気候 系統地理

地下水とその構造・分類(自由地下水と被圧地下水・宙水)

地表に到達した雨水の一部は土壌中に浸透して地下水となります。
地下水は、井戸を通してくみ上げて利用される水資源であり、特に砂漠などの地表が乾燥した地域では重要な水資源です。
ここでは、地下水が含まれる地層中の構造や地下水の分類について解説します。

地下水とは

鍾乳洞の内部に形成された地底湖(岩手県東部・岩泉町・龍泉洞)。龍泉洞周辺は石灰岩質の土壌が広がっており、雨水により石灰岩が溶ける溶食が進んで鍾乳洞が形成された。鍾乳洞の地下には地下水が溜まった地底湖が存在する。この地底湖の水は「龍泉洞地底湖の水」という名水として知られており、岩泉町内の水道水の水源としても利用される。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2026/5/13閲覧

地下水は、陸域にある水(陸水)のうち、地表より下(地下)にある水のことです。
元々地表を流れていた地表水の一部が、土壌中に浸透して地下にたどり着くことで地下水となります。

地下には砂礫が粗くて隙間があるため水が浸透しやすい帯水層(透水層)と、反対に粘土やシルトなど細かくて隙間が小さいため水が浸透しにくい不透水層(厳密には難透水層)の2種類があります。
このため、地下水は帯水層を浸透して地下に潜り、不透水層のすぐ上で滞留して地下水の層を形成します。

地下水の中には特定の場所で地表へ噴出するものもあり、日本では各地に名水として知られる湧水が存在します。
一方、多くの地下水は地下に留まっているため、井戸を掘削して地下水をくみ上げ、生活用水や農業用水、工業用水などに利用します。

地下水は、カルスト地形扇状地の扇央のように水が地下に浸透しやすい地形の場所で多く見られます。
石灰岩質の土壌が広がる場所では、石灰岩が水に溶けやすいため、石灰岩が溶けて無数の小さな穴(ドリーネ、シンクホール)が形成されます。
このため、地表の水がドリーネの中に吸い込まれ、地下水となります。

一方、扇状地の扇央では、上流から流れてきた粗い礫が堆積し、隙間が多い土壌となります。
このため、上流からの水が地下に浸透して伏流水となり、地下水を形成します。
扇状地の末端(扇端)では、伏流水が再び地表に現れる場所(湧水)が見られます。

また、砂漠のように乾燥した気候であっても、数万年前に浸透した水が滞留した大規模な地下水層(化石水)が存在している場合もあります(例:米国中西部のグレートプレーンズの地下に存在するオガララ帯水層)。
乾燥した場所では地下水は貴重な水源となり、農業用水や生活用水として使われます。

陥没穴(ドリーネ、シンクホール)に向かって流れ落ちる河川水(米国南部・フロリダ州)。この場所は石灰岩質の土壌であるため、土壌が水に溶けて縦穴が形成され、その縦穴に河川の水が吸い込まれて地下に流れ込んでいる。地下で滞留した水はフロリダ帯水層を構成する。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2026/5/13閲覧

地下水の構造と分類

地下の地質構造と地下水流動の概念図。地下水は雨水が地中に浸透して地中に層状に滞留した水資源である。地下水には2種類が存在し、地表との間に水を通さない難透水層が存在しない自由地下水(不圧地下水)と難透水層を挟む被圧地下水が存在する。自由地下水を利用する井戸を浅井戸とよび、被圧地下水を利用するために掘った井戸を深井戸と呼ぶ。台地の下を流れる自由地下水は、台地の末端の崖線で地表に湧水として現れることがある。出典:持続可能な地下水の保全と利用に向けて(令和4年7月) 東京都環境局 2026/4/29閲覧

上図は地下水が含まれる地下の構造を示した模式図です。
地層には水を通しやすい帯水層透水層、粒子が大きい砂礫や水に溶ける石灰岩)と水を通しづらい不透水層(正確には難透水層、粒子が小さい粘土やシルト)があります。
上図では、青色(不圧帯水層や被圧帯水層)が透水層であり、黒色(難透水層)が不透水層です。

