大洋を流れる海流はランダムな方向に進んでいるわけではなく、風の影響を受けて規則的に循環しています。
このページでは、海水面付近の海流である表層流に着目して世界の海洋の大循環を解説します。
世界の海流(表層流)

海水面に近い場所の海流である表層流は、大気と接しているため、卓越風(主に恒常風)の影響を受けて動きます。
海流の方向に大きな影響を与える恒常風として、貿易風と偏西風があります。
これらの恒常風は地球の自転の影響で吹く風なので、異なる海洋でも同じ緯度帯には同様の成因の海流が見られます。
たとえば、北半球の低緯度地域には北東貿易風の影響を受けて西向きに進む海流(赤道海流)が見られます。
中緯度地域では偏西風の影響を受けて東向きの海流が見られます(北大西洋海流と北太平洋海流)。
低緯度地域では西向き、中緯度地域では東向きの海流が発生するため、玉突きで低緯度地域と中緯度地域を行き来する海流が発生します。
海流の循環

北半球では低緯度地域~中緯度地域で時計回りの海流の循環が見られます。
北太平洋では北赤道海流→日本海流(黒潮)→北太平洋海流→カリフォルニア海流という流れで時計回りで海流が循環しています。
同様に、北大西洋では北赤道海流→メキシコ湾流→北大西洋海流→カナリア海流という流れで時計回りで海流が循環しています。
南半球では海流の流れる向きが逆向き(反時計回り)になります。
南太平洋では南赤道海流→東オーストラリア海流→南太平洋海流(南極環流の一部)→ペルー海流(フンボルト海流)という流れで反時計回りで海流が循環しています。
同様に、南大西洋では南赤道海流→ブラジル海流→南大西洋海流(南極環流の一部)→ベンゲラ海流という流れでいずれも反時計回りで海流が循環し、インド洋では南赤道海流→モザンビーク海流→南インド洋海流→西オーストラリア海流という流れで循環しています。
南半球では、偏西風が吹く緯度30-50°付近の陸地が少なく海洋が広がっているため、偏西風に押されて地球を一周する南極環流が存在します。
一方、北半球ではユーラシア大陸や北米大陸に阻まれるため1つの大洋に閉じた海流となります。
北太平洋では、北太平洋海流が北回りで循環する海流が見られます。
海流の方向には、原動力となる卓越風だけではなく、大陸の位置(海洋の形)の影響も受けます。
陸地を海流が流れることはできないので、海流は大陸などの大きな陸地を避けるため、海流が流れる方向に制約があります。
たとえば、インド洋の北半球側にはユーラシア大陸が存在するため、北半球側の海流の循環が見られません。
循環を構成する海流
以下では、これらの循環を構成する海流について太平洋を例に見ていきます。
北太平洋では北赤道海流→日本海流(黒潮)→北太平洋海流→カリフォルニア海流という流れで時計回りで海流が循環しています。
これに対し、南太平洋では南赤道海流→東オーストラリア海流→南極環流(南太平洋海流)→ペルー海流(フンボルト海流)という流れで反時計回りで海流が循環しています。

貿易風と赤道海流・赤道反流

赤道から緯度30°付近の低緯度地域では、気圧の影響で西向きの貿易風(北半球:北東貿易風、南半球:南東貿易風)が吹くため、貿易風に押されて西向きの赤道海流が流れます。
赤道海流は赤道からやや離れた場所(おおむね南北の回帰線(緯度23°26' )の間)を流れます。
これは、赤道直下では貿易風の原動力である転向力(コリオリの力、地球の自転の影響)を失い風が弱くなるためです(詳細は「貿易風」を参照)。
北半球と南半球でそれぞれ北赤道海流と南赤道海流が西向きに流れるため、間の赤道直下ではそれを補うために東向きの赤道反流が流れます。
これは、西向きの赤道海流だけだと、大洋の西端(フィリピンやオーストラリア東海岸付近)に海水が積み上がってしまうため、大洋西端に到達した海水を東に送り返す力が働くためです。
大洋西端への到達と暖流

