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ChatGPTとBing AIの比較と使い分け(手続き的知識と宣言的知識)

2023年3月1日

チャットで質問して会話できるChatGPTは非常に有名になりましたが、類似サービスがいくつかあります。
ここでは、ChatGPTと類似サービスであるBing AIの特徴について比較します。
これらのサービスは「探したい情報の種類」に向き不向きがあり、目的に応じて使い分けると便利です。
サービスの特徴をふまえた上で、検索エンジンも含めてうまく使い分けできると、情報収集の効率が大幅に向上します。

ちなみに、過去のChaGPT関連記事として、ChatGPTの活用方法全般プログラミングでの活用方法について取り上げています。

AIチャットサービス

チャットで質問を投げかけると答えを返してくれるサービスとしてはChatGPTが非常に有名です。
その他にも類似サービスとしてBing AI(新しいBing)やPerplexity AIといったサービスがあります。
ここでは、代表的なサービスであるChatGPTとBing AIについて簡単に紹介します。

ChatGPT

開発元:Open AI
リリース:2022年11月
検索エンジン:GPT-3.5(リリース当初)
学習方法:教師あり学習と強化学習(人間のトレーナーによるフィードバックあり)
使用するには:要会員登録(無料だが有料会員優先サービスあり)、APIは有償
URL: https://chat.openai.com/chat

ChatGPTはOpen AIが開発したサービスで、2022年にリリースされて以来、大きな話題になったサービスです。
検索エンジンのGPT(Generative Pre-trained Transformer)自体は、2022年に新しく登場したものではなく、すでに存在したGPT-3の改良版です。
ChatGPTは人間の会話のような自然な受け答えをするため、エンジニア以外でも話題になっています。
学習データ自体は2021年9月までのデータなので、一部を除いて最新の情報には対応していません。

Bing AI(新しいBing)

開発元:Microsoft
リリース:2023年2月
検索エンジン:GPT-4 (Prometheus) とMicrosoft Bing
使用するには:EdgeでMicrosoftアカウントでログインし、順番待ちリストに登録(無料)
URL: https://www.bing.com/

Bing AIはMicrosoft Edge上でMicrosoft Bingを開くと使えるチャットAIです。
ChatGPTより後発のサービスですが、ChatGPTには無い特徴があります。
具体的には、回答に出典が明記されることや最新の情報への対応などがあげられます。
これらの違いがあるため、ChatGPTとは類似したサービスではあるものの、状況に応じて使い分けできるサービスです。

サービスの比較

Bing AIとChatGPTは一見競合しそうなサービスですが、それぞれ得意・不得意なことが違うため、うまく使い分けることができます。
ここでは、サービスの得意・不得意をふまえた上で、サービスの使い分けについて考えていきます。

次の表は、Bing AIとChatGPT、検索エンジン(Google検索)の特徴をまとめたものです。

表 Bing AIとChatGPT、検索エンジンの特徴の比較

Bing AIとChatGPTは同じチャットAIですが、質問に対する回答文の作り方に違いが見られます。
Bing AIは検索エンジンでリアルタイムに検索した結果を元に回答するのに対し、ChatGPTは過去の学習データを元に回答します。
これはChatGPTのモデルのトレーニングの際に人間のトレーナーによるフィードバックを活用した強化学習を行っているためです。
このようなプロセスを経ることでChatGPTはより「人間らしい」応答をすることができる代わりに最新情報への対応ができません。
文章生成のしくみが異なることは、それぞれのチャットAIの適性の違いとしても表れます。

宣言的知識にはBing AI

Bing AIは最新情報に対応して出典を明記するため、宣言的知識の情報収集に向いています。

宣言的知識とは、「~は~である」という形で表現できる知識のことです。
事実や概念を表す知識であり、「日本は島国である」や「スクリプト言語にはPythonやRがある」といった知識が宣言的知識になります。
このような情報を集める際には情報の信頼性が重要です。
そのため宣言的知識の情報収集の際には、確率的に確からしい間違いを含む文章を生成しうるChatGPTよりも、出典に遡って妥当性を検証可能なBing AIを使う方が良いでしょう。

手続き的知識にはChatGPT

一方、ChatGPTが強みを発揮するのは手続き的知識が必要な場面です。

手続き的知識とは、「こうしたいときどうする」というような行為・手順に関する知識です。
いわゆるノウハウ(konw-how)であり、人間においては宣言的知識を使いこなしながら定着していくタイプの知識です。
具体例としては、機会の操作、文章の翻訳や要約、俳句や物語の創作などが挙げられます。
プログラミングにおいては、コーディングやエラー修正、リファクタリングなどがあります。

ChatGPTは文書翻訳・要約やプログラミング言語で書かれたコードの解説やリファクタリングといった手続き的知識が必要な質問に対応できます。
このようなタイプの質問は、人間が実際に試して妥当なものか確認する(例えば、コードなら実際に実行してみる)ことが前提になるので、出典の明記は重要ではありません。
一方で、様々な知識を組み合わせて答えにたどり着く必要があるため、人間と一緒に強化学習を行っているChatGPTの強みが生きる課題です。

Google検索の使い所

Bing AIとChatGPTの使い分けについてここまで話してきましたが、Google検索などの検索エンジンとの棲み分けはどうすれば良いでしょうか。

チャットAIには無いGoogle検索の特徴は、検索結果の一覧性と選択性です。
Google検索などの検索エンジンでは、検索結果のページが一覧で表示されるます。
そのため、公的機関や学術論文といった信頼性の高いページから選択的に情報収集することができます。
また、複数の関連ページが表示されるため、各ページの内容をざっと目を通し(ザッピング)、内容の精査や比較検討することができます。
チャットAIは質問に対してひとまとまりの文章で回答するため、複数の対立する説明がなされていたり、信頼性の異なる複数の記述が乱立する場合はどれか一つを採用して残りを確認することはできません。
そのため、情報の精査や比較検討が目的の場合は、チャットAIではなくGoogle検索などの検索エンジンの方が向いています。

以上のように、情報収集の目的に応じてチャットAIと従来の検索エンジンとうまく使い分けることで、今まで以上に効率的な情報収集を行うことができます。

参考文献

Introducing ChatGPT, Open AI 2023/3/14閲覧
ChatGPT ウィキペディア 2023/3/14閲覧
Introducing ChatGPT and Whisper APIs, Open AI 2023/3/14閲覧
Models, Open AI 2023/3/14閲覧
Microsoft announces new Bing and Edge browser powered by upgraded ChatGPT AI, VOX MEDIA, LLC. 2023/3/14閲覧
宣言的知識 ウィキペディア 2023/3/14閲覧
手続き的知識 ウィキペディア 2023/3/14閲覧
岸 学、綿井 雅康「手続き的知識の説明文を書く技能の様相について」 日本教育工学雑誌 21(2) 119-128 (1997)

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