地球表面の地形を形づくる力を営力(地形営力、地形形成営力)といいます。
営力を理解することで、地形がどのようにして形成されたのかを知ることができます。
ここでは、内的営力と外的営力の2種類の営力による地形の形成について解説します。
内的営力と外的営力
営力(地形営力、地形形成営力)とは、端的に言うと地形を作る力のことです。
「営」の字は造営や営繕などと同じように「作る、こしらえる」という意味で使われています。
営力は大きく分けて内的営力(内作用)と外的営力(外作用)の2種類があります。
内的営力は、地球内部からのエネルギーによって地面が隆起し、新たに地形を作り出す作用です。
内的営力には火山活動や地震、地殻変動などがあり、地殻変動はさらに造山運動と造陸運動に分けられます。
内的営力は地面を隆起させる力であり、ヒマラヤ山脈など世界地図でも見えるような大規模な地形を作り出します。
外的営力は、太陽エネルギーによって地形を作り出す力です。
太陽光によって気温・気圧が変化して風が吹き、水が循環して雨が降って川が流れます。
外的営力には河川・氷河による侵食、運搬、堆積や気温変化・太陽光・水によって岩石が破壊される風化があります。
外的営力は内的営力によって隆起した地形を削る作用です。
内的営力が作り出した大規模な地形を雨風によって削るため、内的営力と比べて外的営力は比較的小規模な地形を作り出します。
内的営力と外的営力の違い
内的営力 | 外的営力 | |
エネルギーの供給源 | 地球内部 | 太陽光 |
地表の変化 | 地表を隆起 | 地表を削り、平坦化 |
具体的な現象 | 地殻変動(造陸運動、造山運動) 火山活動 地震 | 侵食・運搬・堆積 風化 |
地形の例 | 褶曲山脈 弧状列島 準平原 構造平野 | 砂丘 扇状地 三角州 |
主に内的営力によってつくられた世界地図で見えるような大規模な地形を大地形といいます。
大地形はおおよそ100 kmから1,000 km規模の地形で、褶曲山脈や弧状列島(島弧)、海溝などがあります。
一方、主に外的営力によってつくられた小規模な地形を小地形といいます。
小地形には、河川の堆積作用によって河口付近に形成される三角州や氷河の侵食によってがU字状に削り取られた谷であるU字谷などがあります。
大地形と小地形の違いはあいまいなもので、研究者によって定義が異なります。
内的営力による地形の形成
内的営力には、地殻変動(造山運動、造陸運動)、火山活動、地震があります。
内的営力による地形の形成を理解するためには、地球表面を十数枚のプレート分けて考えるプレートテクトニクス論を理解する必要があります。
プレートテクトニクス論については、以下の記事にまとめています。
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解説プレートテクトニクス(3種類のプレート境界のしくみ)
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造山運動
プレートの境界で大規模な山脈や列島をつくる動きを造山運動といいます。
プレート同士が互いに別方向に動くことでプレート間に大きな力が働き、褶曲や断層などの地形が形成されます。
造山運動や造山運動がおきる変動帯(造山帯)については、以下の記事にまとめています。
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解説変動帯と安定地域・造山運動と造山帯
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造陸運動
広範囲にわたる地殻が1000万年以上かけてゆっくりと上昇したり沈降することを造陸運動といいます。
造陸運動は造山運動とは独立して行われる長期的な地形の形成です。
先述の造山運動では、プレート同士に大きな力が働くため褶曲や断層が形成されますが、造陸運動では地殻の広い範囲がゆっくり昇降するため、褶曲や断層はあまり見られません。
地震
地震は、地殻内部の岩石が急激に動いて振動が発生し、その結果大地が大きくゆれる現象です。
地震が発生すると、地面がある断面(断層面)を境にずれ動いて断層ができたり、地盤が隆起したり沈降することで、新しい地形ができあがります。
さらに、海溝型地震のように津波を伴う場合は沿岸部の地形を変えることがあります。
しかし、地震は大きな影響をおよぼす災害のため、地形をつくる力というよりも防災の観点から注目されています。
地震や断層地形については、次の記事でまとめています。
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参考地震(震源と震央・マグニチュードと震度など)
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火山活動
火山活動は、地球内部からマグマが噴出して地表に堆積したり、マグマの動きに伴い火山性地震が発生するなど、マグマが地表におよぼす様々な現象の総称です。
火山活動がくりかえされることで火山から噴出した火山噴出物が地表に積み重なり、カルデラ湖や成層火山などの様々な火山地形が作り出されます。
火山と火山地形については、以下の記事にまとめています。
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解説火山(火山の構造・火山活動・マグマの粘性と火山の形・活火山)
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外的営力による地形の形成
外的営力には侵食、運搬、堆積、風化があります。
このうち、侵食、運搬、堆積は水や氷河の働きによるものが大きいです。
侵食は、主に水の力によって地球表面の岩石や土壌が削られて地形が変わることをいいます。
侵食によって削り取られた岩石や土壌は、水の流れによって「運搬」され、水の流れが弱くなったところでたまっていく「堆積」により、元々の場所から離れた場所へ移されます。
このようにして、侵食をうけた場所と堆積した場所の双方で地形が変化します。
一方で風化は、岩石や土壌がその位置を変えずに、温度変化や一部が水に溶けることで形が壊れていくことをいいます。
風化には気温変化や水の膨張などで岩石が破壊される物理的風化と石灰岩が水に加水分解されて溶けるといった化学反応を伴う化学的風化があります。
侵食と風化については、以下の記事にまとめています。
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参考侵食と風化(侵食輪廻と風化の種類)
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参考文献
営力とは コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2021/1/9閲覧
熊木 洋太「D1-3 地形形成営力/地形の段化/対比と編年/地形学図」自然地理学事典 小池一之ら編 朝倉書店(2017)
鈴木 隆介「地形営力」地形の辞典 日本地形学連合編 朝倉書店(2017)
風化とは コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2021/1/9閲覧
大地形とは コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2021/1/9閲覧
小地形とは コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2021/1/9閲覧
地形 ウィキペディア 2021/1/10閲覧
造陸運動(ゾウリクウンドウ)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典、世界大百科事典 第2版 2021/1/10閲覧
東郷 正美「造陸運動」地形の辞典 日本地形学連合編 朝倉書店(2017)
Epeirogenic movement Wikipedia 2021/1/10閲覧
火山とは コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2021/1/9閲覧
侵食とは コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2021/1/11閲覧