南北の赤道海流が大洋の西端(フィリピン諸島やオーストラリア東海岸付近)に達すると、陸地(大陸東岸)にぶつかりそれ以上西に進めなくなります。
そこで、行き場を失った海水は、進路を変えて高緯度側に進んでいきます(一部は赤道付近に集まり赤道反流として東進)。
北太平洋では、フィリピンの東側に到達した北赤道海流は北向き(高緯度側)に進路を変え、日本海流(黒潮)となって日本に向かって進みます。
南太平洋でも同様に、オーストラリア大陸の北東沖に到達した南赤道海流は、進路を南向き(高緯度側)に進路を変え、東オーストラリア海流となって南下します。
これらの高緯度側へ進む海流は、低緯度側で暖められた暖かい海水を高緯度側に運ぶため暖流と呼ばれます。
暖流が流れる地域では、熱の供給があるため温暖な気候となり、海上の空気も暖められて上昇気流が発生しやすく雨が多い湿潤な気候になります。
偏西風と海流
大洋の西端を暖流が北上し、緯度30-50°付近まで到達すると、偏西風の影響で海流は東向きに流されます。
偏西風は緯度30-60°付近に吹く恒常風で、年間通して西風が吹くため、海流も偏西風に流されて東向きに曲がります。
北太平洋では、フィリピンの東から日本の南まで北上してきた日本海流(黒潮)は偏西風に流されて東に曲がり、北太平洋海流となって太平洋を東進します。
南太平洋でも同様に、オーストラリアの東を南下する東オーストラリア海流が緯度30-50°付近で偏西風の影響で東にカーブします。
東にカーブした海流は、そのまま南太平洋海流(南極環流の一部)となって太平洋を横断し、大洋の東端(南米大陸西岸)に達します。
これらの大洋を横断する海流は、はじめ(海洋西端付近)は暖流の続きであるため暖かいですが、大洋を横断する間に周囲の海水との温度差が無くなっていきます。
同様に偏西風の影響を受ける海流としては、北大西洋のメキシコ湾流や南極大陸を周回するの南極環流があります。
メキシコ湾流

メキシコ湾流は、大西洋の北米大陸東海岸の沖合を北上する暖流です。
大洋内の位置関係は、太平洋の日本海流(黒潮)に対応します。
南側の北赤道海流が西インド諸島にぶつかって流れを北向きに変えてメキシコ湾流となり、アメリカ東海岸を北上し、カナダの東で南下してくるラブラドル海流(寒流)とぶつかって東向きに流れを変え、北大西洋海流となって大西洋を横断します。
北大西洋は北東方向に細長く伸びた海洋であり、偏西風に押されて北大西洋海流は北東方向に進んでいきます。
ヨーロッパに到達した北大西洋海流は、南下するカナリア海流(寒流)と北上するノルウェー海流(暖流)に分かれ、それぞれ大陸の沿岸に沿って流れていきます。
特にノルウェー海流は、メキシコ湾流に端を発した暖かい海水を西ヨーロッパ~北ヨーロッパに運ぶ役割を果たします。
この結果、イギリスやフランス、ノルウェーなどのヨーロッパ北西部の大西洋沿岸地域は、温暖な海水が蒸発して雲を形成するため雨が多く、暖流に空気が暖められて緯度の割に温暖な気候となります。
ロンドンの霧が多い気候やノルウェー北部に世界最北の不凍港(冬でも凍らない港)が存在するのは、暖流の影響です。
南極環流

南極環流は、偏西風が吹く南半球の緯度50-60°付近を中心とする、東向きに地球を一周する海流です。
この緯度帯には大陸が少なく、偏西風を遮る陸地も限られるため、偏西風がほとんど妨げられずに地球を一周します。
この偏西風に押されながら東向きに地球を一周する表層流(海水面付近の海流)が南極環流です。
南極環流は南極大陸の周囲を周回し、大陸が一切存在しない南緯50-60°付近で流速が最大になります。
北半球ではこの緯度帯にユーラシア大陸や北米大陸が広がっているため、南極環流に相当する海流は存在しません。
この緯度帯の海洋では、偏西風と南極環流が船を東向きに押すため、高速で東向きに移動できます。
蒸気船実用化前の帆船(帆を張り風を動力とする船)時代には重要な航路であり、長らくヨーロッパと東南アジア・オセアニア間の交易ルートとして利用されてきました。
しかし、蒸気船の普及やスエズ運河やパナマ運河の開通(1869年と1914年)によるショートカットの影響もあり、第二次世界大戦後には使われなくなりました。
大陸西岸への到達と寒流

