地形 系統地理

沈み込み帯:海洋上の狭まる境界(収束境界)

海洋上に位置する狭まる境界(収束境界)では、重い海洋プレートが軽い大陸プレートの下に潜り込むため沈み込み帯とよばれます。
このページでは沈み込み帯の分類とそれぞれで見られる地形について解説します。

沈み込み帯とは

狭まる境界(収束境界)の沈み込み帯付近の模式図。沈み込み帯は2つのプレートがぶつかりあう場所であり、高密度で重い海洋プレート(左)が低密度で軽い大陸プレートの下に潜り込む場所である。プレートの境目では、プレートの間に細長い溝状のくぼみができる(海溝)。地球内部に向かって潜り込んだ海洋プレートは、高温高圧環境下で融解してマグマになり、マグマの一部は絞り出されるように地上に噴出する(活火山)。この図では、沈み込み帯が大陸のすぐ沖合に位置するため、活火山は大陸上に位置している。そのため、活火山がプレート境界(海溝)と並行して点在し、それらの活火山が噴火を繰り返して巨大山脈が形成される。出典を加工して作成。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2024/8/24閲覧

狭まる境界(収束境界)において、片方のプレートが別のプレートの下に潜り込み、地球内部に向かって沈み込んでいく場所を沈み込み帯といいます。
沈み込み帯は狭まる境界でみられ、プレート境界に沿って帯状に分布しているため沈み込み「帯」といいます。

沈み込み帯は海洋上の狭まる境界でぶつかり合う2つのプレートに密度差がある場合にみられます。
たとえば、高密度で重い海洋プレートと低密度で軽い大陸プレートがぶつかると、重い海洋プレートは軽い大陸プレートの下に潜り込み、斜め下方向へ沈み込んでいきます。
このように、密度差がある2つのプレートが海底でぶつかる場所が沈み込み帯です。

沈み込む過程で海洋プレートは高温高圧環境下で岩石が溶けてマグマになります。
マグマの一部は絞り出されるように大陸プレートを貫通して地表へ噴出します(上図の火山)。
そのため、沈み込み帯の大陸プレート側では、プレート境界に沿うように活火山が分布します(火山弧、上図では海岸に沿うように伸びる山脈部分)。
この火山弧が海洋上に位置する場合には火山島が並ぶ弧状列島(島弧)となり、大陸上に位置する場合は火山が点在する山脈ができあがります。

また、沈み込み帯のプレート境界付近では、片方のプレートが地球内部に向かって沈み込むため、海底には海溝(かいこう)とよばれる細長くて深い溝状のくぼみができあがります。
海溝は海洋の中でも特に深い場所です。
世界で最も水深が深いマリアナ海溝のチャレンジャー海淵(かいえん、最大水深 10,920m)は、フィリピン海プレートと太平洋プレートの狭まる境界にあります。
マリアナ海溝は、高密度で重い太平洋プレートがフィリピン海プレートの下に潜り込む場所(沈み込み帯)です。

沈み込み帯はプレートがぶつかり合うことで強いひずみが生じるため、沈み込み帯周辺は地震が発生しやすい場所です。
特に、沈み込み帯のプレート境界付近で地震が発生すると、震源が必然的に海底になり、地震だけではなく津波による被害も発生します(海溝型地震)。

沈み込み帯周辺の地形と地質構造の模式図。沈み込み帯は広がる境界(収束境界)のうち、低密度で軽い大陸プレートの下に高密度で重い海洋プレートが潜り込む場所である。海洋プレートが地球内部に潜り込むプレート境界には海溝が形成され、大陸側には火山が弧状に並ぶ弧状列島(島弧)などの地形が見られる。出典:Wikimedia Commons, ©KDS4444, 日本語訳:ObladiOblada, CC BY-SA 3.0, 2024/8/18閲覧

沈み込み帯の分類

沈み込み帯は、プレート境界が大陸からどの程度離れているかによって2種類に分類できます。
大陸から離れた場所にプレート境界が位置すると、火山の位置が海洋上になり弧状列島(島弧)を形成します。
一方、大陸から近い場所にプレート境界が位置すると、火山の位置は大陸上になり多数の火山が分布する山脈が形成されます。

以下では、プレート境界が大陸から近い場合を大陸-海洋型、プレート境界が大陸から遠い場合を海洋-海洋型として、それぞれについて順に説明します。

大陸-海洋型

広がる境界(収束境界)の模式図(沈み込み型、大陸-海洋型)。大陸-海洋型では、低密度で軽い大陸プレートの下に高密度で重い海洋プレートが潜り込む(沈み込み帯)。沈み込んだ地殻は高温高圧環境下で溶けてマグマとなり、一部は絞り出されるように大陸プレートを貫通して地表へ噴出する(活火山)。大陸-海洋型では沈み込み帯の位置が大陸から近いため、大陸上に火山が弧を描くように分布し、その噴火の影響で海岸線に沿うように巨大山脈ができあがる。出典を加工して作成。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2024/8/18閲覧