降水によって地表に到達した水の一部は土壌中に浸透し、地下水となります。
地表から浸透した地下水は、地表付近の空気が含まれる不飽和層(通気層、上図で「浸透」と書かれている茶色部分)を通り抜け、透水層(帯水層)に到達します。
透水層の下には不透水層があるため、水は透水層よりも下に行くことができません。
このため、不透水層の上に水が溜まっていき、透水層に地下水が滞留します。

透水層の地下水はその位置関係によって2種類に分けられます。
地表との間に不飽和層(通気層)しかない場所に溜まっている地下水は自由地下水(不圧地下水)と呼びます(上図では不圧地下水と記載)。
これに対し、地表との間に不透水層が存在する地下水は被圧地下水と呼びます。

以下では、自由地下水と被圧地下水について解説します。

自由地下水

戦国時代の復元井戸(福井県福井市・一乗谷朝倉氏遺跡)。一乗谷は谷底に川が流れる地形で地下水位が高く、手掘りで数m掘るだけで地下水(自由地下水)を得ることができる。このため、一乗谷では各戸に浅井戸が設置されており、この画像の井戸は戦国大名の朝倉氏が治めた当時の井戸を復元したものである。出典:Wikimedia Commons, ©っ, CC BY-SA 3.0, 2026/5/15閲覧

自由地下水(不圧地下水)は、地表と一番浅い不透水層の間にたまった地下水です。
地表から近いため入手しやすく、古くから井戸を掘って利用されてきました。
とくに乾燥地域など地表に水が少ない場所では重宝されてきました。
自由地下水の例として、扇状地の扇央付近の伏流水砂漠水無川の下に存在する地下水などがあります。

自由地下水を利用した井戸を浅井戸といいます。
浅井戸はその名の通り地表に近く浅い位置に地下水面が現れる自由地下水を掘るための井戸であり、深くても8m程度になります。
自由地下水の上には水を通す不飽和層(通気層)しか存在せず圧力がかかっていない状態なので、掘削しても地表に自噴せずに地下水面として現れます。
このため、昔はひもにつないだ桶を井戸の中に下ろして水を入れて引き上げることで水を得ていました。
現在でも自由地下水を得るためにはポンプなどでくみ上げる必要があります。

自由地下水は地表に近いため、地表の環境変化の影響を受けやすく、周囲の環境によって水量や水質が変化します。

汲み取り式トイレ(手前)に近接した浅井戸(奥)(ザンビア中部・ルサカ近郊)。比較的浅い位置にある自由地下水(地表との間に不透水層が存在しない地下水)は周辺環境の影響を受けやすく、周囲に汚染物質が存在すると水質が悪化することがある(地下水汚染)。出典:Wikimedia Commons, ©SuSanA Secretariat, CC BY 2.0, 2026/5/15閲覧

宙水

武蔵野台地が広がる東京都世田谷区の地下断面図。宙水は局所的な不透水層(難透水層)の上に溜まった小規模な自由地下水である。世田谷区周辺では、不透水層である東京層の上に自由地下水(図中の本水)の層が見られ、さらにその上には火山灰由来の帯水層(透水層)である関東ローム層が堆積している。この関東ローム層の中に局所的・小規模な不透水層(難透水層)が存在すると、その上にも局所的・小規模な自由地下水が滞留し、宙水(ちゅうすい/ちゅうみず)と呼ばれる。出典:世田谷区内の宙水について 東京都世田谷区 2026/5/16閲覧

宙水ちゅうすい/ちゅうみずは、局所的な不透水層の上に溜まった小規模な自由地下水です。
地表付近の帯水層(透水層)では、局所的に不透水層が見られることがあります。
この場合、不透水層が広がる場所では雨水が下に浸透せず、局所的に地下水が溜まります。
地層全体に広がる不透水層(直上に自由地下水層)よりも浅い場所に存在するため、一般的な自由地下水よりも容易に地下水を入手できます。

