大学入試共通テスト(2025年 地理総合、地理探究 本試験 第6問)の解説ページです。
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問題と解答
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入試速報トップ:河合塾|東進|朝日新聞|
問題:河合塾|東進|朝日新聞|
解答:河合塾|東進|朝日新聞|
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解説
第6問はインド洋と周辺地域に関する設問です。
問1 熱帯低気圧の上陸頻度
インド洋沿岸に位置するア~エの4地点の中から、サイクロンの上陸頻度が最も低い地域を選ぶ問題です。
ア:スリランカ
イ:オーストラリア北西部
ウ:モザンビーク北東部
エ:ソマリア南部
答えはエです。
ソマリアは赤道付近に位置し、本来であれば熱帯収束帯の影響で年中雨が降るような緯度ですが、海水温の低さや季節風が吹く方角の影響で雨が少なく、年中乾燥した砂漠気候の国です。
サイクロンが襲来するのであれば、大量の雨水が供給されるため砂漠にはならないはずです。
よって、サイクロンの上陸頻度が最も低いのは「エ」です。
(別解)熱帯低気圧は赤道直下では発生しないという特徴があります。
赤道から少し離れた地域で発生し、高緯度側の地域に向かって移動します。
このため、赤道直下にあたる地点「エ」では、赤道から離れたア~ウよりも熱帯低気圧の襲来は少ないと考えられます。
正解:4
必要な知識:
・ソマリアが砂漠気候であること
・熱帯低気圧と降水量の関係および砂漠気候の降水量
・熱帯低気圧は赤道付近では発生しないこと
問2 天水農業が営まれる地域
インド洋周辺の地域A~Dの中から、天水田(雨水のみに依存する水田)が利用されない地域を選ぶ問題です。
A:パキスタンのインダス川中流域
B:インドシナ半島内陸部(タイ・ラオス国境付近)
C:ボルネオ島(カリマンタン島)内陸部(インドネシア)
D:マダガスカル島北東部
パキスタンの中南部は砂漠気候であり、十分な雨が降らないので雨水だけで農業はできません。
B~Dはいずれも熱帯気候であり、雨水だけで農業が可能です。
正解:1
必要な知識:
・パキスタン中南部が砂漠気候であること
・天水農業は雨が降らない砂漠では行えないこと
問3 国家間の結びつき
インドとカ~クの4か国の輸出額と移民数の関係性を示した図を見て、カ~クに当てはまる国の組み合わせを選ぶ問題です。
カ~クは、アラブ首長国連邦、インドネシア、シンガポールのいずれかです。
まず、移民数に着目すると、4か国の中でまとまった数の移民を送り出している(=太矢印の出発点になっている)国はインドと「ク」だけです。
選択肢を見ると、まとまった人口を有する国はインドネシアだけです。
都市国家のシンガポールや都市国家の連合のようなアラブ首長国連邦は、そもそも国内人口が少なすぎてまとまった数の移民を排出できません。
よって、「ク」がインドネシアです。
次に、アラブ首長国連邦とシンガポールの判別です。
輸出額に着目すると、インドネシア(ク)と「キ」の間では、貿易額が大きいのに対し、インドネシアと「カ」の間では貿易額が少ないです。
地理的条件を考えると、シンガポールはインドネシアの隣国であるのに対し、アラブ首長国連邦は両国から遠く離れています。
このため、インドネシアとの貿易額が大きい「キ」はシンガポール、貿易額が小さい「カ」がアラブ首長国連邦であると判断できます。
正解:2
必要な知識:
・アラブ首長国連邦、シンガポール、インドネシアの人口規模
・インドネシアとシンガポールが隣国であること
問4 宗教分布
インド洋周辺地域の国別の宗教人口第1位の宗教の分布図を見て、国F~Hと説明文サ~スの組み合わせを当てる問題です。
F:タンザニア
G:インド
H:ミャンマー
サ:かつてムスリム(イスラム教徒)による帝国が栄え、現在でも世界有数のムスリム人口を擁する国であるが、宗教人口割合の第1位はイスラーム(イスラム教)ではない。
シ:植民地時代以前には仏教徒とムスリムが共存していたが、近年では紛争や人権問題が起こり、難民が発生している。
ス:ムスリム商人の言語と地域の言語がまざりあった共通語が生まれ、また、その後にキリスト教が浸透した。
まず、「サ」ですが、「世界有数のムスリム人口を擁する」が「宗教人口割合の第1位はイスラム教ではない」とありますので、世界的にも非常に人口が多い国であるはずです。
よって、F~Hの中で人口が飛び抜けて多いGのインドが「サ」に対応します。
実際、インドはヒンドゥー教徒の割合が高いですが、国全体の人口が非常に多いため少数派であるムスリムの絶対数も多いです。
次に「シ」ですが、仏教徒とムスリムが共存するのは宗教分布の境界となるタイ南部やミャンマー西部で見られます。
よって「シ」はミャンマーです。
ミャンマーは西隣にムスリムが多いバングラデシュがあるため、国内に少数派としてムスリム(ロヒンギャ)が存在し、難民問題が発生しています。
残った「ス」がタンザニアです。
アフリカ東海岸は、イスラム商人の交易圏であるため古くからムスリムが訪れていました。
しかし、サハラ以南のアフリカ諸国では、欧米列強による植民地化の過程でキリスト教が浸透し、現在ではキリスト教徒が多い地域になっています(アニミズムなどの土着宗教も残存)。
正解:5
必要な知識:
・インドの人口と宗教分布
・ミャンマーの宗教分布
・サハラ以南のアフリカにキリスト教が広まっていること
問5 2つの国の比較
モーリシャスとモルディブの基礎情報を読んだ上で、会話文の中で不適切な内容を選ぶ問題です。
両国に関する知識がゼロでも良いように、両国の基礎知識と写真が与えられています。
①サトウキビプランテーションが発展
→正しい
モーリシャスの主な産業として製糖業があり、写真もサトウキビ畑のものです。
③地球温暖化による国土面積の縮小が懸念されている
→正しい
モルディブの写真の島は平べったく標高が低いと思われ、島全体に所狭しと建物が並んでいます。
地球温暖化により海水面が上昇すると島の大部分が沈んでしまうと考えられます。
④中国沿海部から東アフリカを経由する一帯一路構想の海上シルクロードルートに位置している
→正しい
地図上の位置からわかるように、モルディブは中国から海路で東アフリカを目指す際の経路上に位置しています。
②フランス統治期に導入された移民労働者の宗教が反映されている
→誤り
モーリシャスの宗教はヒンドゥー教なので、インドからの移民の影響と考えられます。
インドはイギリスの植民地なので、フランスではなくイギリスの統治下に導入された移民労働者の影響です。
ちなみに、イギリスよりも前に統治したフランスは、同じくフランスの植民地であったアフリカから労働者を導入しました。
②の正誤判断を置いておいて、①③④が正しいことから消去法で選ぶのもありでしょう。
この問題は、モーリシャスに関する知識がゼロであっても、以下のような類推から誤りであると推察できます。
モーリシャスではヒンドゥー教徒が多い→インドからの移民労働者が原因だろう→インドはイギリスの植民地なので、イギリス統治下での影響だろう
インドはイギリスの植民地であった点から「フランス統治時代に」インドから移民労働者が来ることへの「違和感」を感じることができれば誤りと判断できます。
モーリシャスとモルディブの問題なのに、正答するために必要な知識はインドの宗教と旧宗主国に関する知識であるという面白い問題です。
正解:2
必要な知識:
・インドの宗教と旧宗主国
・植民地への移民労働者は、宗主国に関わりが深い国から移住すること