地形 系統地理

カルデラとカルデラ湖・火口湖

カルデラは火山の陥没によってできた凹地です。
カルデラにの凹地に水がたまるとカルデラ湖が形成されます。
このページでは様々な種類のカルデラとカルデラ湖について解説し、最後にカルデラ湖に類似する火口湖についても紹介します。

カルデラ

山頂付近が陥没して形成されたカルデラ(東京都三宅村)。伊豆諸島の三宅島の活火山である雄山(おやま、775m)のカルデラを上空から撮影したものである。三宅島自体が雄山の火山噴出物が堆積してできた火山島であり、このカルデラは2000年の噴火の際に山頂付近が陥没して形成されたものである。出典:Wikimedia Commons, ©さかおり, CC BY-SA 4.0, 2024/11/15閲覧

カルデラとは、大規模な火山噴火によってできた巨大な凹地です。
大規模な噴火が起きると大量のマグマが放出されて火山内部のマグマがたまっていた場所が空洞になり、地表が陥没して円形の凹地ができます。
この際、火口の外縁部はマグマの放出がないため陥没せず、周囲を急峻な山(外輪山)に囲まれた凹地となります。

大規模な噴火によって形成された巨大なカルデラの中に小規模な火山地形が形成されることもあります。
たとえば、カルデラが形成された後にカルデラ内部を火口とする小規模な噴火が発生した場合、カルデラの内部に中央火口丘とよばれる小さな火山が形成されます。
中央火口丘はカルデラとは別の火山であり、溶岩円頂丘(溶岩ドーム)や成層火山などが形成されます。
カルデラは周囲を外輪山に囲まれているため、雨水などがたまってカルデラ湖とよばれる湖を形成することがあります。

カルデラの例としては、箱根カルデラ(神奈川県西部)や阿蘇カルデラ(熊本県東部)、姶良カルデラ(あいらカルデラ、鹿児島湾のうち桜島以北)などがあります。

南西側上空から撮影した箱根カルデラ(神奈川県西部・箱根町など)。箱根カルデラは箱根山とよばれる火山群で構成されるカルデラであり、西側にはカルデラ湖(厳密には火口原湖)である芦ノ湖を擁する。中央部(湖の北東側)には複数の火山からなる中央火口丘が存在し、東側はカルデラ湖ではなく陸地になっている。出典:Wikimedia Commons, ©yuichi hayakawa, CC BY-SA 2.0, 2024/11/9閲覧

カルデラ湖

洞爺カルデラの地形図(北海道胆振地方)。洞爺カルデラは8-9万年前(第四紀・更新世末期)の噴火により形成されたカルデラであり、中央にカルデラ湖である洞爺湖(とうやこ)が位置する。湖の中央にある中島は洞爺カルデラの中央火口丘である。洞爺湖の周辺は外輪山により囲まれており、湖の南側には外輪山の一部として有珠山(737m)や昭和新山(398m)が立地する(色が黄色い部分)。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2024/11/8閲覧
南西側の外輪山上から望む洞爺湖(北海道胆振地方・洞爺湖町)。ザ・ウィンザーホテル洞爺リゾート&スパから撮影した画像である。洞爺湖は大規模なカルデラ湖であり、周囲を外輪山に囲まれ、湖の中央部には中央火口丘が湖面から顔を出した中島が立地する。南側湖岸には火山性の温泉である洞爺湖温泉が立地し、道内有数の温泉観光地を形成している。出典:Wikimedia Commons, ©663highland, CC BY 2.5, 2024/11/8閲覧

カルデラ湖は、カルデラの内側に雨水などがたまってできた湖です。
カルデラ全体に水がたまるものもあれば、カルデラの一部だけ水がたまる場合もあります。
たとえば、箱根カルデラ(神奈川県西部)は、カルデラの西側部分にのみカルデラ湖(芦ノ湖)が存在し、東側部分にはカルデラ湖はありません。

カルデラの中央部には中央火口丘とよばれる小規模な火山がある場合があります。
カルデラ湖では、中央火口丘の部分だけが湖面から顔を出して島になっている場合もあります。
上の画像の洞爺湖(北海道胆振地方)は、中央火口丘の頂上付近が島になっている例です。

カルデラ湖は水深が深い湖が多いです。
たとえば、日本で最も水深が深い田沢湖(432m, 秋田県東部・仙北市)や米国で最も水深が深いクレーター湖(590m, 米国北西部オレゴン州・クレーターレイク国立公園)はいずれもカルデラ湖です。

