穀物は動物のエネルギー源となる炭水化物を豊富に含むため、人間の主食や家畜のエサとして重要な作物・食べ物です。
ここでは、世界中で栽培される主要な穀物やその種類について解説します。
各作物の詳細については、以下のリンク先をご覧ください。
【穀物・米・小麦・トウモロコシ・ライ麦/エンバク/大麦・雑穀】
穀物

様々な穀物の種子(可食部)。左から右、上から順にパールミレット、米、大麦。ソルガム(モロコシ)、トウモロコシ、エンバク。キビ、小麦、ライ麦、ライコムギ。出典:Wikimedia Commons, ©Miquel Pujol Palol and derivative work: Joancreus, CC BY-SA 3.0, 2023/1/24閲覧
穀物は米や小麦などのイネ科植物から収穫できるデンプンなどの炭水化物を豊富に含む食べ物の総称です。
動物のエネルギー源となる炭水化物を多く含むため、人間の主食や家畜のエサとして世界中で多く生産されています。
人間の主食になる作物としては他にイモ類がありますが、先進国を中心に穀物を主食とする人口の方が多いです。
穀物の中で食用としての生産量が特に多い米、小麦、トウモロコシを三大穀物といいます。
三大穀物は世界中で広く栽培され、世界の穀物生産の89%を占めます。
地域としては、米はアジア、小麦はヨーロッパと北米、トウモロコシは南米とアフリカで主食として利用されています。
ただし、米食の日本でもパンを食べるように世界中で小麦は消費され、トウモロコシも世界中で家畜飼料や食品工業の原料として使用されます。
米は生産国と消費地が一致し、輸出に回されるのは全体の数%に過ぎません。
一方、小麦は特定の地域(北米のプレーリー、ウクライナ~ロシアの黒土地帯、アルゼンチンのパンパ)での生産量が大きく、これらの穀倉地帯から世界中に輸出されています。
トウモロコシは食用だけではなく飼料用や工業原料としても重要で、世界で最も多く生産されている穀物です。
ここからは、様々な穀物について順番に見ていきます。
米

米を水で炊いたご飯(朝鮮料理のパプ)。米は粒のまま水で煮炊きして食べることができ、一度粉にしてから成形して食される小麦やトウモロコシとは対照的である。出典:Wikimedia Commons, ©plusstory1, CC BY 4.0, 2022/11/17閲覧
米はモンスーンアジア(東アジア~東南アジア~南アジア)を中心に各地で主食として食べられている穀物です。
小麦やトウモロコシは一度粉にしてから成形して食されるのに対し、米は粒のまま水で煮炊きして食べることができます。
他にも、調味料(味噌や醤油)や蒸留酒(焼酎や泡盛)の原料としても使用されます。
穀物である米は、植物であるイネ(稲)から収穫されます。
稲は主に水田で栽培され(水稲栽培)、水を通して外部から栄養を供給するため連作障害もおきにくく、毎年同じ場所で耕作することができます。
さらに、同じ面積から収穫できる炭水化物の量(熱量、カロリー)が小麦など他の穀物よりも多いため、同じ面積の耕作地で小麦よりも多くの人数を養うことができます。
そのため、モンスーンアジアの稲作地帯は世界でも人口密度が高い地域になっています。
作物としての稲の詳細(品種、栽培方法など)は、次のページをご覧ください。
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参考イネと稲作(稲と米の違い・栽培条件・水稲と陸稲・浮稲)
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小麦

小麦を原料とした様々な食品。小麦は収穫した種子を砕いて粉状の小麦粉にしてから成形し、パンやパスタなどの形で食される。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2022/11/17閲覧
小麦はヨーロッパや北米を中心に世界中で広く主食として食べられている穀物です。
主食としては世界で最も広く食べられている穀物で、米食の日本でもパンは広く食されています。
収穫した粒をそのまま食べる米に対し、小麦は一度粉(小麦粉)にしてから成形し、パンやパスタの形で食されます。
加えて、ケーキやクッキーなどの洋菓子の原料としても利用されます。
作物としての小麦の詳細(栽培方法や栽培時期の違いなど)は、次のページをご覧ください。
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参考コムギの栽培(冬小麦と春小麦・小麦カレンダー)
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参考
硬質小麦と軟質小麦
小麦の品種は硬質小麦と軟質小麦の2種類に分けられ、それぞれ用途と栽培地域が異なります。
硬質小麦はパンコムギともよばれます。
たんぱく質含有量が多く、焼くと硬くなるためパンや中華麺の原料として使用されます。
硬質小麦の小麦粉は粘り気や弾力が強いため、強力粉(きょうりきこ)とよばれます。
一方で軟質小麦はたんぱく質含有量が少ない小麦で、洋菓子や天ぷら粉などの原料として使用されます。
軟質小麦の小麦粉は粘り気が少なくて柔らかくなり、薄力粉(はくりきこ)とよばれます。
硬質小麦と軟質小麦は栽培地域にも違いがあります。
たとえば、フランスでは地中海性気候(Cw)の南フランスで硬質小麦が栽培されるのに対し、西岸海洋性気候(Cfb)の北部では軟質小麦が栽培されます。
トウモロコシ

