地図投影法と密接に関連する船舶の航海ルート(航路)として等角航路と大圏航路という概念があります。
等角航路はメルカトル図法の地図を片手に15-17世紀の大航海時代の外洋航海で使われた航路であり、大圏航路は地球上の最短距離を結ぶ航海ルート(航路)です。
このページでは、等角航路と大圏航路についてそれぞれ解説します。
等角航路と大圏航路
大圏航路(大圏コース)は地球上の実際の最短距離を結ぶ航路(ルート)であるのに対し、等角航路(等角コース)はメルカトル図法の地図上で二点間を結んだ直線上を通る航路(ルート)です。
そのため、等角航路は大圏航路よりも遠回りになります。
歴史の長い間、目印がない大海原で現在位置を特定するのは難しかったため、遠回りであっても船が進む方角を固定すれば確実に目的地へたどり着ける等角航路が利用されてきました。
現在では、科学技術の発達により大圏航路の利用が一般的です。
以下では、等角航路と大圏航路について順に解説します。
等角航路
等角航路(等角コース)は、地表を移動する際に経線や緯線との角度を一定に保ちながら進む航路です。
等角航路は地球上の二点間を結ぶ経路としては遠回りですが、羅針盤(方位磁針)を使って船が進む方角を一定方向に保ちながら航海することで確実に目的地に到達できます。
羅針盤は11世紀の中国で実用化され、12世紀終わりには地中海の航海でも使われるようになりました。
それに合わせて羅針盤を用いた航海に使うための地図が発明されました。
13世紀には羅針盤での航海用に方角を示す補助線を引いたポルトラノ海図が用いられ、16世紀には正角図法の一種であるメルカトル図法が使われるようになりました。
メルカトル図法では、地図上で出発地から目的地へ引いた直線が等角航路になります。
昔は何も目印がない大海原で現在位置を把握するのは困難であり、広大な外洋の航海は遭難と隣合わせでした。
そこで、メルカトル図法で作成された地図を元に出発地から目的地への方角を確認し、航海中はひたすら目的地の方角へ進み続けることで目的地へ向かいます。
等角航路は最短経路ではありませんが、現在位置の把握すら困難な時代には、現在位置がわからなくなっても羅針盤で船の進行方向さえ一定に保ち続ければ遭難せずに確実に目的地へたどり着ける点が画期的であり、15-17世紀の大航海時代の航海で広く利用されました。
大圏航路
大圏航路(たいけんこうろ、大圏コース)は、地球上を移動する際に地表面での二点間の最短経路を通る航路です。
正距方位図法の地図では中心点からの大圏航路が直線になります。
メルカトル図法の地図では高緯度地域が引き伸ばされているため、高緯度地域を通る大圏航路を描くとカーブを描きます。
極方向ほど大きく引き伸ばされているため、大圏航路を描くと北半球では北極点側、南半球では南極点側にカーブします。
ただし、メルカトル図法の地図であっても、二点間の距離が近すぎる場合や遠距離であっても赤道付近では二点間の大圏航路はほぼ直線になります。
大圏航路は地形の影響を受けづらい航空機の航路に利用されるほか、現代では外洋の航海には大圏航路が利用されます。
現代では科学技術の発達により大圏航路をたどることも容易になっているため、船舶も燃料節約のために大圏航路で航海を行います。
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参考文献
地球上と地図上の最短距離 国土地理院 2024/7/16閲覧
地理用語研究会編「地理用語集」山川出版社(2024)
羅針盤(ラシンバン)とは? コトバンク 改訂新版 世界大百科事典 2024/5/18閲覧
History of the compass, Wikipedia 2024/5/18閲覧
メルカトル図法(メルカトルズホウ)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2024/5/9閲覧
Rhumb line, Wikipedia 2024/5/9閲覧
大圏航路(タイケンコウロ)とは? コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2024/7/16閲覧