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【共通テスト解説】2025年 地理総合、地理探究 本試験 第1問

大学入試共通テスト(2025年 地理総合、地理探究 本試験 第1問)の解説ページです。

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問題と解答

共通テスト(2025年 地理総合、地理探究 本試験)の問題と解答のリンクです。
問題文のPDFは下記リンク先から入手し、図表や問題文を手元に置きながら解説(次項)を見て下さい。
リンク切れ対策のため複数サイトへリンクを貼っていますが、いずれも同一です。

入試速報トップ:河合塾東進朝日新聞
問題:河合塾東進朝日新聞
解答:河合塾東進朝日新聞

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過去問サイト:日本の学校中日進学ナビ

解説

第1問は食料生産・消費に関する設問です。

問1 コロプレス図読み取り

あるデータについて値が高位、中位、低位の3種類で国別に色分けされた地図(コロプレス図)を見て、選択肢の中からどのデータなのかを答える問題です。

コロプレス図を見ると、以下のような特徴が見られます。
日本:高位
北米、ヨーロッパ(特に西欧)、オーストラリア:低位
アラビア半島~北アフリカ:高位

以上をふまえて選択肢を見ていきます。
①栄養不足人口の割合:日本が高位である時点で違うことがわかります。
②穀物輸入の依存度:穀物の食料自給率が低い日本や砂漠が広がるアラビア半島や北アフリカで高いのは合致します。
アメリカ合衆国やフランスなど穀物生産が盛んな国で低いのも合致しています。
③1日1人当たりカロリー摂取量:食料が潤沢な先進国である上に肉食文化の北米や西欧で低位なのはおかしいので、違うことがわかります。
アメリカ合衆国では肥満が社会問題になっているため、むしろ日本より高位であるはずです。
④平均寿命:平均寿命は先進国ほど高く発展途上国で低い傾向です。
データを見ると、日本は高いですがヨーロッパで低いので違います。

正解:2

必要な知識:
・日本の穀物自給率が低いこと

問2 地点ごとの自然環境と農業

東欧からアフリカ大陸にかけての4地点の自然環境と農業について述べた文章の中から正しいものを選ぶ問題です。
4地点の場所は地図から以下のように読み取れます。
ア:東ヨーロッパ東部の黒海北岸周辺(ウクライナ・ロシア周辺)
イ:アラビア半島内陸部(アラビア砂漠)
ウ:アフリカ大陸内陸部の赤道直下
エ:南アフリカの南西端(喜望峰・ケープタウン周辺)

①アの周辺は、降水量の季節変化が少ない冷涼な気候であり、肥沃な土壌をいかして小麦などが栽培されている
→正しい
ウクライナからロシアにかけての地域は、緯度が高く寒冷なステップ気候であるため、栄養分が雨で洗い流されず土壌に残ります。
このため、肥沃なチェルノーゼム(黒色土の一種)という土壌が広がり、小麦などの作物栽培が盛んです。

②イの周辺は、1年中乾燥する気候であり、オアシスや灌漑施設を利用してアブラヤシなどが栽培されている
→誤り
アブラヤシではなくナツメヤシです。同じヤシでもナツメヤシは砂漠などの乾燥した気候に適応した植物ですが、アブラヤシはマレーシアなどの雨が多い熱帯雨林気候で栽培される油料作物です。

③ウの周辺は、雨季と乾季が明瞭な高温の気候であり、焼畑によりキャッサバなどが栽培されている
→誤り
赤道直下なので一年を通して熱帯収束帯の影響下にあり、年中雨が降る熱帯雨林気候になるはずです。雨季と乾季が明瞭なのはサバナ気候です。
サバナ気候になる場所は、赤道からやや離れた場所です。
赤道から離れた場所では、熱帯収束帯の影響下に入る季節に雨季になり、外れる季節には乾季になります。

④エの周辺は、冬より夏の降水量が多い温暖な気候であり、ブドウなどが栽培されている
→誤り
大陸西岸の中緯度に位置するため、地中海性気候の地域です。
地中海性気候は、夏には中緯度高圧帯(亜熱帯高圧帯)の影響下に入り雨が少なく、冬には中緯度高圧帯の影響から外れるため雨が降る気候です。
よって雨が降る時期が逆になっています。