カルデラ湖の分布は火山の分布におおむね一致します。
小規模なものも多いですが、特に大規模なカルデラ湖は北海道・北東北と九州南部に分布しています。
大規模なカルデラ湖の例としては、屈斜路湖(くっしゃろこ)や摩周湖(ましゅうこ)(いずれも北海道釧路地方・弟子屈町)、支笏湖(しこつこ、北海道石狩地方・千歳市)、十和田湖(青森県内陸部・秋田県北東部)、池田湖(鹿児島県南西部・指宿市)などがあります。

カルデラ湖がないカルデラ

阿蘇カルデラの地形図(熊本県東部)。阿蘇カルデラは27-9万年前(第四紀・更新世後期)の噴火により形成されたカルデラである。9万年前の大規模噴火によって陥没が発生し、現在の巨大カルデラが形成された。阿蘇カルデラは一時期カルデラ湖を擁していたが、現在ではカルデラ湖は消失している。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2024/11/9閲覧
北西側上空から撮影した阿蘇カルデラ(阿蘇山、1,592m)の中央火口丘(熊本県東部・阿蘇市上空)。中央火口丘を取り囲むように平地が広がっている。外輪山はさらに外側を囲む緑色の山地の部分である。阿蘇カルデラは27-9万年前(第四紀・更新世後期)の噴火により形成されたカルデラであり、現在はカルデラ湖が存在しないが、過去に3回ほどカルデラ湖が存在していた時期があった。出典:Wikimedia Commons, ©Sonata / Sonata at ja.wikipedia, CC BY-SA 3.0, 2024/11/9閲覧

カルデラ湖が存在しないカルデラも存在します。
たとえば、阿蘇カルデラ(阿蘇山)にはカルデラ湖が存在せず、中央火口丘の周辺を取り囲むように平地が広がり、外輪座はさらにその外側に位置しています。
阿蘇カルデラはかつてカルデラ湖が広がっていた時期もありましたが、現在では中央火口丘の周りは平地になっています。

他にカルデラ湖が存在しないカルデラの例としては、1980年の噴火で山体崩壊をおこしてカルデラがU字状(馬蹄状)に崩れたセント・ヘレンズ山(米国北西部・ワシントン州)などがあります。

セント・へレンズ山のカルデラ(米国北西部・ワシントン州)。1980年の噴火により山体崩壊をおこし、カルデラの手前側の外輪山が崩壊して馬蹄型(U字型)になっている。中央に見える噴煙をあげているドーム状の山は中央火口丘であり、火山の分類としては溶岩円頂丘(溶岩ドーム)である。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2021/1/9閲覧

海中に沈んでいるカルデラ

姶良(あいら)カルデラの地形図(鹿児島湾のうち桜島以北)。姶良カルデラは2万9000年前の噴火に伴う陥没によって形成されたカルデラである。カルデラ内部が海中に沈み外縁部が陸地になり鹿児島湾の一部となっている。カルデラ外縁部に位置する桜島火山は、姶良カルデラが形成された後にできた新しい火山である。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2024/11/9閲覧

カルデラの中には、海中に沈んでいるため陸地の地形からは全貌が見えないカルデラもあります。
たとえば、鹿児島湾北部(桜島以北)は、2万9000年前の噴火により形成された姶良カルデラ(あいらカルデラ)です。
カルデラの内部は海中に沈み、外縁部が陸地になっているため鹿児島湾の一部になっています。
ちなみに、桜島(御岳(おんたけ))は姶良カルデラが形成された後にカルデラ外縁部にできた新しい火山です。

カルデラの大部分が海中に沈んでいる例もあります。
鹿児島県本土の50km南には、鬼界カルデラ(きかいカルデラ)とよばれる大部分が海中に沈んだカルデラがあります。
鬼界カルデラは、外輪山の一部が薩摩硫黄島竹島(鹿児島県三島村)として陸地になっている以外は全て海中に沈んでいます。
鬼界カルデラは約7,300年前の巨大噴火(アカホヤ噴火)で陥没・形成されたカルデラです。
この噴火は完新世(1万1700年前~現在)の中で世界最大の噴火であり、噴火により火山灰は東北地方まで到達し、特に九州南部の縄文人の人々の暮らしに壊滅的な被害を与えました。

