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【共通テスト解説】2024年 地理B 本試験 第1問

大学入試共通テスト(2024年 地理B 本試験 第1問)の解説ページです。

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問題と解答

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問題文のPDFは下記リンク先から入手し、図表や問題文を手元に置きながら解説(次項)を見て下さい。
リンク切れ対策のため複数サイトへリンクを貼っていますが、いずれも同一です。

入試速報トップ:福井新聞東進朝日新聞
問題:福井新聞東進朝日新聞
解答:福井新聞東進朝日新聞

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過去問サイト:日本の学校中日進学ナビ

解説

第1問は世界の地形と気候に関する設問です。

問1 イギリスとニュージーランドの標高と土地利用

イギリスとニュージーランドの標高の分布と土地利用の割合を読み取る問題です。

まず標高の分布について考えます。
イギリスは古期造山帯、ニュージーランドは新期造山帯(環太平洋造山帯)に位置します。
そのため、低地の多いイギリスが「ア」、標高が高い地域が多いニュージーランドが「イ」です。

次に土地利用です。AとBのどちらが牧草地でどちらが森林かを判断します。
Bを見ると、イギリスでは割合が小さく、ニュージーランドで割合が高いのが特徴的です。
一方、Aはイギリスでやや高いもののBほど差が大きくはありません。

そこでBに着目し、牧草地と森林のどちらがイギリスよりもニュージーランドで多いか考えます。
山間部の急斜面は平地と比べて人間にとって使い道が少ない土地なので、山がちな地域では森林がたくさん残っている事が多いです。
一方、平地やなだらかな土地は都市や農業、牧草地としての活用方法があるため、元々木が生えていても伐採されてその土地は人間の活動に使われていることが多いです。
以上をふまえると、新期造山帯のため山がちなニュージーランドの方が森林の割合が高いと考えられます。

よって、Bが森林、残ったAが牧草地です。

正解:3

必要知識:
・イギリス:古期造山帯、ニュージーランド:新期造山帯
・山間部と平地の土地利用の違い

問2 永久凍土と氷河の分布

北緯30-80°の永久凍土と氷河・氷床の割合の分布のグラフが掲載されています。
これに関連した説明文のうち「適当ではないもの」を選ぶ問題です。

①「北緯30度から45度における永久凍土の分布は、チベット高原やヒマラヤ山脈などアジアの高山地帯が中心である。」
→グラフを見てもこの緯度に「永久凍土」が分布していることがわかります。説明後半もおかしいところはありません。
→正しい

②「北緯45度から70度にかけて永久凍土の割合が増加する原因には、主に高緯度側ほど日射量や年平均気温が低下することがあげられる。」
→グラフを見ても、この緯度では北に行くほど「永久凍土」の割合が増えています。説明後半も永久凍土の割合が増える理由として妥当です。
→正しい

③「北緯60度から80度にかけて氷河・氷床の割合が増加する原因には、主に高緯度側ほど降雪量が多くなることがあげられる。」
→グラフを見るとこの緯度では北に行くほど「氷河・氷床」が増えています。この点は正しいです。
一方、説明後半では降雪量が多いことが氷河・氷床が増える原因としていますが、これは誤りです。
極高圧帯の影響で、北極付近は降水量が少ないです。
氷河・氷床の形成は、夏でも気温が低いため冬の間に積もった雪が溶け残ってしまうことが原因です。
一般に緯度が高くなるほど気温が低下するため、高緯度側ほど氷河・氷床の割合が増加します。
→誤り

④「北緯70度から80度の氷河・氷床に覆われていない陸地では、ほとんどの地域で永久凍土が分布する。」
→読みかえると、「北緯70度から80度では、『永久凍土の割合』+『氷河・氷床の割』=100%になる」です。
グラフを見て目分量で確認するとだいたい合っていることがわかります。
→正しい

