地形 系統地理

火山(火山の構造・火山活動・マグマの粘性と火山の形・活火山)

地球内部のマグマが地表に噴出する場所である火山では、内的営力により新しい地形が作られます。
このページでは、火山の構造と火山活動、マグマの粘性と火山の形、活火山とは何かについて解説し、火山噴出物や様々な火山地形について紹介します。

火山とは

アレナル火山(1,633m)の噴火の様子(2006年、コスタリカ北西部)。高温の溶岩が赤く光りながら山の斜面を流れている。コスタリカは環太平洋造山帯に位置し、西側の太平洋沖にプレート境界(狭まる境界)が存在し、プレート境界に並行して大陸上に火山が点在する。出典:Wikimedia Commons, ©Matthew Landry, CC BY-SA 2.5, 2024/11/2閲覧

火山は地球内部のマグマが地表に噴出し、山状に堆積した地形です。
地球内部では高温高圧下で岩石が溶けてマグマとなっていますが、マグマが地表に急上昇して噴出する場所(火口)が点在しています。
この項目では、火山の構造や火山活動、マグマの粘性と火山の形、活火山について解説します。

火山の構造と火山活動

火山の構造の模式図。地球内部のマグマが地表に押し上げられ、噴出したマグマが地表に降り注ぎ、山状に堆積した地形を火山という。マグマ溜まりは硬い岩石で構成されている地殻(リソスフェア)の中で例外的にマグマが溜まっている場所である。地球内部(アセノスフェア)から上がってきたマグは、一旦このマグマ溜まりに蓄えられる。マグマ溜まりの大きさ以上のマグマが溜まると地表に噴出する噴火がおきる。出典:産業技術総合研究所 地質調査総合センター 2024/10/29閲覧

上図は火山の内部構造を示した模式図です。
地球表面を構成する地殻リソスフェアは硬い岩石の層ですが、その下には流動性が高いアセノスフェアとよばれる層があります(参考:地球の内部構造)。
アセノスフェアでは高温高圧環境下で岩石が融解してマグマになっています。
地球上のほとんどの場所では硬いリソスフェアが地表を覆っていますが、地球内部のマグマが局所的に地表に吹き出す場所(火口)があります。
このような場所では、たびたびマグマが地表に噴出する噴火が繰り返されます。
噴火の際には単にマグマが噴出するだけではなく、地震(火山性地震)が発生したり、噴出したマグマが地表に堆積したり、山の斜面を流れるなど様々な現象が発生します(火山活動)。
噴火そのものだけではなく、火口などから高温の火山ガスや温泉が噴出したり、地下のマグマの動きによって発生する火山性地震なども火山活動に含まれます。
このように、マグマが地表に噴出すること(噴火)やそれに伴う様々な現象を起こす動きを火山活動といいます。
火山の噴火により火口周辺にはマグマが堆積して山状に降り積もります。
このように火山活動によってできた地形を火山といいます。

マグマの粘性と火山の形

キラウエア火山(1,247m)の溶岩流(米国ハワイ諸島南東部・ハワイ島)。火山が噴火した際に山の斜面を流れるドロドロした液体状の物質を溶岩という。溶岩は高温のまま地表を流れるように動き、溶岩が流れるさまを溶岩流という。キラウエアはマグマの粘性が低い楯状火山であり、比較的粘性が低いため遠くまで流れていく。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2024/11/2閲覧

火山の形はマグマの粘性(粘り強さ)によって変わります。

粘性が高い(=粘り気が強い)マグマが噴出する場所では、マグマが火口の直ぐ近くに堆積するため、溶岩円頂丘(溶岩ドーム)とよばれるドーム状の火山になります。
このような形の火山としては、有珠山(うすざん)の東隣にそびえる昭和新山(398m, 北海道・胆振地方)や雲仙普賢岳(うんぜんふげんだけ)の頂上付近にできた平成新山(1,482m, 長崎県東部・島原半島)などがあります。

粘性の低い(=粘り気が弱い)マグマが噴出する場所では、マグマが火口の遠くまで流れていくため、平べったい形の火山(楯状火山)になります。
楯状火山はハワイ諸島(米国)に多く、ハワイ島のマウナ・ロア(4,169m)やキラウエア(1,247m)などがあります。

