大学入試共通テスト(2025年 地理総合、地理探究 本試験 第3問)の解説ページです。
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目次
問題と解答
共通テスト(2025年 地理総合、地理探究 本試験)の問題と解答のリンクです。
問題文のPDFは下記リンク先から入手し、図表や問題文を手元に置きながら解説(次項)を見て下さい。
リンク切れ対策のため複数サイトへリンクを貼っていますが、いずれも同一です。
入試速報トップ:河合塾|東進|朝日新聞|
問題:河合塾|東進|朝日新聞|
解答:河合塾|東進|朝日新聞|
試験日(2025年)から年数が経過している場合はリンク切れの可能性が高いため、下記サイトを利用して下さい。
解説
第3問は自然環境と自然災害に関する設問です。
問1 植生分布
世界地図上に示された4か所の線分について、「正規化植生指数」の分布として当てはまるものを選ぶ問題です。
「正規化植生指数」とは聞き慣れない単語ですが、注釈で「植物による光合成の活発度を示す」とあります。
この注釈から、森林のように植物が豊富な場所では高くなり、砂漠のような植生に乏しい場所では小さくなる指標であることがわかります。
4地点を確認すると、以下のとおりです。
A:アフリカのギニア湾沿岸から北側のサハラ砂漠まで
B:インド東部・ベンガル湾沿岸からヒマラヤ山脈を越えてチベット高原・タクラマカン砂漠あたりまで
C:オーストラリア内陸部の砂漠地帯からグレートディバイディング山脈を越えて東海岸まで
D:南米大陸西海岸(ペルー砂漠あたり)からアンデス山脈を越えてブラジル高原まで
次に正規化植生指数の分布を見ると、以下の通りです。
①:最初は低く、途中で急激に高くなり以後高い値を継続
②:最初は高く、途中まで高い値を継続するが、中間地点で急減して以後低い値を継続
③:最初はやや高いがゆるやかに減少していき、最後の方は低い値を継続
④:最初はやや低い値を継続、中間地点からゆるやかに上昇していき最後に急増
①②で値が急激に変化している=前後で植生が大幅に変わっているのは、巨大山脈の存在が示唆されます。
また、④の最後の方でも(①②ほどでないにせよ)急激に変化しているため、大きな山脈の存在が示唆されます。
B, C, Dは巨大山脈をまたいでいる一方、Aにはそのような山脈はありません。
以上からAが③であると推察できます。
実際、アフリカのギニア湾沿岸はサバナ気候で植生があるのに対し、北側のサハラ砂漠に向けて植生が減少していき最後には砂漠になります。
このような植生の変化は③は合致しています。
正解:3
必要な知識:
・ヒマラヤ山脈、アンデス山脈、グレートディバイディング山脈の位置と山脈の両側の気候
・西アフリカにおけるサバナ気候や乾燥帯の分布
問2 陰影起伏図と地形
各国の標高が高い地点の陰影起伏図を見て、説明文との組み合わせを当てる問題です。
陰影起伏図はアフリカのナミビア、ネパール、フィリピンの3か国のいずれかです。
各国の特徴は以下の通りです。
ナミビア:西岸砂漠であるナミブ砂漠をかかえる乾燥帯の国であり、アフリカ楯状地上に位置
ネパール:世界最高峰のヒマラヤ山脈をかかえ、北部は山岳地帯
フィリピン:環太平洋造山帯(=狭まる境界)に位置する島国であり、火山が豊富
文章を確認します。
F:硬い岩盤が長い時間をかけて風化している。
G:山岳氷河による侵食作用がみられる。
H:プレート境界に近く、火山が存在する。
以上より、まずHは環太平洋造山帯(=狭まる境界)に位置するフィリピンであることがわかります。
Gはヒマラヤ山脈があるネパールです。
残ったFはアフリカ楯状地に位置するナミビアです。
次に陰影起伏図の特徴を読み取ります。
ア:中央に山が見えるが、他の場所は平坦
イ:山並みが連なっている一方で左端には平らな場所もある
ウ:無数の起伏(山?)が見えており、「イ」よりもさらに険しく急峻な地形
硬い岩盤が風化しているナミビアは、平坦な「ア」に対応します。
次に、無数の起伏が存在して平地が見当たらない「ウ」は、世界最高峰のヒマラヤ山脈をかかえるネパールであると考えられます。
山があるものの平地も見える「イ」は、火山島が多いフィリピンであると考えられます。
以上より、ア:F、イ:H、ウ:Gです。
