大学入試共通テスト(2024年 地理B 本試験 第3問)の解説ページです。
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目次
問題と解答
共通テスト(2024年 地理B 本試験)の問題と解答のリンクです。
問題文のPDFは下記リンク先から入手し、図表や問題文を手元に置きながら解説(次項)を見て下さい。
リンク切れ対策のため複数サイトへリンクを貼っていますが、いずれも同一です。
入試速報トップ:福井新聞|東進|朝日新聞|
問題:福井新聞|東進|朝日新聞|
解答:福井新聞|東進|朝日新聞|
試験日(2024年)から年数が経過している場合はリンク切れの可能性が高いため、下記サイトを利用して下さい。
解説
第3問は都市の人々の生活と人口動態に関連する問題です。
問1日本の大都市圏の人口動態と土地利用の推移
写真と説明文の組み合わせを選ぶ問題です。
写真は3つあり、日本の大都市圏の「臨海部」「都心」「郊外」のいずれかであると問題文に書かれています。
写真は粗くてわかりづらいですが、それぞれの特徴から
A:奥の方に水域(海か川?)が見える。他の写真には水域は見えない。
→臨海部
C:手前に戸建て住宅、奥にマンションらしき建物が並ぶ
→郊外(のニュータウン)
B:ビルが立ち並び、ビルの間を高架の道路が走っている。
→都心
ということがわかります。
次に説明文について見ていきます。
イ:「この地域では、1960年当時、核家族世帯の転入が急増した。現在では、高齢化が進んでいる場所がみられる一方、建て替えも進み、新たな転入者が増えている場所もある。」
「1960年当時、核家族世帯の転入が急増」との記述から、戦後の大都市圏の住宅不足を背景に開発されたニュータウンに関する記述であるとわかります。
→郊外(C)
ウ:「この地域では、1960年当時、多数の人々が働いていた。現在では、広大な空き地を利用して大規模なレジャー施設が立地している。」
すでに「イ」は郊外なので、都心と臨海部の二択です。
では、「広大な空き地」に「レジャー施設」があるのは都心と臨海部のどちらでしょうか。
普通に考えれば、地価が高くて土地を使いたい人がたくさんいる都心に広大な空き地がある可能性は低いです。
実際、有名なレジャー施設も都心のど真ん中ではなく少し郊外に立地しています。
ディズニーランドは新宿や東京駅ではなく東京湾に面した場所(千葉県西部・浦安市)にありますし、USJは梅田や難波から離れた大阪湾に近い臨海部に立地しています。
→臨海部(A)
ちなみに、1960年代には臨海部には写真Aのように鉄道や建物が立っていたにも関わらず、その後広大な空き地ができたのは次のような理由です。
戦後(昭和時代)の日本では国内の工場で作った製品を鉄道で港まで運び、そこで船に積み替えて海外へ輸出していました。
荷物の積み替えを「荷役」といい、多くの人手が必要なため港湾労働者が多数働いていました。
しかし、日本の経済成長に伴って物価や人件費が高くなったため、人件費の安い国に工場が移転していきました。
その結果、港の鉄道や建物が不要になり、広大な空き地ができました。
ア:「この地域では、1960年代から1980年代にかけて、地価上昇などにより人口が減少していた。1990年代後半以降になると、地価下落や通勤の利便性を背景に、人口が増加に転じた。」
まず、「通勤の利便性を背景」と書かれている時点で「郊外」はありえません。
なぜなら人々は都心などの仕事がたくさんある場所で働くからです。
「都心」の可能性が高いですが、都心に近い「臨海部」の可能性も捨てきれません。
すでに「ウ」が臨海部なので自動的に「都心」になりますが、この文章だけから判断するには次のような知識が必要になります。
戦後の日本では1990年代前半のバブル崩壊まで地価が上昇を続けたため土地つき一軒家の価格も上昇し、次第に普通のサラリーマンでは大都市の都心に家を買って住むことは難しくなっていきました。
そのため、都心の人口(居住人口)は減少していました。
しかし、バブル崩壊で地価が下落すると、タワーマンションの建設などの影響もあいまって、次第に人口が増えていきました。
以上のような都心部の人口動態の変化をざっくりと覚えているとこの文章が都心についてであるとわかります。
→都心(B)
正解:5
必要知識:
・戦後の日本の大都市圏の人口動態(郊外のニュータウンと都心の人口推移とその理由)
・戦後の日本の臨海部の土地利用(加工貿易における貨物運搬方法・工場の海外移転など)
問2都市における通勤通学動態
4都市(秋田市、東京都心、東京郊外、福岡市)の昼夜間人口比率と通勤・通学の交通手段の割合が与えられ、福岡市を選ぶ問題です。
