地球上に存在する水の中でも、陸域(海洋以外)の地表に存在する水を地表水と呼びます。
このページでは、地表水全体について概要を取り上げます。
地表水とは

地表水は、陸域(海洋以外)の水のうち、地表に存在するものの総称です。
氷河や積雪、海水は地表水には含みません。
地表水のうち、低い場所へ流れる動きがあるものが河川、静止しているものが湖沼(湖、池、沼など)です。
地表水の中には、長期間にわたって安定的に水が存在する場合と一時的に水が留まる場合の2種類が存在します。
安定的に水が存在する例としては、一般的な河川や湖沼が当てはまります。
一時的に水が留まる例としては、水たまりや湿原、水田、増水時の水無川や砂漠のワジなどが挙げられます。

地表水は基本的に降水由来の水です。
降水のうち地下に浸透した水(地下水)と蒸発散で空気中に放出された水以外であり、地表に留まっている水です。
地表水は人間が最も利用しやすい水資源ですが、地表に存在する淡水の大部分は氷河や積雪で、地表に存在する河川水や湖水は地球上の淡水の0.2%に過ぎません。
さらに、地表水の中でも河川の水量は季節や天候により大きく変動し、そのままでは安定的な利用が難しいです。
このため、水を安定的に利用するために人工的なダムやため池(溜池)を建設し、地表水を貯水する工夫が行われています。
以下では、地表水である河川水と湖水について説明した後に、両者を合わせた地表水の利用について解説します。
河川水

河川水は、河川を流れる水のことであり、地上に降った雨や雪解け水が集まり、重力によって低い場所へ流れる地表水の総称です。
河川の水は降水に由来する水であり、山間部で地表に降った雨が、低い場所に集まりながら川筋を作り、次第に大きな流れとなって海まで流れていきます。
谷口に広がる扇状地では、川の底(河床)に粗くて大きな礫が堆積するため、河川水の一部(場合によっては全部)が隙間から地中に潜って伏流水(地下水)となることがあります。
伏流水は扇状地の扇端で湧水となって地表に現れ、再び河川となって海に向かって流れます。
河川は、農業用水や生活用水の水源として利用されるほか、水力発電や水運(内陸河川交通)にも利用され、小規模ながら漁業(内水面漁業)の場にもなっています。
このような河川水の利用には、河川水量が年間通して安定していることが重要になります。
河川水量の変化しやすさを示す指標として河況係数があり、河川の最低水量と最高水量の比(倍率)として表現されます。
河川を水運に使うためには、「河川の水量変化(河況係数)が小さいこと」に加えて、「船が航行不可能な急流が存在しないこと(河川勾配がゆるやか)」も必要です。
河況係数と河川勾配については次のページで解説しています。
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参考河川水(河況係数と河川勾配)
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湖水

湖水は、湖や沼、池など陸地に囲まれた水域に滞留している水です。
河川水が地表を移動しているのに対し、湖水は同じ場所に一定期間滞留しています。
水量変化が激しい河川水を貯水するために、ダムやため池(溜池)などを建設して人工的に湖を作ることもあります。
河川水は絶えず流れているため時期による水量変化が大きいのに対し、湖水は滞留しており水質・水量変化が小さいです。
一方で湖水は同じ場所に滞留しているため、一度水質汚染が発生すると元の環境を取り戻すまでに時間がかかります。
地表水の利用
ここからは河川水と湖水を合わせた地表水全体について、利用方法を解説します。
河川と湖沼はつながっていることが多いため、上流のダム湖で貯水した水を下流の河川で取水するというように一体となって利用されることも多いです。
以下では、用水、水力発電、内水面漁業、水上交通、資源採掘の順にふれていきます。
用水

地表水の代表的な利用方法は、用水(農業用水、生活用水、工業用水など)です。
琵琶湖(滋賀)など天然の湖に取水口を設けて水を利用するほか、上流部にダムを建設してダム湖から取水することも多いです。
湖から遠く離れた場所に導水するために、用水路が建設されることもあります。
一例として、琵琶湖(滋賀)の水を京都市へ導水する琵琶湖疏水、猪苗代湖(福島県中西部)の水を郡山市周辺に導水する安積疏水などが挙げられます。
たとえ河川から取水する場合でも、河川水量を安定させるために上流部にダムを建設し、水量を調整して下流に流すことで、年間通して安定的に水を利用できるようにしています。
例えば、大阪府北部(大阪市など)の上水道は淀川の水を取水していますが、上流の琵琶湖から淀川へ流出する場所に瀬田川洗堰(滋賀県大津市)と呼ばれる堰を設置し、淀川に流れる水量が一定になるように流量を調整しています。
水力発電