正解:1

必要な知識:
・ウクライナの地図上の位置
・ウクライナ~ロシアはステップ気候であり、肥沃な黒色土(チェルノーゼム)が広がり小麦などの農業生産が盛んであること

問3 茶とコーヒーの国別消費量

イギリス、イタリア、インドネシア、中国の4か国について、1日1人当たりの茶とコーヒーの消費量を示したグラフから、イギリスを当てる問題です。
4か国以外に日本の消費量も示されています。

①-④を見ると、②③はコーヒーの消費量が非常に少ないのに対し、①④はコーヒーの消費量が多いです。
この違いは食文化の違いであると考えられます。
茶は東アジアで古くから飲まれてきたのに対し、コーヒーは中東で飲まれていたものがヨーロッパに伝わったという歴史があります。
このため、コーヒーと比較的縁が薄い東アジア・東南アジアに位置する中国とインドネシアが②③であると考えられます。
このため、①④がイギリスとイタリアであると考えられます。
①はコーヒーだけではなく茶の消費量も多いのに対し、④は茶の消費量は少ないです。
イギリスはヨーロッパの中でも特に紅茶文化が発達しており、かつてイギリスの植民地だったインドやスリランカ、ケニアなどの高原地帯に茶を持ち込み、栽培させたという歴史があります。
このため、茶とコーヒー両方の消費量が多い①がイギリスです。

イギリス人は紅茶を飲むという(ある種ステレオタイプ的な)イメージをもっていれば、正答に近づける問題でした。

正解:1

必要な知識:
・茶は東アジアで広く飲まれている
・コーヒーはヨーロッパで広く飲まれている
・イギリスはヨーロッパの中でも特に紅茶がよく飲まれている

問4 イモ類の食品ロス

南・東南アジアとヨーロッパについて、イモ類の生産から消費までの過程での食品ロスの割合に関する表が与えられ、文章の中から不適切なものを選ぶ問題です。

①小売業者の定める品質基準に満たない生産物が廃棄
→正しい
ヨーロッパで生産・収穫過程の食品ロスが多い理由の説明です。
先進国ほど産業の効率化が進んでいるため、輸送や販売の過程の効率化のために「規格」に合わない農産物は廃棄される場合が多くなります。

②高温湿潤な環境下でイモ類の収穫時期が短期に集中し、貯蔵施設が不足する
→誤り
南・東南アジアで貯蔵過程の食品ロスが多い理由の説明です。
穀物(小麦や米)は同じ時期に一斉に収穫するのに対し、イモ類は地中に埋まっているため、そのまま地中に放置していても問題ありません。
収穫時期をずらしやすいイモ類で貯蔵施設不足が食品ロス率の高さとは考えづらいです。

③小売店で過剰に仕入れた商品を廃棄する
→正しい
卸売・小売過程の食品ロスの理由の説明です。
コンビニやスーパーマーケットに行くといつも食品がびっしりと並んでおり、棚がスカスカになることは滅多にありません。
このこと自体が、小売店が一定量の食品廃棄を前提に品揃えを充実させていることを意味します。

④フードバンクを通じて必要とする人に食品を提供する
→正しい
消費段階での食品ロス率が高いヨーロッパで、食品ロスを抑える取り組みについての説明です。
先進国では食中毒などの衛生的な問題をおこすと企業はメディアなどでバッシングを受け、消費者からは嫌われて壊滅的なダメージを受けます。
このため、食品の賞味期限や消費期限は余裕をもって設定されており、賞味期限切れの食品でも問題なく食べられる場合が多いです。
そこで、賞味期限切れで廃棄されるはずの食品を小売店から受け取って、金銭的に貧しい人々に配布するフードバンクという取り組みが実在します。
食品ロス削減という発想自体が経済的に余裕がある先進国だからこそ生まれるものであり、ヨーロッパでの取り組みという点でも合致しています。

フードバンクという単語を知らなくても、「フードバンク」を直訳すると「食品銀行」となり、必要な人に食品を提供するという内容に合致していることがわかります。
また、取り組み内容としても、存在しないことが考えづらい内容です。
もし誤りとしてしまうと、問題作成者が知らない所ででこのような取り組みをやっている人が1人でもいたら(極端な話、問題用紙を印刷した後に出現してニュースになったら)、正誤が逆転してしまいます。

②の正誤判断に迷っても、①③④が正しいことがわかれば消去法で正答できます。

正解:2

必要な知識:
・食品の流通・小売では効率化のために規格が揃えられていること
・小売店での食品ロスについて

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