トウモロコシを原料とした様々な食品。トウモロコシは品種によっては焼いたり茹でて食べるが、主食とする場合は収穫した種子を砕いて粉状のコーンミール(とうもろこし粉)にしてから成形し、トルティーヤなどの形で食される。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2023/1/21閲覧
トウモロコシは中南米やアフリカなどで主食として食べられている作物です。
トウモロコシも小麦と同様、一度粉(とうもろこし粉)にしてから成形し、トルティーヤ(タコスの生地の部分)などにしてから食されます。
イースト菌による発酵を利用して生地をふくらませてパンとして食べる小麦に対し、トウモロコシは薄皮のまま成形して具を挟んで食べる場合が多いです(例:メキシコ料理のタコス)。
トウモロコシを主食とする地域は限られますが、家畜飼料や食品工業用、バイオエタノール用として世界中で使われます。
食品工業用としては、デンプン(コーンスターチ)や食用油(コーン油)などが生産されます。
特にコーンスターチは、製紙用や食品用の糊として使える上に加水分解すると様々な糖が生成するため、甘味料(コーンシロップ)や医薬品の原料など様々な工業用原料として利用されます。
作物としてのトウモロコシの詳細(品種や栽培条件、生産量や輸出入量など)は、次のページをご覧ください。
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参考トウモロコシの栽培(品種・用途)
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ライ麦・燕麦(エンバク)・大麦
この項目では、小麦以外に広く主食や家畜飼料として利用されている穀物(ライ麦、燕麦、大麦)についてまとめます。
ライ麦(ライムギ)、燕麦(エンバク)、大麦(オオムギ)はいずれも小麦よりも条件の悪い(寒冷・乾燥など)土地で栽培できる作物です。
そのため、小麦が栽培できない地域で主食として食べられてきた歴史があります。
詳細については、次のページをご覧ください。
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参考ライ麦(ライムギ)・燕麦(エンバク)・大麦(オオムギ)
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雑穀(ミレット)
米や小麦のように主食として食べられている穀物を主穀(しゅこく)とよぶのに対し、主食以外として食べられる穀物を雑穀といいます。
雑穀は英語名(millet)を音訳してミレットともよばれます。
雑穀の例として、モロコシ(コーリャン)、キビ(黍)、アワ(粟)、ヒエ(稗)などがあります。
詳細については、次のページをご覧ください。
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参考様々な雑穀・ミレット(モロコシ・キビ・アワ・ヒエ)
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参考文献
地理用語研究会編「地理用語集第2版A・B共用」山川出版社(2019)
穀物 ウィキペディア 2023/1/23閲覧
主食 ウィキペディア 2023/1/24閲覧
須田文明「第5章 フランスにおける小麦=パンのフードシステム」プロジェクト研究 [主要国農業戦略横断・総合] 研究資料 第6号 農林水産政策研究所
片平博文他「新詳地理B」帝国書院(2020)
"Grain Market Summary" International Grains Council 2022/11/6閲覧
下田吉人「主食としての米食」生活衛生 11(1) 1-4 (1967)
小麦粉 ウィキペディア 2022/11/19閲覧
硬質小麦 農業技術事典 NAROPEDIA ルーラル電子図書館 2022/11/19閲覧
軟質小麦 農業技術事典 NAROPEDIA ルーラル電子図書館 2022/11/19閲覧
トウモロコシとは コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2023/1/19閲覧
トウモロコシ ウィキペディア 2023/1/19閲覧
トウモロコシの種類、製品の特性と用途 独立行政法人 農畜産業振興機構 2023/1/19閲覧
とうもろこしの種類 トウモロコシノセカイ 2023/1/19閲覧
コーンフラワー ウィキペディア 2023/1/19閲覧
ライムギ(らいむぎ)とは コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2023/1/22閲覧
エンバク ウィキペディア 2023/1/22閲覧
オオムギ ウィキペディア 2023/1/22閲覧
穀物(こくもつ)とは コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2023/1/23閲覧
雑穀 ウィキペディア 2023/1/23閲覧