地球上の水は塩分濃度が高い海水や塩分濃度が低く飲み水に使える淡水など様々な形態で存在しており、同じ水でも淡水と海水では利用のされ方が変わります。
このページでは、地球上の水がどのような形態で分布しているのかを解説し、形態ごとの水の利用について紹介します。
地球上の水の形態

地球表面の3分の2は水で覆われているため、地球は「水の惑星」とも呼ばれています。
しかし、塩分濃度が高い海水や極地の氷河など、地球上の水の大部分は人類が利用するのが難しい状態です。
河川や湖沼など人が利用しやすい淡水(塩分濃度が低い水)は、地球全体の水の約0.01%(10万km3)しかありません。
このため、人類は地球上の水のうち、利用しやすい限られた形態の水を求めて暮らしてきました。

上の図は、地球上の水の形態を示したものです。
地球上の水の大部分(97.5%)は海洋に存在します。
海水は塩分濃度が高い(3-4%)ため、飲用水や農業用水として使用することができません。
海洋の水は塩分濃度が高いため、人間が飲むと逆に水分が奪われてしまいます。
生体内よりも海水の方が塩分濃度が高いため、体内の水分が濃度の高い海水を薄めようと海水の方へ移動するためです(浸透圧)。
さらに、陸上であっても塩分濃度が高い塩湖(死海やカスピ海など)や海水と淡水が入り交じる汽水湖(宍道湖や浜名湖など)では、湖水であっても飲用水や農業用水として利用するのは難しいです。
人間が利用できる塩分濃度が低い(0.05%未満)淡水はわずかに2.53%ですが、この中にも氷河や大気中の水蒸気など人が直接利用できない淡水も含まれています。
人間が生活に利用できる水は、地表を流れる河川や湖沼の淡水であり、地球全体の水の0.01%程度しかありません。
また、地下水のうち塩分濃度が低いものも利用可能であり、地球全体の水の0.76%を占めます。
以上のように、地球上の水のうち人間が利用可能な水はごくわずかな割合しかありません。
水資源の種類と利用

雨や雪などの降水は水分のみで構成されますが、地表を流れたり地下に浸透する過程で、様々な物質を溶かし込んだり、蒸発で一部の水分が失われたりして塩分濃度が上昇します。
しかし、人間が飲用水や農業用水に利用できるのは主に塩分濃度が0.05%未満の淡水であり、塩分濃度が高い汽水や海水は利用が難しいです。
以下では、地球上に存在する水の形態ごとに、人間の暮らしにどのように利用してきたかを説明します。
淡水

淡水は塩分濃度が0.05%未満の水(真水)です。
水の塩分濃度が高すぎる水を生体が吸収すると浸透圧(濃度が高い方に全体の水分が移動)の影響で逆に脱水してしまうため、人間の飲用水や農業用水は主に淡水を利用する必要があります。
淡水は主に陸域の地表や地下に存在します。
地表に存在する淡水としては、地表を流れる河川や湖沼などの地表水、氷雪などが存在します。
地表に降った雨水や河川水などが地下に浸透して、地下水脈(帯水層)を形成します。
氷河や積雪を直接利用するのは難しいため、人間が利用できる淡水は主に地表水(河川や湖沼)と地下水(帯水層)になります。

地表水

地表水とは、陸域に存在する水(陸水)のうち、地表に存在する水(=地下水以外)のことです。
河川や湖沼、氷河や積雪などが主要な地表水であり、重力に従って高い場所から低い場所へ流れます。
地表水は塩分濃度が低い淡水の供給源ですが、地表水の中にも塩湖など塩分濃度が高いものも存在します。
人間の活動に利用する淡水は、主に陸域への降水(雨や雪)が供給源になっていますが、何もしないと雨水は低い所へ流出してしまいます。
このため、人工的にため池やダムを建設して水を貯め、必要な時に利用できるようにしています。
たとえば、1936年にコロラド川にフーバーダム(米国西部・ネバダ州=アリゾナ州境)が建設されたことで、砂漠地帯であるネバダ州とアリゾナ州は水源と(水力発電による)電力を確保できました。
フーバーダムの西に位置するラスベガス(ネバダ州南部)は、フーバーダムの水と電力を利用してカジノを中心とした保養都市へ発展しました。
四国(特に降水量が少ない瀬戸内海側)では、山から海までの距離が短いため短期間で雨水が流出して水不足に陥りやすいです。
このため、香川県では農業用のため池が古くから整備されてきました。
1975年には吉野川の上流に早明浦ダム(高知県北部・本山町/土佐町)が建設され、降水量が豊富な太平洋側(高知県側)の早明浦ダムで貯めた水を降水量が少ない瀬戸内海側(主に香川・徳島)に融通できるようになりました。
香川県は吉野川の流域から外れますが、讃岐山脈(香川・徳島)を貫く8kmの導水トンネル(阿讃トンネル)を掘削し、吉野川の水を香川県が使えるようにしました。
同様の例として、琵琶湖(滋賀県)の水を京都市周辺で利用できるように琵琶湖疎水と呼ばれる用水路が明治時代に建設され、現在でも利用されています。
琵琶湖疎水は滋賀県大津市で琵琶湖の水を引き、間の山をトンネルで抜けて京都市街まで流れており、京都側では運河としても利用されています。

