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【共通テスト解説】2023年 地理B 本試験 第2問

大学入試共通テスト(2023年 地理B 本試験 第2問)の解説ページです。

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問題と解答

共通テスト(2023年 地理B 本試験)の問題と解答のリンクです。
問題文のPDFは下記リンク先から入手し、図表や問題文を手元に置きながら解説(次項)を見て下さい。
リンク切れ対策のため複数サイトへリンクを貼っていますが、いずれも同一です。

入試速報トップ:東進朝日新聞
問題:東進朝日新聞
解答:東進朝日新聞

試験日(2023年)から年数が経過している場合はリンク切れの可能性が高いため、下記サイトを利用して下さい。

過去問サイト:日本の学校中日進学ナビ

解説

第2問は農業や輸出入に関する設問です。

問1 中世ヨーロッパの土地利用

中世ヨーロッパの土地利用や農業形態について説明した文章のうち、模式図の村落に当てはまるものを選ぶ問題です。

①「教会や集落は、防御のために濠に囲まれていた。」
模式図にはそのような濠は見られません。
特に、教会が集落から飛び出た位置に立地しているため、防御の必要性を意識しているとは考えづらいです。
→誤り

②「耕作地を春耕地、秋耕地、休耕地に分けて輪作していた。」
模式図中に春耕地、秋耕地、休耕地すべてが見られます。
→正しい

③「土壌侵食を防ぐため、耕作地を短冊状に分割して利用していた。」
短冊状の耕作地は存在していますが、ばらばらな方向を向いているため、土壌侵食を防ぐ意味があるとは考えられません。
傾斜地において等高線耕作が行われているのであれば、地形に沿って短冊は同じ方向を向いているはずです。
→誤り

④「農民は、耕作地に隣接した場所に分散して居住していた。」
模式図を見ると、集落は一箇所に集中し、農地の中に住居は見当たりません。
→誤り

正解:2

必要知識:なし

問2 灌漑面積と穀物収量の割合

「耕地に占める灌漑面積の割合」と「1ha当たりの穀物収量」のプロットから、地域を当てる問題です。
選択肢は「アフリカ」「中央・西アジア」「東アジア」「ヨーロッパ」であり、このうち東アジアを解答します。

プロットを見ると、次のように分けられます。
灌漑面積:高いグループ(③④)と低いグループ(①②)
面積あたりの収量:高いグループ(②③)と低いグループ(①④)

東アジアは稲作主体なので灌漑面積が高くなり、労働集約的な農業を行っているため、面積あたりの収量は高くなります。
そのため、両方に該当する③が東アジアであると考えられます。

正解:3

必要知識:
・稲作では水田による灌漑が行われている
・東アジアでは労働集約的な農業形態をとること

問3 遺伝子組換え作物の栽培状況

遺伝子組換え作物の栽培状況に関する統計地図(図3)の内容に合致する文章を選択する問題です。

②「栽培国数の内訳を見ると、発展途上国よりOECD加盟国が多い」
文章を見る限り、OECD加盟国と発展途上国を対比させているようです。
そこで、OECD加盟国を先進国と置き換えて比較してみます。
図3を見る限り、先進国でもヨーロッパでの栽培国はわずかです。
一方で、栽培国は南米やインドなどの発展途上国にも分布しています。
→誤り

③「栽培面積上位5カ国は、国土面積が広く、いずれの国でも企業的な大規模農業が中心に行われている」
新大陸で行われる企業的農業については、上位5カ国のうち南北アメリカ大陸の4か国はあてはまりますが、インドにはあてはまりません。
→誤り

④「遺伝子組換え作物の栽培を食用以外の作物に限定したり、栽培自体を行わない国がある」
図3を見る限り、ヨーロッパの大部分や日本では栽培されていませんし、綿花など非食用の作物しか栽培していない国も見られます。
→正しい

①「農薬の使用をなくし、単位面積当たりの収量を向上させることができる」
文章後半は正しく、遺伝子組換え作物を使用することで単位面積当たりの収量は向上します。
一方、遺伝子組換え作物は農薬の使用を「なくす」のではなく「減らす」ことが期待されています。
遺伝子組換えにより病害虫への耐性をもつ作物を作り出すことで、農薬の使用量を減らすことができます。
また、除草剤耐性をもつ作物を開発して積極的に除草剤を散布するといったことも行われているため、農薬と併用する栽培方法が主流です。
→誤り

知識が必要な①③の正誤がわからなくても、統計地図の読み取りから④が正しいと判断できれば正答できます。

正解:4

必要知識:なし

問4 食肉の輸出量

牛肉、鶏肉、羊肉について、生産量に占める輸出量の割合を示した統計地図から、組み合わせを選ぶ問題です。

この問題のポイントは、食肉の生産量でも輸出量でもなく、「生産量に占める輸出量の割合」です。
生産量は国内消費量が膨大な中国やインドが上位の作物が大量にありますし、輸出量だと面積が大きな国が上位になりやすいです。
しかし、「生産量に占める輸出量の割合」では、その国でどれだけ輸出目的で生産しているかという指標になります。
そのため、人口が少ないため国内市場が小さく、家畜の大部分を輸出しているような国を中心に着目していきます。
アメリカや中国のように人口が多い国だと、国内市場が大きいため生産量や輸出量のイメージと異なる可能性があります。

