地形 系統地理

大陸プレート内部の活断層型地震(内陸型地震・直下型地震)

地震は主にプレート境界付近で発生します(プレート境界型地震)が、プレート境界から少し離れた大陸プレート内部でも活断層がずれ動くことで地震が発生します(活断層型地震)。
大陸プレート内部で発生する地震は、陸地に近い場合が多く、震央周辺に大きな被害をもたらすことがあります。
このページでは、大陸プレート内部で発生する活断層型地震について解説します。

内陸地殻内地震(陸域の浅い地震)

地震の発生場所に基づく分類。狭まる境界(収束境界)の沈み込み帯における模式図である。地震の発生場所としては、プレート境界(緑色)と大陸プレート内(オレンジ色)、海洋プレート内部(水色)、大陸プレートの火山周辺(赤)などがある。2つのプレートの境界面でおきる地震をプレート境界型地震(沈み込み帯では海溝型地震)という。大陸プレート内で発生する内陸地殻内地震(陸域の浅い地震)は、震央付近で大きな被害をもたらし、陸地付近で発生する場合は直下型地震(内陸型地震)ともよばれる。大陸プレート内であっても火山活動に関連して発生する地震のことを火山性地震と呼んで区別する。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2024/12/7閲覧

プレート境界ではなく、大陸プレート内部で発生する地震を内陸地殻内地震といいます。
内陸地殻内地震は陸地周辺で発生することが多く震源が浅いという特徴があるため、陸域の浅い地震ともよばれます。
震央が海洋上に位置する海溝型地震と対比して、内陸部を震央とする地震を内陸型地震とよばれることもあります。
ただし、大陸プレート内部で発生する地震(=内陸地殻内地震)であってもプレート境界以外の海洋上を震央とする場合もある点には注意して下さい。

プレート境界面では2つのプレートの間に大きな力が働くため、プレート境界面から離れたプレート内部にもひずみが生じ、多数の活断層が存在します。
このため、プレート境界面から離れた場所であっても、活断層がずれ動く活断層型地震が発生します。
大陸プレート内部で発生する地震の多くは活断層型地震です。

内陸地殻内地震は、陸地や近海で地震が発生するため震源と人間の居住地の距離が近く、地震の規模(マグニチュード)に対してゆれが大きくなりやすいです。
特に、震央付近の陸地に局所的に大きな被害を与える地震を直下型地震といいます。
東京や大阪などの大都市で直下型地震が発生すると都市機能が麻痺し、膨大な人数が被災して大きな影響をおよぼします。
東京周辺で将来発生が想定される地震を首都直下地震(南関東直下地震)とよび、日本の政治と経済の中心地であり人口も集中することから甚大な被害が想定されています。

250mメッシュ別の全壊・焼失棟数の想定(都心南部直下地震、冬夕、風速8m/s)。将来発生が想定される首都直下地震において、東京都心南部を震央とする地震が発生した場合に想定される建物への被害を地域別に色で表している。千代田区や港区などの都心部よりも、杉並区・世田谷区・江戸川区などの東京郊外で被害が大きくなる想定となっている。出典:特集 首都直下地震の被害想定と対策について(最終報告) 内閣府防災情報 2025/1/2閲覧

日本で発生した内陸地殻内地震

日本で発生した内陸地殻内地震の例としては、1891年の濃尾地震(Mw 7.5)、1995年の兵庫県南部地震(Mj 7.3)、2004年の中越地震(Mj 6.8)、2008年の岩手・宮城内陸地震(Mj 7.2)、2016年の熊本地震(Mj 7.3)、2018年の北海道胆振東部地震(Mj 6.7)などがあります。

1995年の兵庫県南部地震では、震源域(淡路島北部~神戸~兵庫県南東部)が人口が集中する阪神地域に近いため、神戸市などの都市部でも家屋倒壊などの甚大な被害が発生しました(震災は阪神淡路大震災と命名)。
その他の地震も震央周辺の地域に大きな被害をおよぼしました。