鬼界(きかい)カルデラの地形図。鬼界カルデラは鹿児島県本土の50km南に位置するカルデラであり、大部分が海中に沈んでいる。外輪山の一部にあたる薩摩硫黄島と竹島(鹿児島県三島村)のみが海面から顔を出して島となっている。鬼界カルデラは完新世(1万1700年前~現在)の中で世界最大の噴火であるアカホヤ噴火(約7,300年前)によって陥没・形成されたカルデラである。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2024/11/13閲覧

火口湖(カルデラ湖との違い)

蔵王連峰の火口湖である御釜(おかま、宮城県南西部・蔵王町)。蔵王連峰は複数の山からなる火山群であり、御釜は過去の噴火口にできた火口湖である。火山活動の活発さにより湖の色が変化する。1895年には御釜で比較的大きな噴火が発生し、御釜の水が沸騰し、有毒ガスが発生した。出典:Wikimedia Commons, Public domain, 2024/11/9閲覧

火口湖は、火山の噴火口に水がたまってできた湖です。
火口の上にあるため、火山活動の活発さによって湖の色が変化します。

火口湖は単一の火口のくぼみにできた直径 2km未満の小規模な湖です。
それに対して、カルデラ湖は火口のみならず山頂付近の地表が陥没してできた火口湖よりも大規模な湖です。
カルデラ湖は水深が深い湖が多いですが、火口湖は陥没をおこしていないため比較的浅い湖です。

火口湖の例としては、蔵王連峰御釜(おかま、宮城県南西部・蔵王町)、草津白根山湯釜(ゆがま、群馬県北西部・草津町)、霧島連峰(霧島山)大浪池(おおなみのいけ、鹿児島県中央部・霧島市)などがあります。

参考文献

三宅島火山の地質・噴火史解説  産業技術総合研究所 地質調査総合センター 2024/11/15閲覧
三宅島[みやけじま] Miyakejima【常時観測火山】 気象庁 2024/11/15閲覧
カルデラ 産業技術総合研究所 地質調査総合センター 2024/11/7閲覧
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カルデラ噴火 栃木県の地球科学 2024/11/7閲覧
中央火口丘(チュウオウカコウキュウ)とは? コトバンク 改訂新版 世界大百科事典、日本大百科全書(ニッポニカ)、改訂新版 世界大百科事典 2024/11/7閲覧
カルデラ湖(カルデラコ)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ)、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2024/11/8閲覧
地理用語研究会編「地理用語集」山川出版社(2024)
カルデラ火山一覧 気象庁 2024/11/8閲覧
2.火山の活動による地形 国土地理院 2024/11/8閲覧
箱根山(ハコネヤマ)とは? コトバンク 知恵蔵 2024/11/9閲覧
箱根(ハコネ)とは?  コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2024/11/9閲覧
洞爺湖(トウヤコ)とは? コトバンク 日本歴史地名大系、改訂新版 世界大百科事典 2024/11/8閲覧
洞爺湖温泉利用協同組合「地熱資源の活用で地域を豊かに~宝の山プロジェクトの取組み~」生活と環境 67(5) p27-32 (2022)
阿蘇カルデラ(アソカルデラ)とは? コトバンク 日本大百科全書(ニッポニカ) 2024/11/9閲覧
古川 邦之, 鎌田 浩毅「阿蘇カルデラ内西方, 高野尾羽根流紋岩溶岩の内部構造」地質学雑誌 111(10) p590-598 (2005)
セントヘレンズ山とは? コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 2024/11/9閲覧
桜島(姶良カルデラ) 海域火山データベース 海上保安庁海洋情報部 2024/11/9閲覧
7300年前の鬼界カルデラ噴火は完新世最大 神戸大が解明 Science Portal (2024/3/26) 2024/11/9閲覧
鈴木 桂子「鬼界カルデラの大噴火sabo(一般財団法人 砂防・地すべり技術センター機関誌) 116 p8-13 (2014)
鬼界カルデラ(キカイカルデラ)とは? コトバンク 知恵蔵mini 2024/11/13閲覧
日本の火山 vol.28 蔵王山 [宮城県・山形県] 内閣府防災情報 2024/11/9閲覧
御釜 (蔵王連峰) ウィキペディア 2024/11/9閲覧
火口湖(カコウコ)とは? コトバンク ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典、日本大百科全書(ニッポニカ) 2024/11/9閲覧

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