溶岩円頂丘はマグマの粘性が高く火口付近に噴出物が堆積するため1回の噴火で地形ができ上がります。
同じ火山の噴火であっても、噴火のたびに火口の位置が変わります。
そのため、マグマの粘性が高い場合は噴火のたびに各火口付近に別々の溶岩円頂丘が形成されます。

一方、マグマの粘性が低いと、火口から離れた場所まで溶岩(マグマ)が流れていくため、噴火を繰り返すたびに広い範囲に厚い堆積物が層を作るように溜まっていきます。
マグマの粘性が非常に低い場合は平べったい楯状火山になりますが、中間的な粘性の場合はマグマが流れる範囲が狭くなり、富士山のような円錐形にマグマが堆積します(成層火山)。

以上のように、噴出するマグマの粘性の違いによって火山の形が大きく変わります。

活火山とは

日本国内の活火山の分布図。活火山は「おおむね過去1万年以内に噴火した火山」および「現在活発な噴気活動のある火山」と定義されている。日本国内には現在111の活火山が存在し、そのうち防災上の重要性が高い50の火山に対して、24時間体制で監視・観測が行われている。活火山の分布には偏りがあり、東海~近畿~四国地方には少ない。活火山の分布は帯状であり、①中央高地~奥羽山脈~北海道~千島列島、②富士山・箱根~伊豆諸島~小笠原諸島、③中国地方~九州~トカラ列島(南西諸島北部)に分布している。出典:Wikimedia Commons, ©気象庁, CC BY 4.0, 2024/10/31閲覧

活火山とは、世界各地の火山のうち「おおむね過去1万年以内に噴火した火山」および「現在活発な噴気活動のある火山」のことを指します。
要するに過去1万年以内に噴火した記録や痕跡があれば活火山ですし、記録がなくても現時点で火口からガスや水蒸気が活発に噴出される(=噴気活動が活発な)火山は活火山です。

現在、日本国内には111箇所の活火山があります。
活火山の分布には偏りがあり、東海~近畿~中国・四国地方にはほとんど分布していません。
活火山はプレート境界(狭まる境界)に沿うように帯状に分布しており、次の3か所があります。

①中央高地北部~奥羽山脈~北海道~千島列島(東側に日本海溝)
②富士山・箱根~伊豆諸島~小笠原諸島(東側に伊豆・小笠原海溝)
③中国地方~九州~トカラ列島(南東側に琉球海溝)

いずれも狭まる境界の大陸側に位置しており、東側には海溝沈み込み帯)が位置しています。
狭まる境界において火山ができるしくみについては、こちらのページでふれています。

参考

噴煙を上げる御嶽山(おんたけさん、3,067m、長野県中信地方・岐阜県中部)。2014年の噴火を南西の鞍掛峠(くらかけとうげ)から撮影したものである。御嶽山は1979年以降、断続的に火山活動が観測されている。2014年には突如水蒸気爆発(噴火)が発生し、登山中の63名が死亡・行方不明になる戦後最悪の火山災害を引き起こした。出典:Wikimedia Commons, ©アルプス岳, CC BY-SA 4.0, 2024/10/31閲覧

活火山・死火山・休火山
火山を分類する用語として活火山のほかに死火山休火山という用語がありますが、現在では使われていません。
元々、これらの用語は次のように定義されていました。

活火山:現在、火山活動が活発な火山
休火山:歴史上、噴火が記録されているが現在は火山活動が休止している火山
死火山:有史以来の噴火記録がなく、現在も火山活動が見られない火山

しかし、火山の噴火サイクルは非常に長く、必ずしも周期的に噴火するわけではありません。
さらに、有史以来火山噴火が見られなかった火山が突然噴火することもあります。
1979年には、死火山だと思われていた御嶽山(おんたけさん、3,067m、長野・岐阜)が噴火し、活火山・休火山・死火山の定義が見直されるきっかけとなりました。

現在では、活火山という用語のみが使われ、それ以外の火山は「活火山ではない火山」や「活火山以外の火山」などとよばれます。

火山噴出物


桜島の2009年の噴火によって吹き上がる黒ずんだ噴煙(鹿児島市・西側の市中心部方面から撮影)。桜島は鹿児島湾の中央部に浮かぶ火山であり、有史以来頻繁に噴火してきた歴史がある。噴煙は水蒸気と火山灰などからなり、水蒸気中心の場合は白色であるが、火山灰の含有率が高くなるにつれて黒ずんだ色になる。噴火時には火山灰などの火山噴出物を大量に含んだ黒っぽい噴煙が成層圏まで吹き上がる。出典:Wikimedia Commons, ©Krypton at Japanese Wikipedia, CC BY-SA 3.0, 2024/11/2閲覧

