気候 系統地理

砂漠と成因別分類(亜熱帯砂漠・雨陰砂漠・内陸砂漠・海岸砂漠)

降水量が極端に少ないため植物が育たず、岩石や砂礫が露出している場所を砂漠と呼びます。
ここでは、砂漠の定義とその分類について解説します。

地球上の水循環や水収支については、次のページで解説しています。

参考地球上の水循環(蒸発散・降水・地表水と地下水)

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参考水収支と周辺環境への影響(湖沼の縮小・地下水位低下)

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砂漠とは

砂漠は、降水量が少なく水を得にくいため植物が育たず、岩石や砂礫が地表に露出している場所です。
ある土地で降水量よりも蒸発散量(地表からの蒸発量+植物からの蒸散量)の方が多い(=水収支がマイナス)と、地表から水分が継続的に失われて乾燥し、植物が育たなくなります。
この結果、地表の植生はまばらになり、岩石や砂礫が地表に露出した砂漠が形成されます。

乾燥した気候であっても、外部河川が流れていたり、地下水を利用できるオアシスなどでは、蒸発散量以上の水分を得ることができるため、局所的に植物が生育して緑が広がります。
このような場合は、水収支の計算に外部河川や地下水の影響が入るため、局所的に水収支がプラスになり、灌漑により小規模な農業が営まれます(オアシス農業)。

ケッペンの気候区分では、年降水量がその土地の乾燥限界値(~500mm)の半分未満の場所(~250mm)を砂漠気候(BW)に分類します。
砂漠気候の地域では砂漠が広がります。
乾燥限界r(mm)は年平均気温をt(℃)とすると、r = 20 (t + x) で定義されます。
xは雨が多い季節によって次のように決まります。

表 乾燥限界rを算出する係数xの値

x記号(降水量の季節変化)定義
14w(冬季乾燥・夏雨)最多雨月が夏にあり、10×最少雨月(冬)降水量≦最多雨月(夏)降水量
7s(冬雨・夏季乾燥)最多雨月が冬にあり、3×最少雨月(夏)降水量≦最多雨月(冬)降水量かつ最少雨月(夏)降水量が30mm未満
0f(年中平均的に降水)w, s以外

たとえば、年平均気温t=20℃の場合、冬季乾燥型では年降水量680mm、夏季乾燥型では540mm、年中降水型では400mmが乾燥限界となります。

成因による分類

砂漠が形成されるのは、降水量が少ない場所です。
降水量が少ない原因にはいくつかのパターンがあり、成因別に分類できます。
実際には、1つの砂漠であっても複数の要因が複合的に影響したり、エリアによって砂漠を形成する要因が異なることもあります。

以下では、砂漠の成因別の分類(亜熱帯砂漠、雨陰あまかげ砂漠、内陸砂漠、海岸砂漠)について解説します。

亜熱帯砂漠(回帰線砂漠)

サハラ砂漠の衛星画像。サハラ砂漠は緯度30°付近の亜熱帯高圧帯(中緯度高圧帯)の影響で降水量が少ないため形成された亜熱帯砂漠(中緯度砂漠)である。このため、北緯15-35°付近に緯線に沿って帯状に砂漠が広がる。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2026/5/3閲覧

亜熱帯砂漠は、緯度30°付近の大陸西岸~中央部に広がる砂漠です。
回帰線(緯度23°26' )付近に広がることから回帰線砂漠とも呼ばれます。
緯度30°付近では、年間通して亜熱帯高圧帯(中緯度高圧帯)の影響下にあり下降気流が常に発生します。
このため、大陸西岸~中央部では年間通して乾燥した砂漠気候(BW)となり砂漠が広がります。
一方、大陸東岸では貿易風季節風(モンスーン)の影響を受けるため雨が降る季節が存在し、砂漠は見られません。

亜熱帯砂漠は気圧帯の影響を成因とする砂漠なので、広範囲にわたる大規模な砂漠ができやすいことが特徴です。
亜熱帯高圧帯は季節によって南北に移るため、亜熱帯砂漠が形成されるのは一年中亜熱帯高圧帯の影響を受ける地域のみです。
亜熱帯砂漠の熱帯側には雨季と乾季がはっきり分かれるサバナ気候(Aw)ステップ気候(BS)が広がり、温帯側には夏に乾燥する地中海性気候(Cs)が広がります。