正解:3

必要知識:
・極高圧帯の影響で北極付近では降水量が少ないこと
・氷河の形成要因

問3 海岸の地形

4箇所の海岸線の形D-Gのうち、Eにマッチする説明文を選ぶ問題です。
Eは氷河地形の一種であるフィヨルドです。
リアス式海岸とまぎらわしいですが、フィヨルドはリアス式海岸よりも入り江の横幅が大きくて奥行きがあり、横幅があまり変わらないま陸地の奥深くまで湾が続いているのが特徴です。
そのような観点でD-Gの海岸の形を見比べると、リアス式海岸はDの方だとわかります。

①「沿岸流で運ばれてきた土砂の堆積により、入り江の閉塞が進行している。」
これは明らかにGの説明です。少なくともEには入り江を塞ごうとしている砂嘴などは発達していません。
→誤り

②「河川の侵食で形成された谷が沈酔し、海岸線が複雑な入り江が連なる。」
これはリアス式海岸の説明です。DとEで迷いますが、入り江の横幅が狭く奥行きが短いDの方がリアス式海岸です。
→誤り

③「大河川の加工部が沈水してできた深い入り江がみられる。」
これはエスチュアリー(三角江)の説明です。明らかにEではありません。
→誤り

④「氷食谷が沈水してできた深い入り江がみられる。」
フィヨルドの説明です。リアス式海岸のDと比較して入り江の横幅が広いまま陸地の奥深くまで湾が入り込んでいるEはフィヨルドの海岸線です。
→正しい

正解:4

必要な知識:
・リアス式海岸とフィヨルドの海岸線の違い

問4 夏と冬の日照時間の分布

4都市(オスロ、シドニー、ムンバイ(ボンベイ)、ローマ)の1月と7月の日照時間の分布からムンバイを選ぶ問題です。
縦軸を7月、横軸を1月の日照時間でとって各都市をプロットしています。

日照時間に影響する因子は「緯度」と「降水量」です。
緯度だけで見ると、北半球は7月に日照時間が多く南半球は1月に多いです(それぞれの夏に多い)。
また、赤道に近い低緯度地域では7月と1月の差は小さくなります。

降水量については、特定の季節に降水量が多いとその季節の日照時間は短くなり逆に降水量が少ないと長くなります。

以上をふまえて、ムンバイがどれに当てはまるのかを考えます。
ムンバイはインドの都市なのでムンバイ=インドとして考えていきます(インドのどこにあるかは知識不要)。

インドは北半球の低緯度に位置し、モンスーン(季節風)の影響により夏(7月)は雨季で雨が多く冬(1月)は乾季で乾燥します。
そのため、インドは夏に雨が多くて日照時間が短くなり、反対に冬は雨が少なく日照時間が長くなります。

これは同じくモンスーンの影響を受ける東京も同様です。
しかし、グラフを見ると東京は7月と1月の日照時間がほぼ同じです。
これは、緯度の影響も受けているためです。
東京は緯度が高いため7月の明るい時間が長く1月は短いです。
そのため、降水量の影響と明るい時間の長さの影響が打ち消し合って7月と1月の日照時間がほぼ同じになったと考えられます。

では、インドはどうでしょうか。
インドは東京よりも緯度が低いため7月と1月の明るい時間の長さの差は小さいはずです。
そのため、雨季と乾季の影響が東京よりも強く現れるはずです。

以上より、7月の日照時間が短く1月の日照時間が長い④がインド=ムンバイであると判断できます。

正解:4

必要な知識:
・ムンバイがインドの都市であること
・インドと東京は季節風の影響を受けて夏(7月頃)に降水量が多く、冬(1月頃)に降水量が少ないこと
・緯度が高いほど夏と冬で昼間の明るい時間の長さの変化が大きいこと

問5 洪水災害の発生季節構成比

カナダ、コロンビア、ボリビア、メキシコにおける洪水災害の発生季節の割合が示されたグラフを読み、グラフの凡例がどの季節に対応するかを答える問題です。
各国の洪水発生割合の円グラフがあり、凡例は夏(6-8月)だけがわかっています。