偏西風に押されて緯度30-50°付近を東進する海流が大洋の東端(大陸西岸)に到達すると、陸地に阻まれてそれ以上東に進めなくなります。
行き場を失った海水は、進路を変えて低緯度側に進みます。
北太平洋では、米国西海岸まで到達した北太平洋海流は南下してカリフォルニア海流となります。
一部に北米西海岸を北上する海流も存在し、アラスカの南を西進して日本の東まで到達して再び北太平洋海流に合流する北太平洋海流→アラスカ海流→千島海流(親潮)という中~高緯度地域の循環を形成します。
南太平洋では、南米大陸南端部(西海岸)まで到達し南太平洋海流(南極環流の一部)は、ペルー海流(フンボルト海流)となって南米大陸西海岸に沿うように北上します。
ちなみに、南米大陸の南にはドレーク海峡があるため海水はそのまま東に進めます。
このため、ドレーク海峡を東に進んで地球を一周する海流(南極環流)も存在します。
以上のようなの低緯度側へ進む海流は、高緯度側で冷やされた冷たい海水を低緯度側に運ぶため寒流と呼ばれます。
寒流が流れる地域では、海上の空気が冷やされるため下降気流が発生しやすく、雨雲が形成されずに乾燥した気候になります。
寒流が見られる大陸西岸の緯度30-50°付近の地域では、海岸付近まで砂漠(海岸砂漠)が広がります。
高緯度側の循環

北太平洋では北赤道海流→日本海流(黒潮)→北太平洋海流→カリフォルニア海流という低緯度地域の循環(亜熱帯循環)に加えて、北太平洋海流を挟んだ高緯度側にも海流の循環(亜寒帯循環)が存在します。
北太平洋海流が太平洋を横断して東端に到達すると、大陸(北米西海岸)に阻まれて海流が南北に分かれます。
この際に北上する海流は暖流であるアラスカ海流となり、北アメリカ大陸沿岸に沿って北上し、アラスカの南を西進します。
西進した海流はカムチャツカ半島(ロシア東端部)や千島列島に阻まれて南西方向に進路を変え、寒流である千島海流(親潮)となります。
千島海流は日本の東で北上してきた日本海流(黒潮)とぶつかり、東へ進路を変えて再び北太平洋海流となります。
一方、北大西洋では、大洋を横断した北大西洋海流は、アフリカ大陸西海岸を南下する寒流のカナリア海流とヨーロッパ西岸を北上する暖流のノルウェー海流に分かれます。
ヨーロッパの大陸西岸は北西方向に海岸線が続くため、ノルウェー海流は大陸沿岸を北上して北極海に向かいます。
この流れを補う海流として、北アメリカ大陸東海岸を南下するラブラドル海流やグリーンランド海東海岸を南下する東グリーンランド海流などの寒流が南下し、北大西洋海流に合流します。
参考文献
地理用語研究会編「地理用語集」山川出版社(2024)
海流(カイリュウ)とは? コトバンク デジタル大辞泉、日本大百科全書(ニッポニカ)、改訂新版 世界大百科事典 2026/6/14閲覧
海洋の循環 気象庁 2026/6/17閲覧
海洋大循環とは?わかりやすい概要とメカニズム、観測方法 Beyond Our Planet NTT R&D Website 2026/6/15閲覧
深層流(シンソウリュウ)とは? コトバンク デジタル大辞泉、日本大百科全書(ニッポニカ)、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2026/6/15閲覧
海流はどうしておきるの | 海の自然のなるほど 公益財団法人 日本海事広報協会 2026/6/15閲覧
海洋大循環(カイヨウダイジュンカン)とは? コトバンク デジタル大辞泉、日本大百科全書(ニッポニカ)、改訂新版 世界大百科事典 2026/6/14閲覧
赤道海流(セキドウカイリュウ)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2026/6/15閲覧
偏西風(ヘンセイフウ)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2026/6/16閲覧
南極環流(ナンキョクカンリュウ)とは? コトバンク デジタル大辞泉、改訂新版 世界大百科事典 2026/6/16閲覧
メキシコ湾流(メキシコワンリュウ)とは? コトバンク デジタル大辞泉、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2026/6/23閲覧
ガルフストリーム(がるふすとりーむ)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2026/6/23閲覧