2/8閲覧

ペルーやエクアドル沿岸では、寒流であるペルー海流(フンボルト海流)が毎年12月頃に弱くなるため、海水温が高くなります。
クリスマス頃におきるこの現象を、スペイン語の一般名詞で「男の子」、固有名詞としては「神の子(=イエス・キリスト)」を意味するエルニーニョとよんでいました。

数年に一度、海水温が高い状態が3ヶ月から半年、ときに一年以上もつづき、世界的に異常気象をもたらします。
そのため、太平洋の日付変更線付近からエクアドルやペルーにかけての赤道付近で平年よりも海水温が高くなる現象をエルニーニョ現象といいます。

ペルー沖では通常、南からのペルー海流が西に曲がり、南赤道海流によって暖められながら南米大陸から離れていきます。
しかし、何らかの要因によって貿易風が弱まると、ペルー沖で暖められた温かい水が同じ場所にとどまりつづけてエルニーニョ現象が発生します。

エルニーニョ現象は複雑な要因がからみあって世界中に異常気象を引き起こします。
ペルーの乾燥地域では降水量が多くなります。
日本では、梅雨明けが遅くなり、冷夏や暖冬になりやすくなります。

エルニーニョ現象とは反対に、ペルー沖の海水温が平年より低い状態がつづく現象をラニーニャ現象といいます。
ラニーニャはスペイン語で「女の子」の意味で、エルニーニョ(男の子)の対義語としてラニーニャと名づけられました。

エルニーニョ現象とは反対に、太平洋の南赤道海流が強くなると、ペルー沖では冷たい水を引き込む力が強くなり、ラニーニャ現象が発生します。

ラニーニャ現象も、世界中で異常気象を引き起こしますが、多くはエルニーニョ現象とは逆方向にはたらきます。
エルニーニョ現象では大雨になるアマゾンでは干ばつをもたらし、日本では夏の猛暑、冬の寒波として現れます。

参考文献

海洋とは コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説 2021/2/3閲覧
付属海とは コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説 2021/2/3閲覧
地中海とは コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説 2021/2/3閲覧
縁海とは コトバンク デジタル大辞泉の解説、日本大百科全書(ニッポニカ)の解説 2021/2/3閲覧
海流とは コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)の解説 2021/2/3閲覧
熱塩循環とは コトバンク デジタル大辞泉の解説 2021/2/3閲覧
海洋大循環とは コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説、知恵蔵の解説 2021/2/3閲覧
南極海 ウィキペディア 2021/2/3閲覧
地理用語研究会編 「地理用語集第2版A・B共用」山川出版社
海洋性気候とは コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説 2021/2/8閲覧
大陸性気候とは コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説 2021/2/8閲覧
西岸気候とは コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説 2021/2/8閲覧
東岸気候とは コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説 2021/2/8閲覧
エルニーニョ/ラニーニャ現象とは 気象庁 2021/2/8閲覧
エルニーニョ・南方振動 ウィキペディア 2021/2/8閲覧
エルニーニョとは コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説、知恵蔵の解説 2021/2/8閲覧
ラニーニャとは コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説、知恵蔵の解説 2021/2/8閲覧

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