まずはじめにメキシコに着目します。
メキシコは「ス」の季節の洪水発生割合が多いです。
メキシコ湾周辺はハリケーンが襲来するエリアであり、台風と同様に海水温が高い季節にハリケーンが発生して洪水を引き起こします。
実際、メキシコでも夏(6-8月)の発生割合が2番目に高いです。
そこで、1番ハリケーンが発生する季節は、夏に隣接する春(3-5月)か秋(9-11月)となります。
メキシコは日本と同じ北半球なので「日本と同じで秋が一番多い」でも正解です。
もう少し原理的に考えると、水は空気よりも温度が変化しにくいため温まりづらく冷めにくいという特徴があります。
そのため、冬にすっかり冷え切った海水温は春に気温が高くなっても温まるのは遅いです。
一方、夏にすっかり温かくなった海水温は秋に気温が下がってもすぐには冷めません。
そのため、春よりも秋の方が海水温が高くなり、メキシコでハリケーンが多く発生するのは海水温が高い秋です。
よって、「ス」は9-11月(秋)です。

次にカナダのグラフを見てみます。
カナダは季節「シ」の洪水の割合が半分以上です。
その次は夏(6-8月)となっています。
ここでカナダは緯度が高く、冬は降水量が多くても雪として降り積もることに着目します。
このため、秋の後半から冬は降水が多くても積雪になるため洪水が発生しづらいです。
一方、春になると冬の間に降り積もった雪がとけて下流に流れてくるため、洪水が発生しやすいはずです。
以上をふまえると、カナダの洪水の半分以上を占める季節「シ」は春(3-5月)であると考えられます。

残った季節「サ」は冬(12-2月)です。

正解:4

必要な知識:
・メキシコ湾でハリケーンが発生すること
・熱帯低気圧は夏から秋にかけて発生すること
・高緯度地域では冬の降水は積雪になり、春になると雪がとけて河川の水量が増えること

問6 気象観測記録と記録地点

日本における最高気温、最大風速、日降水量の上位20地点の分布を当てる問題です。

まず、最高気温について見ていきます。
海よりも陸地の方が温まりやすく冷めやすいため、夏に最高気温を記録するのは内陸部です。
実際、埼玉県熊谷市や岐阜県多治見市は夏の最高気温が高いことで有名であり、夏の季節にはニュースでもしばしば話題になります。
以上をふまえると、内陸部の埼玉~群馬、岐阜などに分布している「■ ツ」が最高気温であると判断できます。

最大風速と日降水量ですが、これは台風の影響を受けやすい地域で高くなります。
日本では沖縄や太平洋側の沿岸部です。
これは風速と降水量両方に共通する特徴なので両者を判別できません。

そこで両者の違いについて考えます。
最大風速だけに当てはまる特徴として離島の方が風が強いということです。
海の上は遮るものがないため風が強くなります。

次に、日降水量が多くなる条件について考えると、海風が山にぶつかった場所で雨が降るという特徴です。
このため、太平洋側の沿岸部で背後にすぐ山がたくさんあるような場所で雨が多くなります(地形性降雨)。

以上をふまえて「○ タ」と「▲ チ」の分布を比較します。
「○ タ」の方が沖縄を始めとする離島にたくさん分布し、本州や四国でも岬のように海に飛び出た場所に多く分布しています。
このため、「○ タ」は最大風速であると判断できます。

一方、「▲ チ」は高知南部と和歌山南部~三重南部のたくさん分布しています。
これらの地域では、太平洋側から吹き込んできた湿った空気が背後の山地(四国山地と紀伊山地)にぶつかるため雨が多くなります。
そのため、「▲ チ」は日降水量であると判断できます。

正解:5

必要な知識:
・内陸と沿岸の気温変化(空気と水の比熱の違い)
・遮るものがない海は風が強いこと
・地形性降雨のしくみ

他の設問

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