大学入試共通テスト(2025年 地理総合、地理探究 本試験 第5問)の解説ページです。
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問題と解答
共通テスト(2025年 地理総合、地理探究 本試験)の問題と解答のリンクです。
問題文のPDFは下記リンク先から入手し、図表や問題文を手元に置きながら解説(次項)を見て下さい。
リンク切れ対策のため複数サイトへリンクを貼っていますが、いずれも同一です。
入試速報トップ:河合塾|東進|朝日新聞|
問題:河合塾|東進|朝日新聞|
解答:河合塾|東進|朝日新聞|
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解説
第5問は産業構造の変化に伴う都市の変容に関する設問です。
問1 日本の工業用地
三大都市圏と地方圏における工業用地の面積の推移のグラフを見て、凡例と背景説明を選ぶ問題です。
凡例のAとBは三大都市圏と地方圏のどちらかであり、説明文j, kは1965-1975年と1975-1995年の変化の背景です。
j:加工組立工業が成長し、生産工場が地方圏に立地した。
k:基礎素材型工業の基盤整備が臨海部で進められた。
はじめにjとkの判別です。
1960年代から1990年代にかけての日本では、海外から原材料を輸入して国内の工場で加工した製品を海外に輸出する加工貿易が行われていました。
加工貿易が成立するためには、海外から原料を輸入したり製品を海外に輸出するために港の整備が必要です。
説明文kでは、基礎素材型工業の基盤整備が臨海部で進められたとあります。
わかりづらい文章ですが、「基礎素材型工業」ということで加工貿易の原料となる「素材」に関する工業であることがわかります。
原料に関する工業の基盤整備が臨海部で行われるということは、その後に国内の工場で加工貿易を行うための基盤が整えられたことになります。
説明文jでは、実際に加工組立工業が成長し、生産工場が地方圏に建てられたことがわかります。
以上より時系列としては、k→jであると判断できます。
よって、kが1965-1975年、jが1975-1995年であると判断できます。
次にAとBの判別です。
AとBの工業用地の面積推移を見ると、Aは1975年で頭打ちとなるのに対し、Bは1995年まで増加を続けています。
説明文jに生産工場が地方圏に建てられたとあるため、もしAが地方圏だと1975年に既に頭打ちになってしまい矛盾します。
このため、Aが三大都市圏、Bが地方圏です。
正解:2
必要な知識:
・日本の加工貿易について
問2 人口ピラミッド
首都圏の2つの市区D, Eの1990年と2015年の人口ピラミットを参照し、人口ピラミットの年代と説明文x, yの組み合わせを答える問題です。
まず人口ピラミットを確認します。
「カ」と「キ」は、1990年と2015年のいずれかです。
1990年時点では日本の人口は増え続けていましたがその後頭打ちとなり、日本は高齢化が進み高齢者の比率が急速に高まっています。
このため、「カ」と「キ」を比較したときに、D, Eどちらでも高齢者比率が高い「カ」が2015年です。
次にD, Eと説明文x, yの対応です。
説明文x, yは以下の通りです。
x:都心から約 15 kmの位置にあり、住宅や工場が混在していたが、2000年代以降、工場跡地などにマンションや商業施設の建設が進んだ。
y:都心から約 40 kmの位置にあり、農村や山林が広がっていたが、ニュータウンが開発され、1980年代半ばから2010年代にかけて宅地化が進んだ。
yが1980年代から住宅の供給(=ニュータウン開発)が行わたのに対し、xは2000年代以降に住宅の供給(=マンション建設)が行われたという違いがあります。
これをふまえると、1990年(キ)の時点で30-40代と0歳代が多いEが説明文yと合致します。
新しく開発された住宅地(ニュータウンでもタワーマンションでも)では、若い世代が同時に大量に入居するため、人口ピラミットの世帯構成が偏ります。
そして、入居後ほどなくして同じような時期に子どもを生み育てます。
以上の流れをふまえると、1980年代に大量に入居した世代が数年後に出産した結果、入居した親世代(30-40代)と生まれた子ども(0歳代)の比率が大きくなり、逆に間の20代が少ないという右下のような特徴的なピラミッドができあがります。
同様に2015年(カ)のD(左上の人口ピラミッド)でも30-40代にピークが見られ0-4歳が若干多くなっています。
1990年のE(右下の人口ピラミット)ほど顕著でないのは、都心から15 km程度なので工場跡地以外の場所の人口も多いですし、少子化により子どもの出生数が少ないことなどが理由として考えられます。