ナミビアのことがよくわからなくても、ネパールとフィリピンに関する知識があれば正答できます。
正解:2
必要な知識:
・ネパールはヒマラヤ山脈をかかえ、ヒマラヤ山脈には山岳氷河が存在
・フィリピンはプレート境界に位置し、多数の火山をもつ島国であること
・ナミビアは乾燥帯に位置するとともアフリカ楯状地であるため、比較的平坦な岩盤上砂漠が広がる
問3 エルニーニョ現象と海流の向き
エルニーニョ現象発生時の海水温の分布と海流の向きを当てる問題です。
エルニーニョ現象は、南米のペルー沖の海水温が高くなる現象です。
ペルー沖は、南米大陸西岸を北側に向かって流れる寒流であるペルー海流が西に向きを変えて太平洋中央部に向かって流れる場所です。
よって、エルニーニョ現象発生時の海水温分布はペルー沖の温度が高い「K」であり、ペルー海流の向きは「北」向きです。
正解:3
必要な知識:
・エルニーニョ現象発生時の海水温変化
・ペルー海流の向き
問4 浸水被災者数と総被害額
各国の浸水被災者数と総被害額の組み合わせを当てる問題です。
2つのグラフ「サ」「シ」は被災者数と総被害額であり、P, Q, Rがアメリカ合衆国、タイ、バングラデシュのいずれかです。
3か国以外に日本の値も記載されています。
グラフを見ると、「サ」と「シ」で値が相関(比例)していません。
つまり、「被災者数が多いのに総被害額が少ない国」や逆に「被災者数は少ないのに総被害額が多い国」が存在することを意味します。
これは、被災者数が多くても財産が少ないと金額換算の総被害額は少なくなり、逆に被災者数が少なくても財産が多いと金額換算の総被害額は大きくなりやすいためです。
グラフを見ると、日本やPは「サ」では小さな値なのに、「シ」はむしろ値が大きいです。
反対に、Rは「サ」では大きな値ですが、「シ」では小さくなります。
以上から、日本同様に「サ」が小さく「シ」が大きいPが同じ先進国のアメリカ合衆国です。
このため、日本やアメリカ合衆国で小さい「サ」は被災者数であり、逆に大きい「シ」は総被害額です。
日本とは逆傾向を示すRが選択肢の中で最も貧しいバングラデシュであり、中間的な傾向を示すQが中所得国のタイです。
正解:2
必要な知識:
・バングラデシュが貧しく、タイが中所得国であること
問5 海陸比率と気温上昇
北半球と南半球の中緯度・高緯度地域について、地球温暖化による気温上昇幅を示したグラフから当てはまるものを選ぶ問題です。
グラフを見ると、XとY(緯度30-40度帯または80-90度帯)では、Yの方が気温の上昇幅が大きい傾向です。
「タ」と「チ」(北半球または南半球)では、チの方が上昇幅が大きい傾向です。
特にYの「チ」は他と比べて極めて気温の上昇幅が大きいです。
ここで問題文には「海氷に覆われた海は日射を反射するため、海氷面積の増減は気温上昇に影響を与える」とあります。
つまり、気温の上昇幅が極端に大きいYの「チ」は、海氷に覆われた海であると考えられます。
ここで、海氷に覆われているのは気温が低い極地なので、Yは80-90度帯です。
南極点付近が陸地(南極大陸)であるのに対し北極点付近は海(北極海)であるため、「チ」は北半球であると考えられます。
正解:2
必要な知識:
・海氷は寒冷な高緯度地域で形成されること
・北極点付近は北極海であり、南極点付近は南極大陸であること
問6 GISの読み取り
GISにおいて複数の地図を重ね合わせることによって、どのような情報が得られるかを答える問題です。
まず、「マ」は「津波浸水想定区域」と「人口分布」の情報を地図上に重ね合わせることに何がわかるかです。
津波浸水想定区域にいる人は当然避難する必要があるため、「a 避難が必要な人数」です。
次に「a 避難が必要な人数」と「避難所からの特定の距離圏」を重ね合わせます。
「避難所からの特定の距離圏」とは避難所から半径500mや半径1kmといった円を地図上に描いたものです。
その円の範囲内にいる人は避難所に十分近いので避難できると考えられる一方、どの避難所からも半径〇〇m以上離れている場合は、避難所が遠すぎて避難が間に合わない可能性があります。
以上より、重なる領域「ミ」は「c 避難所別の避難者数」であり、重ならない領域「ム」は「b 避難が間に合わない可能性がある人数」です。
正解:2
必要な知識:なし