まずAの地図だけにあてはまる特徴を見ると、以下のようになります。
・北米(アメリカ、カナダ)で非常に低位
・モンゴルやカザフスタンで高位
・オーストラリアとニュージーランド両方で高位

オーストラリアとニュージーランド両方で飼育されている家畜としては、羊があてはまります(牛はオーストラリアのみ)。
また、羊はモンゴルやカザフスタンなどのステップ気候の地域で主要な家畜であり、遊牧民は少人数で大量の羊を扱いますので輸出割合が高いのにも合致します。
以上より、Aは羊肉です。

次にBとCの特徴を比較すると、Cでは次のような特徴が見られます。
・タイ、ブラジル、トルコで高位

これらの国はいずれも鶏肉の輸出国です。
日本でもタイ産やブラジル産の鶏肉がスーパーに並びます。
よって、Cは鶏肉です。

残ったBが牛肉です。
アメリカやオーストラリア産の牛肉は日本のスーパーでもよく見ます。
アメリカでは中央部の乾燥したグレートプレーンズでフィードロットを用いた肉牛飼育が行われ、アルゼンチンのパンパでも同様です。
オーストラリアでも東部内陸部の乾燥した地域で羊とともに肉牛の飼育が行われています。

正解:4

必要知識:
・オーストラリアとニュージーランドで輸出目的で飼育されている家畜の種類
・輸出用鶏肉の主要生産国

問5 輸送手段

輸出に使われる輸送手段の割合についての図表を見て、「輸出と輸出のどちらか」と「フランスとポルトガルのどちらか」を答える問題です。
設問文を読むと、「EU域外への輸送手段別割合」とあるため、EU内での輸出は含まれないようです。

まず輸出額/輸出量という軸で見ると、Eはいずれも海上輸送の割合が高いです。
一方でFは「ア」の国では航空輸送の割合が高いのに対し、「イ」の国では海上輸送の割合が高いです。

次に輸送手段ごとの特徴は次のようになります。
海上輸送:重量あたりのコストが最安である代わりに遅い輸送手段。穀物や石炭、自動車などの重量物の輸送が中心。基本的に重量あたりの単価が低いものが多い。
航空輸送:軽いものしか運べない代わりに高速で輸送可能。半導体や果物などの重量あたりの単価が高い物が多い。

以上をふまえて解答を考えると、「ア」「イ」いずれの国でもEよりもFの方が航空輸送の割合が高くなっています。
で見ると航空輸送を行う軽い製品の比率が低くなり、金でみると航空輸送を行うような単価の高い製品の比率が高くなります。
このため、Fが輸出であり、Eが輸出であるとわかります。

次にフランスとポルトガルの違いを考えます。
「ア」は「イ」よりも航空輸送の割合が高いため、「ア」の国の方が単価が高い製品を輸出していることがわかります。
フランスとポルトガルでは、一人あたりのGDPが高く豊かなフランスの方が、単価が高い製品を多く輸出していると考えられるため、「ア」がフランスです。

以上より、フランスの輸出額は③です。

正解:3

必要知識:
・海上輸送と航空輸送に適した貨物の違い
・フランスとポルトガルのどちらが豊かか(付加価値の高い製品を生産・輸出しているか)

問6 パルプと古紙の国別消費量

パルプと古紙の国別輸出量のグラフから、ドイツとパルプの組み合わせを選ぶ問題です。
4か国のうち日本のみが明示され、それ以外はアメリカ合衆国、カナダ、ドイツのいずれかです。

選択肢がいずれも先進国であることから、パルプ+古紙の消費量は、おおむね人口に従って消費量が増えると考えられます。
そのため、4か国の中で飛び抜けて人口が多いアメリカがパルプ+古紙の消費量が飛び抜けて多い「カ」に対応します。

残った「キ」と「ク」がドイツとカナダのいずれかです。
区の事のXとYの比率に着目します。
「ク」はアメリカ同様である一方、「キ」はYの方が消費量が多いです。
カナダはアメリカの隣国であり、消費傾向が同様であると考えられるため、「ク」がカナダ、「キ」がドイツであるとわかります。

次にXとYのどちらが古紙でどちらがパルプかを考えます。
ドイツをはじめとするヨーロッパ先進国では、SDGsをはじめとする環境保護政策を推進しているためドイツでは古紙の利用比率が高いと考えられます。
このため「キ」のドイツで比率が高いYが古紙であり、残ったXがパルプであるとわかります。

正解:3

必要知識:
・ヨーロッパ先進国での環境保護政策の推進

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