亜熱帯砂漠の例は以下の通りです。
アフリカ:サハラ砂漠(北アフリカ)
ユーラシア:アラビア砂漠(アラビア半島)
オーストラリア:オーストラリア砂漠
北アメリカ:ソノラ砂漠(メキシコ北西部~米国カリフォルニア州/アリゾナ州)

オーストラリアの衛星画像。オーストラリアの国土は大部分が南緯15-35°付近に位置するため、大陸西岸~中央部にかけて亜熱帯砂漠が広がる。オーストラリアでは東海岸に沿うようにグレートディヴァイディング山脈が走るため亜熱帯砂漠の領域が広く、東海岸の沿岸や北部・南部を除く大部分で砂漠が見られる。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2026/5/3閲覧

雨陰砂漠

海から山脈へ向かって風が吹くと、山脈の風上側では湿った空気が山を上る過程で結露(凝結)して雨雲を形成して雨が降る(地形性降雨)。山脈を越えた風は水分を失って乾燥しており、山脈の風下側に高温乾燥した空気をもたらす(フェーン現象)。海から山脈を越える風が恒常風である場合は、山脈の風下側では年間通して乾燥した風が吹き下ろすため、降水量が少なくなり砂漠が形成される。このように恒常風によるフェーン現象に起因する砂漠を雨陰砂漠と呼ぶ。出典を加工して作成。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2026/5/3閲覧

雨陰あまかげ砂漠は、卓越風(主に恒常風)の風下側に形成される砂漠です。
卓越風は一定期間同じ方向に吹きやすい風であり、恒常風は年間通して同じ方向に吹きやすい風です。
山脈を横から乗り越える方向で卓越風が吹くと、風上側と風下側が固定されます。
海洋上で水蒸気を含んで湿った卓越風が山脈を越える際に、標高が上がるにつれて気温が低下し、飽和水蒸気量が低下して空気中の水分が結露(凝結)します。
この結果、山脈の風上側では雨雲が形成され、雨が降りやすい気候になります(地形性降雨、上図中央)。
卓越風は山脈を越えるまでに水分を失い、乾燥した空気を風下側にもたらします(フェーン、上図右側)。

卓越風のように長期間にわたって風向きが固定されると、山脈の風下側ではその期間中は降水量が少なくなります。
恒常風のように風向きが年間通して変わらないと、山脈の風下側では年間通して降水量が少なくなり、しばしば砂漠が見られます。

雨陰砂漠の例として、アンデス山脈の東側(風下側)に位置するパタゴニア砂漠(アルゼンチン南部)があります。
この南アメリカ大陸の南緯39-53°付近の緯度帯では年間を通して西から偏西風が吹きます。
そのため、アンデス山脈の風上側にあたるチリ南部では地形性降雨により年間を通して雨が多い一方、水分を失い乾燥した偏西風が吹くパタゴニア側では雨が少なくなり、植生が乏しい砂漠が広がります。

パタゴニア砂漠の景観(アルゼンチン南部・サンタクルス州)。南アメリカ大陸南部の南緯39-53°付近の緯度帯では、年間を通して西から偏西風が吹く。このため、アンデス山脈の西側のチリは地形性降雨により湿潤な気候になるが、東のアルゼンチン側は常に山脈を越える風の風下側になり、乾燥したフェーンの影響で降水量が少ない。出典:Wikimedia Commons, ©Eassi, CC BY 3.0, 2026/5/7閲覧

内陸砂漠

タクラマカン砂漠の衛星画像(中国西部)。タクラマカン砂漠は隔海度が高い内陸砂漠であり、一番近いインド洋からも2,000kmほど離れている。さらに、インド洋との間にはヒマラヤ山脈がそびえ立つため、インド洋からの湿った季節風が届かず乾燥している。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2026/5/6閲覧

内陸砂漠は、隔海度が大きい(=海から遠く離れた)ことが原因で形成される砂漠です。
海から遠く離れた大陸の内陸部に見られます。
沿岸部から極端に距離が離れていると、特に目立った山脈が無くとも、海からの風は途中で湿気を落としてしまい、大量の水蒸気を供給する場所も存在しないため雨雲が形成されず、年間通して乾燥し、砂漠が広がります。

内陸砂漠の例として、ユーラシア大陸内陸部のタクラマカン砂漠(中国西部)やゴビ砂漠(中国北西部)、中央アジアの砂漠(トルキスタン砂漠)などがあります。
内陸砂漠は隔海度の大きさが成因ですが、ゴビ砂漠やタクラマカン砂漠はヒマラヤ山脈の北側に位置し、南側からの湿った風がヒマラヤ山脈に遮られるため雨陰砂漠としての側面もあります。