上図はプレート境界が大陸に近いため大陸上に火山が並ぶ沈み込み帯(広がる境界)です。
広がる境界が大陸に近い海洋上に位置するため、マグマが吹き上がる場所が大陸上になり、大陸の沿岸部では海岸線に沿って多数の火山が並ぶ巨大山脈ができあがります。
大陸のすぐ沖合には、大陸の海岸線に並行するように海溝(沈み込み帯)があります。

大陸-海洋型の沈み込み帯の例としては、南米西海岸沖のナスカプレートと南アメリカプレートの広がる境界があります。
この沈み込み帯は、ナスカプレート(海洋プレート)が南アメリカプレート(大陸プレート)の下に潜り込む場所であり、チリ海溝(最大水深 8,065m)が存在します。
この境界は南アメリカ大陸の西海岸の海岸線に並行するように存在し、南アメリカ大陸側には海岸線に沿うようにアンデス山脈が位置します。

沈み込み帯の大陸側では、沈み込み帯で沈み込んだマグマが絞り出されるように噴出されるため、沈み込み帯に並行して火山が弧を描くように分布します。
そのため、アンデス山脈には多数の火山が分布しており、活発な火山活動が見られます。

南アメリカ大陸西海岸の海底地形図。南アメリカ大陸の西海岸の沖合には、海岸線に沿うようにペルー・チリ海溝(ペルー海溝+チリ海溝)が位置している(濃青色)。ペルー・チリ海溝では、海洋プレートである西側のナスカプレートが、大陸プレートである東側の南アメリカプレートの下に潜り込んでいる。南アメリカ大陸の西海岸には、海溝に沿うようにアンデス山脈が南北に走っている(赤~茶褐色)。アンデス山脈の地下では、プレート境界で沈み込んだ地殻が高温高圧環境で融解し、その一部がマグマとして地表に噴出する場所(火山)が点在している。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2024/8/18閲覧

海洋-海洋型

広がる境界(収束境界)の模式図(沈み込み型、海洋-海洋型)。海洋-海洋型では、低密度で軽い大陸側のプレートの下に高密度で重い海洋プレートが潜り込む(沈み込み帯)。沈み込んだ地殻は高温高圧環境下で溶けてマグマとなり、一部は絞り出されるように大陸プレートを貫通して地表へ噴出する(活火山)。海洋-海洋型では沈み込み帯の位置が大陸から遠いため、大陸の沖合に火山が円弧状に分布し、その噴火の影響で火山島が円弧状に並ぶ弧状列島(島弧)ができあがる。出典を加工して作成。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2024/8/18閲覧

上図はプレート境界が大陸から離れているため大陸の沖合に火山島が並ぶ沈み込み帯(広がる境界)です。
広がる境界が大陸から離れた海洋上に位置するため、マグマが吹き上がる場所が海洋上になり、大陸の沖合に弧を描くように火山島が並びます。
このように、海溝に沿うように並ぶ島々を弧状列島(こじょうれっとう)または島弧(とうこ)とよびます。
弧状列島の沖合側には、島々に並行するように海溝(沈み込み帯)があります。

海洋-海洋型の沈み込み帯は、西太平洋に数多くみられます。
たとえば、伊豆諸島~小笠原諸島~マリアナ諸島(米領北マリアナ諸島~グアム)は、海洋-海洋型の弧状列島です。
これらの諸島の東側には伊豆・小笠原海溝マリアナ海溝が南北に走っており、西側のフィリピン海プレートの下に東側の太平洋プレートが沈み込んでいます(次の地図を参照)。

フィリピン海プレート周辺の海底地形図。フィリピン海プレートは狭まる境界に囲まれており、多数の海溝を形成しており(水深が深い紫色部分)、その西側(大陸)には弧状列島(島弧)が見られる(水深が浅い緑~赤色部分、小規模離島は小さすぎてこの縮尺では見えない)。出典を加工して作成。出典:Wikimedia Commons, ©NOAA Photo Library, CC BY 2.0, 2024/8/18閲覧

参考文献

地理用語研究会編「地理用語集」山川出版社(2024)
Convergent boundary, Wikipedia 2024/8/17閲覧
Subduction, Wikipedia 2024/8/18閲覧
沈み込み帯(シズミコミタイ)とは? コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2024/8/18閲覧
マリアナ海溝(マリアナカイコウ)とは? コトバンク 改訂新版 世界大百科事典、百科事典マイペディア 2024/8/18閲覧
海溝型地震 地震本部 2024/8/18閲覧
Izu–Bonin–Mariana Arc, Wikipedia 2024/8/18閲覧
弧状列島(コジョウレットウ)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2024/8/18閲覧
Island arc, Wikipedia 2024/8/18閲覧

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