地下水

地下水とは、陸域の地下に存在する水のことです。
雨水や河川水が土壌中に浸透しますが、地層の中には水が浸透できる透水層と水が浸透できない不透水層があります。
このため、地表から土壌中へ浸透していった水は、不透水層の上部に溜まり、帯水層を形成します。
地下水の中には特定の場所で地表へ噴出するものもあり(自噴井)、日本では各地に名水として知られる湧水が存在します。
一方、多くの地下水は地下に留まっているため、井戸を掘削して地下水をくみ上げ、生活用水や農業用水、工業用水などに利用します。
江戸時代の江戸(東京)では、井の頭池(東京都中部・三鷹市)の湧水を源流とする神田川から取水しており、神田上水として親しまれてきました(江戸六上水の1つ)。
地表が乾燥する場所であっても、過去に湿潤な気候であった時期に蓄えた豊富な地下水が存在する場所もあります。
たとえば、米国中西部のグレートプレーンズは地表が乾燥帯のステップ気候(BS)に属しますが、地下にオガララ帯水層と呼ばれる広大な帯水層があり、豊富な地下水を利用した農業が行われています。
中東の産油国でも、豊富な資金(オイルマネー)を背景に大規模な設備投資を行い、地下水をくみ上げてセンターピボットで水を散布することで、小規模ながら砂漠で農業を行っています。
しかし、雨が降らない砂漠において地下水は一度使うと回復しない資源であるため、このような農業の継続性には大きな課題があります。

参考

地下水を溜める地下ダム
地下ダムとは、地中に止水壁をつくって地下水の流れを堰き止めて、地下水を同じ場所に溜める施設です。
通常のダムが河川や湖沼などの地表水を溜める施設であるのに対し、地下ダムは地中で地下水を貯水します。
地表のダムよりも貯水効率が悪いですが、地表で淡水の確保が難しい乾燥帯の地域や南西諸島の小規模離島などで建設が進んでいます。
地表の水が蒸発で失われやすい乾燥帯では、水を地下に通すことで蒸発を防ぐ努力がなされています。
ダムだけではなく用水路も蒸発を防ぐために地下水路として建設されます。
地下水路には各地で固有の名前がつけられ、イランのカナートやアフガニスタンのカレーズ、北アフリカのフォガラ、中国のカンアルチン(坎児井)などがあります。
鹹水(海水)

鹹水(かん水)とは、塩分濃度が極めて低い(0.05%以下)淡水に対して、塩分が含まれる水のことです。
鹹水は海水よりも幅が広い概念であり、海水だけではなく塩分濃度が高い塩湖の湖水(塩水)、淡水と海水が入り交じる汽水なども総称する概念です。
水に溶けているのは海水のような塩化ナトリウム(NaCl)中心とは限らず、地下で石油や天然ガスなどが溶け込んでいたり、火山活動により硫黄などの成分が溶け込んでいる場合もあります。
海水をはじめとする鹹水は、塩分濃度が高すぎで飲用水や農業用水には使えません。
しかし、淡水が貴重な中東の砂漠地帯では、産油国であることを活かして豊富な資金(オイルマネー)を投じて海水淡水化プラントが建設され、海水から塩分を除いて淡水を得ています。
海水を淡水化する方法としては、海水を蒸留して水分だけを得る方法や、塩分を通さず水分のみを通す逆浸透膜(RO膜)を利用する方法が主流です。
これらの方法は一般的な採水と比べて非常にコストがかかるため、淡水が不足するが資金は豊富にある中東の産油国や、都市国家のシンガポールなどで積極的に活用されています。

海水や塩湖の水は塩分濃度が高いため、塩の生産が行われています。
塩分濃度が高い塩湖では析出した塩(湖塩)が堆積しているため、塩の採掘が行われています。
また、古い時代に海があった場所では、かつて海水に含まれた塩が固まって地層となった岩塩が見られるため、岩塩の地層を採掘して塩を得ることができます。
降水量が多い日本では、岩塩層や塩湖が少ないため、海水から水分を飛ばして塩を得る製塩が行われてきました。
製塩の中心は、日本の中では降水量が少なく日照時間が長い瀬戸内海沿岸であり、「赤穂の天塩」の兵庫県赤穂市や「伯方の塩」で有名な伯方島(愛媛県今治市)などが代表的な塩の生産地でした。
現在では海外からの輸入が多く、メキシコやオーストラリアなどで生産された塩を輸入しています。
乾燥帯が広がるメキシコ北西部やオーストラリア西部の沿岸部では、巨大な塩田に海水を引き入れて、長期間にわたる天日干しにより水を蒸発させ、残った塩を採集しています。

参考文献
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