海岸砂漠

大西洋沿岸に広がるナミブ砂漠(ナミビア南西部・ナミブ=ナウクルフト国立公園)。アフリカ南部西岸は沖合を北上する冷たいベンゲラ海流に空気が冷やされるため上昇気流が発生しづらい。このため、雨雲も形成されづらく、沿岸部でも海岸砂漠(西岸砂漠)が広がっている。出典:Wikimedia Commons, ©Buiobuione, CC BY-SA 4.0, 2026/5/6閲覧

海岸砂漠は、寒流や深海からの冷たい湧昇流の影響で海水温が低下し、雨雲が形成されづらくなり形成された砂漠です。
大陸西岸の中緯度地域(緯度20-30°付近)で見られることから、西岸砂漠とも呼ばれます。
この緯度帯では、大陸西岸の沖合を寒流が流れており、海面付近の空気を冷やして上昇気流を抑制します。
上空が暖かく地表付近が冷たい空気になるため上昇気流が発生せず、沿岸部も含めて乾燥して砂漠が広がります。

海岸砂漠は寒流が流れる大陸西岸の中緯度地域(緯度20-30°付近)に位置し、具体例は以下の通りです。
アフリカ(南半球):ナミブ砂漠(ナミビア西部、ベンゲラ海流に起因)
アフリカ(北半球):サハラ砂漠西端部(モーリタニアなど、カナリア海流に起因)
南アメリカ:アタカマ砂漠(チリ北部、ペルー海流に起因)
北アメリカ:バハ・カリフォルニア砂漠(メキシコ北西部、カリフォルニア海流に起因)
オーストラリア:オーストラリア砂漠西端部(オーストラリア西部、西オーストラリア海流に起因)

参考

ナスカの地上絵「コンドル」(ペルー南部・イカ県ナスカ郡)。ナスカの地上絵は、約2000年前に栄えたナスカ文化の時代に砂漠の地面に描かれた巨大な地上絵である。寒流のペルー海流の影響でペルーの沿岸部には海岸砂漠が広がる。このため、ナスカ台地では極端に降水量が少なく、水が少ない過酷な環境のため動植物による破壊も免れて現在まで残っている。出典:Wikimedia Commons, CC0, 2026/5/7閲覧

降水量が極端に少ない砂漠だからこそ残ったナスカの地上絵
ナスカの地上絵は、ペルー南部のナスカ台地に描かれた巨大な幾何学模様の図形です。
約2000年前にこの地で栄えたナスカ文化の時代に描かれたものです。
この絵が現代まで残っているのは、降水量が極端に少ない環境のおかげです。

ペルーやチリ北部は砂漠の中でも特に降水量が少ない場所です。
この地域は、亜熱帯高圧帯の影響下にある亜熱帯砂漠であるとともに、沖合では寒流であるペルー海流が空気を冷やす海岸砂漠でもあり、さらにはアンデス山脈の雨陰となる雨陰砂漠でもあります。
このため、長期間にわたって雨水で地上絵が壊されることもなく、水が少ない過酷な環境のため植生や動物による破壊も免れて、2000年前に描かれた地上絵が現代まで残っています。

参考文献

砂漠(サバク)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)、改訂新版 世界大百科事典、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典、百科事典マイペディア、最新 地学事典 2026/5/6閲覧
帝国書院編集部「新詳地理資料 COMPLETE 2023」帝国書院(2023)
地理用語研究会編「地理用語集」山川出版社(2024)
砂漠のでき方- きみもなろう!砂漠博士 - 鳥取大学乾燥地研究センター 2026/5/6閲覧
パタゴニア砂漠(ぱたごにあさばく)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2026/5/6閲覧
内陸砂漠(ないりくさばく)とは? コトバンク 世界大百科事典(旧版)内の内陸砂漠の言及 2026/5/6閲覧
海岸砂漠気候とは コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2026/5/6閲覧
西岸砂漠 ウィキペディア 2026/5/6閲覧
ナスカの地上絵(ナスカノチジョウエ)とは? コトバンク 共同通信ニュース用語解説、世界の観光地名がわかる事典、世界遺産情報 2026/5/7閲覧
Nazca lines, Wikipedia 2026/5/7閲覧
山形大学ナスカ研究所 山形大学 2026/5/7閲覧

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