まず、東京都心の中央区→東京都心、東京郊外の調布市→東京郊外と読み替えて下さい。
中央区や調布市といったマイナーな地名は解答に使わない情報なので無視します。
はじめに昼夜間人口比率を見ます。
問題文の補足説明に書いていますが、昼夜間人口比率は、昼間人口/夜間人口 となっています。
昼間人口とは、昼の間にその地域に滞在している人の数であり、その地域に住んでいなくても学校や会社にいる人が含まれます。
反対に、その地域に住んでいても他地域の学校や会社に通っている人は昼間人口にカウントされません。
夜間人口とは夜の間にその地域に滞在している人の数です。
昼間に出かけている人も夜になると自宅に帰るので、夜間人口はそこに住んでいる人の人口になります。
つまり、昼間にその地域から他地域に出かける人が多い場所(郊外のベットタウン)では昼夜間人口比率は低くなり、逆に昼間の間だけよその地域からたくさんの人が来る場所(都心のオフィス街)では昼夜間人口比率は高くなります。
以上をふまえて、各選択肢を見ていきます。
4都市中、1か所だけ100を下回っています(選択肢④)。
これは郊外の特徴です。
つまり、選択肢の中に1つだけ郊外(東京郊外)があり、それが④です。
東京都心はもちろん、秋田市と福岡市は県庁所在地なのでその地域の中心都市であるはずです。
次に①を見ると、昼夜間人口比率が456.1という非常に大きな数字になっています。
さらに通勤手段を見ると、鉄道が91.6%と他都市と比べても圧倒的です。
東京都心と地方を比べると、鉄道で通勤する人が多いのは圧倒的に東京です。
そのため、①が東京都心であることがわかります。
残った②③が秋田市と福岡市です。
この2つを比較すると、③は車通勤が70.8%もあり鉄道やバスでの通勤が10%未満であり非常に少ないです。
一方、②は鉄道通勤33.2%、車通勤30.0%となりほぼ同数です。
そこで、福岡市と秋田市でどちらが鉄道がたくさん走っているか考えます。
人口で考えても福岡市の方が人口が多いですし、福岡は九州の中心都市であるのに対し、秋田は東北の1県庁所在地です(東北の中心都市は仙台)。
そのため、福岡市の方が鉄道がたくさん走っていそうです。
よって、鉄道通勤比率が高い②が福岡市です。
正解:2
必要知識:
・昼夜間人口比率とは
・大都市圏の通勤が昼夜間人口比率にどのように反映されるか
・大都市と地方では通勤手段にどのような違いがあるか
問3先進国と新興国の人口増加率
1990年と2015年の世界各地の都市圏別人口がプロットされたグラフを見て、先進国とBRICSを識別する問題です(BRICSを選ぶ)。
派生して文章の穴埋め問題がついています。
グラフについてですが、縦軸が2015年、横軸が1990年の人口であり、対角線が引かれています。
プロットが左上に行くほど1990年→2015年で急激に人口が増えていることがわかります。
カ(●)とキ(□)の分布を比較すると、カ(●)は対角線付近に集中しているのに対し、キ(□)は対角線から離れた左上の多く分布しています。
先進国とBRICSを比べると、人口が急激に増えているのは新興国であるBRCISの方です。
以上よりBRICSは「キ(□)」です。
次に穴埋め問題です。
発展途上国の農村部から大都市圏に流入した人々が、どのような仕事に従事するかの二択問題です。
選択肢は「金融業」と「小売業・サービス業」です。
業界名だとイメージがつきづらいと思うので、それぞれ「銀行員」と「コンビニ店員」をイメージして下さい。
発展途上国の農村部出身の人たちなので、専門知識を身につける高等教育や職業教育といった高度な教育は受けていないはずです。
それでは、高度な教育を受けていない人が仕事を得やすいのは「銀行員」と「コンビニ店員」のどちらでしょうか。
コンビニ店員のはずです。
よってxに入るのは「小売業・サービス業」です。
正解:4
必要な知識:
・BRICSが新興国であること
・先進国よりも新興国(経済発展が著しい発展途上国)の方が人口増加率が高いこと
問4 都市人口ランキングの国別比較
3カ国(イタリア、オーストラリア、バングラデシュ)の国ごとの人口1~10位の都市の人口比の棒グラフが与えられ、国名とグラフの組み合わせを当てる問題です。
各グラフの特徴を比較すると、
サ:人口1位と2位がほぼ同じ
シ:階段状に分布
ス:人口1位が飛び抜けて高い
ここで、国の中で人口が1つの都市に集中する場合と複数の都市に分散する場合について考えます。
国の人口が複数の都市に分散するのは次のような場合です。
・新大陸の連邦制国家(米国、オーストラリアなど)
・歴史的に統一が遅かった国(ドイツ、イタリアなど)
このため、イタリアとオーストラリアは「サ」と「シ」であると推測できます。