1995年の兵庫県南部地震(Mj 7.3)の震源域。兵庫県南部地震は、淡路島から兵庫県南東部にかけて伸びる六甲・淡路断層帯が震源域となった地震であり、震源(断層運動の起点)は淡路島北部である。震源域に近い神戸などの都市部でも家屋倒壊などの大きな被害が発生した。出典:地震調査研究推進本部, 2025/1/3閲覧

世界で発生した内陸地殻内地震

世界で発生した内陸地殻内地震の例として、ここでは2008年の四川大地震(Mw 7.9)と2010年のハイチ地震(Mw 7.0)を紹介します。

四川大地震

2008年の四川大地震(Mw 7.9)によって被災した農業発展銀行の北川県支店(前)と宿舎(後)(中国西南部・四川省中北部・北川チャン族自治県)。北川県の中心地である曲山鎮は、地震による土砂崩れで上流に堰止湖が形成され、決壊の恐れから町に避難命令が出された。軍が動員されて1ヶ月にわたり堰止湖からの排水が行われたが、活断層上に位置する元の町は放棄された。出典:Wikimedia Commons, ©人神之间, CC BY-SA 3.0, 2025/1/2閲覧

2008年の四川大地震(Mw 7.9)は、チベット高原の東端部に位置する龍門山断層(中国西南部・四川省)で発生した地震です。
龍門山断層が位置する龍門山脈は、西側のヒマラヤ山脈から続く標高4,000m以上の高山地帯と東側の標高200-500mの四川盆地の境界線です。
この地域はユーラシアプレート上に位置しますが、すぐ南側にインド=オーストラリアプレートとの衝突帯狭まる境界)が存在するため、その圧力でユーラシアプレート内部にもひずみが蓄積する場所です。

ハイチ地震

2010年のハイチ地震(Mw 7.0)により損壊した大統領官邸(ハイチ・ポルトープランス、2012年)。ハイチ地震では少なくとも10万人以上が死亡するハイチにとって未曾有の災害となった。出典:Wikimedia Commons, ©Trocaire from Ireland, CC BY-SA 3.0, 2025/1/2閲覧

2010年のハイチ地震(Mw 7.0)は中米のハイチで発生した地震です。
ハイチが位置するイスパニョーラ島カリブプレート上に位置しますが、北側には北アメリカプレートとのプレート境界が存在します。
ハイチは中南米でも非常に貧しい国として知られ、地震の大きさと社会基盤の弱さも相まって非常に大きな被害が発生しました。
インフラが破壊されたことでその後の生活にも影響をおよぼし、地震後には衛生状態の悪さからコレラが蔓延(まんえん)して多くの人が亡くなりました。
ハイチでは地震前1世紀以上コレラが流行していませんでしたが、地震後に復興支援のために世界各地から来た人々の中にコレラ菌感染者が存在し、免疫を持っていなかったハイチの人々に一気に広まりました。
2010年にはじまったコレラの流行は2019年まで続き、国連などの国際社会の支援によりコレラ根絶の支援がなされました。

参考文献

地震の発生メカニズムを探る 発生のしくみと地震調査研究推進本部の役割 地震調査研究推進本部 2024/12/7閲覧
地震(ジシン)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)、改訂新版 世界大百科事典、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2024/12/7閲覧
地理用語研究会編「地理用語集」山川出版社(2024)
地震 ウィキペディア 2024/12/22閲覧
南関東直下地震 ウィキペディア 2025/1/1閲覧
首都直下地震の被害想定 対策のポイント 内閣府防災情報 2025/1/1閲覧
兵庫県南部地震 ウィキペディア 2024/12/22閲覧
四川大地震 ウィキペディア 2025/1/1閲覧
北川チャン族自治県 ウィキペディア 2025/1/2閲覧
龍門山脈 ウィキペディア 2025/1/2閲覧
ハイチ地震 (2010年) ウィキペディア 2025/1/1閲覧
2010s Haiti cholera outbreak, Wikipedia 2025/1/1閲覧

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