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【共通テスト解説】2025年 旧地理B 本試験 第2問

大学入試共通テスト(2025年 旧地理B 本試験 第2問)の解説ページです。

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問題と解答

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問題文のPDFは下記リンク先から入手し、図表や問題文を手元に置きながら解説(次項)を見て下さい。
リンク切れ対策のため複数サイトへリンクを貼っていますが、いずれも同一です。

入試速報トップ:河合塾朝日新聞
問題:河合塾朝日新聞
解答:河合塾朝日新聞

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過去問サイト:日本の学校中日進学ナビ

解説

第2問は資源と産業に関する設問です。

問1 木材伐採量と用途

世界の地域別木材伐採量と用途内訳のグラフを見て、用途と地域を選ぶ問題です。
凡例の「ア」「イ」は薪炭材または製材・丸太です。
地域A, Bはアジアまたは北・中央アメリカです。

まず、「ア」はアフリカで多く、ヨーロッパで少ない用途です。
発展途上国では燃料として木材を伐採する薪炭材としての用途が多いのに対し、先進国では石油などの化石燃料を使うため薪炭材としての需要は少ないです。
このため、「ア」は薪炭材です。
「イ」は逆に製造業が発達した先進国で需要が高い製材・丸太であるとわかります。

次にAとBを比較すると、Aは薪炭材としての利用が多く、Bは少ないです。
このことから、薪炭材としての利用が多いのは発展途上国が多いアジアです。
逆にアメリカ合衆国やカナダなどの先進国の割合が高い北・中央アメリカでは、薪炭材としての利用は少なくなるはずです。
よってAがアジアでBが北・中央アメリカです。

<別解>
ちなみに、アジアと北・中央アメリカの比較では、アジアの方が人口が圧倒的に多いので、木材伐採量の絶対量が多い方がアジアであるという考え方も可能です。
この場合、アジア・アフリカで利用が多い「ア」とアジア・アフリカで利用が多い「イ」というように、より先進国と発展途上国で用途が分かれていることが明確になり、「ア」「イ」の対比がより明確になります。

正解:3

必要知識:
・薪炭材の意味
・先進国と発展途上国による木材の用途の違い

問2 菜種油とパーム油

菜種油とパーム油の生産量上位20か国の地図と説明文を見て、菜種油に該当する地図と説明文を選ぶ問題です。

カ:生産国はヨーロッパとカナダが多く、中国やインド、日本、ロシアでも生産
キ:生産量上位「20か国」であるはずなのに、インドネシアとマレーシア、タイのみ

「キ」の生産国が東南アジアに集中していることから、「キ」がパーム油であることがわかります。
菜種油を採取する菜の花は日本でも育てられており、春には各地で菜の花畑が見られることからも、日本でも生産されている「カ」が菜種であることが推測できます。

e:主に食用に利用されており、かつては灯火にも用いられた。
f:主に食用、洗剤・石鹸・化粧品などの原料として利用され、近年は生産量が急増している。

菜種油は食用油であるサラダ油の原料の1つです。
江戸時代には夜の明かりに菜種油が使われていました。
よってeは菜種です。

fについても、パーム油について述べた内容です。

二択なので菜種油とパームのどちらか片方の特徴がわかれば正答できます。

正解:1

必要知識:
・菜種油とパーム油の生産地域
・菜種油とパーム油の用途

問3 エネルギー自給率と供給量

各国の1次エネルギー自給率と1人当たり1次エネルギー供給量の表と説明文が与えられ、当てはまる組み合わせを当てる問題です。
注釈より、1次エネルギー自給率は、生産量÷供給量です。

表1を見ると、1次エネルギー自給率は100%未満と100%以上、1人当たり1次エネルギー供給量は2トン未満と2トン以上の4象限の表となり、左下(自給率100%未満かつ1人当たり供給量2トン以上)は日本となっています。

日本以外のP~Rの国の選択肢は、オーストラリア、ブラジル、ベトナムとなっています。
この中で先進国はオーストラリアであり、発展途上国はブラジルとベトナムです。
また、国土面積が広く資源が豊富で人口密が低いオーストラリアとブラジルに対し、日本とベトナムは国土面積が小さく、かつ人口もそれなりに多いため、人口密度が高いという違いがあります。

先進国は発展途上国よりも1人当たりのエネルギー供給量が多い傾向にあるため、日本とRは先進国、PとQは発展途上国だと考えられます。
次に、国土面積が広く資源が豊富な国(人口密度も低い)はエネルギー自給率が高い傾向にあるため、QとRはそのような国であると考えられます。

以上より、先進国かつ国土面積が広く資源が豊富なオーストラリアがRです。
発展途上国であるがオーストラリア同様に国土面積が広く資源が豊富なブラジルがQです。
残った発展途上国かつ国土面積が狭く人口密度も高いベトナムがPです。

次に国と説明文の対応です。

サ:水力が約60%、再生可能エネルギーが約20%を占めている。2011年から2021年にかけて、1人当たり1次エネルギー供給量はほぼ変わらない。
シ:石炭が約50%、水力が約30を占めている。2011年から2021年にかけて、1人当たり1次エネルギー供給量が約2倍になった。
ス:石炭が約50%、天然ガスが約20%を占め、化石燃料による発電量が多い。2011年から2021年にかけて、1人当たり1次エネルギー供給量は減少した。

説明文サ~スを見ると、過去10年間の1人当たりエネルギー供給量は供給量が、「サ」は不変、「シ」は増加、「ス」は減少です。
減少している「ス」は、経済発展がある程度落ち着いて成熟している国であると考えられます。
よって、選択肢の中で唯一先進国であるオーストラリア(R)が「ス」に対応します。

