ここでは、海岸の地形の中でも砂浜の地形についてまとめます。
以下の地形について取り上げています。
砂浜(さひん)、砂浜(さひん)海岸、干潟、浜堤(ひんてい)、砂嘴(さし)、砂州(さす)、沿岸州(えんがんす)、潟湖(せきこ、ラグーン)、トンボロ(陸繋砂州)と陸繋島(りくけいとう)、海岸砂丘。
砂浜と砂浜海岸
波や風で砂が運ばれてできた海岸を砂浜(さひん)といいます。
「砂浜」はふつう訓読みで「すなはま」と読みますが、地理用語としては音読みで「さひん」と読みます。
砂浜が発達した海岸のことを砂浜海岸といいます。
砂浜の形成メカニズムは次のとおりです。
まず、波による海岸の侵食や河川のはたらきによって運ばれた砂礫(されき)が、海岸線と平行に一定方向にに流れる沿岸流という潮の流れによって運ばれます。
次に沿岸流によって運ばれた砂が海岸に堆積することで砂浜が形成されます。
以下では、海岸付近に砂が堆積して形成された地形について取り上げていきます。
干潟
砂は小さい粒子なので波によって流されやすいです。
そのため、外海に面して波が強い場所では砂は侵食されてなくなるため岩が露出した岩石海岸になり、反対に内海の場合は砂より粒の細かい粘土・泥がたまって干潟になりやすいです。
干潟は、砂や泥がたまった平坦な部分で、潮の満ち引きによって満潮時には海に沈み、干潮時には水が引きます。
干潟は砂泥が供給されやすく(河口や潟湖など)、湾の内側など波がおだやかで侵食が少ない場所(湾の内側など)に形成されます。
浜堤
浜堤(ひんてい)は、海岸付近に高さ数メートル、幅数十から100 m程度の大きさで海岸と平行に砂礫が積み上がった堤防のような地形です。
沿岸州(えんがんす)と共に海岸平野によくみられる地形です。
海の波が砂礫を陸地の奥の方へ押し上げた結果、砂礫が積み上がって堤防のような地形が形成されました。
台風などで暴風時でも波が到達しない陸地側に形成されます。
波だけではなく風の作用でも砂が集まることも多く、海岸砂丘とよく似た地形です。
海岸線が変化しても浜堤は元の場所に残り続けるので、海岸と平行にいくつもの浜堤列が残る場所もあり、浜堤は過去の海岸線の変化を知る手がかりにもなります。
土地利用としては、日本では道路などへ活用されています(例:仙台バイパス)。
砂嘴
沿岸流によって運ばれた砂礫が、陸をはみ出して海に突き出る形で堆積した地形を砂嘴(さし)といいます。
砂の嘴(くちばし)と書いて砂嘴(さし)と読みます。
砂嘴の先端は陸地側に曲がる傾向にあり、写真の野付半島(北海道)は先端が鉤爪(がぎづめ)状になっています。
一方、複数の沿岸流の流れがある場所では、三角形状の砂嘴ができる場合があります
東京湾の富津岬(ふっつみさき、千葉)が三角形状の砂嘴です。
砂州
沿岸流によって運ばれた砂礫が湾の入口で細長く堆積し、湾の入口をほぼふさぐような形になった地形を砂州といいます。
砂州の内側の内海は完全に外海から隔離されているとは限らず、砂州の一部で陸地が途切れて、内海と外海で水が行き来できる潮流口が存在することが多いです。
砂州に隔てられて内海が湖沼化したものを潟湖(ラグーン)といいます。
砂州の形成には諸説あり、湾の入口の砂嘴が伸長してできたという説と沿岸州が湾をふさぐようにできたという説があります。
日本で砂州がみられる例として、天橋立(潟湖は阿蘇海、京都)と弓ヶ浜(潟湖は中海、鳥取)があります。
沿岸州
海岸と平行に発達した細長い陸地のことを沿岸州(えんがんす、沿岸砂州)といいます。
沿岸州も砂州同様、砂礫が積み上がった地形です。
1つ上の「砂州」の項目で紹介した宮津湾では、天橋立が湾の中と外を完全に切り離しています。
一方で沿岸州は途中で途切れている箇所があるため、陸地との間にできた内海は外海から完全には切り離されずに海水が行き来できます。
沿岸州は遠浅の海に発達します。
遠浅の海の沖合で波が海中の砂を巻き上げ、前方に盛り上げることで発達します。
沿岸州は、砂でつくられているので海の侵食をうけやすく、形は変化しやすいです。
日本ではあまり見られず、アメリカ東海岸によく発達しています。
浜堤(ひんてい)とともに海岸平野によくみられる地形です。
参考
沿岸州と沿岸砂州は厳密には別の地形です。
沿岸州はバリア(barrier)ともよばれ、常に海面上に顔を出しています。