火山噴出物は、火山活動(噴火)に伴って火口から噴出される様々な物質の総称です。
火山噴出物はその成分や気体・液体状・固体などによって分類されます。
火山噴出物の例として、火山ガス、溶岩、火山砕屑物(かざんさいせつぶつ、火山灰など)、火砕流、火山泥流などがあります。

火山噴出物については、次のページ解説しています。

参考火山噴出物(火山ガス・溶岩・火山灰・火砕流など)

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火山地形

火山活動に伴って地球内部から大量のマグマが噴出することで新しい地形が作られます(内的営力)。
火山自体も火山噴出物が堆積してできた地形であり、それ以外にも様々な規模感の地形が作られます。

火山の分類

南西側の静岡県富士市から見た富士山(3,776m, 静岡県東部・山梨県南東部)。富士山を富士山は複数の噴火による溶岩や火山砕屑物が積み重なったできた成層火山である。富士山は古来から山岳信仰の対象になっており(富士講など)、芸術作品の対象ともなっている。そのため、自然遺産ではなく文化遺産として世界遺産に登録されている(2013年登録「富士山-信仰の対象と芸術の源泉」)。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2022/10/30閲覧

火山の形はマグマの粘性(粘り気の強さ)によって変わります。
粘性の低い(=粘り気が弱い)マグマが噴出する場所では、マグマが火口の遠くまで流れていくため、平べったい形の火山(楯状火山)になります。
一方、粘性が高い(=粘り気が強い)マグマが噴出する場所では、マグマが火口の直ぐ近くに堆積するため、溶岩円頂丘(溶岩ドーム)とよばれるドーム状の火山になります。

火山の分類については次のページ解説しています。

参考火山の形の分類(楯状火山・溶岩台地・溶岩円頂丘・成層火山)

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カルデラとカルデラ湖

白頭山(ペクト山、長白山、2,744m)山頂のカルデラ湖である天池(中国東北部・北朝鮮北部)。白頭山は中国と北朝鮮の国境の長白山脈(チャンバイ山脈)に位置する成層火山である。10世紀には大規模な噴火を起こし、北海道や北東北でも火山灰が堆積した。出典:Wikimedia Commons, ©Bdpmax, CC BY-SA 3.0, 2024/11/27閲覧

火山の噴火により火山内部からマグマが噴出されると内部に大きな空洞ができ、地表が陥没して凹地ができあがります。
このようなくぼみをカルデラといいます。
カルデラには雨水などがたまってカルデラ湖とよばれる湖を形成することも多いです。
カルデラとカルデラ湖については、次のページ解説しています。
カルデラ湖とよく似た火口湖についても紹介しています。

参考カルデラとカルデラ湖・火口湖

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その他の火山地形

噴煙を上げる火山島の火山(イタリア南西部・ストロンボリ島)。火山島は海底火山が度重なる噴火により火山噴出物が堆積し、火山の山頂付近が島になったものである。地中海のイタリア南部~ギリシャ南部は火山が集中し、火山島も数多く見られる。ストロンボリ島は数千年間にわたって小規模な噴火が継続しており、周囲の海からよく見えることから「地中海の灯台」とよばれている。出典:Wikimedia Commons, ©Steven W. Dengler, CC BY-SA 3.0, 2024/11/17閲覧

火山地形は成層火山のような大規模なものだけではなく、比較的小規模なものもあります。
次のページでは、火山地形としてマール溶岩堰止湖などの比較的小規模な地形について紹介しています。

参考火山地形(マール、溶岩堰止湖、火山島など)

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Keywords: マール、溶岩堰止湖、火山島、火砕流台地、シラス台地