次に「サ」と「シ」を比較すると、「サ」は水力発電が60%もの割合となり、再生可能エネルギーも20%であり高水準です。
このため、人口に対して広大な国土面積をもち(=人口密度が低い)、川が豊富な国であると考えられます。
ブラジルとベトナムを比較すると、広大な国土国土面積をもち雨量豊富な熱帯に位置しアマゾン川が広がるブラジル(Q)が「サ」です。

残った「シ」がベトナム(P)です。
ベトナムはVISTAの一角として知られる新興国なので、過去10年間で1人当たりエネルギー供給量が2倍になる点も妥当です。
また、ベトナム南部(ホーチミン周辺)はメコン川の河口域(メコンデルタ)にあたり、大河川が流れていることから水力発電が一定割合(30%)を占めるのも妥当です。
ただし、ベトナムは人口密度が高いです。
ベトナムは、農地面積当たりのカロリー供給量が多い作物である米を栽培する稲作地帯の国なので、米によって少ない農地でも多数の人口を養うことができるためです。
国土面積が小さく人口密度がブラジルより高いため「サ」のように水力発電が半分以上になったり、再生可能エネルギーが20%も占めるのは考えづらいです(ブラジルの方が「サ」の条件により当てはまる国土条件)。

正解:3

必要知識:
・オーストラリア、ブラジル、ベトナムのおおよその国土面積
・オーストラリアとブラジルが資源大国であること
・ブラジルは雨量豊富な熱帯に位置し、アマゾン川などの大河川が流れて水資源が豊富であること
・稲作をする国は人口密度が高く、ベトナムは稲作地帯に位置すること
・ベトナムは経済発展がめざましい新興国であること

問4 GDP別産業割合

国別GDPの産業別割合を示した棒グラフが与えられ、国名の組み合わせを当てる問題です。
タ~ツの3か国は、インドネシア、シンガポール、ペルーのいずれかです。

まず、都市国家であるシンガポールを識別するために農林水産業に着目します。
「タ」「チ」では一定割合を占めるのに対し、「ツ」は農林水産業がゼロです。
このため、農地がほとんど無い都市国家であるシンガポールが「ツ」であることがわかります。

次に、ペルーを識別するために鉱業に着目します。
「タ」と「チ」では、「チ」の方が鉱業の割合が高いです。
ペルーはチリやオーストラリアと並ぶ銅鉱山がある国であり、その他の非鉄金属の生産も盛んです。
このため、鉱山の割合が高い「チ」がペルーであり、残った「タ」がインドネシアです。

正解:2

必要知識:
・シンガポールが都市国家であること
・ペルーで鉱業が盛んであること

問5 綿織物輸出国

綿織物輸出額上位10か国と各国のシェアを表した表を見て、不適切な文を選ぶ問題です。

①労働集約型の鉱業である織物業が、より安価な労働力を求めた結果である
→正しい
中国は安価な労働力を背景に世界の工場として発展してきた新興国です。
織物業のような労働集約的な軽工業は物価・賃金の安さを背景に新興国が参入しやすい業種です。

②デカン高原で栽培されている綿花が綿糸に加工され、織物の原料となっている
→正しい
デカン高原のレグール土は農業に適しており綿花栽培が盛んです。
インドは昔から綿織物の輸出国であり、大航海時代はヨーロッパ人が交易に訪れています。

③製品の企画・開発によって差別化を図り、製品単価を高める
→正しい
物価・人件費が高いため、商品価格を高くせざるおえない先進国の戦略です。
イタリアなどの高級ファッションブランドは、ブランド力を高めることで高価格でも商品が売れるように工夫し、高い人件費でも利益が出るようにしています。

④熟練工による付加価値の高い織物業が南部の州に集積している。
→誤り

イタリアで繊維産業が盛んなのは北イタリアです。

④が知識問題になっていますが、①~③が正しいことが分かれば消去法で正当にたどり着けます。

正解:4

必要知識:
・繊維産業(軽工業)における新興国の優位性
・デカン高原の綿花栽培とインドの繊維産業
・先進国の製造業の戦略
・北イタリアで繊維産業が盛んであること

問6 工業業種別生産額割合

日本の1965年と2014年の工業の業種別生産額割合を表したレーダーチャートが与えられ、業種とレーダーチャートの年代を当てる問題です。
業種「マ」「ミ」は化学または機械です。

まず2つのレーダーチャートを見ると、Yの方だけ業種「マ」が飛び抜けて多いです。
「マ」が化学または機械であるため、どちらの業種が生産額が多いかを考えます。
日本は自動車工業が発展して世界的にも有名なメーカー(トヨタ、ホンダなど)がたくさんある上に、自動車自体の商品単価も非常に高いです(1台数百万円)。
他にも、世界的にも知られる各種機械メーカー(建設機械メーカーの小松製作所(コマツ)やカメラ・医療機器メーカーのオリンパスなど)が多数存在し、加えて機械は商品単価が高いジャンルです。
以上をふまえると、Yで生産額割合が飛び抜けて多い「マ」が機械、「ミ」が化学であると考えられます。
そして、高度経済成長期の中頃の1965年と経済発展を遂げた後の2014年でどちらが機械工業が発展しているかを考えると、2014年のほうが機械工業が発展しきっている分、割合が高いはずです。
昔は人が手作業で行っていた仕事の機械への置き換えが進んでいるため、現代では産業の中での機械のウェイトが大きくなっています。
よって機械の割合が高いYが2014年、Xが1965年です。

正解:3

必要知識:
・日本の機械工業の発展

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