気候 系統地理

間帯土壌(テラロッサ・テラローシャ・レグール等)

ここでは、世界に分布する土壌のうち、間帯土壌についてみていきます。
間帯土壌は、気候や植生とは無関係に岩石・地形・地下水などの影響により生成した土壌のことを間帯土壌といいます。

土壌の分布や成帯土壌については以下のページで解説しています。

土壌の分布と分類(成帯土壌と間帯土壌)

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成帯土壌(ラトソル・黒色土・褐色森林土・ポドゾル・ツンドラ土)

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間帯土壌

気候よりも岩石・地形・地下水などの影響により生成した土壌のことを間帯土壌といいます。
気候の影響をうける成帯土壌よりも分布の範囲が狭い土壌です。
ここでは、間帯土壌として、テラロッサ、テラローシャ、熱帯黒色土、レグール、レス(黄土)について紹介します。

テラロッサ

テラロッサ土壌のワイン用ブドウ畑(イストリア半島、クロアチア)。右側はワイン用のブドウが生育し、左側は赤色の土壌が露出している。出典:Wikimedia Commons, CC BY-SA 3.0, 2022/7/16閲覧

地中海沿岸に広がる石灰岩が風化してできた赤色の土壌をテラロッサといいます。
テラロッサ(terra rossa)はイタリア語で赤い土を意味します。

テラロッサは腐植土が少ないやせた土壌ですが、水はけのよい土壌なのでワイン用ブドウなどの果樹栽培が行われています。

テラローシャ

テラローシャ土壌の広がる道路(アルゼンチン北東部)。出典:Wikimedia Commons, CC BY-SA 2.5, 2022/7/16閲覧

ブラジル高原に広がる赤紫色の土壌をテラローシャといいます。
テラローシャ(terra roxa)はポルトガル語で赤紫色の土を意味します。
テラローシャは玄武岩質の森林土壌で、肥沃な土壌であるためコーヒーカカオサトウキビなどの栽培が行われています。

テラロッサとテラローシャの違い

テラロッサとテラローシャは土の色が似ているだけで別の場所に存在する全然違う土壌です。
どちらも現地語で「赤(あるいは紫)色の土」とよばれている土壌を、カタカナ語に直した結果まぎらわしい名称になりました。

そこで、両者の違いを整理するためにテラロッサとテラローシャの違いをまとめます。

表 テラロッサとテラローシャの違い

 原義分布土壌土壌の特徴作物
テラロッサイタリア語で「赤い土」イタリアなど地中海沿岸風化した石灰岩水はけの良いやせた土壌果樹(ブドウ)
テラローシャポルトガル語で「赤紫色の土」ブラジル東部~南部玄武岩質の森林土壌肥沃な森林土壌コーヒー、カカオ、サトウキビ

参考

テラロッサ(terra rossa)のterraはイタリア語で「土、大地」を意味し、rossaは赤色を意味します。
ポルトガル語由来のテラローシャ(terra roxa)も「同様に赤紫色の土」を意味し、非常にまぎらわしい名前です。

そこで、イタリア語由来のRossa(赤い)の他の用例についていくつか紹介します。
フレッチャロッサ(Frecciarossa, イタリアを南北に走る高速列車、赤い矢の意)
ロッソナポリタン(地中海トマト)
ポルコ・ロッソ(Porco Rosso, 「紅の豚」の主人公)

ロッサ(Rossa)やロッソ(Rosso)のように最後がa, oと表記ゆれがおきるのは、イタリア語には男性名詞と女性名詞があるからです。
Frecciaはaで終わる女性名詞なので、後に続くのは同じくのはaで終わるRossaになります。
一方、紅の豚の主人公であるポルコ・ロッソでは、Porcoはoで終わる男性名詞なので、あとに続くのはRossoになります。
ポルコ(Porco)は豚(英語のPork)、ロッソ(Rosso)は赤色を意味し、イタリア語で「紅の豚」を意味します。

熱帯黒色土

熱帯から亜熱帯(熱帯隣接地域)に分布する黒色の間帯土壌を熱帯黒色土といいます。
デカン高原(インド)のレグール、インドネシアのマーガライト、スーダンのバドーブなどがあります。

レグール

農場に広がるレグール土(インド)。出典:Wikimedia Commons, ©Ganesh Dhamodkar, CC BY-SA 3.0, 2022/7/16閲覧

インド中央部のデカン高原に広がる黒色の土壌をレグールといいます。
レグールは溶岩台地をつくる玄武岩が風化してできた熱帯黒色土の一種で、粘土質で保湿性の高い土壌です。
インドのレグールの分布はサバナ気候の分布におおよそ一致し、植生は草原が広がります。
綿花栽培に適した肥沃な土壌なので、黒色綿花土(黒綿土)ともよばれます。

レス(黄土)

黄土高原の風景(中国山西省渾源県付近)。黄土高原の土壌はレス(黄土)とよばれる細かな粒子からなる。 出典:Wikimedia Commons, ©Till Niermann, CC BY-SA 3.0, 2021/1/21閲覧

レス(黄土)は砂より小さい石英などが含まれる黄褐色の土です。
風によって運ばれた砂が堆積してできた風積土(ふうせきど)に分類される土壌です。
レスはかたい土壌を形成しますが、水に侵食されやすく、一度崩れると粉状になって飛び散りやすい土壌です。

レスは砂漠から風で運ばれた砂が堆積してできた地層で、黄河中流域黄土高原(ホワントー高原、中国)が有名です。

黄土高原はゴビ砂漠などとともに黄砂の源として知られています。

黄砂は、乾燥地帯の砂が風によって上空に巻き上げられ、偏西風にのって別な地域に降る現象です。
黄土高原の砂は春先の嵐などによって巻き上げられ、偏西風にのって中国沿岸の都市部や日本などに降下します。

黄砂は上空を黄褐色にし、視界が悪くなり呼吸器疾患などをもたらします。
黄砂などの粒子は大きさによって分類され、PM2.5のようにPMのあとに数字をつづけて表現します。

参考文献

地理用語研究会編 「地理用語集第2版A・B共用」山川出版社
間帯土壌 ウィキペディア 2022/7/16閲覧
間帯土壌とは コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2022/7/16閲覧
間帯性土壌 コトバンク 岩石学辞典 2022/7/16閲覧
Terra rossa (soil), Wikipedia 2022/7/16閲覧
テラロッサとは コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2022/7/16閲覧
Terra Roxa Wikipedia 2022/7/16閲覧
熱帯黒色土とは コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2022/7/16閲覧
熱帯黒色土壌とは コトバンク 世界大百科事典 第2版 2022/7/16閲覧
レグール土とは コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2022/7/16閲覧
Major soil deposits of India, Wikipedia 2022/7/16閲覧
黄土とは コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典、岩石学辞典の解説、化学辞典 第2版 2021/1/21閲覧
風積土とは コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2022/7/16閲覧
黄土高原とは コトバンク 世界大百科事典 第2版、日本大百科全書(ニッポニカ) 2021/1/21閲覧
ホワントー(黄土)高原 コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2022/7/16閲覧
黄土高原 ウィキペディア 2021/1/21閲覧
黄砂とは コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典、百科事典マイペディア、世界大百科事典 第2版 2021/1/21閲覧
粒子状物質 ウィキペディア 2021/1/21閲覧

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