火山の分布

世界の火山の分布。濃赤色の点が活火山、淡赤色の線が海嶺(広がる境界)である。活火山の分布が多い場所は、環太平洋造山帯や西インド諸島、、アフリカ大地溝帯、大西洋中央海嶺、イタリア南部などがある。狭まる境界(特に沈み込み帯)や広がる境界などの変動帯では活火山が多く分布する一方、安定地域には活火山が少ない。例外的に太平洋のハワイ諸島(米国)は活火山が集中するホットスポットとなっている。出典:Wikimedia Commons, ©Eric Gaba, CC BY-SA 2.5, 2024/8/27閲覧

地球上で火山が分布する場所は偏っており、主にプレート境界に分布します。
ただし、プレート境界ならどこでも火山があるわけではなく、プレート境界の中でも沈み込み帯(海洋上の狭まる境界)と広がる境界海洋上大陸上)に火山が集中的に分布します。

沈み込み帯では、海洋プレートが大陸プレートの下にもぐりこみ、高温高圧下で融解し、マグマの一部が地表に噴出します(火山)。
このため、沈み込み帯ではプレート境界(海溝)の大陸側に火山が分布します。

一方、広がる境界ではプレート境界(海嶺地溝帯)付近に火山が分布します。
プレート境界では2つのプレートが離れようとする力が働くため、地球内部からマグマが噴出しやすくなっています。
ただし、海洋上の広がる境界では大部分が海嶺上の海底火山となっており、ホットスポットと重なる場所に局所的に火山島が形成されます。

また、プレートとは無関係に局所的に火山が分布する場所があります(ホットスポット)。
ホットスポットはプレート境界とは無関係に存在するため、プレート内部に位置する場合もあれば、プレート境界上に位置する場合もあります。
特に大洋上の広がる境界とホットスポットが重なると局所的に火山活動が活発になり、海底火山が成長してく火山島になります(例:大西洋中央海嶺上のアイスランド島)。

次のページでは、火山が分布する場所として沈み込み帯、広がる境界、ホットスポットについて紹介します。

参考火山の分布(沈み込み帯・広がる境界・ホットスポット)

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参考ホットスポットとプレート移動(ハワイ諸島)

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火山の恩恵と資源

温泉でくつろぐニホンザル(長野県北信地方・山ノ内町・地獄谷野猿公苑)。火山の地下には高温のマグマを蓄えるマグマ溜まりが存在し、周辺の地下水を温める熱源となる。このため、火山周辺では高温の温泉水や水蒸気が噴出し、温泉として利用される。出典:Wikimedia Commons, ©Asteiner, CC BY-SA 3.0, 2024/11/27閲覧

火山は噴火により災害を引き起こすだけではなく、人間に恩恵をもたらします。
火山は地球内部の熱エネルギーを地表にもたらすため、地下水が温められて高温の水蒸気や温泉水が得られます。
有名な温泉地では古くから湯治場(とうじば)としてケガや病気の治療に利用されてきました。
現在では、温泉地周辺は温泉旅館やホテルが立ち並ぶ観光地となり、温泉は観光の目玉となっています。
また、単なる観光資源としてだけではなく、温泉水から析出したミョウバンなどの地下資源の採取も行われています。

次のページでは、火山活動が人間にもたらす恩恵として地熱発電と温泉について解説しています。

参考火山の恩恵と資源(地熱発電・火山性温泉・観光)

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参考文献

火山とは? 火山の魅力 気象庁 2024/10/29閲覧
火山(カザン)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)、改訂新版 世界大百科事典、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2024/10/29閲覧
地理用語研究会編「地理用語集」山川出版社(2024)
気象、地震、火山、海洋の知識 - 火山のはなし 福岡管区気象台 気象庁 2024/10/29閲覧
溶岩円頂丘(ヨウガンエンチョウキュウ)とは? 日本大百科全書(ニッポニカ)、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2024/11/4閲覧
Shield volcano, Wikipedia 2024/10/29閲覧
Columbia Plateau, Wikipedia 2024/10/29閲覧
活火山とは 気象庁 2024/10/31閲覧
活火山(カッカザン)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2024/10/31閲覧
2014年の御嶽山噴火 ウィキペディア 2024/10/31閲覧
御嶽山 ウィキペディア 2024/10/31閲覧
活火山・休火山・死火山の違いは?噴火の種類などの詳しい知識を身につけよ 防災新聞 2024/10/31閲覧
946年白頭山噴火 ウィキペディア 2024/11/27閲覧
中国・朝鮮国境の大活火山白頭山の謎 東北大学総合学術博物館 2024/11/27閲覧

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