水力発電は、水が水路を流れたり落下する動きを利用してタービン(水車)を回転させ、電力を発生させる発電方法です。
水力発電には河川から直接取水する方法(水路式)もありますが、発電量が河川水量に左右されるため、日本では小規模な施設に留まります。
一方、人工的にダムを建設し、ダム湖から取水する方法(ダム式)では、常に安定した水量を確保できる上に、電力需要に応じて発電量を調整できるため、日本では大規模な水力発電所が建設されています(例:奥只見発電所(奥只見ダム、福島・新潟)、佐久間発電所(佐久間ダム、静岡・愛知)、黒部川第四発電所(黒部ダム、富山県南東部))。
内水面漁業

内水面漁業は、河川や淡水湖、汽水湖など(海洋を除く)陸域の水面で行われる漁業です。
漁獲対象は、河川や淡水湖では、コイ(鯉)やフナ(鮒)のような淡水魚、サケ(鮭)やアユ(鮎)、ワカサギ、ウナギ(鰻)のような海と川を行き来きする回遊魚が挙げられます。
海水と淡水が入り交じる汽水湖や河口部では、回遊魚に加えて、スズキやボラ、マハゼのような海水~汽水域を好む魚が漁獲対象となります。
汽水域の漁業は、魚よりも貝類やエビ・カニ類の漁業の方が盛んであり、シジミやアサリ、クルマエビなどが漁獲対象です。
汽水域では養殖も盛んであり、シジミやホタテ貝、カキ、ウナギなどの養殖が行われています。
シジミは汽水域の代表的な漁獲対象であり、宍道湖(島根県北東部)や十三湖(青森県西部)、小川原湖(青森県東部)などで養殖が盛んに行われています。
他の養殖対象としては、北海道の汽水湖(サロマ湖など)ではホタテ貝やカキ(牡蠣)、浜名湖(静岡県西部)ではカキやノリ、ウナギ、スッポンなどが挙げられます。
水上交通

河川や湖沼は船による水上交通にも活用されます。
鉄道や自動車が発明・普及する前には、陸上の移動は人力や馬に頼るしかなく、河川や湖沼がある区間では船を利用した方が高速で移動できました。
現代でも、重量物の貨物輸送では、船で移動できる区間はなるべく船で輸送します。
このため、河況係数(河川水量の最小時と最大時の倍率)が小さく水量が安定しており、河川勾配(距離あたりの標高差)が小さい区間では、河川を利用した水運が盛んに行われてきました。
特に、ヨーロッパではライン川(スイス~ドイツ~オランダ)やドナウ川(ドイツ~ハンガリー~ルーマニア)のような国際河川が発達し、各国の航行の自由が確保され、国境を越えた内陸河川交通が盛んに行われています。
同様に大規模な湖沼にも水上交通が発達し、海上同様に水運が行われるほか、河川や運河などに連絡して水上交通網を形成する場合もあります。
中国の長江流域では、長江だけではなく支流、運河、その先にある湖沼まで含めた広大なエリアが船による水上交通で結ばれています。
アメリカ合衆国とカナダ国境に位置する五大湖では、複数の運河とセントローレンス川を介して外洋につながっており、外航船(外洋を航行する船)が五大湖まで到達できます。
パナマ運河では、太平洋側(パナマ湾)と大西洋側(カリブ海)を結ぶために、人工的に掘削した運河に加えて、人工湖(ガトゥン湖)を経由してパナマ地峡を横断しています。

資源採掘

湖沼は資源採掘の場にもなります。
塩分濃度が高い塩湖では、水に溶けきれなくなって析出した塩が湖岸に堆積するため、塩を採掘して利用します。
ウユニ塩原(ウユニ塩湖、ボリビア南西部)は、アンデス山脈が隆起した際に海水が切り離されて形成された塩湖が、そのままが干上がって形成された塩原です。
ウユニでは、集めた塩を山積みにして乾燥させる伝統的な製塩が行われています。
ウユニ塩原の塩には豊富にリチウム(Li)が含まれており、世界のリチウム資源の22%がウユニ塩原にあると見積もられています。
参考文献
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