地震により発生した津波は沿岸部に甚大な被害を引き起こし、時には地震そのもの以上に大きな被害をもたらします。
このページでは、津波の発生原理と代表的な津波災害(三陸沖地震の地震津波、インド洋大津波、チリ地震津波)について紹介します。
津波とは
津波は、地震や海底火山の噴火などによって海洋で発生する大規模な波です。
「津」は港を意味し、港に押し寄せる異常に大きな波を意味します。
津波の発生要因は複数ありますが、大部分は地震による地殻変動が原因で発生します。
津波が発生すると時には数十mの高さの高波が沿岸部をが襲います。
押し波で建物や人を飲み込みながら川や陸地を駆け上がり、引き波で陸地の人や物を海の中に引きずり込みます。
さらに津波の襲来は1回だけではなく、第二波、第三波と続くことも多いです。
このため、津波が襲った沿岸部では、津波のエネルギー(水圧・水流)により建物が破壊されます。
場合によっては更地に近い状態となり、地上にあったあらゆる物が破壊されて残骸が残されます。
以下では、津波の発生原因別に地震津波とそれ以外の津波に分けて見ていきます。
地震津波
地震による地殻変動が原因で発生する津波を地震津波といいます。
地震が発生すると、海底の近くが急激に上下し、海水が持ち上げられて海面の高さも急激に上下し、それが周囲に波として伝わって津波になります。
マグニチュードが大きな巨大地震の場合には、津波は大洋全域レベルの非常に広範囲に到達します。
このため、地震のゆれが全く届いていない地域にも時間差で津波が到達して被害を及ぼすことがあります。
1960年のチリ地震(Mw 9.5)では、南米のチリ沖で発生した津波が22時間かけて太平洋を横断し、日本沿岸でも津波の被害が発生しました。
地震による津波は沈み込み帯(海洋上の狭まる境界)で発生する海溝型地震が多いです。
たとえば、東北地方の太平洋沖合には日本海溝(西側の北アメリカプレートと東側の太平洋プレートの境界)が存在し、津波を伴う海溝型地震がたびたび発生してきました(例:2011年の東北地方太平洋沖地震(Mj 8.4, Mw 9.1))。
しかし、沈み込み帯以外で発生する地震であっても、震源域が海洋であれば津波が発生することがあります。
たとえば、津波による甚大な被害が発生した1993年の北海道南西沖地震(Mj 7.8)の震源域は、沈み込み帯(海洋プレートと大陸プレートのプレート境界)ではなく、大陸プレート同士のプレート境界です(東側の北アメリカプレートと西側のユーラシアプレート)。
参考
津波地震
津波地震とは、地震の規模(マグニチュード)の割に大規模な津波が発生した地震のことです。
地震のマグニチュードと津波の規模には正の相関があります。
しかし、地震のマグニチュードから想定される以上に大きな津波を引き起こすことがあります。
このような地震を津波地震といいます。
津波地震は単に津波が発生した地震のことではありませんし、津波による大きな被害が甚大であっても、地震のマグニチュードに相応の規模の津波であれば、津波地震とはいいません。
津波地震の例としては、1896年の明治三陸地震(Mj 8.2-8.5)や1946年のアリューシャン地震(Mw 8.1)、1992年のニカラグア地震(Mw 7.7)などがあります。
明治三陸地震では、沿岸部でのゆれは比較的小さかった(震度4程度)にも関わらず、最大で38.2m(岩手県南東部)もの津波が三陸海岸沿岸部を襲い、甚大な被害が発生しました。
以下では、代表的な海溝型地震による代表的な津波災害として、三陸海岸の地震津波、インド洋大津波(2004年のスマトラ沖地震)、チリ地震津波(1960年)について順に紹介します。
三陸海岸の地震津波
東北地方の三陸海岸(青森南東部~宮城北東部)の沖合では、津波を伴う大規模な海溝型地震が繰り返し発生してきました。
この震源域は、東側の太平洋プレートが西側の北アメリカプレートの下にもぐりこむ沈み込み帯にあたります。