残った「ス」が消去法でバングラデシュであることがわかります。
バングラデシュについては知らなくて当然ですが、一般的に発展途上国は一つの都市に人口が集中する傾向であり、その点で「ス」が発展途上国であることに違和感はありません。
次に「サ」と「シ」のどちらがイタリアでどちらがオーストラリアでしょうか。
「サ」は人口1位と2位の都市がほぼ同じであるのに対し、「シ」は1位と2位に差があります。
先に答えを言うと、1位と2位がほぼ同じ「サ」がオーストラリアであり、1位と2位に差がある「シ」がイタリアです。
イタリアはローマの人口が多く、拮抗している都市はありません。
一方、オーストラリアは最大都市シドニーと次点のメルボルンが拮抗しています。
もちろんこれを暗記していれば解けるわけですが、それでは応用が効きません。
ここでは知識がなくても何とかして答えにたどり着く方法を考えます。
まず、最大都市が首都であるか否かで判別する方法です。
ローマが最大都市かつ首都であるのに対しシドニーは最大都市だが首都ではありません。
そのため、1位と2位に差がある「シ」がイタリアであり、拮抗する「サ」がオーストラリアではないかと推測する方法がありえます。
また、オーストラリアではシドニーとメルボルンが拮抗していることを知っていると答えがわかります。
オーストラリアではシドニーとメルボルンが拮抗しているため、独立の際にどちらを首都にするかでもめました。
そこで、シドニーとメルボルンの中間に位置する場所に新しい首都を建設し、キャンベラと名づけらました。
以上のような「逸話」を知っていると「サ」がオーストラリアであると推測できます。
新大陸の連邦制の国(アメリカ合衆国、ブラジル、オーストラリア)は、独立の際に特定の都市の影響力が強くなりすぎるのを防ぐために新首都を新たに建設する場合が多いです。
そのため、一国の政治の中心都市(=首都)と経済の中心都市が異なるケースが多く見られます。
オーストラリアでは首都キャンベラに対して経済の中心はシドニー、アメリカ合衆国では首都ワシントンD. C. に対して経済の中心はニューヨークです。
正解:3
必要な知識:
・国の人口が複数の都市に分散するのはどのような場合か
・オーストラリアとイタリアの都市の人口
問5都市の貧困地区の分布
地図とその説明文を読み、誤りがある文を選ぶ問題です。
①「フィラデルフィア都市圏において貧困が問題となっている地区は、早期から都市化したが、現在は住宅の老朽化や製造業の衰退がみられる。」
地図を見ると、都心地区に隣接して貧困地区が広がることから、早期に都市化したと考えられます。
住宅の老朽化や製造業の衰退について地図からはわかりませんが、貧困地区で住宅の老朽化が放置されること(建て替えるお金が無いため)や仕事が減ること(お金を稼げなくなる)は違和感がない話です。
→おそらく正しい
②「メキシコシティ都市圏において貧困が問題となっている地区は、上下水道などの社会基盤(インフラ)が十分に整備されていない場所に広がる。」
地図からはわかりませんが、インフラ整備されていないため住宅地としての価値が低い→安く土地を手に入れられる→貧困層が住むと考えれば、一般論としておかしい話ではありません。
→おそらく正しい
③「貧困が問題となっている地区の分布を比較すると、フィラデルフィア都市圏のほうが都市圏中心部に集中している。」
地図を見るとその通りになっています。
→正しい
④「貧困が問題となっている地区は、両都市圏ともに主要な高速道路に沿って放射状に広がっている。」
地図を見ると両都市圏ともに貧困地区は高速道路に沿っておらず、貧困地区の形も放射状ではありません。
→誤り
正解:4
必要な知識:なし
問6米国の年ごとの言語使用者割合
米国の4都市(シアトル、ミネアポリス、ロサンゼルス、マイアミ)の言語使用者比率のグラフの中からシアトルを選ぶ問題です。
4都市の立地は地図上に示されているので、個別の都市に関する知識は不要です。
米国の公用語は英語ですが、グラフを見ると③④はスペイン語話者の比率が高いです。
これはラテンアメリカ(中南米)からの移民(ヒスパニック)の影響と考えられます。
ヒスパニックは地理的に近い米国の南側に多いため、ロサンゼルスとマイアミが③と④だと考えられます。
残った①と②がシアトルとミネアポリスです。
①②を比べると、②の方がアジア系言語の割合が高いことがわかります。
米国の中でアジア系が多いのはアジアに近い西海岸のエリアです(ここではロサンゼルスとシアトル)。
西海岸に位置するシアトルは、①よりもアジア系言語話者が多い②であると判断できます。
正解:2
必要な知識:
・米国におけるヒスパニック(スペイン語話者)とアジア系移民が多い地域