分析・考察

「車なし生活圏」と「車社会」の境界はどこだ(神奈川県編)

2022年11月16日

このページでは、マイカー不要の「車なし生活圏」とみんながマイカーを持つ「車社会」の境界がどこにあるかの結果をまとめています。
今回は神奈川県の市区町村についてみていきます。

【他県の結果を見る:全体埼玉県東京都千葉県・神奈川県 】

「車なし生活圏」と「車社会」の境界

マイカーなしで生活できる限界を調べるために、市区町村別に自家用車の世帯平均保有台数を集計しました。
平均して1家に1台以上車を持っている町を「車社会」、1台未満の町を「車なし生活圏」としました。

市区町村別世帯平均保有台数

次の図は、マイカーの市区町村別世帯平均保有台数です。
赤系の色はマイカー保有台数が1台未満の「車なし生活圏」、青系の色は「車社会」です。
赤色が濃いほどみんなが車を持っていない町で、逆に青色が濃いほど車を持っているのが当たり前の町です。

市区町村別世帯平均自家用車保有台数(神奈川県、2022年)。赤色が濃いほど保有台数が少なく、青色が濃いほど保有台数が多い。

北東部ほどマイカー保有台数が少なく、南西部ほど多い傾向がはっきり出ました。

神奈川県は北東部が東京23区に接しているため、北東部(川崎市・横浜市北部など)では東京に通勤している人が多くいます。
一方、南西部(小田原市や伊勢原市など)は東京からの距離が遠く、東京に通勤している人は少なくなります。

鉄道路線追加

鉄道路線とマイカー保有台数の関係を見るために、鉄道路線を白線で追加しました。

市区町村別世帯平均自家用車保有台数(神奈川県、2022年)。白線は鉄道路線である。

鉄道路線がない町はマイカー保有台数が多い傾向にあります。
しかし、鉄道路線が通る町が大部分であるため鉄道路線の有無による差はそれほど大きく見えません。
全体的に東京から距離が遠くなるほどマイカー保有台数が増える傾向です。

中部拡大

「車なし生活圏」と「車社会」の境界を細かく見るために、中部を拡大して市町村名を追加しました。

市区町村別世帯平均自家用車保有台数(神奈川県中央部拡大、2022年)。

マイカーの世帯平均保有台数が1を下回る「車なし生活圏」の西限は、北から順に相模原市、座間市、海老名市、平塚市という結果になりました。

厚木や平塚の東には相模川が流れており、相模川以東はおおむね「車なし生活圏」、以西は「車社会」にざっくり分類することができます。
私鉄である小田急線では海老名が西限であるのに対し、JR東海道線沿線は相模川を越えた平塚が西限であり、JR沿線では「車なし生活圏」が少し先まで広がっています。
「車なし生活圏」の西限は他県よりも遠くまで広がっていて、品川から直線距離で50 km離れた平塚まで「車なし生活圏」が広がっています。

鉄道についても、「車なし生活圏」の西限付近で都心からの列車が折り返し、その先では運行本数が減少します。
JR東海道線は平塚駅で一部列車が折り返しますし、小田急線でも海老名市から厚木市に入ってすぐの本厚木駅で一部列車が折り返します。

ちなみに中央部の綾瀬市は一見鉄道が通っているように見えますが、これは東海道新幹線であり、上図のエリアの範囲に駅はありません。
そのため、綾瀬市は鉄道空白地帯であり、周囲の町よりもマイカー保有台数が高めに出ています。

車なし生活圏とイトーヨーカドーの店舗分布

この「車なし生活圏」はおおむねイトーヨーカドーの店舗分布に合致します。

次の地図では、Google Mapで南関東のイトーヨーカドー店舗にピンを立てています。
出典:店舗を探す イトーヨーカドー 2022/11/12閲覧
※出典に記載の店舗について作成

神奈川県の場合は相模原や平塚が店舗網の西限になり、一部例外を除いておおよそ合致しています。
これは、イトーヨーカドーが首都圏では「車なし生活圏」をメインターゲットにしてビジネスを行っていることの現れかもしれません。

例外は伊勢原と小田原の店舗です。
伊勢原に関しては、車社会ではありますが、都心直結路線の駅前に立地しているため、駅近辺に限れば「車なし生活圏」であると考えられます。

今回は統計データの関係で市区町村単位の集計なので、駅近辺だけにしぼれば「車なし生活圏」は実際にはもう少し郊外に広がるため、これらの店舗のも「車なし生活圏」のエリアであると推察できます。

小田原に関しては、非主要駅から1km圏内という立地であり、マイカー以外の利用もいるものの、駐車場も広い郊外型の店舗なので例外と見なした方が良さそうです。

【他県の結果を見る:全体考察埼玉県東京都千葉県・神奈川県 】

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