プレート境界に日本海溝が位置し、その西側(大陸側)に個別の地震の震源域が広がります。
三陸沖を震源とする地震の例としては、1896年の明治三陸地震(Mj 8.2-8.5)、1933年の昭和三陸地震(Mj 8.1)、2011年の東北地方太平洋沖地震(Mj 8.4, Mw 9.1)などがあります。
これらの地震ではいずれも大規模な津波が発生し、高さ数十mの津波が三陸海岸沿岸を襲いました。
三陸海岸はリアス海岸(リアス式海岸)であるため、津波の被害が大きくなりやすいです。
リアス海岸の湾は山に挟まれた谷が海に沈んだV字型をしており、海側の湾口が広く奥が狭い地形です。
津波が湾に入ると狭い場所に波が集まって高くなり、津波のエネルギー(水圧・水流)が減衰すること無く陸地を襲います。
このため、三陸海岸では歴史上繰り返し津波に襲われてきた歴史があり、巨大な防潮堤や水門の整備などの津波対策が行われてきました。
インド洋大津波
インド洋大津波は、2004年のスマトラ沖地震(Mw 9.1)によって発生した巨大津波です。
スマトラ沖地震は、インドネシア西部のスマトラ島の南西側に伸びるスンダ海溝(ジャワ海溝)付近を震源とする海溝型地震です。
スンダ海溝は南西側のインド=オーストラリアプレートが北東側のユーラシアプレートの下に潜り込む沈み込み帯(海洋上の狭まる境界)です。
地震自体の規模もマグニチュード9クラスの非常に大きなものであり、近隣のスマトラ島(インドネシア西部)では地震のゆれにより大きな被害が発生しました。
インド洋の東縁部で発生した地震ですが、発生した津波はインド洋全域に広がり、アフリカ大陸東岸や南極大陸でも津波が観測されました。
特に、震源から比較的近いインドネシア西部やタイ南部、インド(特にベンガル湾のアンダマン・ニコバル諸島)、スリランカ、モルディブなどでは津波により大きな被害が発生しました。
この地震の死者・行方不明者数は22万人におよび、震源に近いインドネシア西端部を除いてそのほとんどが津波による被害です。
チリ地震津波
チリ地震津波は、1960年のチリ地震(Mw 9.5)によって発生した津波です。
チリ地震はペルー・チリ海溝(アタカマ海溝)で発生した海溝型地震であり、観測史上世界最大のマグニチュードを記録した地震です。
ペルー・チリ海溝は西側のナスカプレートが東側の南アメリカプレートの下に潜り込む沈み込み帯であり、海溝型地震がたびたび発生してきた場所です。
チリ地震で発生した津波は、南米大陸西岸を最大25mで襲い、太平洋を横断して15時間後にハワイ諸島、22時間後に地球を半周して日本の太平洋沿岸を最大6mで襲いました。
日本では三陸海岸(青森南東部~宮城北東部)を中心に被害が発生し、日本でも死者・行方不明者142名に上りました。
このように、津波は非常に広範囲に被害をおよぼす特性があり、地震のゆれがない場合でも注意が必要です。
その他の津波
津波の発生原因は地震だけと限りません。
地震以外の発生源としては、海底火山の噴火や海洋上での核実験、あるいは大規模な土石流が海に流れ込むことで発生することもあります。
1792年には雲仙普賢岳(1,483m, 長崎県東部・島原半島)の火山噴火による山体崩壊が発生し、大量の土砂が東側の有明海になだれ込んで10m以上の津波が発生しました。
津波は対岸の熊本(肥後国)を襲い、さらに反射した波が再び島原半島を襲いました。
この一連の災害は、島原半島での山体崩壊による土砂崩れ(島原大変)と熊本を襲った津波(肥後迷惑)を合わせて島原大変肥後迷惑といいます。
この津波はプレート同士の相互作用ではなく火山活動に起因して発生したものです。
参考文献
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島原大変 寛政四年(1792年)の普賢岳噴火と眉山山体崩壊 国土交通省九州整備局 2024/12/15閲覧
島原大変肥後迷惑 ウィキペディア 2024/12/15閲覧