宙水は一般的な自由地下水よりも浅い場所に存在するため入手が容易ですが、地下水としては局所的・小規模な分布であることが多く、降雨後にのみ一時的に形成される場合もあります。
台地(洪積台地)では自由地下水の地下水面が深いため、比較的浅い位置に溜まる宙水が得られる場所に集落が形成されます。

高源院の境内に存在する烏山の鴨池(烏山弁天池)(東京都世田谷区)。高源院は元々品川に立地していたが、大正関東地震(関東大震災、1923年)の被害を受けて1939年に現地に移転した。移転の際に境内で掘り当てた水源を元に現在の池が形成された。この水源は帯水層(透水層)である関東ローム層の中に局所的に存在した不透水層の上に溜まった宙水(ちゅうすい、ちゅうみず)である。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2026/5/16閲覧

被圧地下水

地下の地質構造と帯水層(地下水層)の模式図。地下水は雨水が地中に浸透して地中に層状に滞留した水資源である。地下水には2種類が存在し、地表との間に水を通さない難透水層が存在しない自由地下水(不圧地下水)と難透水層を挟む被圧地下水が存在する。自由地下水を利用する井戸を浅井戸とよび、被圧地下水を利用するために掘った井戸を深井戸と呼ぶ。出典:第7章 環境モニタリング QA7-13 環境省 2026/5/16閲覧

被圧地下水は、上下を不透水層に挟まれた帯水層(透水層)に溜まった地下水です。
上下を不透水層に阻まれているため水が自由に移動できず、水圧がかかった状態で地中に存在するため、「被圧」地下水と呼びます。
このため、井戸を作るために掘削すると圧力によって水面が高くなります。
盆地(鑽井さんせい盆地)など地形的な条件によっては、掘削時に地表に水が噴出することもあります(自噴せい)。

被圧地下水を入手するために掘削した井戸を深井戸(掘り抜き井戸)と呼びます。

深井戸を掘削する際には不透水層の硬い岩盤を貫通する必要があり、自由地下水を取水する浅井戸と比べて技術的難易度が高く、コスト面でも割高になります。
一方、地表との間に不透水層が存在し、地表から遮断されているため外部からの汚染の影響を受けづらく、水質や水量、水温が年間通して安定しています。
このため、工業用水灌漑かんがい用の農業用水として利用されています。

被圧地下水や化石水、自噴井(鑽井)、鑽井盆地については、次のページで解説しています。

参考被圧地下水(化石水・自噴井と鑽井盆地)

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参考文献

岩手県/下閉伊郡岩泉町 龍泉洞地底湖の水 環境省 2026/5/13閲覧
地理用語研究会編「地理用語集」山川出版社(2024)
陸水 環境用語集 EICネット 2026/4/8閲覧
地下水の基礎 地下水マネジメント推進プラットフォーム 内閣官房 2026/4/9閲覧
地下水(チカスイ)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)、改訂新版 世界大百科事典、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典、百科事典マイペディア、最新 地学事典 2026/5/15閲覧
自由地下水(ジユウチカスイ)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2026/5/15閲覧
被圧地下水(ヒアツチカスイ)とは? コトバンク デジタル大辞泉、精選版 日本国語大辞典、日本大百科全書(ニッポニカ)、最新 地学事典 2026/5/16閲覧
不圧地下水(ふあつちかすい)とは? コトバンク 最新 地学事典 2026/5/15閲覧
井戸の種類について | 浅井戸と深井戸の違い コラム 水道修理ネクスト@広島 合同会社ニューネクストスタイル 2021/1/31閲覧
世田谷区内の宙水について 東京都世田谷区 2026/5/16閲覧
宙水(チュウミズ)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)、改訂新版、最新 地学事典、百科事典マイペディア、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2026/5/16閲覧
高源院 (世田谷区) ウィキペディア 2026/5/16閲覧
地下水の種類を詳しく紹介!地下水の定義や仕組みなどの基礎知識も ゼオライト株式会社 2026/5/16閲覧
掘抜き井戸(ほりぬきいど)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)、最新 地学事典、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2026/5/16閲覧

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