一方、沿岸砂州はバー(longshore bar)ともよばれ、潮の満ち引きによって海面上に顔を出したり海面下に沈んだりを繰り返すものや常に海面下に沈んでいるバーがあります。
潟湖
砂州によって外海から仕切られた湾の内側が浅い湖沼と化したものを潟湖(せきこ)または潟(かた)といいます。
ラグーンともいわれますが、ラグーンは潟湖に加えてサンゴ礁でできた礁湖のことを指す場合もあるので注意が必要です。
潟湖は砂州で外海と隔てられていますが、砂州に潮流口とよばれる外界との水の通り道がある場合もあります。
外海との海水の行き来がある汽水湖の場合は真水よりも塩分濃度が高いですが、河川からの淡水の流入や外海と隔てられていることから海水よりも塩分濃度は低いことが多いです。
日本の潟湖としては、サロマ湖(北海道)、霞ケ浦(茨城)、浜名湖(静岡)、中海(鳥取・島根)などがあります。
トンボロ(陸繋砂州)と陸繋島
沖合の離島との間に砂州が発達し、島と本土が陸続きになることがあります。
沖合の離島との間を結ぶ砂州を陸繋砂州(りくけいさす、トンボロ)といい、トンボロによって陸続きになった島を陸繋島(りくけいとう)といいます。
陸地近くに離島があることで沿岸流に乱れが生じ、島と本土の間に砂礫が堆積して島と本土が陸続きになりることで形成される地形です。
陸繋島とトンボロの例として、海外ではモン・サン=ミシェル(フランス)、ジブラルタル(スペイン・イギリス)、マカオ半島(中国)があります。
日本では函館山と函館市街地(北海道)、潮岬と串本市街地(和歌山)、男鹿半島と八郎潟(秋田)があります。
男鹿半島は二本のトンボロがつながった複式陸繋島で、ふたつのトンボロの間は八郎潟が広がっています。
八郎潟はかつて日本で2番目に大きい湖でしたが、戦後に食糧増産のために大部分が干拓されて水田となりました。
海岸砂丘
風によって砂が運ばれて丘状に積もった地形を砂丘といいます。
砂丘の中でも砂浜海岸の砂礫が風によって内陸に運ばれて形成された砂丘を海岸砂丘といいます。
海岸砂丘は海から陸に向けて卓越風(一定方向に吹く風)が強い海岸にできやすい地形です。
鳥取砂丘は観光地として活用されていますが、砂丘は周囲の住民にとって迷惑な存在でもあります。
砂丘の砂が風に吹かれて周囲の農地に飛び散ったり、砂丘が河口にできることで河川が氾濫するなどの被害が出ることがあります。
そのため、砂丘からの砂を防ぐために防砂林を設置したり、植林して砂丘を緑地化するなどの対策が、古くからおこなわれてきました。
関連する地形
関連する海岸の地形として、海岸平野と海岸段丘、海食崖、波食棚については、次の記事で取り上げています。
参考離水海岸の地形(海岸平野と海岸段丘)
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リアス式海岸、溺れ谷、多島海、フィヨルド、エスチュアリー(三角江)については、次の記事で解説しています。
参考沈水海岸の地形(リアス式海岸と多島海・フィヨルド・エスチェアリー)
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三角州については、次の記事で解説しています。
参考川の下流の地形2(三角州とその分類)
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参考文献
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霞ヶ浦とは コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2021/1/19閲覧
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トンボロとは コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典、日本大百科全書(ニッポニカ) 2021/1/19閲覧
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海岸砂丘とは コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典、百科事典マイペディア 2021/1/20閲覧