以上より、yはEの説明文であり、逆にxはDの説明文です。
正解:1
必要な知識:
・住宅地を開発した際の人口動態の推移
問3 産業構造の変化
GDPに占める製造業の割合と都市人口率の推移をプロットしたグラフを見て、国名を当てる問題です。
サ~スがイタリア、オーストラリア、韓国のいずれかです。
サ:1970年から1995年にかけて、製造業割合と都市人口率の両方が増加し、2020年にかけては停滞
シ:1970年から2020年にかけて、製造業割合のみ減少(減少幅はスより小さく、都市人口率はスより低い)
ス:1970年から2020年にかけて、製造業割合のみ減少(減少幅はシより大きく、都市人口率はシより高い)
まず、3か国の中で唯一新興国である韓国は、1970年から1995年にかけて製造業の割合が増加し、都市人口率も増加している「サ」です。
これは、新興国が経済発展する過程で物価水準の安さを背景に製造業が発展し、第1次産業(農業)から第2次産業(製造業)への労働力の移行が起きて都市化が進むためです。
次に、イタリアとオーストラリアの判別です。
オーストラリアは新大陸に入植した西洋人によって開拓された国であり、シドニーやメルボルンといった大都市に人口が集中し、国土の大部分が人口希薄地帯であるという特徴があります。
一方、イタリアは旧大陸に位置し、古くから人が居住してきた地域なので、国土に分散して人が居住しています。
このため、都市人口率が高い「ス」がオーストラリア、都市人口率が低い「シ」がイタリアであると判断できます。
正解:4
必要な知識:
・新興国の経済成長時の製造業と都市への人口集中
・新大陸と旧大陸の都市への人口集中度の違い
問4 産業の推移
情報関連産業の東京都への集中度に関する表を元に業種を選ぶ問題です。
表1は、タ~ツと放送業について、「全国の従業者数に占める東京都の割合(2016年)」と「全国の従業者数の増減率(2006-2016年)」を示しています。
なお、タ~ツは出版業、新聞業、ソフトウェア業のいずれかです。
表1を見ると、「チ」と放送業は2006→2016年で従業者数が増加しているのに対し、「タ」と「ツ」は減少しています。
このため、選択肢の中で唯一成長産業であるソフトウェア業が「チ」です。
次に「タ」と「ツ」の違いに着目すると、「タ」は全国に占める東京都の割合が高い(7割弱)のに対し、「ツ」は低い(4割弱)です。
出版業と新聞業の東京への集中度合いを考えると、出版業の方がより集中度が高いです。
たとえば、売上高上位の出版社を考えると、講談社、角川書店(KADOKAWA)、集英社などがありますが、いずれも東京に本社があります。
一方、新聞業でも東京に本社がある新聞社がありますが、一方でプロ野球球団を所有する中日新聞は名古屋市が本社ですし、他にも北海道のブロック紙である北海道新聞や、県紙とよばれる各県に根付いた地元シェアが高い新聞社(地方紙)が存在します。
書籍と新聞を比較すると、名古屋でシェアが高い新聞は中日新聞ですが、名古屋の人が読む本も東京の出版社の本です。
名古屋では講談社や角川書店の本が全然読まれていない、などということはありません。
逆に新聞では、東京で読まれている読売新聞が地方では全然読まれていない、ということが普通にあります。
以上より、東京への集中度が高い「タ」が出版社であり、東京への集中度が低い「ツ」が新聞業です。
正解:2
必要な知識:
・出版業、新聞業、ソフトウェアの各業界が発展しているか衰退しているか
・出版業における東京一極集中
・新聞業における地方紙の存在
問5コロプレス図読み取り
ロンドンに関する3種類のコロプレス図(外国で生まれた人の割合、高度な経営・専門業務の従事者割合、失業率)を元に、誤りを含む会話文を選ぶ問題です。
①高度な経営・専門業務の従事者割合が高位の地区の分布と、失業率が高位の地区の分布は異なる傾向
→正しい
北西部や西端部、南西部など、逆になっている箇所が複数確認できます。
②インナー・ロンドンのほうがそれ以外の地域より多い
→正しい
「外国で生まれた人の割合」と「高度な経営・専門業務の従事者割合」の両方が高い地区は、インナー・ロンドンでは見られます(中央部など)が、外縁部ではあまり見られません。
③失業率は、シティを中心に同心円状に高位から低位へと分布する傾向
→誤り
明らかに同心円状に分布していません。
④倉庫業や造船業が衰退した後に、ウォーターフロント開発が行わた
→正しい
図からは読み取れませんが、事実です。
③はコロプレス図を見るだけで明確に誤りなのがわかるので、それ以外がわからなくても正答できます。
正解:3
必要な知識:なし