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レベニューマネジメントの考え方(アーリーバードの仮定)

ホテルや航空券は一般的に出発直前に買うより早めに購入した方が安い価格設定になっています。
これは、レベニューマネジメントの考え方に基づく価格設定を行っているからです。
このページではレベニューマネジメントにおける販売方法の考え方について紹介します。
レベニューマネジメントとは何かについては、次のページを参照して下さい。

参考レベニューマネジメントとは何か(陳腐化商品の販売戦略)

航空券や新幹線のきっぷ(指定席券)は飛行機や列車が出発してしまうと無価値になります。 これは、家具や文房具といった次の日も販売できる商品とは大きく異なる性質です。 このような在庫を繰り越せない特性をも ...

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レベニューマネジメントの考え方

レベニューマネジメントでは、ある期日(例:航空機の出発時刻)を過ぎると無価値になる陳腐化商品(例:航空券)をできるだけ高価格で売り切ることを目的としています。
売上を最大化するためには、高価格でも買ってくれる顧客には高く売り、価格が高いと買ってくれない顧客には安く売る必要があります。
以下では、チケットをできるだけ高く売り切るための販売戦略として市場の分割や早期割引の考え方についてまとめます。

市場の分割:ビジネス客と旅行客

航空機や新幹線の顧客の中には、価格に対する反応性が異なる2つのグループ(ビジネス客と旅行客)がいることが知られています。
そのため、ビジネス客と旅行客それぞれの嗜好に合った商品を設計を行い、それぞれに対して異なる価格で販売することで売上を最大化できます。

価格に対する反応性としては、ビジネス客は高価格でも購入する傾向があるのに対し、旅行客は価格が安くないと購入しない傾向にあります。
これは、ビジネス客は業務上の都合で必ずその区間を移動する必要があるほか、移動中も賃金が発生することから移動にかかる時間を最短にしたい傾向が強いためです。
一方、旅行客は行楽目的で特定の目的地に行く必然性は低いため、価格が高いと高速バスや自家用車などの安価な交通手段に乗り換えられたり旅行自体が取りやめられます。
このため、高くても買ってくれるビジネス客には高価格で販売し、安くないと買わない旅行客には低価格で販売することで売上を最大化することができます。

注意ポイント

ビジネス客と旅行客
この項目で言うビジネス客と旅行客はあくまでも価格に対する反応性で切り分けた顧客グループの名称です。
高くても買ってくれる顧客グループのことを「ビジネス客」、安くないと買ってくれない顧客グループのことを「旅行客」と名づけているに過ぎません。
そのため、「ビジネス客」グループの全員がビジネス目的の利用者とは限りませんし、同様に「旅行客」グループの中には敏感なビジネス目的の利用客も一定数含まれています。

アーリーバードの仮定

ビジネス客と旅行客に対して同じ商品を別々の価格で売るためにはどうすればよいでしょうか。
ある顧客がビジネス客か旅行客を判別するのは困難ですし、仮にできたとしても全くの同一商品を顧客ごとに別の価格で販売するのは不公平であり、顧客の納得を得るのは難しいです。
そこで、ビジネス客と旅行客の特性の差を利用することが考えられます。

ビジネス客は業務上の都合で移動しますが、仕事の予定は臨機応変に変更する必要があるため移動時間を前もって確定させることが難しく、一度決めた予定を直前に変更することも多々あります。
そのため、航空券や新幹線のきっぷを購入するタイミングは直前になりがちであり、予定変更不可などの制約条件を嫌い、高価格でも制約のない航空券・きっぷを購入する傾向にあります。
一方、旅行客は前もって予定を立てて移動の時間を決めることができるので、早期購入や予定変更不可などの制約条件があったとしても低価格であれば購入する傾向にあります。

以上のような経験則から、旅行客はビジネス客よりも早く購入するという仮説が成り立ちます。
このような仮定をアーリーバードの仮定とよびます。
アーリーバード(early bird)とは英語で早起きや早く来ることを意味し、旅行客の需要はビジネス客の需要よりも早く実現することを表しています。

アーリーバードの仮定をふまえると、早期購入割引を導入することで顧客グループごとに同じ商品を別の価格で売ることができます。
具体的には、同じチケットであっても早期購入者(主に旅行客)には割引価格で販売し、直前に購入する者(主にビジネス客)には定価(高価格)で販売します。
安価な旅行客向け商品をビジネス客が買わないようにするために、早期購入割引チケットにはキャンセル料が高いなどの制約が課せられることが多いです。
このように、あえて旅行客向けのチケットに制約条件を課すことで旅行客とビジネス客の市場を分割し、同一チケットを顧客グループごとに別の価格で販売できるように商品設計がなされています。

早期割引の販売枠数制限

航空会社の座席管理モデルの1つにリトルウッドの座席配分モデル(Littlewood's model)があります。
このモデルでは、乗客をビジネス客と旅行客の2グループに分け、両グループの割合から航空機1便あたりの収益を算出できます。
実務上は、アーリーバードの仮定に基づいて先に買いに来る旅行客にどの程度の座席を配分すると売上を最大化できるかという問題になります。

なぜこのような問題が生じるかというと、割引チケットを購入する旅行客よりも定価のチケットを購入するビジネス客にの方が1人あたりの売上が大きいからです。
先に購入する旅行客に割引チケットを販売して飛行機を満席にしてしまうと、後から購入しようとする高価格でも買ってくれるビジネス客にチケットを販売できなくなります。
そこで、後から来るビジネス客に高価格のチケットを販売するために早期割引チケットの販売枚数に制限をかけることで、定価で買ってくれるビジネス客の座席を確保します。
航空券や新幹線のきっぷでは、このように早期割引チケットの販売枠数を制限することで売上の最大化を目指しています。
早割などの割引チケットが販売期限よりも前に売り切れになるのは、このような枠制御の考えが元となっています。

注意事項としては、枠制限は飛行機が満席になることが前提条件となります。
飛行機が満席にならないことが明らかである場合、旅行客へはできる限り販売した方が売上を最大化できます。
旅行客への早期割引チケットの販売枠数に上限を課すのはあくまでビジネス客に買ってもらうためです。
安いチケットにビジネス客が流れるのを防ぐためには、割引チケットの制約条件(何日前までに購入、キャンセル条件)をコントロールします。

参考文献

佐藤 公俊, 澤木 勝茂「レベニューマネジメント 収益管理の基礎からダイナミックプライシングまで」共立出版 (2020)
Littlewood's rule, Wikipedia 2023/12/7閲覧

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